だから俺は救世主じゃねえって   作:ガウチョ

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つかの間の平穏

「カンパーイ!!」

 

 

今日のダムの町はこの世界では珍しいほどのお祭り騒ぎだ。

 

理由は簡単だ。カサンドラの攻略の帰りに拳王から三日で死ぬ技をくらった殿をしていた英雄が死なずにすんだからだ。

 

もうこの三日間お通夜ムードだったけどあの二人が出てきてからはもう朝から飲めや歌えやの大騒ぎになっちゃった。

 

こんな日に酒がないのは可愛そうだからと幾つものデカイビールサーバーに10バレル程ビールを入れて差し入れに出したら大盛り上がりしてね。

 

 

「ぎゃああぁぁぁ!浴びる程ビールが飲めるぜえ!」

 

「キンッキンだ!キンッキンに冷えてやがるぜえ!」

 

「酒なんていつ以来だろうなあ……今日はしこたま飲むぞオラァ!」

 

 

もう飲兵衛は何だかヒャッハーして飲んでいる側で、俺は手元のタブレット端末を操作していた。

 

今回皆から隠れてラオウの強さやオーラというか気の観測が成功したので新しい機能をケイジに搭載する計画を練っているんだよね。

 

後あいつラオウの乗っていた黒王号が凄い気にいったらしくて「拙者も馬が欲しい!」と最近はあっちこっちふらふらしてる……あんな馬まずいないと思うんだけど。

 

しかし今回は収穫の多い作戦だった。

 

トキを救出してラオウの強襲も犠牲なく凌いだ。ロボットはやられたけどね。

 

そして一番の成果である大量の拳法家達と拳法家の資料!

 

彼等を味方に出来たのはでかいんだよなぁ……そんで資料もありがたい。これでケイジの格闘能力も向上するしいいことだよ。

 

問題はラオウの強さが想定以上ということ……果たしてあれにケンシロウは勝てるのかね?

 

ケンシロウ強化フラグをバッキバキに折ってるんだよな俺……まあ強化イコールいい人が亡くなるフラグと連動しているケンシロウが悪いんだよ。

 

それにいかに殺さずに(・・・・)ラオウを倒すか考えないといけないしねえ……やっぱりラオウと交渉しないと駄目なのかなあ……。

 

 

「代表!なに難しい顔してるの?」

 

「ん?ああタキ君。少し寒くなってきましたからどうしようか考えてたんですよ。トヨさんはどうしたんです?」

 

「お婆ちゃんはミスミのお爺ちゃんとご飯作ってたよ。最近お米が収穫できたからお釜でご飯炊くんだって」

 

「それは美味しそうですね」

 

「出来たら代表に持ってきてあげるね!」

 

 

そういってタキ君は向こうに走っていく。

 

タキ君いい子だなあ……荒野を歩いていて目を紫外線にやられてたけど、特製の目薬とアミバの治療で視力も戻ったし良かったよ。

 

あの子もアンナちゃんの兄貴が放浪して見つけてきた孤児でね、ジャッカルが壊滅させる筈のバットの育った村の子供で、村の水が失くなったってこのダムの町に移住してきた中にいた子なんだよ。

 

あの時は結構大規模な住人募集してたから色んな原作のキャラがやって来てるんだよなあ。

 

でも誰がどう原作に関わっていたかはもうわかんないんだけどね、ある程度の知名度がないと俺も覚えきれないからさ。

 

こうして子供達が明日を苦労することなく生きていられるの見ると、満更面倒臭がってもやってきた事に意味はあるんだなあってしみじみ思うんだよね。

 

そんな風に思っていると誰かがやって来た。

 

 

「ここにいたか代表」

 

「ああ、シュウさん。どうですか目の調子は」

 

「うむ……全く違和感なく見えるぞ代表」

 

「それは良かった。一応実験はしていますが被験者の話を聞くとやった私も安心できるというものです」

 

「しかし科学技術というものは凄いな……もう一生見れないと思っていた息子の顔と、あの時から成長したケンシロウの顔を見れるとは思わなかった」

 

 

この人は南斗六聖拳の一人でシュウといって、反帝部隊というレジスタンスを率いていた人だ。

 

南斗聖拳の使い手の中でもトップクラスの人格者で、尚且つ部隊を指揮出来るというもう喉から手が出るくらい欲しい人材なんだ。

 

昔ケンシロウを助ける為に目を自分で潰して長らく盲目だったんだけど、開発に成功したバイオクローニング技術でシュウの細胞から培養して作った人工眼球を移植して目が見えるようになったんだ。

 

その見返りにカサンドラの救出部隊の指揮を頼んだんだけど快く引き受けてくれたんだよね。

 

噂に違わない良い人だよ。

 

 

「それは良かったです……それとあの聖帝の事ですが、何とか向こうの人手に使われていた子供達は此方に引き渡してくれることになりました」

 

「な、なんと!……あのサウザーがそれを了承したのか!?」

 

 

驚くシュウ。まああのサウザーが譲歩するとは思えないよな。

 

 

「見返りはあの人工知能搭載型の重機です。あれ一つで子供百人分くらいの労働力になりますし、反抗せずに休まず働きますから」

 

「だが良かったのか?あれはここでも数少ないものだと聞いたが」

 

「最近人が増えたので昔の工事現場跡地に打ち捨てられた重機の回収も始めたんですよ。人工知能とプラズマバッテリーを積み替えるだけならある程度の数は揃えられるようになったんです」

 

 

そう、やっと重機の数が揃えられるような体制が整ってきたんだよな。

 

 

「そうだったのか……だがすまない、私の意を酌んでくれたのだろう?」

 

「貴方の協力が得られるならこれぐらいはね?」

 

 

だから俺の為に頑張って働いて欲しい。

 

 

「……代表……この恩を私は一生忘れぬと誓うぞ」

 

「そんな大袈裟な……ほら、貴方の部下達が呼んでますよ?」

 

 

そう促すとシュウは一度深く頭を下げて呼ばれているほうに歩いていった。

 

 

「ここも随分と大きくなったな代表よ」

 

 

今日は千客万来だね。

 

 

「シンか……あそこのドンチャン騒ぎしているほうに行かなくていいのか?」

 

「そういうのは苦手でね……それに最近どっかの誰かが体に埋め込んだ装置をはずしたお陰で行動の制限が解除されたからな。大分生活範囲が広がってこの町を楽しめるようになったよ」

 

「ま、お前からアクが抜けたと感じたからな、そろそろいいだろうと思ったまでさ」

 

 

もうこいつは大丈夫だろうな。なんせこの町にはしがらみとかが大量に出来たからね、もうあんなアホな事は出来るような立場じゃないんだ。

 

立場が人を変える……俺が人間を観察して確信したことなんだ。


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