だから俺は救世主じゃねえって   作:ガウチョ

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愛とは

「貴方とこうして話すのは何回目でしたっけ、サウザー殿?」

 

「その立体映像を映写する機械で対面するのは三回目か……おまえが用意した人工知能搭載型の重機達は中々便利だった」

 

 

聖帝と呼ばれ、あの拳王ですら戦うことを避けたといわれる男は王座にリラックスした姿勢で座っていた。

 

 

「まあ明らかに子供より効率がいいですし、貴方に送った設計図通りに作れば耐久面も改良されますからね」

 

 

立体映像として映る男は今やこの近隣で知らぬものはいない有名な男であり、完成した(・・・・)聖帝十字陵の耐震設計を行っていた人物でもある。

 

 

「だが良いのか?おまえは反帝部隊を懐に迎えているのにおれに協力して」

 

「子供は返して貰いましたし人質も順次解放していくんですよね?ならば返礼とは言いませんが貴方の宿願の手伝いぐらいはしますよ」

 

「宿願か……言い得て妙だな」

 

 

実際に聖帝十字陵が完成した後にサウザーは少しずつ人質を解放し、それに比例するように反帝部隊も縮小の一途を辿っている。

 

 

「おまえが最初、おれにいった言葉は忘れんぞ。子供を解放するか、建設途中の聖帝十字陵を粉微塵にされるか選べとな……有象無象がどうなろうと構わないが、師父が眠る地を盾にするとは……ダムに住まう救世主はとんだ性悪だな」

 

 

その言葉に立体映像として表示される男……代表は酷く嫌な顔をしていた。

 

だが代表は特に言い返す事もなく話題をふっていく。

 

 

「聖帝十字陵……オウガイ氏と貴方の愛という気持ちの墓場が完成した現在。貴方が次に起こす行動に私は非常に興味があるんです」

 

「興味だと?」

 

「ええ、事と次第によれば私はある方の死体を暴き、言葉にするのも憚られる行為を報復の為にしなければならないのでね」

 

 

そう言った代表の顔の目の奥には怠惰の為なら何の躊躇いもない暗い闇の眼差し……ではなく死んだ魚の目がくっついていた。

 

 

「……やる気のない顔で恐ろしいことを口にする男だな」

 

 

流石にサウザーもあまり出会ったことのないタイプの人間である代表の言葉に戸惑った。

 

 

「まあオウガイ氏という人物も聞く限りではぶっ飛んだ性格をしていたようですし、一子相伝の伝承者というのは中々に曲者揃いのようですね」

 

「我が師父が人格破綻者と言いたいのか?」

 

 

サウザーの顔から笑みが消える。

 

 

「間違ってますか?愛情を一身に与えた孤児に一子相伝の掟の為に自らを殺めさせるなんて普通の精神では中々……」

 

「あれは事故だった!」

 

「いえ、あれはオウガイ氏の貴方の手を借りた自殺だったと思います。お忘れでしょうが貴方がオウガイ氏を殺めたようにオウガイ氏も貴方の先々代の師を殺めているんですよ?敬愛する人物がそんな事をしてまともでいられますかね?」

 

 

その言葉にサウザーは反論しようとして口をつぐむ。

 

 

「オウガイ氏は伝承者になってから、探していたんでしょうね。自分を終わらせる才を持った伝承者になり得る者を、そして貴方という傑物に出会ってしまった」

 

 

代表の言葉がサウザーの封印した部分をガリガリと削っていく。

 

 

「果たしてオウガイ氏は貴方のように愛を捨てていたのでしょうか……貴方と同じように愛を捨てていたら、オウガイ氏は何故笑って看取られたのでしょうか」

 

「……黙れ黙れ黙れ!!今すぐその減らず口を潰しにいってやろうか!」

 

 

左手で王座の肘掛けを砕きながらサウザーは立ち上がった。

 

 

「愛とは難しいものです……人には様々な愛があります。それは宝であり麻薬であり空気であり半身なんです」

 

 

しかし代表の口は止まらない。

 

 

「サウザー殿……掟に縛られた者の我が儘に貴方は付き合わされたと私は思っています……だから貴方はオウガイ氏のした事を泣くのではなく、馬鹿野郎と文句の一つでも言ってやれば良かったんだと思いますよ」

 

 

そう言って代表の映像は消え、映していた機械は何処かに飛んでいく。

 

それをサウザーはギラリと光る目で睨むが、眉間の力を抜き。

 

 

「馬鹿野郎か……おれは貴方の行いにどう応えれば良かったのですか、お師さん……」

 

 

サウザー以外誰もいない聖帝の寝所で、南斗の帝王は思い悩むことになる。

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