感想欄の返答は出来ていませんが、全て目を通させてもらっています。
有難うございます。
相変わらずストックはないです。
その日は雲一つない晴天で、嵐などが起こりそうにない朗らかな日。
ダムの町にはあらゆる武術家や拳法家、または武器術等を使う人間が多いのでサッカーや野球が出来る程度に大きい練兵場という場所があった。
其所にはこのダムの町の代表が企画した真剣勝負が行われようとしている。
周りへの被害を考慮し、相撲の土俵を二倍ほど広げた特設会場は西と東に陣営を分けていた。
東はダムの町の関係者が集まり、リンやバット、マミヤにアイリ等原作に出てきたメンバーもいれば。
「ケンシロウさん!負けるなよー!」
「ケンさん、兄貴だからって容赦すんな!」
「ケンさーん!結婚しても私達は待ってるからねえ~!」
この町でケンシロウに助けられた者、手合わせとして武を競ったもの、仕事の手伝いや治安維持で出てきたケンシロウに心奪われたもの達が応援に来ていた。
最後の声援にはユリアもムッとしたが、それだけ慕われるケンシロウの人徳に後で何があったのか説明して貰いますとケンシロウに目で訴えかける。
「代表……ユリアの視線が凄いんだが」
「まあこれが終わったらしっかり説明してあげなさいな。貴方がこの町で慕われていると私も言ってあげますから」
「助かる」
ケンシロウはそう言って特設会場の中心に歩いていった。
対する西はガヤガヤと喧しい東と違って実にピリピリとした空気が漂っていた。
「兄者よ……」
「トキか……向こうに居なくて良かったのか?」
黒王号から降りて仁王立ちするラオウの背後からトキが話しかけている。
「ケンシロウには付き添ってくれるものが多いからな。兄者が寂しがってないか見に来たんだ」
「ぬかせ……」
そう言いつつ対面から歩いてくるケンシロウにラオウは武者震いのようなものを感じる。
「この町には少なくとも数百の拳法家や腕に覚えのあるものがいる。ケンシロウはその者達とほぼ毎日手合わせをしていたのでな……昔とは比べ物にならん」
「フン……雑魚を並べ立てても所詮雑魚に変わりあるまい」
「兄者ならそう言うのだろうな……だからこそ代表はケンシロウを選んだのだろう」
トキの言葉にラオウは振り向く。
「どういう意味だ?」
「我等は一つ間違いを犯していたということだ」
トキはそう言ってラオウ陣営にいるユリアの兄にあたるリュウガに挨拶に行ってしまう。
胸に少しのモヤモヤを残し、ラオウも会場の中心に向かった。
ラオウとケンシロウ……使う拳法はどちらも北斗神拳。
「ラオウ……」
「ケンシロウ、もはや問答は必要ない!」
ケンシロウが何か言う前にラオウは闘気を高め、臨戦態勢に入っていく。
ケンシロウも覚悟を決めたのか、ゆっくりと構える。
かつては激流といっていいほどの圧のある闘気を纏っていた両者だが、その様相は変わっていた。
ラオウは可視化できるほどの闘気を体内から太陽のように放射させて周囲を圧倒している。
対してケンシロウはというと……。
「……貴様は」
その様相にラオウは絶句した。
それは激流と言われたラオウとも静水を目指したトキとも違う、ケンシロウのは薄く稀薄で、周囲を揺蕩う霧のような闘気だった。
空気は歪む事もなくラオウの闘気はケンシロウにぶつかるが、薄い霧のような闘気に飲み込まれていく。
「他者を圧倒することなく、拳を交えてお互いを理解する……そこには武を通して作った己の道があり、道と道が交わった時に相手を知り、世界の広さを感じ、そして気がつけば俺の道は広く長くなっていった」
「何をゴチャゴチャと……このラオウにそんなものが通じるとでも!」
ラオウの闘気が収縮し、両手から北斗剛掌波が放たれるがケンシロウは岩山両斬波でまとめて切り裂いた。
そしてそれが真剣勝負の開始のゴングとなる。
「ヌウオオオオオオオォォォォォォ!!」
「ホォォォワッッタアアアァァァ!!」
両者の拳が余りの速さに残像を描き、岩と岩がぶつかり合うような音が響き渡る。
手管を変え、立ち位置が目まぐるしく変わり、ラオウは経絡秘孔に目掛けて突きを放とうとするが、ケンシロウは巧妙に体勢をずらしたり筋肉の収縮を使って経絡秘孔の点を防御して打ち込ませなかった。
「何故秘孔を突かん!ケンシロウ!」
「暗殺拳という薄暗い暗黒の道を一人で歩く人間に誰が気がついてくれる?……俺は兄者を殺すのではなく救うために戦っている」
「救うだと?……驕ったかケンシロウ!」
ラオウの怒りが闘気に影響し、放たれた右手に闘気が渦を巻く。
しかしケンシロウは更に内側に間合いを詰めるとラオウの放たれる右手を両手をしなるように絡ませて投げ飛ばした。
「ぬうおっ!」
宙を舞うラオウだが流石に綺麗に体勢を整えて着地してケンシロウを見ると、ケンシロウはその場で構えたまま動かない。
そしてその態度に怒りが高まるラオウ。
溢れる闘気が更に膨れ上がり、ラオウは手で円を描き気を練り上げ始めると、それをケンシロウに向かって解き放った。
「この無敵の拳受けられるか!……天将奔烈!」
爆発的に膨れ上がり全てを破壊する闘気の波動を放ったラオウだが。
「ふうぅぅぅぅん!」
ケンシロウはそのまま両腕で天将奔烈の闘気の波動を受け止めて、円を描くように腕を回して絡めとり、そのまま後退しながらラオウの天将奔烈を払った。
「な……何だそれは!」
北斗神拳では絶対にない受け技に、ラオウは久方に感じなかった恐怖を思い出した。