だから俺は救世主じゃねえって   作:ガウチョ

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最終話です。


そして世紀末は伝説となる

大きな歓声と幾多の人がその建物にいる人間を祝福している。

 

新しくダムの側にある国に生まれた次代の大統領に国民は笑顔と称賛をもって迎えていた。

 

そしてその建物の最奥……この国の初代大統領だった人物は今、静かにその命の火が消えようとしている。

 

 

「……リンちゃん、起きてください」

 

 

意識がゆらゆらとしていた初代大統領の耳に懐かしい人の声が聞こえてくる。

 

 

「……代表?」

 

「ええ、私です」

 

 

初代大統領だった(・・・)リンは急速に意識が覚醒する。

 

それは最後に燃え盛る炎の瞬きのように。

 

 

「……私のお迎えに来たの?」

 

 

高齢による重度の認知症にかかっていたリンはあの頃の少女のように目の前の人物に質問した。

 

 

「……はい、もうあの頃を知るのは貴方だけになりましたので、お迎えに来たんですよ」

 

「そうなんだ……じゃあまたケンシロウやバットに会えるの?」

 

「ええ、皆さんあなたの事をお待ちしていますよ」

 

 

代表の言葉にニコリとリンが笑う。

 

 

「代表ありがとう……実はちょっと怖かったの」

 

 

少女のように笑うリンはそう言ってペロリと舌を出した。

 

そしてリンの呼吸が少しずつ浅くなり、ゆっくり一呼吸して。

 

 

「じゃあ私は先に行って貴方の事を待っているわ……」

 

 

もう寝るわね……そう言って目を瞑ったリンは、それから二度と目を覚ますことはなかった。

 

 

「……ええ、いつか会える日を」

 

 

代表と呼ばれたひょろりとした青年……転生者であり、あの世紀末の人達と星を救った男はリンのいた部屋から蜃気楼のように消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んだ後、開口一番に神様にこう言われた。

 

 

 

「お前頑張りすぎ」

 

「はい?」

 

「人を救った数が尋常じゃない……信仰と功徳積みすぎ」

 

「ええ……」

 

「数多の宗教や神話があの核の炎で焼かれて焼失したからなあ……そりゃ信仰があんたに集中するよね?」

 

「ああ……なるほど」

 

「それに名前……皆代表って呼ばせて本名を明かさなかったのが神秘性高めちゃってさぁ……」

 

「いやあ……何か中二っぽい名前過ぎて名乗りづらいんですよ」

 

「いいじゃんいいじゃん、神代 表悟(かみしろ ひょうご)ってカッコいい名前だと思わない?」

 

「神に代わり、世に触れて悟るもの……痛々しいですって」

 

「だから真ん中とって代表って名乗るのどうなの?……兎に角、人としてあの世界にそのまま転生したら大問題なんだよね……力はまだ弱いけど殆ど神みたいなもんだよ」

 

「なんかそんな気がしてきました」

 

「そんでこれからどうすんの?」

 

 

神様の問いに俺は即答した。

 

 

「俺の知っている北斗の拳の主要メンバーが全て亡くなるまで見守るつもりです」

 

「後の世界はいいの?」

 

「ええ、俺や皆の時代は記録の中の過去の話ですから……後は皆の子孫に任せますよ」

 

「北斗と南斗の融和を導き、星と人を救った救世主が寂しい事言うなよ」

 

 

神様の言葉に苦笑して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は救世主じゃねえって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に見送ったリンちゃんは皆のいるところに迷わずに逝けたのだろうか?

 

残念だけど俺はそちらに行けなくなったよ、ちょっと長いお別れだ。

 

幽体となった俺は神様の導きでまた別の世界に行くことになる。

 

俺の手元には資源変換と科学技術限界突破が残り、そして新たに信仰の力ってのが加わった。

 

向かう世界はわからねえけど俺はまた力を付けて精一杯生きていくしかない。

 

 

俺の名前は神代表悟……人は俺を代表と呼び。

 

そして少し恥ずかしいが……俺は世界を救った人となった。




これにて完結
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