そして皆さんのご感想や誤字報告ありがとうございます。
南斗聖拳は実は北斗の拳において門下生が数千もいる巨大拳法派閥だと言われてもピンとこないだろう。
俺もビックリしたんだけど漫画だとわかりやすい南斗聖拳の使い手は六人位しか出てこないけど、実際は空手とかムエタイやボクシングレベルで南斗聖拳って使える人がいるんだよね。
理由は簡単だ、彼等南斗聖拳の師範代クラスは教える情報を絞りながら広く浅く広めていった歴史があったそうなんだ。
そしてそのネームバリューに便乗する輩も現れて、本当の南斗聖拳かどうかすらわからなくなるほど南斗聖拳が乱立するようになっていったらしい。
「俺も確かにこれは怪しいと思ったけどよ。それでも師匠はまともな人だったから南斗聖拳だと信じて教えを受けたんだよ」
南斗聖拳の使い手らしいウゾーはそう言いながら飯と水を飲み食いしている。
彼は此方で捕まえた後、結局行き場も食料もないから外側の村で堆肥作りに従事すること1ヶ月、聞けば他所の村から飢えて出てきたので初犯らしく、ここでの生活がよかったせいか毒が抜けて外側の村に定住してしまったので、俺は彼と南斗聖拳の話のすり合わせをしに村まで来て飯を奢っていたのだ。
そんでビックリしたのが確かに彼は南斗聖拳っぽい技が使えるということ。
素手では無理だが剣を使えば岩を豆腐みたいに賽の目状に切れるし、鍛練の賜物なのか垂直に三メートル程ジャンプも出来た。
「ガキの頃南斗水鳥拳の演舞を見たことあんだけどよ、演舞を見たとき生まれて初めて鳥肌がたったんだ。あんな綺麗で恐ろしい舞いはねえってな……だから俺は南斗聖拳の門を叩いたのさ」
才能がないって水鳥拳の師範代には相手にされなかったけどな、と寂しそうに笑ったウゾーの顔が印象的だった。
恐らくレイの前任か兄弟子といった所だろうな。やはり其なりの才覚がないと伝承者にはなれないらしい。
そう思うと一子相伝なのに四人も伝承できそうな弟子を集めたリュウケンという人はたいした人物だよね。一人は何かハズレっぽいけどな。
それで南斗聖拳の話が聞けて満足した俺はダムのほうに帰ったんだけど、後日俺はそれが悪手だったと痛感することになる。
このダムの外側の村には交易で来ている商人のような奴もいるんだが、そいつらがウゾーの一連の騒ぎを元いた場所に帰ったときに周りの人間に面白おかしく吹聴してしまったんだよ。
南斗聖拳の人間を倒した村がある
これぐらいはかわいい方だが、其処にどういう経緯があったのか尾ひれ所か二足歩行から究極進化したミュータントみたいにネジ曲がり。
あの村には南斗聖拳に恨みを持つものが集まり、南斗聖拳を根絶せんと準備をし続けている。
何故かこんな感じに話が収まったのである……なんで?
「すまねえ代表! 俺があんな所で叫んだばかりに!」
目の前に額を割れんばかりに頭を下げるウゾーに俺はため息をつく。ついでに俺は皆から代表と呼ばれるようになった。
ウゾーとの邂逅から三ヶ月……最近この村は更に頻繁に人がやって来るようになった。
やれ打倒南斗聖拳と集まって来る集団と、やられる前に殺れ! といわんばかりに南斗聖拳の使い手の集団が大挙して来るようになったのだ。
村長も困り果てていたけど、俺はこうなりゃシンプルにやるっきゃない! と、双方言い分は聞かずに説得(物理)して、今なお拡大している堆肥作りに全員ぶちこんでやったのだ。
この俺が新たに用意した対拳法家仕様の偽装ロボットは並じゃないんだ! 全員見事説得(物理)することに成功したよ。
すると今までの堆肥作りの人員があぶれたので、新規に煉瓦作りと新しく世話を始めたヤギとか数百に膨れ上がった鶏の世話とか仕事を増やして割り振っていく。
他にも増えた鶏の鳥小屋とか厠の建設に人の排泄物の回収作業も始まった。
人が増えれば糞尿の量も凄くなっていくから、これも堆肥にどうだって話が出たけど。農業に詳しい人曰く人糞は堆肥にするのが難しいらしいからやめた方が良いと聞き、それは此方で引き取ると願い出た。
俺は詳しくは言えないが上手く処理するよと説明すると、何か村長達に感謝というか尊敬の眼差しを更に向けられるようになった。
いや貴方達に融通している小麦とか調味料の一部、その人糞から資源変換してるのだからね?
言わねえけど人糞からかなりの割合の塩とか胡椒とか資源変換して配給してるからね?
……言わねえけど。
そうやって俺は程々に外側の村に協力しつつ生活していると、ついに南斗の大物がここにやって来ている事を風の噂で知ることになった。
さて、北斗の拳において解りやすい勢力拡大を図っていた人物を知っているだろうか?
原作では関東一円を実効支配する男
ケンシロウに七つの胸の傷をつけた男
愛する女のオーバーテクノロジーレベルの精巧な人形を作り、それに話しかけちゃう男
そして関東一円を実効支配する理由がその女の為(女は嫌がっている)というヤバい奴
名前はシン……北斗の拳に於いてケンシロウが初めて相対した