だから俺は救世主じゃねえって   作:ガウチョ

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今回長くなったので二部構成になります。


殉星の落日

side シン

 

こうして見ると中々の発展具合じゃないか……。

 

特注で作った私を乗せる玉座をつけた大型バギーはある噂のダムの周りに作られた町といっても良い規模の村の手前まで来ている。

 

ユリアの愛を私一人の為だけに……ケンシロウから奪ったは良いが、未だにユリアの心はケンシロウに囚われたまま……。

 

だからこそ私はユリアの愛を得るためにこうしてユリアの為だけの町を作る軍を組織し、私はこの一帯を支配しようとしていた。

 

だが私が集めたKING軍は既に数百の数に膨れ上がり、この軍を維持するには大量の水と食料が必要になっていく。

 

どうしようもない奴ばかりだが、それでも喉が乾き腹が減るこいつらを食わせなければならん。ゆえに何処かの食料や水を得ることのできる場所を調べていると、興味深い村が存在することを知ったのだ。

 

ダムの側に立てられた南斗聖拳を憎む村。

 

噂自体が嘘だったらしいが、どういう手段を使ったのかその嘘を信じた南斗聖拳を憎む者と南斗聖拳を多少なりとも使える者をどちらも村に取り込んで大きくなった村があると更なる噂になったのだ。

 

そしてあの村は膨れ上がった人口を受け止めるだけの水と食料があることの証明にもなっている。

 

ならば我らKING軍が今最も求めているもの……ユリアの為の町を作る為にあの村には尊い犠牲になってもらおうではないか!

 

ダイヤ、クラブ、ハート、スペードを側近に数百の兵士を従え、私はその村に襲いかかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

side 主人公

 

「ついに来てしまいましたな代表……」

 

 

村長の言葉に俺も黙って頷いた。

 

南斗聖拳でも大物であるシンが生み出した悪逆非道のKING軍は、最近で最も知名度を上げたヤベー奴等である。

 

襲われた村はペンペン草も残らないと言われる死と暴虐を振り撒く奴等の襲撃は、その軍の大きさゆえに何日も前から噂に成る程だったもんなあ。

 

幸いなのは原作より軍の規模が小さいらしいという事だろう……新開発の高高度を飛べる飛行ドローンを使った偵察で、サザンクロスシティと呼ばれるようになる場所に本物のユリアがいることが判明しているからだ。

 

高精彩のカメラで見たけど、カメラ越しとはいえ確かに実際に見るユリアはとんでもなく美しい女性だった。

 

世紀末前の情報紙とかテレビで出てくる美女とかと比べても勝るとも劣らずの美しさにちょっと見惚れちゃったもん。

 

ありゃ男に何か含みがなくても彼女が関われば情欲が掻き立てられるのも納得の美貌だったね。

 

流石南斗と北斗の男を骨抜きにした実績は伊達ではない。

 

そんな彼女の為に暴虐を以て町を献上しようするシンは愛に殉じてると言えるかもしれない。

 

だけど俺から言わせれば良い迷惑だし、KING軍が来るって分かると南斗聖拳の使い手って言われてた奴等がどんどん村から逃げていって大変だったんだ。

 

打倒南斗聖拳ってやって来た人は村に残ってくれて、今日までKING軍を迎え撃つための準備を手伝ってくれたけどね。

 

南斗聖拳で暴虐してたのってこのKING軍とあと二つの流派の軍だからそりゃそうなるか。

 

外側の村の村長と共に少し前に防衛目的で作った高台から見えるKING軍の編成は、二百近いバイクやトラックやジープに人が複数乗っているので、単純に五百人くらいは兵士を揃えたことになる。

 

よくもまあここまで揃えたもんだけど、残念だがお前達の大半は村に辿り着けんぞ。

 

 

「それでは村長…私は準備がありますので手はず通りに避難をお願いします」

 

「はい、ですが私は皆の準備を見届けたらここに残ろうと思います……こんな老いぼれでも食い扶持になってしまいますからな。他の老いた者達も残るそうですよ」

 

 

そう言った村長の目はとても凪いでいた……これが死を定めた人間の目か……この世紀末では大半の人がこんな目をして死んでいくんだろう。

 

 

「……まあ多少喧しくなりますが村長は休んでてください。私も死ぬ気はないですし、彼等もヤル気満々ですからね」

 

そう言って高台から下を見ると今回の村の襲撃で戦うといって武器をもった人が百ちょっと、そしてダムの内側に住んでいると思われている完全武装の偽装ロボットが同じく百ちょっと。

 

合計二百ちょっとの人とロボットの混成部隊がダムの村の全戦力となっていた。

 

まあ秘匿兵器は山ほどあるけど此れぐらいが怪しまれない限界だろうな。

 

準備万端! 後は結果を待つばかり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称

 

 

負けるわけがない……KING軍の連中は自分の勝利を疑ってなかった。

 

確かに今はほぼ存在が確認できない銃器がこの村に存在していることはわかっているが、例え撃たれてもこの数なら自分じゃなくて他の誰かだろうという妙な自信が全員に蔓延していた。

 

だが…彼等は相手が悪すぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドドドドッドドドドッッガアアアアアァァァァッァァン!!!!

 

 

 

丁度KING軍が村まで約150メートルまで近づいたとき、彼等の足下から鈴生りのように地面が大爆発したのだ。

 

その余りの威力に局所的に軽度の地震が起きたほどである。

 

代表は最近溜め込んだ人糞をせっせと粘土状の爆発物に資源変換し、ダムの秘密基地に最近導入したオートメーションの工作機械から起爆装置を大量に生産。

 

更に光学迷彩を搭載した飛行ドローンを使ってKING軍の布陣を偵察していたので、それを予測して村の有志を募って地面にこれでもかとリモート起爆の爆弾を埋めていたのだ。

 

その数約300!

 

村の人は万が一を考えて建設途中だったレンガ造りの鳥小屋を補強して避難。

 

更に自陣が破られた時用の避難に使う大型トラックを貸し出し。虐殺が始まる前に皆は逃げられるように準備をしていたのである。

 

しかし少し無駄になったかもしれない……この爆発によって衝撃波と共に石や砂を派手に巻き上げ巨大な砂埃となってキノコ雲を作る現状に、村側の戦える者のまとめ役になったウゾーはそう感じていた。

 

 

「なんだよこれ……」

 

「俺達は何を埋めてたんだ?」

 

「プ、プラスチック爆弾って奴だったのかあれ?」

 

「ダイナマイトすら見たことねえんだ。俺が知るかよ!」

 

「ていうかダムの内側の連中こんなヤバいもの隠してたのかよ!」

 

 

未知とは恐怖であるが、無知とは時に人の行動に枷をつけないものへと変貌する。

 

ただの爆弾としか聞いてなかった建物の陰に隠れていた彼等は、自分達がいかに危険な物を取り扱っていたか今気づいたのだ。

 

 

「……怖じ気づくなよお前ら。少なくとも代表とあの人達は結果をちゃんと知ってて準備していたんだ。俺は馬鹿だが俺達を率いる人は馬鹿じゃねえし、こうして居場所をちゃんと作ってくれた方達なんだ。嫌ならこれが終わったら出ていきゃいいんだ」

 

 

ウゾーの言葉に騒いでいた人間も黙っていく。

 

嫌なら出ていけば良い……この村は最初、ダムの内側で完結していたのを人がやって来て今の状態になった村だ。

 

見ず知らずの流れ者を食わせるために住環境を整え、ある程度の治安維持を行ってモラルの低下を防ぎ、隠し事があったとしても一度として無体な事はしてこなかった彼等に何の文句が言えるだろう。

 

ここ以上に最低な場所は嫌って程見てきた、だがここ以上に住みやすい場所が他にあるだろうか?

 

水は飲める、飯は食える、仕事はある。

 

 

「ここには昔ほどじゃないが俺達が核の炎で焼かれる前にしていた営みってやつがある……俺はここに来て日が浅いけどよ……ここの人達が悲しむ顔は見たくねえ」

 

 

ウゾーはそう呟いて返して貰った愛剣を握り直した。

 

砂と土ぼこりで錆び付き始めていたそれは返ってきた時、油を塗られ新品同然のように研ぎ直されていた。

 

自分は頭が悪い、だがあの人達についていくのは間違いじゃねえ……ウゾーの頭はシンプルだった。そしてウゾーのそのシンプルさは周りに嫌というほど伝わった。

 

 

「そろそろだな」

 

 

そして鋼のように硬質な声が耳につく。

 

ウゾー達以外のダムの内側の戦士達、その歴戦の空気に周りの人間のざわめきも引いていった。

 

今回ダムの内側からは百人ぐらいの人が出張っているが、全員が統一した装備を身に纏い、全員がまるで一つの生き物のように行動している。

 

これが軍隊……これが規律……。

 

彼等は無駄口を話さずに主の到着をまっていた。

 

 

「生存者はどれくらいです?」

 

 

暫くして今回の作戦の立案者がやって来ると、戦士達はキビキビと説明する。

 

 

「確認できるのは四割、うち軽傷と思われるものは恐らく二割、そしてその軽傷の中におそらく本命と思われる者がいます」

 

 

代表と呼ばれるその青年は今は貴重な双眼鏡を使って砂埃の中を見ている。

 

背丈はひょろりと高く、体もそれなりに鍛えた程度、だがダムの内側の戦士達は彼の手足であり、目であり耳であった。

 

そして彼の良くも悪くも面倒臭がりな性格が、この村の治安を守っていると言っても過言ではない。

 

あの戦士達は何故か彼の指示でないと動かない。ゆえに彼が村の問題を面倒臭がって早急に解決させているのでこの村は発展していったと言っても過言ではない。

 

二、三日に一回ふらりと護衛と一緒に来ては村長に話を聞いて、問題を解決していく。

 

彼がこの村の武力を握っている現状なら、ウゾーは大丈夫だと思えるのだ。

 

 

「よろしい、では皆さんはうちの部隊と一緒に残存勢力を掃討してください。後南斗聖拳のシンはかなりの手練れですから、見つけた場合は人数が揃うまで無闇に戦いを挑まないようにして下さい」

 

 

それでは作戦を開始します……

 

 

その言葉に押されるようにダムの村から約二百ほどの人とロボットの混成部隊が進撃するのだった。




誤字脱字報告ありがとうございます。
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