一応全部目を通して拝見していますが、実は原哲夫先生の作品でしっかり見たのがあの二作と蒼天の拳だけなんですよね。
なので他作品はわからないか、中々使いにくいキャラ設定で出せないという事をご了承下さい。
ついでにもうストックがないです。
「どおりああああぁぁぁぁぁ!!!」
「はああああああぁぁぁぁぁ!!!」
ガカアアアアァァァァン!!!!
朱槍と手刀が交差し、空気が破裂したような音と共にシンとケイジはお互いに二歩下がった。
シンはあくまでも徒手空拳で挑み、しかしてケイジは朱槍をきつく握り直す。
「その手……槍と打ち合って無傷とはどういう理屈でござる?」
「南斗聖拳は外功を高め、硬気功の極みを手にする拳法だ、たかが槍程度で俺の手足に傷がつけられると思うなよ」
シンの強烈な踏み込みからの無数の突きが放たれ、ケイジは朱槍を枯れ木の枝の如く振り回してシンの突きを払い落とす。
しかし槍一本と手が二つ、射程の差があれどそれは南斗聖拳の使い手にとって不利にはならない!
シンは一瞬力を抜くと手を朱槍で払われた勢いを利用して潜り込むように間合いを詰める。
そのまま拳ひとつ分の距離まで詰めたシンは神速で飛び上がり、ケイジの顎目掛けて膝蹴りをぶちこんだのである。
しかしケイジも対拳法家仕様の特別製だ。素早く朱槍から片手を離して膝と顎の間に手を入れて間一髪で防御し、その勢いを利用して宙返りしながら距離を開けたのであった。
「ふう!危うく顎が砕かれる所でござった」
「並の者なら腕ごと砕けていたものを……流石は機械人形といったところか」
「これでも主からは強く在れと作られましての。しかし主が恐れる拳法家とはここまでの強さでござったか」
「ふん、人形風情に隠れて指揮とは貴様の主は恐れるような者ではなさそうだな」
「まあ頭脳労働に秀でてますからな」
朱槍が唸り、手刀が風を切る音が響く。
シンは更に苛烈な突きと足技を使い始め、ケイジも先程よりも槍先鋭く振るって時には拳打すら交えて応戦していく。
パワーとスピードはケイジが優勢だが、戦闘技術においてはシンが圧倒的ではあった。しかしシンは後一歩の部分で攻めきれない。
理由は様々な要因が関係している。
シンが技を組み立て、ケイジの防御を抜いて決定的な一撃を入れることが出来る瞬間が三度あった。
だがその三度とも、踏み込んで決めれば自分もただではすまない気配をケイジから濃密に感じた為に一撃を決めきれなかったのである。
更に未だシンは周りを敵に囲まれており、ケイジの差配で攻撃されていない状態だからこそ、周りに気を配るために完全にケイジに集中出来ないのも攻めあぐねる理由の一つであった。
(だが一番の問題なのはこいつだ……)
シンは顔に迫る朱槍の突きを回避しながらケイジの動きを観察していた。
最初は出される攻撃を捌くだけで精一杯だったケイジは今、確実に槍術の技術が上がっているとシンは感じているからだ。
(機械人形ゆえに普通の人間とは学習スピードが違うというわけか)
濃密なまでのシンとの戦闘はケイジを通じて周囲の偽装ロボットに共有とデバッグが行われており、戦闘データの蓄積によるケイジの戦闘技術は驚きのスピードで高まっていっている。
今は自分が圧倒できる、だがこのままでは遠からずにこの機械人形の朱槍に貫かれる可能性を感じたシンは賭けに出ることにしたのだ。
シンは気づいていた、あのケイジが主と呼んでいた人間が近くにいることを。
そしてケイジは特定の方角に戦闘場所を移さないように
絶妙に誘導していることを。
(そこに行かれると都合が悪いことは……お前の挙動で導きだしたぞ!)
シンが隙を見てケイジが行かせないようにした場所に向かう為の移動を開始しようとすると、それにケイジが気付いて防ごうとする。
「簡単には行かせぬ!」
「だが貴様がいかに学習しようと初見の技ならわかるまい! 南斗飛竜拳!」
シンが繰り出し続けた突きから一転、拳による連打の技に変わって技の変化にケイジは怯むと。
「それがお前の敗因だ!南斗凄斬爪!」
間を置かず放たれた手刀による渾身の手刀がケイジの右肩に決まり、ケイジはそのダメージに一瞬身動きが取れなくなってしまう。
それをシンは見逃さず、周りの殺気を鋭敏に感じ取ってケイジの肩を足場に大きく跳躍。
「そこか! 首魁は!」
銃弾飛び交う空中でシンは周りとは明らかに護衛の動きが厳重な中心人物を見つけ、空中でくるりと姿勢を変えるとそのままその人物に向かって加速しながら落ちていくではないか!
「お前を殺せば機械人形も動けまい! 南斗飛燕斬!」
中心人物には護衛のロボットがいたが、シンはそのまま飛び蹴りの衝撃波で蹴散らし、ついに手が届きそうな距離まで迫った時、フードを被った誰かが中心人物を守るように前に出た。
「俺の邪魔をするな! 南斗獄屠拳!」
シンはその誰かを確認せずに四肢を切る蹴り技を放ってしまう。
「あぅ…」
「なっ!ユリアだと!」
そしてフードも切り裂かれてその顔があらわになった時、シンは思考が停止するほどの衝撃を受けた。
だがそれは敵陣の真っ只中にいて致命的な隙である。
「ここまでだよ南斗聖拳」
身体中に周りから針を打ち込まれ、そこに繋がった糸から電撃を流されたシンは揺れて白濁する視界の中、倒れ込むユリアを見ようとするが。
「取り敢えず貴方は拘束させてもらいます」
その言葉と共に後ろからの衝撃で、シンの意識は暗転するのであった。