織斑イチカの収束   作:monmo

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第十四話

 翌日。朝早く千冬に叩き起こされ、眠り足りないままクラスメイト達と食堂で朝食を終えた俺は、勉強用具を持って広い和室へと移動する。クラスごとに襖だけで隔たれた、座椅子と机の並ぶこの畳張りの部屋で、臨海学校よろしく皆でISの授業が始まった。

 やってる事は学校の授業と同じ、座学、座学、座学の連続に、俺は居眠りをしながら千冬にシバかれ、午前中の科目を乗り越えた。

 午後からは専用機持ちのみで特殊なパッケージの運用試験とデータの採取を行う。そんなわけで俺といつものヒロイン共と千冬は旅館からひと山超え、四方を岩山の壁に囲まれたIS試験用の天然のアリーナに場所を移動していた。他のクラスメイトは海で遊んでるらしい。鈴がさっきから文句をブツブツと言っていた。

 アリーナのちょうどど真ん中で整列する俺とヒロイン達。そばにはISで搬入された新型装備のコンテナが鎮座している。

 少し経ってやってきた千冬が俺を見た。視線は俺の右腕に注目していた。

 

「織斑、白式はどうした」

 

「いや、それが……、

 

 俺がそこまで言った瞬間、頭の上から知っている声が聞こえてきた。

 

「ちーーーーちゃーーん!! いーーーーっくーーん!!!」

 

 見上げればそこには空からスカイダイビングしている束が、パラシュートも開かず一直線に俺達の所へと落下してきていた。

 

「ぬぅッ!」

 

「えっ!?」

 

「ちょっ、ちょっと!?」

 

「なにあれッ!?」

 

「…………」

 

 落ちてくるのが誰だかわからないヒロイン達は慌てふためいているが、その中で箒は黙ったまま束を睨みつけ、千冬は片手で頭を抱えていた。

 皆の注目を集めた本人が地面へと墜落する瞬間、まるでISでも纏っているかのようにふわりと空中でブレーキをかけると、そのまま地面にストンと着地して千冬に向かって駆け出した。

 

「束……」

 

「やあやあ、会いたかったよちーちゃん! さっそくハグハグしましょ! そして愛を確かめま──ぶへッ!!」

 

 その大きな胸で抱き締めようと飛びかかってきた束に千冬は容赦のない裏拳を頰に打ち込むと、そのまま倒れそうになった彼女の頭を力任せに鷲掴んだ。

 千冬は掴んだ束の頭を引き寄せ、彼女の耳元で囁くように話す。

 

「一体全体何をしにきた? 何が目的だ」

 

「むぐぐぐぐ……、落ち着いてちーちゃん……今日は真面目な話だから……」

 

「真面目な話だと?」

 

 千冬は疑問を覚えた拍子に束の頭を手放した。アイアンクローから解放された彼女は軽やかな足取りで、今度は箒に近寄る。

 

「うふふふふ、おひさしぶり〜箒ちゃん! 何年ぶりかなぁ〜。おっきくなったね〜! 特におっぱい! やっぱり束さんの妹の事だけは──

 

 ブンッ!

 

 スカッ

 

 握り拳で放たれた彼女の右フックは、悠々と束に回避される。本気の一撃のつもりだったのか、箒は歯を噛み締めながら睨みつけた。

 

「チッ、チッ、チッ、甘いよ〜ほーちゃん。お姉ちゃんを倒そうなんて、3時のおやつよりも甘──

 

「束、真面目な話をするんじゃなかったのか」

 

「そーでしたー。じゃあ、まずは箒ちゃんから! カモーン!!」

 

 千冬に話を割られ、束は素早く態度を翻す。そして勢い良く叫んで上に掲げた手をスナップすると、そこからブァっと現れた真っ赤な粒子が意思を持つかのように渦巻いて収束し、1台の赤いISとなった。

 

「じゃじゃーーん!! これぞ箒ちゃんの専用機、『紅椿』だよーん! 現行ISのスペックを全て上回る、束さんお手製の第四世代型ISだよ!!」

 

 束が手を広げて俺達に見せつける紅椿を前にして、俺達はその迫力に息を飲んだ。

 メインカラーは赤、それも絵の具にある原色の赤ではなく朱色の様な深みのある紅で染められていた。IS本体は着物を纏った様な流線が目立つ、細身で女性っぽいデザインだ。浮遊ユニットは着物の重ね着の様にISを覆う、鋭い花弁の様な形をした物が全部で6機。花弁のひとつひとつがブースターとして機能するかのように感じられる。目に見える武器は、刀型のブレードを両腰に装備している。ディテールの細部には花魁が持ってる櫛などに掘られてる、金の蒔絵が彩られていた。

 

「これが、私のIS……」

 

 太陽光が紅と金色を照らし、神々しく輝いている様にも見える紅椿を前に驚いている箒に対して、束はパンパンと手を叩いて彼女を促す。

 

「さぁ箒ちゃん、さっそくフォーマットとフィッティングから始めましょうか! 私が補佐するからあっという間だよん!」

 

「は、はい……頼みます」

 

「ノンノン、もっと肩の力を抜いてっ。ISは純粋な方が調整がしやすいんだから!」

 

 テンション高く箒の背中を押そうとする束さんの手を払い、彼女はこれから自分の専用機となる紅椿に歩み寄る。箒が紅椿の目の前まで近づくと、紅椿は勝手に膝をついて胸部の装甲を開いて箒を乗せる準備を整える。地味に羨ましい機能だと思った。

 その様子を眺めていると、ラウラが俺の腰を小突いてきた。

 

「い、一夏……あの人はまさか……」

 

「あぁ、箒の姉だ……」

 

 その言葉にすぐ反応したのはシャルだった。

 

「えぇっ!? じゃあ……あの人が束博士!?」

 

「やはり……あの方がそうでしたのね……」

 

 セシリアも口元に手を添えて、驚きの表情を束さんに向けている。その隣では、鈴がわなわなと震えていた。

 

「ウソでしょ……全世界に指名手配されてるのよ……」

 

「あの人が……ISの創始者」

 

 ラウラは束さんを見て感慨深く呟いていたが、その声はシャルの言葉に遮られた。

 

「しかも、専用機って言ったよね……っ!? 専用機持ちだけ呼ばれたハズなのに箒がいるからおかしいとは思ってたけど……」

 

「束博士に直接専用機を要望したのか……っ!」

 

「しかもしかも、第四世代って言ったわよね!? 第四世代って何よ! いったい、どーゆー事よっ!?」

 

 鈴の質問には一切答えようとしない束さんは箒が紅椿を纏ったのを確認すると、昨日見たISのような機材を展開してケーブルを伸ばし、紅椿と連結させる。すぐさま手元のキーボードを巧みに叩いて、大量のディスプレイを広げていく。

 

「え〜と、箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、あとは最新のデータに更新するだけだね。それ、ぴ・ぽ・ぱ♪」

 

 束さんは自分の台詞に合わせてキーボードのキーを押すと、なにやらデータのダウンロード画面のようなものがディスプレイに映り、すぐ100%となる。するとケーブルで繋がっている紅椿の装甲の隙間から強い光が瞬き、消えていった。

 

「近接戦闘を基礎に万能型に調整してあるから、すぐに馴染むと思うよ〜。あとは自立支援装備も取り付けておいたからね〜、お姉ちゃんが!」

 

 束さんはベラベラ喋りながら紅椿の調整を行なっているが、当の箒は返事もせず、素っ気ない態度をしている。

 まあ原因は知っている。束がISを世間に見せびらかせたせいで、箒は織斑一夏と離ればなれになってしまったのだ。それは彼女にとって、実の姉でも許しがたい暴挙だったのだろう。だから、彼女は今日の今日まで専用機を要望する事をためらっていたのだ。

 しかし、この男の周りにセシリアや鈴などの専用機持ち達が現れ、彼の周りに集まって言い寄ってくる光景を見て、その覚悟は緩んでしまった。

 

「ふ〜ん、ふふ〜ん、箒ちゃんまた剣道の腕上げたね。筋肉の付き方見ればわかるよ、お姉ちゃんは鼻が高いなぁ」

 

 塩対応の箒を気にもせず、やがて束さんはキーボードから手を離すと、紅椿に繋がっているケーブルを引き抜き、ディスプレイを全て閉じて機材を収納させた。

 実の妹にプレゼントを渡しているかの様に、束は本当に嬉しそうだ。それを受け取る本人がどんな心境なのか、知る由もない。

 

「はいフィッティング終了〜! あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるね。じゃ、試験運転もかねてさっそく飛んでみよう! 箒ちゃんのイメージ通りに動くハズだよ」

 

「はい……」

 

 紅椿の脚で一歩を踏み出した箒。その動作はまるで人間の様にしなやか……とはいかず、緊張でもしているのかロボットの様にぎこちない動きだったが、そこから両脚と浮遊ユニットのブースターを噴かせた瞬間、彼女を乗せた紅椿は爆発的な速度で空へと飛び上がった。

 一気に砂埃が巻き起こって咳き込む俺達を気にもせず、束さんは砂を払いながらオープン・チャンネルを繋げて箒に話しかける。

 

「どーお? 箒ちゃんの思い通りに動くでしょ!」

 

『は、はいっ……!』

 

 ISを展開していなくても、地面から見たここから箒の姿がわかる。速度は今までで見たISの中で一番速いが、非常に安定した飛行だ。動かしている本人も予想以上の運動能力なのか、箒も驚いているようだ。

 

「もちろん、自由に飛べるだけじゃないからね! ねぇ、ちーちゃん。こんなかで一番強い子で、箒ちゃんの練習相手になってよ!」

 

 空を見上げながら話す束さんの突拍子もない提案に、千冬も手で日光を遮りながら鼻で笑った。

 

「フッ、だそうだ。せっかくなんだ、誰か相手になってやったらどうだ?」

 

「えっ、じゃあ僕が行きます!!」

 

 すぐさま元気の良い返事をして、ラファールを纏って飛び立ったのはシャルロットだった。気のせいか、飛び立つ瞬間に見えた彼女の目は輝いているような気がした。

 空中で対峙した2人はお互いに距離を取って戦いの準備を始める。白式がないので、俺は手を額に当てて影をつくりながらその様子を眺める。

 

『どう? 自分の専用機を持った感想は?』

 

 シャルはそう言いながらラファールの右手にアサルトライフル、左手にショットガンを展開する。

 

『あぁ、これで私は…………いや、なんでもない。とにかく、今なら誰にも負ける気がしない!』

 

 箒は何か言いたげにした事を取り消し、腰に提げていた二本の刀を抜き放つと、一回転しながら構えをとった。

 

「カッコいい〜! ほーちゃーん、今抜いた武器のデータを送るよん♪ ちなみに、右手のが『雨月(あまつき)』 左手のが『空裂(からわれ)』って名前ね」

 

 束さんは回線で箒に武器の説明を始める。キーボードも動かして、わかりやすいように彼女へ画像も送っているようだ。

 

「このふたつの剣は刃からエネルギーを自由に放出できるから、攻撃に合わせてエネルギー刃で追撃できる仕様になってるんだよ! あと、エネルギーをそのまま放つ事もできるから、色々試してみてよ!」

 

 束さんに言われた通りに箒は恐る恐る二本の刀を振るうと、それぞれ刀身に紅い零落白夜の様な粒子が現れ、彼女が剣を振るう動きに合わせて残像の様にエネルギーが残っていた。

 

『ふむ、これは……』

 

 消えていく粒子を見届けた箒は、刀の特性を理解したようだ。

 

『準備はいいかい?』

 

 銃に弾丸を装填させたシャルの呼びかけに、彼女はもう一度大きな動きで刀を構えて答えた。

 

『あぁ、いつでも来い』

 

『じゃあ……いくよ!』

 

 その瞬間シャルのラファールは真横にブースターを噴かし、旋回しながらアサルトライフルとショットガンの弾幕を浴びせ始めた。

 

『むっ!』

 

 すぐさま箒はブースターで上昇して弾の波を回避すると、ほとんど溜める時間を使っていないイグニッション・ブーストを発動して、シャルに急接近する。

 

「ウソッ!?」

 

「早いっ!」

 

 思わず鈴やラウラが言葉を漏らした通り、ただでさえ移動速度が速く感じられた紅椿のイグニッション・ブーストは、もはや目が追いつかなかった。それでいて操縦している箒には負担や焦りの表情は見えない。それだげPICとハイパーセンサーも優れているって事だ。

 

『くらえッ!』

 

 ブーストの終わりと同時に二本の刀をラファールに向かって振り下ろす箒。シャルは咄嗟に後退して斬撃を回避しようと試みる。

 

『くっ!』

 

 間一髪、回避に成功したと思いきや、刀身を纏っているエネルギーがラファールのシールドバリアに掠れ、そのままシールドエネルギーをガリガリと削り取っていった。

 

『えッ! そんなっ!?』

 

『まだだっ!』

 

 動揺するシャルに追撃を仕掛ける箒。右手の刀をラファールに向かって横一線に振るうと、そこから斬撃波のようなエネルギーの塊を発射した。

 シャルは後退の勢いを利用してそのまま空中で後転し、斬撃をギリギリ回避する。だが、放たれた斬撃はラファールの持っていたアサルトライフルを掠り、銃身の部分を綺麗に切断していた。そのまま斬撃波は粒子を撒き散らして徐々に小さくなりながらも直進し、進路上の雲を上下に両断して消えていった。

 

『す、凄い……』

 

 斬撃波を放った箒は紅椿の刀を見ながら驚いている。シャルは切られたアサルトライフルを収納し、軽機関銃を展開する。

 

『やるねっ! でも、これはどうかな?』

 

 ラファールを後退させながらシャルは機関銃とショットガンを乱射して弾幕を展開する。

 

『むっ!』

 

 箒は刀を交差してバリアを展開しながら、周りの展開装甲である浮遊ユニットを一輪の花の様に連結させ、弾丸が掠める自身の前に迫り出す。すると輪の中心から粒子が溢れ出すかの様に現れると、それは大きなシールドとなって箒を遮った。弾丸はシールドに触れると粉々になっていた。

 

『ッ!? でもっ!』

 

 紅椿から次々と新しい機能が現れて驚くシャルだが、それと同時に彼女は楽しそうに笑っていた。そのまま箒から距離を取りながら背中にありったけのミサイルポッドを展開すると、躊躇せず一斉に発射した。煙の線が一斉に広がり、シールドに守られていない方向から箒に集中する。

 しかし箒は焦りを見せる事なく、イグニッション・ブーストを連発してシャルのミサイルから距離を取ると、二本の刀にエネルギーを循環させてバツの字に剣を振り抜いた。

 

『はァッ!!』

 

 すると放たれたエネルギーが今度は斬撃ではなく数十個の塊となり、紅い閃光を瞬かせながらミサイルを追尾して、全て相殺した。

 

『ウソっ!?』

 

 目の前でミサイルが全て防がれ、これにはシャルも驚きを隠せない。そこに束さんの喜びの声が上がる。

 

「うふふふっ、凄いね〜箒ちゃん。もう紅椿を使いこなしてるよ! さっすが私の妹の事だけはあるね〜!」

 

 彼女は足でぴょんぴょん跳ね回りながらディスプレイを確認し、箒の紅椿のデータを収集している。そこへ、我慢できなくなった様にセシリアが割り込んできた。

 

「あっ、あの! 篠ノ之束博士のご高名はかねがねうけたまわっておりますっ。もしよろしければ、わたくしのISを観ていただけないでしょうか!?」

 

「ドントスピぃーーーーーーク!!!」

 

「……っっ!!!?」

 

「ノンノンノーーン! マドモアゼ〜ル? 今束さんは箒ちゃんとちーちゃんといっくんの再会の場なんだよ〜、そういうシーンなのよ〜、黙っててくれるぅ〜? ってゆーか、空気読めぇい!!」

 

「えっ!? あ、あの……」

 

「ま、待てセシリア、一回下がれ。話が進まない」

 

 俺がセシリアの肩を掴んで引き寄せると、彼女は妙に俺に驚きながらそそくさと離れる。

 その時、上空で巨大な爆発が起こり、黒煙の中からシャルロットのラファールが表れた。吹き飛ばされるように出てきたが、なんとか空中で留まる。

 

『ははは、参ったな…………第四世代って言われたから一筋縄じゃいかないと思ってたけど、これは想像以上だよ……』

 

 もくもくと広がる黒煙を切り払い、特に目立つダメージも見られない紅椿を纏った箒が現れる。その表情は束と会っていたのが嘘みたいに明るく、勝機に満ち溢れていた。

 そこへ千冬がオープン・チャンネルを繋げて箒へ連絡を入れる。

 

「篠ノ之、その辺にしておけ。それ以上は試験に影響が出る」

 

『えっ? ……はい、わかりました』

 

 まだまだやるつもりだったのだろうか、箒は少しだけ残念そうにしながら、地上に着陸してISを収納する。待機形態となった紅椿は銀と金の鈴が付いた白と紅の紐を金の金具で結んだ腕輪の姿となった。

 

「うふふふっ♪ 凄いでしょ〜、箒ちゃん。それじゃ、これから紅椿のコト、よろしくお願いね!」

 

「はい……ありがとうございます!」

 

 専用機が余程嬉しかったのか、今まで素っ気ない態度をとっていた箒も、最後は頭を下げて少しだけ声のトーンを高くしてお礼を言う。その様子を見て束さんは一瞬だけ普段のくどい笑顔とは違う、穏やかで、慈愛に満ち溢れた笑みを浮かべていた。

 そして、そう思った時にはもう、束さんはいつものくどい笑顔で今度は俺の方へと近寄ってきた。

 

「次はいっくんだね! ほい!」

 

 そう言って束さんは一回転すると、どこからともなく取り出した待機形態の白式を俺に投げ渡してきた。

 いつの間に白式を渡していたんだと皆の視線が注目する中、それを難なく掴み取って手早く腕にはめ直す。見た目、着け心地、特に変わった所も感覚も見当たらない。

 

「……なんかいじったんすか?」

 

「うーんとね、全体的に反応速度を底上げしといたよ。いっくんの操縦技術じゃ、白式がヒーコラ言ってたからね! あとはメインとサブのブースターとスラスターのエンジンをもっと良い物にしといたから、調整は自分でやってね!! そーそー、ソフトウェアをもっといじれるように拡大しといたよん♪」

 

 どうやら中身は束さんの出来る限り、変えてもらったらしい。後で動かすのも解析するのも、少し楽しみになった。

 更に束さんは俺の白式について、話を続けようとする。

 

「あっ! あとそれとね! 白式が形態移行しない原因なんだけど……」

 

「っ、何かわかったんですか?」

 

 思わず反応した俺に対し、彼女は満面の笑顔で答えた。

 

「わかんない!」

 

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 

 全員の声がハモッた瞬間、束さんは大きな声で笑いだす。

 

「天才であるこの束さんだって、わからない事もあるのだーー!! あーーっはっはっはっはっはははははは♪」

 

 いや、あーっはっはっはっははははじゃないよ、アンタ。

 単にからかいたいだけだったのか、それともわからないという事を伝えたかったのか、束さんはひとしきり笑いなが俺に背を向けて歩き出そうとしたが、すぐに何かを思い出した様に声を出すと、ぐわんと身体を捻らせてまた俺の方へと振り返る。

 

「あぁっと、忘れるトコだった! ……いっくん、こ……これ、受け取ってくださいッ!」

 

 わざとらした全開で腰をモジモジしなが俺に近寄り、束さんは台詞の様に喋りながらどこからともなく取り出したB5サイズの茶封筒を俺に差し出してくる。ラブレターを渡す女の子でも演じているのか、目はキュッとつぶったままだ。周りを見れば白い目をする箒に、頭を押さえる千冬、ついていけなくて冷や汗を垂らして様子を見ているセシリア達。

 ツッコむ気も湧かなかったので、とりあえずは彼女に差し出された茶封筒を両手で受け取った。外から指で触ると、かなり厚みを感じる。でも雑誌ではないっぽい。

 

「なんすか、コレ──

 

 渡された封筒を見下ろしたまま束さんに問いかけようとした直後、俺の顔は束さんの両手で正面に固定され、口元を彼女の唇で塞がれていた。

 

 

 

「「「「「「「!!!!!?????」」」」」」」

 

 

 

 その場にいた女子全員が、言葉にならない悲鳴を上げていた。俺は反応する事もできず、口元が離れた後も半開きの口から声を漏らした。

 

「ぇ?」

 

「バイバイ、いっくん!」

 

 束さんは頰をほんのりピンク色に染まらせたまま、人間とは思えないようなスピードで走ってアリーナの出口へと逃げていった。砂埃が巻き上がって顔に被っても、俺は唐突なキスの余韻にむせる事もできなかった。

 

「「「「「………………」」」」」

 

「あ、あぁ……」

 

 振り返ればそこには、光の無くなった瞳で束が逃げていった方向を見る箒。次の瞬間には燃える様に真っ赤な紅椿を展開して、束さんが逃げていった方へイグニッション・ブーストを発動しようとしていた。

 

「ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

「くぅッ!!」

 

「うわっ!?」

 

「箒さんッ!?」

 

「おいっ!」

 

「お、落ち着いてっ!!」

 

「むぅうッ、ッ!! は、はなせッッ!!!」

 

 俺も、セシリア達も全員でISを展開し、暴れる箒をドッタンバッタンしながら押さえ込む。第四世代とは言え、さすがにこの人数のISで押さえ込まれてしまえば、身動きを取る事もできなかった。

 とにかく全員で箒を落ち着かせようとしていると、どこからともなく携帯電話の音が鳴った。千冬の方を見ると、彼女は片耳を塞ぎながら携帯電話を開いていた。

 

「もしもし…………山田先生? いったい何が………………落ち着いてください……! ……はい…………わかりました。すぐに専用機持ちと向かいますので、準備をしておいてください。では、またあとで……」

 

 紅椿を収納してようやく落ち着いた箒を尻目に、ラウラがレーゲンを収納して千冬のもとに駆け寄る。

 

「教か……織斑先生……?」

 

「何かあったんですか?」

 

 千冬は彼女達の問いかけに答えず、素早く携帯電話をしまって俺達に告げる。

 

「現時刻を以てIS学園は特殊任務行動へと移る。全員、速やかに旅館に戻り、待機している教員の指示に従え。以上だ!」

 

「えっ? いきなりどーゆー事よ?」

 

「特殊任務行動…………まさか、IS関係の事件ですの!?」

 

「今は私からも何も言えない。まずは旅館に戻る事が先決だ、いいな!!」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 千冬の一喝で、俺達は急いで旅館へと走った。

 

「ったく! 少しぐらい説明してくれたっていいじゃない!」

 

「凰さん!」

 

「教官が有無を言わせないのだ。余程重要な事なのだろう」

 

「それか、俺達が全く信頼されてないかのどっちかだ」

 

「まぁ、何があったとしても問題ないだろう、この紅椿があれば」

 

 皆が走っている最中、俺の後ろを走る箒は腕で待機形態になった紅椿を嬉々とした表情で眺めていた。更にその後ろでは専用機持ち達が、不安げな視線で彼女を睨んでいた。

 これから俺達は箒の紅椿の活躍のために、少しだけ束のマッチポンプに付き合わされる事になる。そう考えると俺は手の甲を自分の口元を押し付け、思いっきり拭い去った。後々になって聞かされたが、その時に箒は俺の見えない所でガッツポーズしていたそうだ。

 

 

 

 ・・・☆・・・☆・・・

 

 

 

 千冬からの命令で俺達専用機持ち達は早足で旅館へと戻されるやいなや、ISスーツ姿のまま館内の中でも馬鹿に広い宴会用の大座敷に移動された。部屋に入ると既に千冬はもちろん、山田先生や他の教師陣まで集合していて、俺は妙な息苦しさを感じながら用意されていた座布団の上に胡座をかいた。ヒロイン共は普通に正座だったが、特に姿勢を変えるつもりはなかった。

 最低限の明かりしか点けられていない薄暗い座敷の壁に、大型の空間投影モニターを広げた千冬が俺達の方を見て説明を始めた。

 

「では、現状を説明する。今から1時間ほど前、ハワイ沖で試験稼働を行っていたアメリカとイスラエルの共同開発した第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』 以後『福音』が実験中に制御下を離れて暴走を起こし、国境外へと逃走した」

 

 その内容を聞いた瞬間、険しい顔つきになったのはラウラとセシリアと鈴。代表候補生ではない箒とシャルは内容を整理できず、目を広げて驚いていた。俺は前者でも後者でもなく、千冬の後ろにあるモニターを目を細めて眺める。よくもまあ、アメリカとイスラエルが協力なんかしたな。

 

「その後、衛星で追跡を続け、移動進路を予測した結果、福音はここから数キロ離れた空域を通過する事がわかった。時間はおよそ50分後だ。IS学園上層部からの通達によって、私達がこの事態を対処する。教員は学園の訓練機で空域と海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要である福音の対処は専用機持ちに担当してもらう」

 

 つまり暴走した軍用ISを俺達だけで止めろという作戦である。突っ込みどころ満載であるが、それを問い詰める前に俺は聞きたいことがあった。

 

「なんでアメリカとイスラエルの尻拭いを俺達がやる……?」

 

「質問をするときは挙手をしろ」

 

 即答。俺が鼻で笑って手を挙げようとすると、千冬はもう俺に背を向けてディスプレイの画面を動かし、別の項目を開いていた。

 

「これを見ろ」

 

 そう言って彼女がディスプレイに映し出したのは、福音と呼ばれたISのカタログスペックだった。そしてそのスペックの一部を見て、俺達一同は驚愕する。

 

「おっと……」

 

「こ、これは……」

 

「最高速度2000キロオーバーですってぇ!!? あたしの甲龍より何倍も上じゃないの!!」

 

 鈴が座布団から前のめりになって、悲鳴の様な声を上げる。IS学園ではまず見る事のない速度の数値がスペックには出されていた。

 

「そうだ。このISは超音速にも近いスピードで、今も移動を続けている。アメリカの鈍重な第三世代の量産型では接近する事もままならん」

 

「向こうの国の専用機持ちは?」

 

 ラウラが千冬に問いかけるが、それに答えたのは座りながら別のコンピューターを動かしていた山田先生。千冬は腕を組んだまま座敷をウロウロと歩き始める。

 

「それが……専用機はあるそうなのですが、操縦者が別の仕事についていたせいで、招集に時間がかかるそうなんです……」

 

「そーかい……」

 

 つまり福音に追いつける機体はあるのだが、乗りこなせるヤツがいないのだろう。2つの国ではどん詰まりとなり、たまたま近くにいた俺達に白羽の矢が立ってしまった様だ。

 

「でも、これだけの速度で常に移動してるって事になると……」

 

「私達の専用機でも追いつける者は限られるのではないか? 現に私のレーゲンでは無理だ」

 

「わたくしのブルー・ティアーズのパッケージを高速移動様に組み替えれば追いつけるかもしれませんけども、そう長くは持ちませんわ……」

 

 顎に手を当てるシャル、首をかしげるラウラ、困った様に息を吐くセシリア。互いに意見を交換し合っているようだが、明確な作戦は彼女達だけでは成り立たないようだ。

 

「そうだ。現状、ヤツに追いつくまともな速度を出せるISは……」

 

 そう言いながら千冬は自身の歩みを止めると、未だ座っている箒の方に対面した。

 

「篠ノ之。お前の『紅椿』だけだ」

 

「え? わ、私ですか!?」

 

 名指して呼ばれて困惑する箒。彼女は話についていくのもやっとな様子だった。最強のISがあるとは言え、いきなり実戦は無茶だろう。

 

「超高速に近い速度にも対応出来る様に微調整する必要があるが、それは……」

 

 そこまで喋った千冬が言葉を詰まらせると、不意に座敷の天井の板が開いた。

 

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃジャーン!!! 天才博士篠ノ之束様、再び参上!!」

 

 呼んでねぇし。逆さまになって顔を見せた束は天井からクルリと一回転して座敷に着地する。そこに反応したのは箒。眼の色を憤怒の炎が見えそうなぐらいに凶変させ、座布団から立ち上がる。

 

「ッッ!!!!!」

 

 竹刀も何も持っていなかった箒は、拳を握り締めて束に殴り掛かった。すかさず俺が彼女を羽交い締めにする。

 

「ま、待て箒ッ!!」

 

「なっ、なぜだ一夏ッ!! 何故お前が私を止めるッッ!!?」

 

 箒は俺を振りほどこうと暴れつつ、足を蹴り出してでも束に一撃報いようとしているが、そんな彼女は暴れる箒を恐れもせずに近寄ってくる。

 

「ノンノン! 箒ちゃん、落ち着いて! 束さんの頭には完璧な作戦がナウ・プリンティング☆」

 

 相変わらず神経を逆撫でする言動に箒は眉間を顰めさせたまま束さんを睨む。そこへ山田先生が束さんを捕まえようと立ち上がる。

 

「あっ、あのっ、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」

 

「ん? ISの事ならこの私こと篠ノ之束サマが一番の関係者でしょ?」

 

「え? は、はい……そうですね……」

 

 言葉も腕もするりと躱した束さんは、山田先生を手の平で止める千冬の隣まで移動する。

 

「山田先生、気にしなくていい……作業を続けてくれ。で……束、なんで紅椿がこの作戦に有効なのか説明してもらおうか」

 

「アラホラサッサー!」

 

 どこかで聞いた事のある返事をして束さんは福音が映っていたディスプレイに別のデータを入力すると、画面が切り替わって紅椿のスペックデータが映し出された。

 

「ほらほら見て見て。紅椿はパッケージの換装なんかしなくても、高速機動……う〜んと高速機動形態(ハイスピード・シフト)があるんだよ! 展開装甲があるからこその性能だもんね♪」

 

「は、ハイスピード・シフト……?」

 

「名前は今考えたよ☆」

 

「て、展開装甲……?」

 

「はい説明しま〜す。展開装甲ってゆーのはね〜、IS自体に可変機構を備える事で、攻撃・防御・高速機動、ありとあらゆる戦況に対応できる、第四世代型ISの装備なのですよ!」

 

「ちょっと、その第四世代って事が意味わかんないのよ!!」

 

「ならば解説してやりましょー! 第一世代がISの完成を目的とした機体だね。次が後付装備による多様化を可能にした第二世代。そしてイメージ・インターフェースを利用した特殊兵装を採用した第三世代。ほいでもってパッケージ換装を必要としない万能機というのが第四世代。はい、理解できましたか?」

 

 なんとも簡潔に鈴へ世代別の特性を説明した束は、俺の方を指差す。

 

「ちなみに展開装甲は白式の雪片にも使ってありまーす。試しに私がつっこんだ〜♪」

 

 その言葉で座敷にいた全員が「えッ!?」と驚きの声を上げる。俺も雪片の零落白夜の時に変形する機能を思い返した。

 

「それで上手くいったので、箒ちゃんの紅椿はなんと全身の装甲を展開装甲にしてありまーす! ちなみに雪片より発展させたタイプなので、これでようやく用途に応じて変形させる事ができましたー! これが第四世代が目標にしている即時万能対応機(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)ってヤツだね。やっと完成させる事ができたよ〜、あっはっはっははは〜!」

 

 つまり、紅椿は現時点で間違いなく最強のISであるという事。世界が第三世代の開発を競っている間に、第四世代を簡単に作ってしまったワケだ。驚愕の連続で皆が無言になる中、千冬は頭を抱えて盛大にため息を吐いた。

 

「束、やりすぎだ……」

 

「えへへ、箒ちゃんのプレゼントだから、張り切り過ぎちゃった。てへ♡」

 

 舌を出してとぼけて見せる束さんを無視し、千冬はディスプレイを福音のカタログスペックの画面に戻した。

 

「ところで束、この福音も第三世代としてはかなりの物だと思うが、お前はどう思う?」

 

 ガラリと表情を変えて真面目な顔で福音を見る束さん。

 

「うーん……展開装甲ナシで第三世代にこれだけのスピードを出させるなんて、結構凄いと思うよ? 武装はビーム2種類で……へぇ、浮遊ユニット使わないのは、本体の最高速度に耐えられないからかー。でも、デザインはちょっと気に入らないかなぁ……」

 

 真っ当な意見を述べながらデザインだけ批判した束さん。俺はそんな彼女の背中越しに、ディスプレイに映る福音の姿とデータを観察する。

 その見た目はいつぞやの事件で見た全身装甲(フル・スキン)。しかし人としての形は保っており、配色は白っぽい銀一色で配色され、兵器と呼ぶには格好がヒロイックだ。浮遊ユニットがなく、IS本体と同じぐらいデカい3つのブースターが背中に翼の様に繋がっていた。内、真ん中のひとつがメインブースター兼、ビームの主砲。左右の2つが補助ブースターとビームの副砲を担っているそうだ。

 

「広域攻撃を主体にした、強襲型……まるで爆撃機の様ですわね」

 

「射撃と機動力にガン振りした機体ね。あたしの苦手なタイプかも……」

 

「エネルギー兵器はマインスロアータイプとチャージレーザータイプ…………どっちも防御が難しそうだね」

 

「ん……このデータ、格闘性能が載ってないぞ。近接戦闘は想定されてないのか?」

 

 福音のデータを見ながら様々な意見を考察するヒロイン達に、千冬が補足をしていく。

 

「ちなみに、今見せているのは最重要軍事機密だ。情報が漏洩したら査問委員会による裁判と最低でも二年間の監視がつけられる。だから絶対に口外するなよ?」

 

 おい待て、それを見せてから言う? 皆はほとんど察していた様子で反応はあまりなかったが、ほとんど会話に参加できていない箒が一番驚いている。

 そこへ束は俺達を見渡しながら、のんきに別の話を始める。

 

「それにしてもアレだね〜。海で暴走ってゆーと、白騎士事件の事を思い出すね〜!」

 

 白騎士事件とは簡単に説明すると、日本を狙って発射された2000発以上のミサイルをたった1体のISが全て撃墜した事件だ。各国は持てる軍事力を持って正体不明のISを捕獲しようとしたが、それも全てIS自身に阻止され、悠々と逃げ出した。この一件のせいでISは世界で最強の兵器になれる事を示してしまい、それを動かせる女性に利権が広がってしまった原因を作ってしまったのだ。

 

「うふふふふ……白騎士の正体は誰だったんだろうね〜、ちーちゃん」

 

「さあな」

 

 白騎士は間違いなく千冬の事だろう。彼女に何があって束に協力したのかは知らないが、どうせロクでもない事に違いない。

 ちなみに……この事件の内容、原作ではほとんど明示されていない。これもほとんど本編で絡む事もなかった話だからな。

 

「話が脱線したな……他に何か質問はないか?」

 

 もう頭痛でも起こしているんじゃないかってぐらいに頭を押さえながら、千冬は俺達に再度問いかけてきた。

 

「もう一個質問いい?」

 

 今度は彼女の言っていた通りに手を挙げて答えようとしたが、千冬は随分と胡散臭い目で俺を見ている。ロクでもない質問をしてくるのを、察しているようだ。

 

「なんで学園はわざわざ引き受けた? 理由は福音と俺達との距離が近かったからだけじゃないだろう?」

 

「わ、私達に利点はあるのか?」

 

 俺の質問に被さる様に問いかけてきた箒に対し、千冬はため息を吐いて呟くように答えた。

 

「わかっていると思うが……この福音の暴走自体はまだ世間に公表はされていない。だがこのまま暴走している福音が一般人を巻き込む事故などを起こせば、アメリカやイスラエルだけでなく我々まで不利益を貰う事になるだろう」

 

「不利益……?」

 

「僕達が?」

 

 なにやら一筋縄ではいかないような内容となり、ラウラやシャルも反応を示す。そこまで話して皆の注目を集めた千冬から全く聞いた事のない単語を聞く事となった。

 

「反IS組織……『FALCON』」

 

「えっ!?」

 

「っ!!?」

 

「…………」

 

「簡単に説明すれば、ISのせいで立場を失った男共で構成された、ISの廃止を扇動し、女性優遇を批判する、反社会組織だ」

 

 この世界のSNSで聞いた事のある組織の名前だった。原作には全く存在もしなかった、この世界がリアルだからこそ見えてしまった、ISに……女尊男卑に反旗を翻している組織。

 

「その組織とこの事件に何の関係がありますの……?」

 

 すぐに質問をしたのはセシリアだった。

 

「IS学園は未だに尻尾すら掴めていないが、もし福音の暴走を公にされては、奴等はこの事件を盾にISの廃止を騒ぎ立てるに決まっている。そうなったらIS学園すら、因縁の対象にしてくるかもしれない」

 

 傍迷惑な話だ。ISを滅ぼす奴等にとって、IS操縦者を育成するIS学園も粛正の対象なのだろう。

 

「それに、私達がこのまま福音を黙って見過ごすと、ヤツは日本領土を通過する事になる。パニックじゃ済まんぞ…………自衛隊の兵器ではコイツは止められないし、この国じゃ国防にISを配備してないからな」

 

 つまり今日本を守れるのはISで対抗できる俺達だけなのである。ある意味そちらの方が真っ当な理由だと思った。

 

「わかったな?」

 

「わかった」

 

 嫌でも理解させられたよ。それだけ答えて俺は背伸びをする。

 どうやら思った以上にややこしい事が絡んでいるらしい。これ以上掘り下げても今の俺にはどうしようもないので、ここからは福音との戦いについて考える事に決めた。

 

「あ、あの……私が質問しても……」

 

 そこまで置いてきぼりにされていた箒の質問を皮切りとし、本格的な作戦会議が始まった。

 作戦開始まであと30分しかない。

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