では、すたーと
俺はなにを求めていたのだろう。
俺はなにがしたかったのだろう。
俺は昼間しとしとと降り注ぐ片時雨に濡れながら冷える心と体を抱くようにして考えていた。
『人の気持ちちゃんと考えてよ!』
『貴方のそのやり方嫌いだわ。』
俺は俺の最善を尽くし、最善手と取れる方法を取った。自分が自分を認めるための合理的手段としての自己満足ともいえる。
何かを得るためには何かを捨てよ。
その何かを得るために何かを捨ててしまったのなら俺はどんなに愚かなのだろうか。
俺は俺をどれだけ憎めばいい?
その問いにだけは答えることができない。俺が俺であるために一生懸命に考え出した結論なのだから。
俺は自分を嫌いになれない。
遮光カーテンから漏れる朝日に濡れて、本当に濡れたような気分で、起き上がる。
途端にキシンとベットが軋み、その音を煩わしく思いながら、窓辺に寄る。
だらーと、しながらも窓の外を見て、あぁ少し曇っているなと思いながらも、それは自分の心情を表しているのではないかとも思った。
答えは見えてるのに、いつまでも晴れない。それが正解ではないと分かっているからいつまでも素直になれない。
そんな気持ちが、俺の中で垂れ落ちる。
どんなになっても変わらない。その瓶にはまだ溢れんばかりの蟠りが溜まっているのだろう。
俺にできることは何か、そんな承認欲求の塊みたいな答えを目前にひたすらに走っていた俺はなんだったのか。
だから、その俺の心とも取れる瓶には未だ理性の化物が疼いている。
背後に据える悲劇を知らず、俺は足を進める。
間違った答えであれど、進むしかないのだ。
空にはいつの間にか、雨が降っていた。
豪雨と見受けられるその雨には、なにが灯っていたのだろうか。
俺は時間を一見し、ベットに座る。
俺の手にもつヘルメットのようなゲーム機に電源が付く。
ゲームはこの時点でcontinueだ。
負け続けた俺がゲームの中で勝てると本気で思っているのか?
俺はいつまでも負け続ける。だから、俺がゲームをするのは気休めだ。そこに何かあるとは思わない。
雪ノ下らとの蟠りは自分で作ってしまったものだ。だが、解決するには時間がかかる。膨大な時間が。俺を俺足らんとする立ち直るための時間が。
必要であって必要でないのだ。
分かっている。自分が間違っていると。
だから束の間の休息として
俺はゲームをするのだ。
「と言っても、ゲームが始まるにはまだ早い。小町にご飯でも作ってもらうか」
開始時刻は一時だったはずだ。今の時間は10時30分。時間はまだある。
もう少しゆっくりしていたいが、気分はそうではない。何かをしていないと気が済まない。何か落ち着かない気分。
小町はおそらく一階でテレビでも見ているのだろう。この時間帯はいつもそう過ごしていることだろうと思う。
階段を降り、木が軋む音を疎ましく思いながらも一歩一歩を踏み締める。
「小町。ご飯まだ残ってるか?」
「残ってるよ。お兄ちゃん、今日は起きるの遅かったんだね」
小町は俺の言葉にはにかみ笑いをしながら、優しく言ってくる。
「この時間帯は休日だと早い部類だと思うがな」
「ふふっ、お兄ちゃん的にはそうかも。いっつも12時過ぎとかだもんね。」
「ああ。むしろ褒めて欲しいくらいだわ」
「わー、その謎の自信はちょっと引くけど。お兄ちゃん。今日はどう?」
「大丈夫だよ。俺は大丈夫だから。お前は心配しなくてもいい。」
「心配するよ。小町はお兄ちゃんの妹なんだから。だから、今は何があったのかは聞かないことにするよ」
「そうしてくれると…………あ…ありがたい……くっ………ぁぅ」
涙が溢れる。その滴には雪ノ下らへの思いと、俺への自責感で埋まっていた。
こうやってみっともない姿を小町に見せていることをなんとなく恥ずかしく思いながら、朝食を取る。
すると、
「ふふっ、小町はお兄ちゃんが一番苦しんでいることを分かっているのです。だから、素直になりな?小町は素直なお兄ちゃんの方が好き。」
「……くっ………な、なんだよそれ。俺はいつも素直なはずなんだけどな」
「ううん。お兄ちゃんが素直になったことなんて一度もないよ。いつも一歩引いてつまらない自己解釈垂れながら斜め上の結論を出す」
「分かってるよ。そんなこと」
「だけどね、そこには優しさが溢れてるの。だから、私は好きなんだ。」
「あ、ああ。あ?」
「だから、私はお兄ちゃんが大好き。多分素直になったお兄ちゃんは今の数億倍好きになるんだと思う」
「え?ちょっと、は?」
意味がわからない。え?兄弟として、だよな?その意味でなら理解できなくもないけど。それ以上の意味では言ってないよな。
お兄ちゃんこれ以上重い物は背負えないよ?
「答えは出さなくていいよ。分かってるから。お兄ちゃんは、目の前の問題と向き合って。私の気持ちなんて後回しでいいから」
「そんなの後回しにできるかよ。お前が俺を好きだってことは知らなかったけど、俺は元々小町のこと大好きだぜ?」
「ぶぅー、小町の方がお兄ちゃんのこと大好きだもん!それこそお兄ちゃんより!」
「いいや、俺の方が大好きだね」
「小町の方が!」
「「ぷっくくくく、あっはっはははははははは」」
二人一緒に一頻りに笑い出す。それこそ今抱えてる全ての問題を吐き出さんばかりに、笑い出す。
そして、笑い合った後、少し曇っていた表情を小町に向ける。
「なぁ、素直になっていいのかな?」
「いいよ。小町はお兄ちゃんの全てを受け止めてあげる。だって小町はお兄ちゃんの妹だよ?当たり前じゃん!」
そうやって、小町のそばに寄っていき、小町の小さな華奢な体を抱き寄せるような形を取り、
「う、うわあああああああああああああ。ああああああああああ」
泣き出す。豪快な泣きっぷりに小町は少しも引くことなく、背中を揺する。撫でて、励ますように。刻む。
「大丈夫だよ。小町がいるから。吐き出して。全部」
そして、俺は昨日あったことを全て吐き出した。俺が悩んでいた、俺が見て見ぬふりをしてきた、最大で重大な思い。
全て、全てを小町にぶつけた。
小町は押されることも、揺らぐこともなく、ただただ、受け止めてくれた。
この作品は全体的な構想、終着点、具体的ストーリー構成等考えてないことが沢山ありますが、全て、現実で起こり、それに向き合うといった体でお送りしたいので、それに付き合ってくれる方だけお願いします。大衆受けを狙わないというのは一種の逃げとも取れるかもしれませんが、手抜きでも逃げでもないので、ご理解いただけるとありがたいです。
暗い気持ちを抑え、華やかに終われるよう頑張ります!
ではではー!