「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第12話 初ゲットチャレンジ

 その瞬間、シロウの頭の中に前世で培った目の前のポケモンの情報がかけ巡る――。

 

 チルット……確かノーマル・ひこうタイプ、進化したらチルタリス。そうなるとドラゴン・ひこうタイプになるポケモンだ。耐久は前世のランクバトル基準で並み程度、火力はかなり残念。そんな性能だから剣盾環境には全くいなかった。

 

 しかし、メガシンカが可能なポケモンだ。ゲームでは廃止されたがこの世界にはある。メガシンカをすればさらにタイプは変わり、ドラゴン・フェアリーという唯一無二の独特なタイプに変わる。そうなると、高耐久に火力も備わる――。

 

 高速で行われた思考は続き、ものの10秒ほどで答えを出した。

 

 アリだ……。

 

 希望していたドラゴンタイプだけどチルットか……なんてことも思ったけど、この世界では種族値なんかより育て方とかトレーナーとの絆でポケモンの強さは決まる。優秀なドラゴンタイプというだけで価値がある。

 

 そして何よりムサシからもらったキーストーンと……何より何よりそのポケモンの可愛さがシロウを動かした。

 

 シロウにとってチルタリスは前世で見た目が好きという理由から愛用していたことがあるポケモンだった。

 

「あのポケモンは……チルットだニャ」

 

「ニャース。俺あのポケモン捕まえる」

 

 シロウは腰に付けたモンスターボールを手に取り、ヒトカゲを繰り出す。

 

「カゲー!」

 

 よしっ。相手がいる状況で投げるのは初めてだったけど上手くいった。……それでええと、次はどうすればいいんだ。

 

 バトルする為にヒトカゲを繰り出したのはいいものの、シロウは次にどうするべきか悩んだ。こちらに気付かず、ほのぼのと跳ねるように移動しているチルットへいきなり攻撃をするのは気が引けたのだ。

 

「何してるニャ。捕まえるならさっそくバトルだニャ」

 

「チル?」

 

 と、そのニャースの声でチルットもこちらを向く。すぐにバトルを挑まれているのを察したようで、いかくするように羽を広げる。

 

「チルット。俺お前を捕まえたいからバトルしてくれ。いくぞ」

 

「チルっ」

 

「ヒトカゲ。ひっかく攻撃!」

 

 シロウの指示からヒトカゲとチルットのバトルが始まる。ヒトカゲがチルットに向かって爪を振り抜く。

 

 しかし、その攻撃は飛び上がってひらりと躱された。

 

「もう一発いけ」

 

 そのままジャンプして繰り出したヒトカゲのひっかくはチルットに命中する。

 

「右に躱せ!……ひのこだ!……もう一度ひのこ!……」

 

 チルットとのバトルはかなり拮抗したものになった。あまり強くなさそうな見た目だけれどチルットの動きは素早く、空からの攻撃は鋭い。一進一退の攻防が続いた。

 

 指示を出したりするのが難しかったり恥ずかしかったりということは無かった。もうこの世界に来てから随分経つ。毎日のように見たポケモンバトルの映像でそんなことは当たり前になっていた。

 

「チルー!」

 

「カゲー!」

 

「大丈夫か。ヒトカゲ」

 

 お互い消耗してきた時に、りゅうのいぶきだろうか。チルットの口から放たれた赤紫色の光線がヒトカゲにヒットしてしまった。

 

「カゲっ!」

 

 しかし、ヒトカゲは傷つきながらもすぐに立ち上がってシロウの目を見る。

 

「よしっ。よーく狙ってひのこだ!」

 

 シロウも気持ちを込めてヒトカゲに指示を出した。その結果今日一番の炎がヒトカゲの口から放たれて渾身の一撃がチルットに命中した。

 

「よし。今だ」

 

 飛んでいたチルットが地面に落ちて怯んでいる。ゲットのチャンスだと思った。

 

 …………。

 

 しかし、シロウからモンスターボールはしばらく投げられなかった。

 

「うわあ。どのボールにしよう。迷うな」

 

 旅立ち祝いにもらったボールコレクションを開いてどのボールを投げるか迷っていたのだ。柄が違うモンスターボールを眺めて、一つ一つチルットが入った姿を想像していた。

 

「シロウ!早くするのニャ!今がチャンスニャ!」

 

「よし!これに決めた!」

 

 選んだのは真っ白なプレミアボールだった。初ゲットのプレミア性と、チルットの白い羽とのデザイン的な相性が理由だ。

 

「いけ」

 

 トレーナーになれない間、いつもやっていたモンスターボールを狙った相手に当てる特訓のおかげでプレミアボールは綺麗にチルットへ当たった。

 

 チルットを光にして吸い込むと地面に落ちるボール。そして、1回……また1回と揺れ始める……。

 

 ああ、緊張する。でも、味わったことのないこの上なき喜びの予感。

 

 長く感じたボールが揺れる時間……。最後はスイッチが切れるような機械音と共に揺れが止まる。

 

「やったー!」

 

「チルットゲットだニャ!」

 

 チルットが入ったプレミアボールに駆け寄って拾い上げる。今この時の喜びは一生忘れないだろうとシロウは思った。

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