「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第13話 決意表明

 初のゲットチャレンジに初のゲット成功……。

 

 チルットが入った分とそれらの喜びの分の重みがあるプレミアボールを握りしめて、シロウはだらしなくにやけていた。

 

 初めてポケモンを捕まえたっ……捕まえてしまったぞ……俺はやったんだ。

 

 チルット……いや、チルタリスと言えば第6世代ORASでよく使ってたっけ。モッコモコの容姿が気に入っていくつかの型を育成した。レートで使っていたのは基本的にどくどくはねやすめを搭載した耐久型、通称毒羽型だった。

 

 バシャーモやリザードンのメガXY両方を受けられるのが強かったと記憶している。受けルが苦手とする技範囲を持つポケモンにも数多く役割を持てるので、受けルの1ピースとしても使われていた。

 

 そんな過去の対戦環境のことが自然と頭に浮かんでくる。懐かしくて楽しいことだ。ポケモンに関してはバリバリオタク傾向。シロウはそんな人間だった。

 

 そして、今世ではこれからどんな姿をチルットは見せてくれるのか……。

 

 シロウは少し歩いて森の中にちょうどよく開けたスペースを見つけると、プレミアボールの中から早速チルットを出した。

 

「チル」

 

 ボールから出てくるチルット。そのモコモコの羽には少し焦げた部分があった。

 

「あ、ごめんよ。大丈夫」

 

 それに気づいたシロウは急いでリュックからキズぐすりを取り出した。チルットの先程のバトルで傷ついたであろう部分にスプレータイプのキズぐすりを吹きかける。

 

 とは言ってもさすがはポケモン。炎を受けたというほどの傷は残っていなくて、軽い傷口もキズぐすりを受けるとみるみるうちに消えていった。

 

 シロウが手当てをしている間、チルットはじっとしていた。ただそこにいて、シロウのことを見ていた。

 

「よし。これで大丈夫かな。もう痛くないだろ?」

 

「チル……」

 

「えっと……」

 

 手当が終わった後もチルットはシロウのことを刺すように見つめ続ける。真っ直ぐな瞳だった。たぶん、自分を捕まえたトレーナーを品定めしているんだとシロウは思った。

 

 シロウはその眼差しへの返答に迷ったがとりあえず、愛情を注ごうかと手を伸ばした。その時、チルットは突然機敏に動き出す。ぱっと姿勢を正して、シロウに向かってお辞儀をするように頭を下げる。

 

「チルチル!」

 

「ちるちる…?」

 

「よろしくお願いしますと言ってるニャ」

 

 隣のニャースが翻訳してくれる。

 

「そうなのか」

 

「チッチル。チルチルチッチル。チルッチ」

 

「私は誰かに捕まえてもらうのが夢だった。ありがとう。と言ってるニャ」

 

「へー。そうだったんだ」

 

「ポケモンにも色んな奴がいるけど、人間が好きな奴の中にはこういうトレーナーのポケモンになりたい奴もいるのニャ」

 

「そっか」

 

 シロウは止めていた手を動かして、チルットを抱きかかえた。羽の綿がもこもこしていて抱き心地が良い。

 

 トレーナーのポケモンになりたかったとは良い性格のチルットだ。何てかわいい子なんだ。

 

「こちらこそこれからよろしくな。チルット」

 

「チル!」

 

 

 初日にして新しい仲間を迎えたシロウ一行はその場でお昼ご飯にすることにした。

 

 天気の良い日に森の中でキャンプセットを取り出し、ヒトカゲに手伝ってもらって火を起こすとシロウは調理に取り掛かった。

 

 薪が燃える焚火の音と香ばしい匂いの中、あれやこれやと食材や道具と格闘すること1時間ほど。旅に出てからの最初の食事は出来上がる。

 

 メニューは前世でも大人気で剣盾のゲーム中にも出てきたカレー。生の食材をリュックに入れて持ってきた初日ならではの特別なものだった。料理には自信が無いのでこの先はわざわざ具材とルーからは作らないと思う。

 

「おーい。できたぞー」

 

 少し離れたところで遊んでいるニャース、ヒトカゲ、チルットの3匹のポケモンを呼ぶ。もう仲良くなったらしい3匹が横一列で料理の元まですぐにやってくると、頂きますまではあっという間だった。

 

 何しろ遅刻したので今日は朝からまだ何も食べていない。ヒトカゲとチルットはともかく、シロウとニャースは腹ペコだった。

 

 軽くと手を合わせると早速口に運ぶ。

 

「おお。なかなかうまいニャ」

 

「カゲカゲ」

 

「チル」

 

 具材の大きさがバラバラで、見た目はお世辞にも良いと言えないけれど自作カレーの味はそこそこだった。剣盾的に言えばダイオウドウ級だとかなんとかのそんなところだ。

 

「そういえば、チルットはどうしてこの辺にいたんだ?マサラの近くでは1度も見たことなかったんだけど」

 

「チルチルッチ。チルチルチル――」

 

 くちばしに少しカレーが付いたチルットは羽を動かしながら説明するように喋った。

 

「ニャース。翻訳頼む」

 

「旅に出てからどういう道を進んできたかは覚えていないから、ここがどこだかも知らない。ただ風が気持ちいいほうにずーっと飛んでいって、途中飛行船の上で眠らせてもらったこともある。だとニャ。呑気な奴だニャー」

 

「チルット1匹で旅を?」

 

「チッチルル。チルチルチッチ――」

 

「昔から強いポケモンに憧れていた。だって強いポケモンはかっこいいから。私はとっても強いポケモンになりたい。その為にはトレーナーに育ててもらったほうが良いと思っていた。だとニャ」

 

「なるほど。じゃあ責任重大だな」

 

 チルットは嬉しそうな鳴き声をしていた。純粋でなかなか人懐っこいチルットである。

 

「でも君がそういう夢を持ってるならちょうど良かったよ。俺の夢も強いトレーナーになることだから」

 

「チル!」

 

「それも世界で1番のな――。ちょうどいい、ヒトカゲもちょっと聞いてくれ。これから俺たちはポケモンマスターとその手持ちポケモンになる旅をしていく。行く先々で仲間は増えていくだろうけど、ここにいる俺たちはその初期メンバーだ」

 

「カゲ」

 

「チル」

 

「ニャースでニャース」

 

 1人のトレーナーと3匹のポケモンは各々の手を前に出して合わせる。トレーナーの手は小さく、ポケモン達の手はもっと小さい。

 

「困難もあるだろうけど皆で頑張って行こう!行くぞ!――」

 

 

 森の中の広場にまだ幼い一行の声が響く。とても順調な滑り出しだった。

 

 しかし意気込んだはいいものの、昼食を終えて歩き出したシロウは道に迷ってしまい、トキワシティへ着くのにも時間がかかってしまうことになるのであった……。

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