「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」 作:木岡(もくおか)
「はあ……やっと着いたニャ」
「ふう……。思ったより遠かったな。トキワシティ」
トキワシティに到着したシロウとニャース。入り口から少し奥へ入った町通りを並んで歩く。
マサラタウンよりはずっと都会で家の数も多いし、近代的なビルもある。程よく発達した景色。すれ違う人の数も多い通りだった。
「ふう……じゃないニャ!シロウのせいでひどい目にあったのニャ」
「悪い悪い。どうしても冒険するのが楽しくって」
旅立ってからはもう丸一日が経っての到着だった。チルットを捕まえるところまでは良かったものの、そこからあっちへ行ったりこっちへ行ったりの旅路であった。
それというのも、シロウが何かを見つけては好奇心を抑えられなくて飛び出していたからだった。茂みが少し揺れただけでも後先考えずに走り出す。浅い洞窟や小さな池ですらも新しいポケモンとの出会いがあるかもしれない気がして。
遠回りは大きな遠回りになって、旅の初夜は野宿となり、そんな経験も全てが面白くって。
けれど、結局特にこれといった成果は得られずに。疲れただけだった。
「全く旅立ちからこんなのじゃ困るのニャ。ニャーはついていけないのニャ」
「お。ポケモンセンターが見えて来たぞ」
「まずはゆっくりお風呂にでも入りたいニャ」
正面にボールのマークが付いた赤い屋根の大きな建物。目指していた建物が前方に見え始める。
この世界のポケモンセンターはトレーナーにとってとても便利で優秀な施設であることは言うまでもない。ポケモンの体力回復やケガの治療のための医療施設であることはもちろん、旅をするトレーナーにとっても身を休める場所が提供してもらえる宿泊施設である。
多くのトレーナーは新しい町に着くと、まずポケモンセンターに立ち寄る。
「いらっしゃい。ポケモンの回復ですね」
「は、はい。よろしくお願いします」
あまり傷ついている訳ではないけれど、自動ドアを抜けたシロウはヒトカゲとチルットが入ったボールをそれぞれ正面の受付で渡す。その時初めて拝んだ生ジョーイさんに対して少し緊張しながら。
「そちらのニャースは預からなくて大丈夫ですか?」
「ニャーは大丈夫ニャ。シロウと一緒に奥で休むのニャ」
「まあ。ニャースが……喋って……」
「すみません。ご飯食べれるところはどっちですか?」
喋るニャースに驚く流れを遮って、シロウとニャースはポケモンセンター内のレストランに向かった。
「それにしても懐かしいポケモンセンターなのニャ。サトシとピカチュウに初めて出会ったのもここだったニャア」
街の中でも当たり前に喋っているけれど、ニャースは本来なら全方位から注目を集める存在である。今日トキワシティに着いてからここへ来るまでもすれ違う人が何度かニャースのことを不思議そうに見ていた。
シロウは常に珍しいポケモンがいないか探しているけれど、本当に珍しいポケモンは常に隣にいる。
ポケモンセンターでは食事をしてからシャワーも浴びさせてもらった。美味しい食事に、暖かいシャワー。初めてのポケモンセンターという景色と、疲れた身体が癒されていくことに幸せを感じる。
そうしながらもシロウの頭の中では、大半をこの先の計画が占めていた。
ヒトカゲとチルットという今の手持ちは凄く良い。進化すればどちらも空を飛べるようになるし、空を飛べるのはそれだけでバトルがとても有利になるはずだ。
それはシロウが考えていたバトルに勝つための持論の1つだった。
だけど、現状ニビジム挑戦を目指すならどちらもいわタイプに効果バツグンをとられてしまうからちょっときびしいな。やっぱり昨日見つけたニョロモにあっさりと川の中へ逃げられたのは痛かった。
みずタイプがほしいけど水の中のポケモンを捕まえるのって結構大変……。
ヒトカゲ達の回復を待つついでに休憩して、それが終わるとボールを再び受け取ってジョーイさんに礼を言う。
そこでシロウは忘れないうちにカントーリーグへの参加登録を済ませておくことにした。ポケモンセンターで自分の図鑑を渡せばすぐに終わる手続きだ。
「よろしくお願いします」
「はい。マサラタウンのシロウさんですね。さっそくトキワシティのジムに挑戦するんですか?」
「え。あ、はい」
その時シロウははっとした。そういえばトキワシティもジムがある街だ。
ゲームでもアニメでも最初のジムはニビシティというイメージが強くて見落としていた。トキワシティにもジムがあるじゃないか。
「はい。参加登録が終わりましたよ。頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
でもまださすがに経験値が足りないよな。今バトルの経験もないまま行っても勝てないだろう。どんなジムリーダーかも知らないし。そう思いながらジョーイさんから図鑑を受け取る。
「今日はちょうど誰でも参加できるバトルの大会も近くで開催されているので、そちらもお時間があれば行ってみてはいかがですか」
「へー。そうなんですか。どうも」
ジムは置いておいて、そっちはちょっと行ってみたいとすぐに思ったシロウはジョーイさんが手で差す掲示板から詳細を仕入れると、そこを目的地にポケモンセンターを後にする。