「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第16話 謎の少年

「これって今2回戦とか?」

 

「いや、今から準決勝だけど……」

 

 場違い全開少年はシロウが返事をする前に隣の席に座った。

 

 見たところシロウと年も背丈も変わらないその少年。髪は茶色の短髪……短髪ながらくせ毛が凄くて、モワモワしている。見つめる目が澄んでいて、肌はシロウの白い肌とは正反対にがっつり日焼けした小麦色だった。活発さが第一印象で伺える。

 

「準決勝……そんなに遅刻してたかあ。俺も大会出るつもりだったのに。夢中になりすぎちゃったな」

 

 隣に座った少年はがっくりと肩を落とす。

 

 準決勝というタイミングで観客席に入ってくること自体は別におかしくもない。上位の試合だけが見たいのであったり、予定があってこの時間からしか観戦できなかったのであったり。

 

 ただ、参加受付時間からは随分時間が過ぎているというのに参加できなかったことを全力で悔やんでいるのは一体どういう思考なのだろうか。自分のようにギリギリで間に合わなかったのなら分かるけど、聞き間違いでなければなかなか天然な少年だ。

 

「その2匹は君のポケモン?ヒトカゲにチルット」

 

「そうだよ」

 

「そっちのニャースも?」

 

「まあ、そんなところかな」

 

「うわあ。いいなあ。かわいいなあ」

 

 少年は落ち込んでいたのをすっと切り替えて、抱いているヒトカゲ達に顔を近づける。

 

「君の名前は?」

 

「俺はシロウ。えっとマサラタウンのシロウ」

 

 なんとなく発した言葉は一度言ってみたかった自己紹介だった。

 

「シロウか。俺はクリオ。トキワシティのクリオだ。よろしく」

 

「うん。よろしく」

 

「いや俺さ。今日この大会に出て優勝するつもりだったんだけど、朝からポケモン探しに行ったら夢中になって遅刻しちまったよ」

 

 クリオと名乗った少年は馴れ馴れしく話しかけてきた。

 

「こないだ10歳になってポケモンゲットできるようになったのが嬉しくって、毎日朝から晩までポケモン探しに冒険してんだ。チョー幸せ」

 

「こないだ10歳ってマジ?俺もついこないだ10歳だよ。つーか昨日」

 

「ほんとかよ!俺は1週間前くらい!」

 

「くらいってなんだよ。誕生日だろ」

 

「じゃあシロウもポケモンゲットし始めたばっかか。めちゃくちゃ楽しいよなポケモンと一緒にいれるって」

 

「うん!楽しい!」

 

 変な奴だと思ったけれど、お互いの共通点を見つけたことでシロウも一気に心が開けた。マサラでは近くに同年代の子供もいなかったし、初心者トレーナーとこうして話すのも初めてだから嬉しかった。

 

「バトルは!?バトルはもうやったことあるのか?」

 

「いや。まだない」

 

「そっか。俺もまだなんだよなあ。でも、俺最強のトレーナーになるって夢があるんだ。強いトレーナーになりたい」

 

「そこも同じ!俺も強いトレーナー目指して旅に出たんだ。夢はポケモンマスター」

 

「マジかよ。俺達共通点ばっかじゃん」

 

「ついでに言うと、今日大会に遅刻して出られなかったのも同じ」

 

 2人は顔を合わせて笑った。

 

 どんなポケモンが好きかだとか、クリオの手持ちにはどんなポケモンがいるのかだとか聞きたいことが一気に頭に浮かんでくる。

 

 しかし、話が盛り上がり始めたタイミングで眼前のフィールドのバトル大会準決勝はスタートした。

 

「第10回トキワシティフラワーカップ準決勝第1試合、バトル開始!」

 

 片方のトレーナーがカメックスを、もう片方のプレイヤーがバンギラスを繰り出してバトルが始まる。準決勝ともなると見るからに強そうなポケモン同士のバトルとなった。

 

「お、始まった!」

 

「そうだな」

 

 シロウとクリオはお互いを見ていた状態からすぐに視線をフィールドに向けて固定する。

 

「すっげえ迫力。見てるだけでワクワクするな」

 

「うん、本当に。熱くなってくる」

 

「シロウは最初のほうからこの大会見てたの?どんな感じだった?」

 

「ああ。ずっと見てたけど、この大会強いトレーナーもたくさん出場してたよ。今残ってるあの2人も凄かった」

 

「――でも、俺が出てたら俺が優勝してたんだよな。絶対に」

 

 カメックスとバンギラスがお互いの技を躱したり受け止めたりで相手の力量を計るような序盤の攻防が繰り広げられる。まだどちらもダメージとなるような攻撃を与えられない。そんな中、隣のクリオが大きな言葉を口にした。

 

 ちらりと見たその横顔、自信ありげに口角を上げていた。冗談ではなく真剣に言っている表情。

 

 こいつも初心者なんだよな。この謎の自信一体どこから……。と、やや子供っぽいと微笑ましく笑う気持ちで目を細める。

 

「シロウはこのカメックスとバンギラスの勝負どっちが勝つと思う?」

 

「そうだな……。タイプ相性的に有利なカメックスじゃないか」

 

「ふーん。俺はバンギラスだと思うな。あのバンギラス良く育てられてる。それに加えておそらく今日は絶好調と見た。タイプ相性なんてひっくり返せるね」

 

 クリオがそんなことを言った次の瞬間だった。バンギラスのストーンエッジがカメックスにクリーンヒットする。

 

 そして、バンギラスが追い打ちをかける為にカメックスに突進した。バンギラスはカメックスの大砲から放たれる水の抵抗を受けながらもそれをものともせず接近してカメックスにかみつき、勝負は決まる。

 

 続く準決勝2匹目のバトルではカメックスを出していたトレーナーがカイリキー、バンギラスを出していたトレーナーがドリュウズを繰り出してバトルが始まった。

 

「このカイリキーとドリュウズどっちが勝つと思う?」

 

 そのバトルでもクリオはシロウにこう問うた。

 

「やっぱカイリキーじゃないかな。効果バツグンをつけるし」

 

 そこでもシロウはタイプ相性通りの回答をそのまま答えた。しかし……。

 

「いや、ドリュウズが勝つね。一目で分かるよ」

 

 クリオがまた口角を上げる。そしてその言葉通り、カイリキーとドリュウズのバトルは、ドリュウズがバトルを支配する形で危なげなく勝利する形となった。

 

 さらにクリオのその問いはなんと、準決勝第2試合でも続けられて、全てにおいてクリオが勝つと予想したポケモンが勝つという結果になった。

 

 第一印象でかわいらしい初心者トレーナーだと舐めてしまっていたが、まさかこういう奴に限って実際は超天才だったというパターンか……。シロウは驚愕した。タイプ相性上不利やフラットな対面でも勝つポケモンを言い当てるその目に……。

 

「なあこの後暇ならさ、俺とバトルしようよ。シロウ」

 

 そして準決勝終了後、クリオはそう言ったのだった。




・後書き

昨日お気に入りが500を超えたと喜んでいたら、さっき見たところもう580になっているではありませんか!

また嬉しくて続き書いちゃいました。やっぱり読んでもらえるとモチベになりますね。ありがとうございます!
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