「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」 作:木岡(もくおか)
ジムリーダー……。この世界の各街に君臨する凄腕のトレーナー達だ。街の名を冠したジムというバトル施設で旅する挑戦者を待ち受け、自分を負かしたトレーナーにバッジを授ける。
そのバッジが各地方リーグ参加券となり、地方ごとに8つのバッジが必要だ。
リーグチャンピオンを目指しているシロウにとっては旅の道中で倒していかなければならないトレーナーであり、それをスルーすることはできない。
それぞれのジムリーダーは基本的に1つのタイプを極めたトレーナー達で、さらに基本的にこの世界では超有名な人物である……。
「まずは何といっても俺の兄ちゃん。カントー最大のジムで最強のジムリーダーと呼び声高いテンシン。はがねタイプの使い手でとにかく超強くてかっこいいんだよな。この街では知らない人はいないぜ」
「そうなんだ。カントー最強か……」
聞きながらスマホを操作すると、カントージムリーダー一覧的なサイトが手元の画面に表示される。
「そう。己に厳しく、他人にも厳しい兄ちゃんはチャレンジャー皆倒しちゃうんだぜ。鍛えられたはがねタイプのポケモンは如何なる攻撃も受け付けない……あと、隣のニビシティのジムリーダーはタケシで……そのさらに向こうのハナダシティのジムリーダーはカスミ……」
それは知ってる……心の中でつぶやく。そして同時に「おほっ」みたいな気持ち悪い声も心の中で言った。
スクロールしていくと知っている名がスマホの画面に表示された。タケシにカスミ、よく知っている名だ。前世で何度も目にして耳にした。そうか、彼らに会えるのか……。
そして続いて、マチスにエリカとさらに知っている名が後に続く……。
「おい何だ何だ!?どうして急にそんなにやけてるんだシロウ!?」
「え!あ、いやワクワクするじゃん。これから戦う強いトレーナーの情報見ると。ほら全員のジムリーダーが載ってるサイト見つけてさ」
よだれをすすって誤魔化す。自分でも気づいた時の顔はもの凄くだらしなかったことは見なくても分かる。
だってそうじゃないか。これはやばいだろう。
見たところクリオの兄であるらしいテンシンというジムリーダー以外は前世で知るカントージムリーダーから変更が無かった。
「そうか。あとは電気タイプが得意なマチスに草タイプ使いのエリカ。あ、タケシはいわでカスミは水な」
「ニャーはそいつらに会ったことがあるのニャ」
そこからの説明は大体知っていることであったが、知らないふりをしながら聞いたし、本当に知らなかったくらい興味津々で話を聞けた――。
「もう外が暗くなってきたな。これからどうする?」
クリオのポケモンの回復が終わって返却が済むと、外を見ながら言った。
「シロウはどうするんだ?」
「俺は今から外へ出るのは大変だからこのままポケモンセンターに泊めてもらうかな」
「そっか。じゃあ俺もそうしようかな」
「え。クリオはトキワシティに住んでるんだろ?」
「うん。でもシロウとまだ話したいし、ポケモンセンターに泊まるのをこれから旅に出る前に経験しとくのもありかなって思ってさ」
「じゃあ一緒に泊まるか。俺もそっちのほうが楽しいし」
ということになってその夜はクリオと同じ部屋に泊まって過ごすことになった。
クリオが親に電話をして、宿泊の登録を終えると部屋に入った。ちょうど空いていた2人部屋。飾りっ気のない本当に眠るだけに用意されたような部屋だったが、出会ったばかりの友達とのお泊りとなるとテンションが上がった。
ジムリーダーについての話の続きからポケモンの話題中心の雑談は寝るまで尽きずにお互いのことをよく知る時間となった……。
「――それでさ兄ちゃんは旅に出てから2年後にはもう地元で有名なトレーナーだったんだよな。超天才児。俺も小さい頃から憧れてた」
「おミャーはテンシンが大好きなのニャ。さっきからその話ばかりなのニャ」
「ああ。憧れさ……って、え!?ニャースが喋ってる!?」
「今さらかよ……」
そんな笑いどころを挟みながらの雑談でクリオの口から話されるのは兄の事ばかりだった。
テンシンは17歳という若さでジムリーダー(まあタケシとかカスミも相当若くしてジムリーダーだったが)という超天才。聞くところによるとかなり硬派で厳しい性格で、クリオに見せてもらった写真でも兄弟で同じ茶色い癖っ毛ながら鋭い目をしていてその性格が伺えた。
どんなチャレンジャーにも手加減はしないらしく、チャレンジしたトレーナーがジムバッジを入手できる確率はカントーで最も低いというデータがあって、兄信者のクリオの誇張ではなくカントー最強のジムリーダーであった。
そしてそのことから多くのトレーナーはここトキワシティのジムを7つ目とか8つ目の後半で訪れるらしい。
何度も聞かされてテンシンの情報もよく覚えた。
「でもいつかは兄ちゃんも超えるトレーナーになってみせるんだ。カントー地方を一周して戻ってきた暁には真っ向勝負してやるぜ」
「そうか。頑張れよ」
「シロウは?もしかしていきなり兄ちゃんに挑戦するつもりか?」
「いや、そうだな。俺も後回しにするかな」
そういった情報を踏まえてシロウもこれからの旅の道順を決めた。就寝時にベッドに入ってから詳しく。
詳しくと言っても元々知っていた道順。つまり前世のアニメやゲームと同じだ。主人公たちが歩んだ道のり。そっちのほうが分かりやすくてワクワクする。彼らが出会ってきたトレーナー達にこれから会いに行こう。