「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

3 / 20
第3話 伝説のトレーナー

 その日も10万ボルトの電流を浴びせられた日だった。少年はまだ手の先と足の先がひりついて体の自由がきいていなかった。全身から力が抜ける。ポケモンで言うところのまひ状態みたいなところだろうか。

 

 檻の中で倒れていると、突然サイレンの音が空間を埋め尽くす。床に寝転んでいる自分の体に音の振動が骨まで響いた。それほどに大きな音だった。

 

 檻の外では危険を示すらしい赤いランプも点滅し始めている。体を起こして外を見ていると、すぐに壁の向こうも慌ただしくなった。

 

「シンニュウシャアリ!シンニュウシャアリ!」

 

 施設内に機械音声で緊急アナウンスが繰り返された。

 

 これは救世主が来てくれたのではないか。すぐに思った。転生したのに一生檻の中ではあんまりじゃないか。きっとそうだ。

 

 檻の中で手を編んで体を震わせながら、その時がくるのを待つ。誰かから救いの手が差し伸べられる時を。

 

 時間と共に勢いを増す壁の向こうの騒がしさ。希望している通りの侵入者であれば、自分の運命が全てここで決まってしまうほどの出来事だ。待っている間は気が気じゃなかった。

 

 そしてその時はきた。爆発で吹き飛ぶ檻が並ぶ部屋のドア。煙と共に誰かが部屋へ入ってきた。

 

「ピカチュウッ。アイアンテール」

 

 騒ぎが起こってから少年が入る檻の前に最初に現れた人物は聞き覚えのある声をしていた。連れているポケモンも含めてよく知っている人物だ。

 

 ピカチュウのアイアンテールによって檻が破壊される。間近で見るそれはすごい迫力で……そして聞きなれた声の人物が檻に入ってくる。

 

「君、立てる?すぐにここから逃げ出すんだ」

 

「……あ、あなたは」

 

 痺れた体をどうにか立たせながら言った。

 

「俺はマサラタウンのサトシ。君達を助けに来た。さあ、行こう」

 

 顔にも見覚えがあるその人物は思った通りそう名乗った。マサラタウンのサトシ。誰もが知ってるポケモンアニメの主人公。その人だ。

 

 しかし、自分よりも随分背が高い。研究員の奴らと同じ大人の体だった。一体どうして。

 

 そんな考察をしている余裕は少年には無くて、差し伸べられた手を握った瞬間に安心で体の力が抜けてしまい、そのまま目眩で意識が飛んでしまいそうになった。

 

「おい。大丈夫か。リザードン。この子を頼む……ピカチュウは別の檻も壊すんだ」

 

 やっと触れることができたポケモン。リザードンの暖かい体皮に包まれると、少年はそこで気を失った――。

 

 

 ――再び目覚めた少年の背中には冷たいコンクリートではなく、暖かい布団があった。近くの窓から差し込むのは陽の光。1年以上もの間それを見ていない少年には目が眩むほど眩しい。

 

 明るさに目を慣れさせながら自分が寝ている室内を見渡すと、そこには雰囲気の良い木造の一室があった。

 

 ああ……どこなのかは分からないが……助かったらしい。

 

 少年はベッドから下りて部屋の出口を目指した。もう体の痺れは取れている。どのくらい寝ていたんだろうか。

 

 部屋を出て道沿いに階段を下りる。そこでの景色を見ると前世でポケモンファンだった少年はすぐにここがどこだか分かった。

 

 一般的なリビングの隣には様々な装置が並んだ研究室。通信用の大きなモニターもある。昔アニメのエンディング後で見た景色だ。

 

 そこにはそのシーンでポケモンと川柳を読む博士もいた。隣には少年を救ったサトシというトレーナーの姿も。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。