「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第4話 オーキド研究所

 ここはオーキド研究所だ。それが分かった途端、辛かった実験体生活から解き放たれたということもあって涙が出そうになった。

 

 やっぱり自分は助かったんだ――。

 

 オーキド博士とサトシは1つの装置を見ながら何やら話していた。サトシの肩に乗るピカチュウがまず少年に気づいて「ピカ」と言うと、サトシとオーキド博士も少年に気づく。

 

「君、目が覚めたのか。良かった。ってかまだ寝てなきゃダメじゃん」

 

 サトシが目の前まで来て声をかけてくれる。

 

 その体はやっぱり大きい。雰囲気も大人びていた。知っているサトシとは違っている。大人と言ってもおじさんというほどではない、20歳前後の青年といったところか。

 

 でも本当にほんまもんのサトシだ。やばい興奮する。

 

 奥に見えるオーキド博士も知っている人より少し老けて見える。シワの数が増えていた。

 

 言うまでもなく、ここはゲームの世界というよりはアニメの世界。しかも状況から察するに前世で視聴していた時よりいくらか年月が経っている世界ということでいいのだろうか。

 

 だとしたらこの世界への興味は計り知れない。

 

「まだロケット団のアジトからここに運び込まれて1日も経ってないのに。休んでなきゃ」

 

「…………」

 

 オーキド研究所という景色からの感動で少年は何も言えなくなっていた。こんなに素晴らしいものはない。

 

「どうした?お腹すいてるのか?」

 

「……いや」

 

「ほらついて行ってやるから一緒にベッドまで戻ろうぜ。あとで食べ物も持って行ってやるよ」

 

「そうじゃな。まだ休んどかなきゃいかん。ほら、行こう」

 

 オーキド博士も傍までやってくる。

 

 

 少年がベッドに戻されると、しばらくしてサトシは約束通り食べ物を運んできてくれた。パンとシチューだった。アニポケ界ではよく食べられている気がするそのメニューを少年は頂いた。

 

「それ食って早く元気になれよ」

 

 サトシはご飯を食べる様子を傍で見守っていてくれた。相棒のピカチュウと一緒に。

 

「元気になったらいつか俺とポケモンバトルしようぜ。君はポケモンに興味あるか?」

 

 そう言ったサトシはとてつもなくかっこよく見えた。元から将来イケメンになりそうだったけれど、間近で見た大人のサトシは本当に……。

 

 その言葉に少年は無言でうなずく。すると、サトシは隣にピカチュウを置いてくれた。

 

 そっとピカチュウの頭に手を乗せて撫でると、ピカチュウは嬉しそうに「ちゃー」と鳴いた。

 

 ……言葉にならなかった。幸せ過ぎて。一時はどうなることかと思ったがこれは勝った。柔らかくて黄色い体を撫でながら思う。

 

 ロケット団の実験体だったけれど、この世界の主人公とも言える人に助けてもらえてオーキド研究所に保護された。これはツモった。大勝利だ。オーキド博士の優しさも知っている。

 

 助かって、これからこの世界の楽しさを味わえると思うと本当に声にならない。しかもあのサトシやオーキド博士とリアルに交流できるなんて。嬉しすぎて言葉が詰まる。そういう理由で少年は声が出せる状態ではなかった。

 

 興奮を抑えるのにただ息を呑むのでせいいっぱいだ。

 

 ご飯を食べてもう1晩眠ると、少年は風呂に入れて貰ったりもした。研究所内にある浴室で。優しい研究員に。体調の検査や甘い木の実も食べさせてもらった。

 

 ずっとロケット団のアジトに囚われて実験体にされていた可哀そうな少年に誰もが優しかった。サトシもオーキド博士もその助手をしている正しい研究者達も……。

 

 風呂の中の鏡、そこで初めて今の自分の顔を見たけれど、やはりアニメとかCG顔だった。顔面偏差値的には普通かイケメンよりだろうか。アニメで言うところのちょっとかっこいいモブって感じか。いやメインキャラをはれなくもない。

 

 髪色は白というか銀というか。これは実験の影響かもしれない。他にも実験体であったせいで細くて肌が白いという特徴があった。

 

 手足を含めて動いているのが不思議な感じがした。これがこれからの自分の体かと。鏡で見て改めて転生したという実感が湧いてきた。

 

 ポケモンが当たり前にいる研究所で少年はその至福を味わった。ただ申し訳ないのは、少年が悲しい境遇で喋れないのだと周りの大人に哀れの気持ちを抱かせてしまっていることだった。

 

 喋るよりもこの世界をもっとじっくり見ていたい。実験体だった少年がいきなり元気に話し始めるのも不自然だから、この低いテンションで最初にいってしまったし、しばらく心の中で謝りながら実験体だった少年を演じることにした。

 

 体質からかここに来て最初に目覚めた時点で疲れはほとんど消えていたのだけれど、傷も治っていないふりをして。大人しくしておくにした。

 

 あとはしばらくして回復したという認識をされた時に自分がどういう待遇になるかだ。昼食まで頂いて再び戻されたベッドで少年は考えた。

 

 悪いようには決してされないだろう。どこかの保護施設に預けられるのか、サトシやオーキド博士の知り合いの家にでも引き取られるのか。どちらにせよトレーナーになることはできるだろう。

 

 このままオーキド研究所のお手伝いをするなんかでも最高だ。ポケモンマスターを目指す旅にでなくてもポケモン達に囲まれてのどかに暮らすのでも悪くない。

 

 どう転んでも勝ち。本当にこれからの人生が楽しみでしょうがない。そう思っていた少年は数日後、思いもよらぬ人物のもとに引き取られることになる。




ちょっとこの4話が個人的に上手く書けなかった気がするので後日書きなおすかもしれません。
内容に変更はありませんが文の構成のほうを直します。

すぐに直せって話ですが早く続きを書きたいので。
内容が伝わりづらかった方はとりあえず「主人公は助かってオーキド研究所に来たよ。サトシとオーキド博士に出会ったよ」ってだけ理解していただければ…。
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