「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」 作:木岡(もくおか)
オーキド研究所での生活は1週間ほど続いた。時が経つとともに少年は今の自分に慣れて、周りの大人やポケモン達に明るく接するようになった。
毎日のようにオーキド博士は研究所にいるポケモン達を見せてくれた。小さいポケモンから大きいポケモンまで。色んなタイプや色んな性格のポケモン達。さすが博士なだけあって様々な知識を披露しながら。
このポケモンは機嫌が良いとこうなるとか、愛情を持って育てられるとこんな風に育つだとか。アニメやゲームの図鑑で聞いたことがあるようなポケモン豆知識だ。
見せてくれたポケモン達に少年はフィーリングで勢いのままアタックした。抱きつきたくなったら抱きつくし、触ってみたいところがあれば遠慮せず触った。どのポケモン達に触れる時もその感触に感動がある。
少年は知識というか人格は前世のものであったけれど、その場の感情とか欲求は子供らしいものが湧いてきた。あふれ出る好奇心は我慢することができなかった。前世の子供の頃の記憶なんてほとんどないが、低い背丈から見る景色はこんなに輝いていただろうか。
たまにポケモンが嫌がる所も乱暴に触ってしまうものだから、何度かポケモンを怒らせてしまって技を食らってしまうこともあった。各ポケモンが得意なポケモンらしい特殊技や、シンプルに体当たりみたいな物理技。
それらを食らってもすぐに元気になる少年にオーキド博士や研究員たちは少し驚くような表情をしていた。
笑顔で見守ってくれているんだけど、ポケモンの技を食らうと心配して駆け寄ってきてくれる。ある時はたくさんいるケンタロスの突進にあったり後ろ足で蹴られたり、またある時はコンパンやゴースからサイケこうせんやシャドーボールみたいな特殊なエネルギーをぶつけられり。
「大丈夫。全然平気です」
その度に、すぐに立ち上がってそう言った。強がりではなく本当に痛くなかった。
サイケこうせんは強く大きく体を揺さぶる電気みたいで、シャドーボールは反発する重力の塊みたいで見た目より重く衝撃がきた。当然痛い。けれど痛みのピークから5秒ほど経てば元通りになる。凄い再生力が自分の体にはあった。
大人たちの心配ぶりを見る限り、やっぱり自分は普通ではないのだろう。それはたぶん考えなくてもロケット団の実験体であったからだ。一体どういう実験を施されていたのか。
大人になったサトシも少年の様子を見に何度か研究所まで会いに来てくれた。
「ありがとうございます」
少年がサトシに向かって最初に発した言葉はこれだった。命の恩人に向かって精いっぱいの感謝を伝えた。
「気にすんな」
サトシは一言そう言ってくれた。
この大人サトシ、聞くところによると今ではカントー地方のチャンピオンになっているらしい。オーキド博士から聞いた話だ。なんならカントーだけでなくいくつかの地方のいくつかの年度でチャンピオンに輝いている。彼のことを夢だったポケモンマスターと呼ぶ人もいるとかいないとか。そう聞いた。
会う度に今までの旅の思い出とか、ポケモン達と培った絆の話を聞かせてくれた。その中にはポケモン映画の話なんかも交じっていてりしてテンションが上がることがあった。
「俺もポケモントレーナーになりたい。なれるかな?」
少年は言った。
「なれるさ。でも10歳になってからだな。君はまだ9歳だろ。だからもう少し我慢。10歳になったら一緒にゲットしにいくか」
「約束だよ」
「ああ。約束だ」
記憶的には大人だけれど、気持ち的には子供。自分は少年であるという意識があった。だからサトシには憧れ、お兄ちゃんのようにも思えた。
約束の印にサトシは帽子をプレゼントしてくれた。デザインはサトシがアニメの初期にカントー地方やジョウト地方を旅していた時の物だった。それは自分の宝物になった。
そんなある日、この日もサトシが少年の様子を見に来ていた日だった。
少年は撫でさせてもらっていたピカチュウがあまりにも可愛くて不意に尻尾をぎゅっと握ってしまった。するとピカチュウが驚いて頬から電流を流す。
「大丈夫か。ピカチュウの尻尾をいきなり握っちゃダメって前にも言っただろ」
「あははは。痺れる。でも大丈夫です」
自分が悪いのだけれど、ピカチュウもピカピカと鳴いて謝る。
「でも不思議だよな。ピカチュウの電撃を受けてもへっちゃらだなんてまるで俺みたいだ」
「そうですね。たしかに」
「それはそうと、今日は君に会いたいって奴らが来てるんだけど会ってくれるかな」
「僕に会いたい人?誰ですか?」
そこまで言うと、少年が寝ている部屋のドアが開いて、またもやアニメで見たことのある人物たちが中に入ってきたのだった。
「なんだかんだと聞かれたら……」
「答えてあげるが世の情け……」