「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第6話 ムサシ、コジロウ、ニャース

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーなカタキ役」

 

 おなじみの口上を発しながら気取ったポーズを取るのは、正にムサシとコジロウだった。生で見るムサシのとんでもない髪型が目を引く。そしてドアのところにはニャースも自分の番まで待機していた。

 

「ムサシ!」

 

「コジロウ!」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

 

「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてな!」

 

 最後にびしっと決めた2人と1匹の後ろには、実際にはないけれどロケット団のRのマークが現れた気がした。

 

 それを見ると思わず、拍手をしてしまった。一応敵キャラの登場なので不穏な状況だというのに。

 

 それというのも、正にロケット団ではあるが来ている服はロケット団の制服ではなかったという理由がある。普通の私服だ。サトシも身構えていないし、だから遠慮なくポケモンファンには嫌いな人がいないであろう人気悪役の生の姿に目を輝かせた。

 

 だけど、これは一体どういう状況だろうか……。

 

「おいお前らは“元”ロケット団だろ。それにそんなこといきなりこの子に言っていいのかよ。お前らこれから……」

 

 隣のサトシが興味深いことを口にする。元ロケット団だって……少年は驚く。

 

 そしてもっと驚きの言葉がムサシの口から放たれる。

 

「これから引き取って保護者になろうって子に1発目から嘘はつけないでしょうが」

 

 ムサシの言葉にコジロウと喋るニャースが頷く。その次はロケット団全員で自分の方を見た。

 

 理解が追い付かない。ムサシ達がこれから自分の保護者になるだ?どういう経緯なのか想像も……。

 

「おミャーはこれからニャー達と一緒に暮らすのニャ。おっと挨拶が先だっニャ。ニャーはニャースで、こっちがムサシとコジロウだニャ」

 

 ニャースが自分のベッドに上ってきて話しかけてきた。額の小判が光を反射して光る。

 

「どうしたニャ……いや驚くのも無理はないかニャ。喋るニャースほど珍しいポケモンもいないからニャ」

 

 そりゃ初見であれば喋るニャースに関しても驚くだろう。アニメでもよくある展開だ。だけどそれよりも気になることが、今の少年の立場で聞いてみていいか。迷った結果、聞くことにした。

 

「この人たちが僕の保護者ってどういうことですか?」

 

 サトシに向かって聞いた。サトシはどう言うか迷ってる感じだった。大人だった経験が記憶にあるから分かる。答えは知っているけど子供にどうやって言うか考えてる感じだ。

 

「それはワシから話そう」

 

 するとその時、オーキド博士も部屋に入ってきた。

 

「まず君はここにいるサトシと警察の活躍で悪の組織から救われたわけじゃが、それにはこのムサシ君、コジロウ君、ニャースの活躍も大きかった。そして、君の保護者になる人物を探している時に1番に手を挙げたのも彼らじゃ」

 

 オーキド博士が話し始める時にロケット団達は軽く頭を下げていた。何かしらの経緯でオーキド博士ともそんな関係らしい。

 

「けれど……彼らは実は元ロケット団。君を実験体にしていた組織に所属していた時期がある。数年前に足を洗ってからは、いき過ぎた研究をするようになったロケット団を解体することに協力してくれていたんじゃが、そういう過去がある。その過去のおかげでロケット団の秘密アジトの場所が分かり君は助かったとも言えるが……」

 

 オーキド博士もまた言葉を選ぶようにして話した。俯瞰的に見れば確かに子供に話すようなことではない。

 

 けれど、周りの大人たちの心配とは裏腹に少年の心の内はウキウキだった。なんだその興味を引かれるロケット団の未来は。

 

「ロケット団アジトの制圧作戦がひと段落した今、彼らは自分たちの罪を償うために今後も社会貢献に従事することを約束してマサラタウンの郊外に住むことになっておるのじゃが、君の預かり先が決まっていないのを知ると私たちにやらせてくださいと頼み込んできた」

 

 そのくらい聞いたところで話の流れは大体分かった。そして答えも決まった。イエスだ。

 

「だけど、それは君が決めるべきことだと思う。ちゃんと事の経緯も知って。君の将来のことだ。君の意見が尊重されるべきだ。ワシとしては彼らと接してきて根は善人だと分かっておるから、彼らの誠心誠意罪に向き合っていくという気持ちも汲んであげたいが、君が嫌なら別を当たる。研究所で暮らしたいというならそれも考える」

 

 分かりました。ぜひこの方たちと一緒に暮らさせてください。そう思った。せっかく手にした第二の人生、その道は珍しい道であればあるほどきっといい。あのロケット団と暮らすなんていう予想だにしなかった提案は願ってもないことだ。

 

「すまんな。本当は早く忘れたほうがいい過去を思い出すようなこんな話すべきじゃないんだが」

 

 そこまで言うと、オーキド博士は目配せして元ロケット団に話を振った。

 

「ごめんなさい」

 

 元ロケット団の3人はまず初めにこちらに向かって深々と頭を下げた。

 

「君に会ったらまずこうしようと思っていた」

 

「私たちがいた組織のせいで辛い思いをさせてしまって本当に申し訳ないと思ってる」

 

「ニャーもこの通り謝るニャ」

 

 元ロケット団の3人は息の合った謝罪をした。

 

「俺達、ほんとどうしようもない奴なんだけど、精いっぱい努力するから」

 

「私たちの手であなたを必ず幸せにするから、あなたを預からせて欲しい。君の成長を見守るのは私たちの役目だと思うの」

 

 頭を下げて伸ばされた2人と1匹の手を少年がいっぺんに握ると、元ロケット団の3人は喜びの声をあげた。目にはうっすら涙を浮かべて。

 

 こうしてなんとムサシ、コジロウ、ニャースと一緒に暮らすことになったのである。

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