「ポケモン世界に転生したらロケット団の実験体だったけど幸せです」   作:木岡(もくおか)

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第7話 名前と夢

 かくして、自分が所属していた組織の被害を受けた子供は自分たちの手で見守りたいという元ロケット団の強い希望により少年はムサシ、コジロウ、ニャースと暮らすことになった。

 

 そして、その話が決まった次の日にはマサラタウン郊外にある一軒家に少年はやってきたのである。

 

 本当に今世の自分はもの凄い境遇で、この世界はもの凄い展開だ。

 

 オーキド研究所の研究員の1人に送ってもらって目的地までやってくると庭先で出迎えたムサシに少年は引き取られたのであった。時刻は夕方のことである。

 

「ほら。あがってあがって。これが今からあんたが暮らす家よ」

 

 周りには木と山しかないところに一軒家がぽつんとあった。どうやら新品ではなくて敷地は広いけれど1階建ての家。けれど、庭先にはちゃんと柵があり窓から見えるカーテンも綺麗で、きちんと管理されているようだった。

 

 その家にムサシの後について入ると、中も外見と同じように片付いていた。

 

「結構いいとこでしょ。私もついこないだここで暮らし始めたばかりだけど、気にいってんだ」

 

 ムサシは玄関から一番奥の部屋まで少年を案内した。そして、そのドアを少年が開くとクラッカーが少年に向けて放たれた。

 

「いらっしゃーい」

 

「いらっしゃいニャ」

 

 リビングらしいその部屋ではコジロウとニャースが笑顔で待っていた。4人掛けのテーブルには料理も用意されている。

 

「今日はあんたの歓迎パーティよ。私たちが腕によりをかけて作った料理を好きなだけ食べなさい」

 

「私たちってほとんど俺が作ったんだけどな……」

 

「うるさいわね。私もやったじゃない。お皿運んだり」

 

「ニャーも手伝ったニャ」

 

 あ、これ尊いやつだ……。

 

 昨日から楽しみにしていたが、やってきて30秒で少年はやはりと思った。あのロケット団達が田舎で一つ屋根の下、平和に暮らしてるなんてどう考えても尊い。

 

「いただきます!」

 

 テンションが上がった少年はテーブルに座ると元気よく言った。

 

「めっちゃおいしい!」

 

 そして食べた料理は驚くほど美味だった。歓迎パーティというだけあっていくつか料理があるけれど、どれもこれも美味しい。

 

「ほんとおいしいわね」

 

「コジロウ腕をあげたニャ」

 

 ムサシとニャースもがっついていた。

 

「今日は朝から料理の下準備をしたからな。食材も俺のへそくりを使ってなるべくいい物を仕入れてやった」

 

 コジロウは食べる前に周りの反応を見て嬉しそうに胸をはる。

 

 しばらく料理を食べてはコジロウの腕を褒めるというやり取りが続いた。確かにさすがコジロウ、器用である。コジロウだけでなくロケット団自体色々と器用で事あるごとに多様な分野で才能を見せていたし、バイトなんかもしていたっけ。

 

「そういえばおミャーの名前は何ていうニャ?」

 

 そんな中、ニャースがふとそれを聞いた。

 

 少年もずっと思っていたことである。この世界で自分は何と名乗って、何と呼ばれればいいのだろうか。

 

「名前……ないんですよね」

 

「そうなのニャ!?」

 

「はい。だから皆さんに付けて欲しいです」

 

 前から引き取られた先で保護者になる人に付けてもらえると考えていたし、少年はそれをせっかくなのでムサシ達に決めてもらいたかった。

 

「名前か……」

 

「名前ね……」

 

 ムサシ達は食べる手を止めて、少年の名前を考え出した。

 

「いきなり名前を付けるって難しいな」

 

「これからは私たちの家族だから、ムサオとか」

 

「それじゃムサシだけの子供みたいじゃないか」

 

「じゃあ、あんたの名前も取ってムサシとコジロウだからムサ……コジ……えっと……」

 

「最後の文字を取ってシロウはどうだ。これなら自然な名前だし」

 

 それを聞いた時、少年も何かピンとくるものがあった。1回聞いただけで気にいった。髪色も白だし。

 

「シロウ!それが良いです!」

 

「ほんと?じゃあ私もそれでいいわ。今日からあんたは……」

 

「待つニャ!それじゃニャーの要素が無いニャ!」

 

 ニャースが椅子の上に立って主張する。

 

「あんたの名前も入れるの。じゃあ……スシロウ?」

 

「スシロウじゃ変だろ。ちょっとおいしそうだけど」

 

「いーや考えてみるニャ。将来この子が自分の名前に引かれてお寿司屋さんになったとするニャ。そしたら保護者のニャー達はお寿司が食べ放題ニャ」

 

「悪くないわね」

 

 ムサシ達は寿司を想像したらしく、上を向いてよだれをすする。しかし……。

 

「シロウでお願いします」

 

 少年はきっぱりと言った。スシロウなんていう回転寿司チェーン店みたいな名前は嫌だった。

 

「そう言うならやっぱり俺が提案したシロウにしよう」

 

「そうね。本人の希望が重要だわ。じゃあやっぱり今日からあんたの名前はシロウね。よろしくシロウ」

 

「納得いかないニャ」

 

「うるさいわね。あんたの名前が悪いのよ。それと……シロウ、私たちに敬語はやめなさい。これからは家族なんだから。私たちを呼ぶときは呼び捨てでいいわ。あんたがそう呼びたかったらパパ、ママでも」

 

「うん。分かった」

 

 そうして名前が決まったシロウと、ムサシ達元ロケット団との生活が始まった……。

 

 

 国か警察か、その辺の組織から提案されたらしいムサシ達の暮らしはマサラタウンという自然の多い町の近くでの仕事だった。

 

 コジロウは朝から夕方まで木を植えたり、伐採して加工したり、つまりは林業だった。作業着で出かけて行って服を汚して帰ってくる。

 

 ムサシは午前中は近くの畑を手伝い、午後からは女のムサシは家事に励むことになっていた。洗濯やら掃除に、料理もコジロウが担当していたのは初日だけで、以降は基本的にムサシの仕事だった。

 

 何もすることが無くて自由なシロウの遊び相手はもっぱらニャースが任されていた。シロウはいつもニャースと一緒だった。

 

 シロウとニャースの暮らしは大体、近くの森にポケモンを探しに行ったり、テレビでポケモンバトルの映像を見たりというものだった。シロウが望んだことだった。

 

 他にはポケモン図鑑を見たり、いつでも遊びに来てもいいと言われたオーキド研究所まで行ってポケモンと触れ合ったり。家事の手伝いもできるだけしようとするけれど、ムサシとコジロウは「子供は遊んでなさい」といつも言う。

 

 チャンピオンとして大きなスタジアムでバトルするサトシの様子もニャースと一緒に観戦したりもした。

 

「おミャー将来はポケモントレーナーになりたいのニャ?」

 

 ポケモンやバトルに興味津々のシロウにニャースは聞いた。

 

「うん。俺10歳になったらポケモンを連れて旅に出たい。それでサトシみたいなチャンピオンになってみたい」

 

 シロウは色々考えたけれどやっぱりそういう答えを出していた。ポケモンを連れてこの夢の世界で自分だけの冒険をしてみたい。そして、この世界のバトルを早く経験して……それから極めてみたい。

 

 やっぱりそうと思ったのは前世での1番のポケモンの楽しみ方はゲームでガチンコのランクバトルに挑むことだったからだ。

 

 知識的な自信はある。何しろ毎世代プレイ時間がカンストするほどプレイしていたのだから。




・後書き

 すぐにジム巡りになると言っておきながら、導入の部分が思ったより長くなってます。すみません。次話からはポケモンランクマガチ勢が転生した話感が出てきて、もう2、3話で主人公が旅立てるかと思います。
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