【完結】米ソ異世界代理戦争――1946年・大日本帝国陸海軍最後の戦い――   作:河畑濤士

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■26.航空前哨戦。

「なんだこいつは」

 

 偵察機材を搭載した二式複座戦闘機屠龍の直掩に就いていた宮中は、機上で呻いた。

 眼下には無数の車輛が連なっている。

 中戦車、軽戦車、装甲車輛。

 輓竜に牽引された火砲もある。

 目についたのは車列だけではない。

 エルマ村から200㎞と離れていない場所には、簡易飛行場の造営が進められていた。

 おそらく被弾した航空機のための緊急着陸場か、足の短い襲撃機や前線戦闘機を配備するためであろう。

 そして敵歩兵が潜む塹壕は、エルマ村の方向へ確実に延伸されていた。

 

 宮中が地表の様子を窺えたのは、僅かな時間のことであった。

 偵察機から任務完了の報告を受けると、宮中ら護衛の零戦4機は西へ機首を転じた。

 敵地上部隊は対空火器を備えていないため脅威には成り得ないし、敵機が妨害してくることもなかったので楽な仕事であったが、ここまで敵の優勢なる陣容を見せつけられると、当然ながら士気は振るわない。

 

「軍団規模を誇る敵が一大攻勢に出ようとしていることは明白。近接航空支援任務は勿論のこと、後背地の戦術爆撃に注力すべし」

 

 偵察機から敵情の報告を受けた教導航空飛行隊司令部は、即時の航空攻撃を決定した。

 目標は第一に飛行場である。

 前線付近の簡易飛行場は勿論のこと、双発爆撃機が配備されている既存の飛行場も攻撃する。

 制空権は空中戦の勝利によって得られるものではなく、敵航空機が発着する地上拠点を潰して初めて確保されるものである。

 が、これに関しては敵方(てきがた)が一歩先んじていたらしい。

 

「山脈を西側へ越えんとする敵機多数」

 

 空中哨戒任務に就いていた警戒機が警報を発した。

 エルマ村以西へ侵入しようとする機影を、目敏く発見したのである。

 8機のソ連製双発爆撃機は4機ずつの小隊となり、時速約500㎞の速度で王国軍教導団の前線飛行場目掛けて突進した。

 新たに迎撃機を上げる時間の余裕はない。

 ただ地上要員を退避させることしか出来なかった。

 

(やらせるかよ)

 

 王国領東部上空の空中哨戒にあたっていた二式複座戦闘機屠龍4機が、南西の方角からこの爆撃機隊に向かった。

 この四機は機首に37㎜機関砲、機体背面に上向き20㎜機関砲を装備した所謂丁型であり、攻撃面で言えば日本軍機の中でもかなり高い部類に入る機種だ。

 しかしながら屠龍の最大速度は時速500㎞程度であるから、敵双発爆撃機に追いつき、射撃の好機を得るのは容易ではない。

 屠龍が十分に接近する前に、敵爆撃機隊は前線飛行場の上空で爆撃を開始した。

 対空砲火や戦闘機の迎撃を恐れたか、高度を保ったままに小隊単位での水平爆撃を行ったため、被害は滑走路の中央に一発着弾する程度に留まった。

 対する屠龍隊は、爆撃を終えて北東の方角へ飛び去ろうとする敵の一小隊にようやく食らいつき、一応の復讐を果たした。

 2機撃墜。

 1機は37㎜機関砲による射撃を受け、右主翼を完全に破壊されて機体のコントロールを失い、もう1機は下方から上向き20㎜機関砲の射撃を受けて空中で四散した。

 

「機体と人命に損失がなくて幸いだった」

 

 王国軍教導団は航空基地を複数設けていた上、この攻撃の標的となった前線飛行場の滑走路もまた数時間で復旧したため、大勢(たいせい)にさしたる影響はない。

 が、その後も敵双発爆撃機による航空攻撃は続いた。

 GHQ軍備縮小局のバックアップを受けている王国軍教導団ではあるが、対空レーダーの配備までは間に合っておらず、敵爆撃機隊の察知は地上に設けられた監視哨と哨戒機頼みであり、迎撃が遅れることもあった。

 

 勿論、教導航空飛行隊司令部も黙っているわけではない。

 すぐさま有効な対策手段を採った。

 前述の通り、敵飛行場に対する爆撃である。

 まず手近な敵前線飛行場へ一式戦闘機に護衛された九九式軽爆撃機の編隊が殴りこみをかけた。

 管制施設と思しき急ごしらえの建物と、滑走路のど真ん中に航空爆弾が直撃したのを目視した操縦士らは、すぐに機種を西方へ転じた。

 Yak-3が出てきた場合、九九式軽爆ではとても振り切れないためであった。

 

 虎穴に入らずんば虎子を得ずという諺もある通り、王国軍教導団は決定的な航空勝利を得るために冒険に出た。

 帰投する敵双発爆撃機の後を追跡したことで発見に成功した、より後方の航空基地を、航続距離の長い一式陸上攻撃機と零式艦上戦闘機を以て攻撃することに決定したのである。

 結論から言えば、この攻撃作戦は大成功を収めた。

 敵地上部隊が攻撃隊を目撃してこれを通報したため、十数機のYak-3が迎撃に上がってきたものの、零戦隊がこれを撃退。

 一式陸上攻撃機は1機も欠けることなく、航空爆弾の投下に成功した。

 炸裂した250㎏爆弾が駐機する敵機を薙ぎ倒し、滑走路には無数の弾痕が残った。

 1発の航空爆弾が燃料庫に飛び込むと、想像を絶する熱波が周辺を呑み込み、焼却し、巨大な火焔と煙が立ち上がった。

 さらに攻撃隊の一部は落下傘付きの時限爆弾を、置き土産として投下。

 これにより地上の復旧作業は遅延することとなった。

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