不幸フラグ極振りの女子高生の話 作:アステカ
・なんでも異能の力を打ち消せる右手を持って生まれた女主人公の話です。
・捏造有り
・口調違ったらすみません
・続くかは未定
それでもよければどうぞ。
私はどこにでもいるような普通の女子高生だった。
だった、過去形なのは俗に言う前世の記憶という奴だ。
成績は中の上以上、上の下以下。
アルバイトは週に三回で五時間勤務。
運動神経は悪くないが平凡に毛が生えた程度。
部活は特になければ趣味はラノベを読んだり、少ないながら友達とカラオケに行ったり……と、まあありきたりな人生だった。
自分で自嘲するように、たははと笑うが別に特別な存在でもない。家がお金持ちとか有名人の娘だとかそんな事は一切ない。
田舎から東京の学校に通っているくらいしか大した特色はない。
まさに普通に愛された女(ドヤっ)とこれまでの人生を振り返っていた。
なんで振り返っているのかって?
現実逃避だよ馬鹿野郎。
いや…ねぇ?
まあ前世の事を語った今、私は俗に言う転生をした。神様?会ってねえわ。何それ偉いんですかァ?
アレは学校の帰りの事。商店街で流行っていた漫画を何冊か買って普通に帰ろうとしたわたくしこと……名前は改名されたからモブ子でいいや。
普通に、普通に!!帰ろうとしたわたくしことモブ子は事件に遭った。
簡潔に話すとですね。
ただの女子高生だった私は不幸にも通り魔に包丁でブスッ、とイっちゃったわけですよキャー恥ずかしい!
……いや洒落にならねぇわ(白目)
どんな不幸があれば偶然事件に巻き込まれて偶然通り魔に出くわして偶然刺された所が急所で即死になったのか。
これは俗にいう不幸という奴だ。
不幸が重なり過ぎたただの偶然、そう思って割り切ろうとした。
そう思って、いたのだが……
「ねえ貴方、この子の名前は?」
「……
おい、フラグ立てるな。
何で特大級のフラグ主人公の名前なんだ。
赤ん坊に再転生させられた口から叫びたい程に最大級のフラグを落とされ、産声と共に私は泣いた。
別に大した事ではないと思っていた二度目の人生。何処ぞの不幸体質のヒーローと同じ名前になったのだ。
これは分かった、言わずとも分かるが私は心の中でこう叫んだ。
不幸だァァァァァァァァァ!!!!
★★★★★
皆さんは『とある魔術の禁書目録』を知っているだろうか。
知らない人に少し解説すると、主人公の右手にはどんな奇跡も異能も打ち消す【
まあコレは独自解釈で公式ですら予想はあれど明確な答えはなかったんだけど、【
まあ要するに力を抑える為の封印みたいなもの?だと、うろ覚えだけどそんな感じだ。
んで、その主人公と呼び名が同じと言う事がもう既に不幸フラグの始まりと言えるのである。
なにせ【
要するに、不幸体質になるのだ。
仮説じゃ願いの結晶だったり世界の基準点だったりとか言われてるけど、そんなに凄いものじゃない。
異能関連ならクソ強いが日常は別。
スタンガンの電流とか、コンロの火を打ち消せるわけではない。異能キラーであって代わりに日常では不幸体質。
割りに合わねぇわ!?なンなンですかァ!?この地味な嫌がらせとも言える転生特典!?別に異世界でも魔法やファンタジーの世界でもないから!!なんなら学園都市存在しねぇし!?
しかも事件が起きるなら中心は間違いなく右手を持つ自分なのだ。この右手がある限り事象の中心から抜け出せないスパイラルにハマってしまう。
何その主人公体質……要らねぇ……。
そんな妄想を膨らませていたのだが……
四歳くらいになるまで、私はある仮説を過信していた。
名前が同じだけで、能力は宿っていないのでは?
いや学園都市がないなら別に【
ならいいや、今度こそ普通に生きて幸せに老衰しよう!
……と、まあこんな考えに慢心していた時期がありました。そりゃあ四歳までは特に不幸と言う言葉を使う事はなかった。
だが、その実態は外に出る事が少なかったからにすぎないと知るのは五歳からでした。
「へぶっ!?」
帰り道に公園から飛んできたボールが顔面に当たったり。
「ひいっ!?」
電柱の点検をしていた人が落としたスパナが目の前に落ちたり……
「うわわああああああああ!?」
単純にブレーキとアクセルを間違えて歩道に乗りかけた車に轢かれかけた。おい、主人公より死ぬ確率上がってんですけど?
それが週に一回は確実に事故の近く、または自分に対して起こっている。
警察の人が「……また君か」と事件に遭遇する死神くんと同じような反応に結構傷付いた。私名探偵でもなんでもないし誰も望んでこんな事になりたいわけじゃないのに……
その事件の遭遇率からお母さんに、お祓いに行きなさいとやんわり言われたので、近くの神社にお祓いを頼もうとしたのだが……
【にぃ……くうううう】
「おい、神社呪われてるぞ」
何、ここはオサレの世界だったの?
神社にしては人が居ないと思ったけど、まさか人食いの化け物が居るなんて想定してない。
なんというか……不幸だ。
【にくううううううう!!】
「ツイてないよ……私も――
ガラスが砕ける音がした。
右手で触れた化け物の身体が四散して消えていく。化け物が消滅した瞬間、重苦しい空間が消えていた。
どうやら、右手にはどんな異能も打ち消す力は宿っていたようだ。
天使すら追い返せる力があるから作用するとは思っていたが……
「アレ?これって死神じゃないのに倒さないといけないパターン?」
……やっぱり不幸だ。
★★★★★
【アアアアアアアアアアッ!】
「ふん!」
キュイイイインーー!
【クワセロオオオオオーー!!】
「せい!」
キュイイイインーー!!
「ねえ君、視え――」
「その幻想をブチ殺す!!」
「えっ――へぶっ!?」
キュイイイインーー!!
とまあこんな感じだ。
中学生では空手と合気道の黒帯を取り、日常的な不幸な事件は反射的に防げるようになった。異形の化け物だったり虚であったり、黒い眼帯のなんか胡散臭い人も右手で制してきた。そのうち世界を狙える気がする。
気絶してる人、なんか知っているような知らないようなうろ覚えだったけど気にしない。というか目を背けて全力で逃げた。気にしないようにそれは必死に。
まあ右手が反応してたから異能みたいな力を持ってたのだろう。
まあ、不審者だったから警察に通報しといた。「また君か……」とまた呟かれたのが心に突き刺さった。いつもすみません。
まあ右手に触れたら消えるのだから、怪物に対しては特に襲われても怪我をする事は少なかった。なんなら日常生活の怪我の方が多いので、包帯と消毒液と塗り薬は常に常備している。
女の子だし、傷とか残したくないのは普通の事だ。
中学を卒業してから高校生になり、私は杉沢第三高校に入った。勉学?中の上以上、上の中以下だよ。やっぱ前世があっても知識チートとかあるわけでもないわ。
とりあえず、全生徒入部制だったので入部したのがオカ研。柔道部や空手部でも良かったが、反射的に危機を回避する為に身につけたわけだし、高校生になって並大抵の事は不幸な事故を避けていた。そして今、同じオカ研の部員と挨拶をしている。
「俺、虎杖悠仁。よろしく」
「上条燈鞠、よろしくね虎杖」
ん?この人どっかで見たことある?
私ジャンプ読まないしなぁ……と考えていたが、まあいっかと考える事をやめた。
オカ研でまあ色んなことを調べていたら、偶にそこに怪物が居たりする。意外と侮れないわ。やるじゃんオカ研。
★★★★★
「ラグビー場には吉田さんの死体が埋まっていて一連の騒ぎは吉田さんの怨霊によるものだったんです!!」
「いや……マダニが原因だそうだ」
「ぶふぉっw」
思わず笑ってしまったのを虎杖達に睨まれる。ラグビー場の怪物は既に右手で祓っていたし、間違いではないのかもしれないが。
「呪われてるのは間違いなかったけどね」
ボソッとそう呟いた。
と言うより、この学校自体が呪われてるんじゃないと言う程に怪物が棲み着いている。
右手で怪物を祓ってはいたが、数が多すぎだと匙を投げたいくらいだ。
「と言うより、何故陸上部所属の虎杖がこんな所に居る!?」
「あれ?虎杖、オカ研入部届け出したはずだよ?私と一緒だったし」
「俺が書き換えた」
「おい教師、普通にダメでしょ。生徒会長、あっち注意してよ」
「したいが、生徒より問題な先生にどうやって注意すればいい?」
ああ、苦労してんだね。
もうゲンナリしてる所を見た感じ、この人も大分疲れてるらしい。
結局、虎杖と高木先生の陸上部に入るか入らないかの戦いが始まったのだ。
「あれ?上条さんは行かないの?」
「私ちょっと用事があるので」
校舎裏にね。
★★★★★
怪物くんを見つけました。
右手で触れました。
はい、終わりました。
「この学校呪われ過ぎじゃない?」
ウンザリしながら呟く。
それが私の普通の日常。こんな日常求めてないけど。改めて右手を見る。
右腕、右手というのは本来なら奇跡を象徴するものだ。天使であるミカエルには神話的には最強の武器が備わっていたり、右手というのは様々な逸話が存在する。
だが、奇跡だろうが神話だろうが異能であればなんでも打ち消してしまうコレは一体何なのか。
「おい」
「ひゃい!?」
もの凄い低い声で呼びかけられた。
ブリキのようにギギギと後ろを向くと、何やら制服を着た黒髪の少年がそこに立っていた。
「な、なんでしょう」
「お前、何をした?」
「何を?……何をした?」
「質問を質問で返すな。ここら辺に呪霊の反応があった筈だ。なのに突然消えた、代わりにお前がいた」
「……じゅれい?」
「……知らないらしいな。お前、俺の横にいる奴を見ろ」
そう言って少年は手を犬みたいに形を作る。そうして隣に現れたのは、犬というにはちょっと大きめの黒髪の犬だった。しかも額に何か白い紋章みたいなのがある。
「……ああ、なるほどね」
「やはり視えている――」
「君は魔法使いを目指してるんだね」
「はっ?」
「……えっ、違うの?」
「……まあ、いい。お前見るからに普通そうだし、呪術師でも呪詛師でもなさそうだな。呪力全く感じられないし」
失敬な、普通なのが私の唯一の取り柄だぞ。そんな事を呟いている中、黒髪の少年はスマホを取り出して、ある写真を見せた。
「お前、これ見た事あるか?」
「何それ……札と箱?」
「知っても意味がない。俺はそれを回収しにきたんだ。だが、その様子だと知らないようだな」
「……あっ、それ虎杖が持ってた気がするけど」
「……っ!ソイツは何処にいる!?」
おい、肩を掴むな。
無駄に顔がいいから照れてしまうだろ。
「えっと、多分病院にお見舞い……かな?」
「病院?何処の病院だ」
「杉沢病院」
「…助かる」
そう言って黒髪の少年は走っていった。
どうやら、呪霊、呪術師、呪詛師ときたら何となく思い出せた。一巻くらいしか見てないから詳細は詳しく知らないし、あんまり覚えてないけど。
「ここ、呪術廻戦の世界なんだ」
電撃文庫全く関係ねえじゃん。
★★★★★
バイトが終わり、腕を伸ばしながら疲れを取る中、喜久水庵で買い物をしているちょっと見覚えのある不審者を目撃してしまった。
銀髪で黒の両眼帯。もうこの時点で不幸フラグ満載であるため、目撃した0.1秒後には身体を背けて学校の方を通って帰ろうとした私は英断だと思う。
我ながら大した反射神k――
「ねえ」
「ひょわ!?」
反射神経全く役に立たなかった。
一瞬で目の前に現れて、変な声と同時に思わず後ずさりをしていた。アレ?似たような事が今日もあったような、なかったような……
「あ、あの時の不審者……」
「不審者は酷くない?僕はただの通りすがりの最強だよ」
「通りすがりの最強は、普通が代名詞の私にナンパとかしないと思うんですけど」
「ナンパじゃないから、僕そんな怪しい奴じゃないし」
「すみません。鏡を見て出直してください」
なんか居たね呪術廻戦でこんな人。
思い出せば確かに居たわ。こんな胡散臭い人が。眼帯を取り、私を舐め回すように観察するのを見てゾッとする。
「あの、視姦とかやめてください。叫びますよ?」
「うーん、やっぱり分からないなぁ。なんであの時、僕の術式が破られたんだろ?術式とか一切使ってないのに」
「はっ?術式?……黒髪の男の子も言ってましたけど、呪術とか一体――」
その質問を聞く前に突如、ヒュオオオオと街に大きな風が吹く。地味に強い風に木々は揺れ、歩く人は止まり、そして私の制服のスカートが捲れていた。
バッ!と自分のスカートに手を当て、何もなかったかのように心を落ち着かせることに集中する。
だが、既に顔は赤面状態で俯いている。ちょっと涙目になっていた。精神年齢が高くてもおんなのこだもん。
「……見ましたね」
「君、高校生にしては中々にお目が高いと思うよ。大きすぎない胸に引き締まった太ももにまさか黒でちょっと扇情的な大人の色気を――」
「歯を食いしばれ最強」
私の最弱はちっとばっか響くぞ。
人の下着を見て言い訳どころか開き直って感想を言う目の前の女の敵に私は最強をねじ伏せる最弱の拳を全力で頬に叩き込んだ。
★★★★★
全く、不幸が続く。
学校で呪霊が存在したり、不審者にパンツ見られたりなんかもう不幸だ。
不審者を殴り飛ばした後、私は学校前の道を通って帰ろうとしていた。あの不審者、異能の力を持っていたようだし、なんか巻き込まれる気がするので遠回りした。
「……ん?虎杖?」
「……上条?なんでこんな所に」
「バイト帰りだよ。そっちこそ、学校前で何やってんの?」
学校の前で立ち止まってる方が不審に見えるのだが、虎杖は学校の窓を見上げて立ち止まっている。私も見上げるとそこには怪物が居た。あまりの圧力に死を連想させ、虎杖は手が震えていて恐怖を感じているのだろう。
「虎杖、中に誰かいるの?」
「オカ研の先輩達が……」
それを聞いた瞬間、私はバックを投げ捨て学校に向かって一目散に走り出す。虎杖は焦ってるのか戸惑っているのか、学校に向かおうとする私の腕を掴んだ。
「離して」
「お前に何が出来んだよ!それに怖くねえのか!?」
虎杖は叫んだ。
虎杖には並外れた身体能力がある。だが、私にはそんな力はないし、右手だけでそれ以外はただの人間だ。
「確かに私は普通の高校生だよ」
「なら!」
「だけど、そんなの関係ない。私は二人を助けに行く」
虎杖は行かせたくないのだろう。
死ぬ危険があるこの場所に私を行かせたくないという気持ちはわかる。
けど、行かなきゃいけない。
見捨てる事で悪は生まれる。そんな言葉があるからと私は正義感に流されて行動したいんじゃない。
ただ、明日の自分がそれを後悔しないために行くのだ。
「いい虎杖。普通の高校生ってのはね、本当に困っているヤツを見たら最後、たったそれだけで」
虎杖の腕を掴み返し、私は叫んだ。
普通の高校生ってのは、誰よりも平凡であっても、困ってるヤツを見かけて、助けようと少しでも思えたのなら。
「――いつでもヒーローになれるヤツの事を言うんだよ!」
私は虎杖の掴む手を払い、先輩を助けに校舎へと走り出した。
★★★★★
最初に会った時は少し冷めた女の子だと思ってた。オカ研で数合わせで入ってこっそりバイトをしている所を見る辺り、学校に大した興味がないのだとばかり思ってた。
けど、たまに勉強教えてくれたり、風邪引いて休んだ時とかにノートのコピーを渡してくれたりといい奴だった。
オカ研に入って、少しの間だが意外と優しくて、ちょっと不幸で、ドジな所に笑っちゃう。変な庇護欲が沸き立つような面白い奴だった。
部活の先輩くらいしか友達が居ない中、偶にカラオケに誘ってくれたり、勉強会をしようと言ってくれたりする。
案外、友達で良かったと思える辺り、俺はそういった気遣いをする上条に救われてんのかもしれない。
今日、爺ちゃんが死んだ。
オカ研に変な札に巻かれた曰く付きのモノを渡した事を伏黒に聞かれて、開けたら死ぬと言う言葉に焦って、学校まで走った。
呪いというのが分からなかったが、分かってしまうとそれはとんでもない圧力を放っていた。学校から死の気配がして、動けなくなった。伏黒がここに居ろと言って助けに行ったのに、俺は何をやってんだと震える手を見てただそう思った。
「……ん?虎杖?」
声がした。
振り返るとそこには制服姿の上条の姿があった。バイト帰りなのだろうが、こっちは遠回りだったはずだ。
「……上条?なんでこんな所に」
「バイト帰りだよ。そっちこそ、学校前で何やってんの?」
どう説明すればいいのか迷った。
呪いとか俺は詳しく知らないし、上条にどう説明したらいいのか分からない。
上条が校舎の窓を見上げると、俺に訪ねてきた。
「虎杖、中に誰かいるの?」
「オカ研の先輩達が……」
それを聞いた瞬間、上条はバックを投げ捨て学校に向かって一目散に走り出した。ただそれを見ていられなかった。あんな死の気配のする場所に上条を行かせて、死なせるのに耐えられなかった。
「離して」
「お前に何が出来んだよ!それに怖くねえのか!?」
俺はただ叫んだ。
怖いと思えるから俺は上条を行かせたくないのだ。上条も薄々感じているのだろう。この気配に気付かないで助けようとするならただの無謀だ。
「確かに私は普通の高校生だよ」
「なら!」
「だけど、そんなの関係ない。私は二人を助けに行く」
意思は固かった。
どうして、と心の中で言葉が過る。助けに行く理由なんてない。死ぬかもしれないと思うなら巻き込まれないように足を止めていい。巻き込まれにいくなんて損をする生き方だ。
それなのにどうして……
「いい虎杖。普通の高校生ってのはね、本当に困っているヤツを見たら最後、たったそれだけで」
上条は叫んだ。
真っ直ぐな瞳で射抜かれるように、その理由を口にした。
「――いつでもヒーローになれるヤツの事を言うんだよ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の右手は勝手に上条を離していた。
ああ、お前は強いよ。
お前は俺なんかより、視えないくらい眩しくて遠くて、それに比べて俺はただ震える事しか出来なくて、足が向かない。
「……何…やってんだよ、俺ッ!!」
ただ、そう嘆いても何も変わらない。
上条の背中をただ眺めている自分と。誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする上条との距離に俺は眺める事しか出来ないのか。
『お前は強いから、人を助けろ』
最後の爺ちゃんの言葉が脳裏をよぎった。
俺より弱い上条は行ったのに、俺は何もしないで見て見ぬフリでもすればいいのか?
……冗談じゃない。真っ平御免だ。
その足が遅れていても、周回遅れでも今だけは上条に追いつきたいと心は叫んでいた。
もう、震えは止まっていた。
その遅れた足を前に進め、全力で四階まで跳躍し始めた。
★★★★★
学校が開いてないんじゃ入りようがないので窓ガラスをぶち破って中に入った。監視カメラはないから不審者がガラスぶち破った事にしよう。
走りながら窓を確認すると、怪物が学校の壁をぶち破った光景があった。今までの大きさとは訳が違う。そんな怪物の暴走に誰かが吹き飛んだ。
「っ、あの時の……!」
確か夕方にあった犬を出せる呪術師だった。
頭から血を流して吹き飛んでいた。怪物が近づかないように肘打ちを上から決めるもう一人の姿が視界に入った。
「って、虎杖まで!?」
あの怪物は特殊な力がなければ祓えない。
呪術師とか言った奴らは祓う事は出来るのだろうが、虎杖は無理だ。
急いで怪物の所まで向かう。壊れた廊下の近くに先輩達が気を失っている。どうやら、命に別状はなさそうだ。
「!?」
虎杖が何か持っていた物を口に入れた瞬間、怪物は霧散するかのように消え去っていた。
ゲラゲラと耳障りな笑い声が聞こえた。
それも虎杖からだ。何かが取り憑いたような変な阿修羅みたいな紋章が身体中に浮かび上がっている。
「虎杖!」
『あっ?』
「ッ!馬鹿!」
ギョロリと視線がこちらを向いた。
今まで出会ってきた呪霊の中で一番気配が濃い。
『女か。いい、手始めに貴様から鏖殺しようか!!』
「(間に合わな――!)」
黒髪の少年が術式を割り込む前に虎杖に取り憑いた呪霊が腕を振るう。それだけで圧殺されかねない呪力の波動が私を襲った。
★★★
『ケヒッ、ヒヒッ!!ああ素晴らしい!』
「………クソがっ!!」
殺人快楽者の感情が湧き立ったのか。ゲラゲラと不快に笑う虎杖に取り憑いた両面宿儺。
目の前で死なせてしまったと伏黒は呪術を展開しようとした次の瞬間。校舎に舞う煙から死んだはずの女がそこに立っていた。
「何が素晴らしいの?」
『あっ?』
「なっ……!?」
伏黒は間違いなくその波動を食らったのを見ていた。煙と共に吹き飛んだ砂利を払い、平然としている。
『――――何をした。女』
「ツイてない。お前、
『死ね』
再度呪力の波動を撃ってくる宿儺に対して上条は右手を前に突き出し、それを打ち消した。右手はあらゆる奇跡を打ち砕く。
そんな力は、幻想を殺す右手に容易く打ち砕かれる。
『はっ?』
宿儺も少なからず呆然としていた。
一割にも満たない本来の力とはいえ、たかが小娘を鏖殺出来るほどの力を放った。
術式が届いていないわけではない。
単純に呪力そのものを打ち消された。
「――――ゲラゲラ野郎、
『領域―――!』
次の結末が見えたのか宿儺は焦ったように奥の手を使うがもう遅い。
どんな異能も打ち消す右手に異能そのものとなっているような呪霊に触れたらどうなるか。
0.1秒、その考えに至るまでには少し遅かった。
「――――その幻想をブチ殺す!」
上条は右手で宿儺を殴り飛ばした。
ガラスが割れたような音がした。宿儺の中から呪力という呪力が根こそぎ消えていく。
ただの小娘に宿儺という巨大な呪霊は奥へ引っ込んでいった。
★★★
「うお、上条!大丈夫だったか!?」
虎杖がゲラゲラ野郎から変わって目を覚ました。どうやら、完全にその力は消えているわけではないが、殆どの力を抑え込めただろう。私の右手でも打ち消せない辺り、まだ完全体じゃないのかもしれない。
「……まさか、言うとは思わなかったけど。実際言うと照れ臭いかも」
「上条?」
「ああ無事だよ。大丈夫、てか虎杖は?」
「頬以外大丈夫」
「なんかごめん!」
割とガチでグーで殴った事は全力で謝る。
感極まってあの主人公と同じ決め台詞を吐いた事に赤面しながら、私はポケットに入っていた湿布を虎杖の頰に貼った。私ちょっと冷めたクール系目指してたのにハイになってしまった。
「あっ、病院!救急車!そっちは大丈夫!?」
先輩達も運ばなきゃいけないし、頭を打って血を流している黒髪の少年を病院に運ばなくてはいけない。
そんな中、黒髪の少年は突如私に問いかける。
「お前、何者だ……?」
呪術師でも呪詛師でも呪霊でもないのに宿儺に勝つ規格外の存在に聞かずにはいられなかったのだろう。
「私の名前は上条燈鞠」
名前を告げると、私は平然と自分がなんなのかの答えを口にしていた。
「どこにでもいる普通の高校生だよ」
上条燈鞠
通り魔に刺されて転生した女子高生。不幸が代名詞の主人公の名前と右手を持った事で不幸フラグが極振りになった。
呪術廻戦あんまり読んでない。いつも不幸が近くで起きる為、空手や武術を習ってある程度は回避していた。ツンツン頭ではなくロングのポニーテールである。胸はちょっと大きい。
虎杖悠仁
宿儺に原作より乗っ取られた男。オカ研仲間でよく面倒見てくれる。上条を尊敬してるし、カッコいい女だと思ってる。恋心は分からない無自覚系主人公。
伏黒恵
上条を驚かせた人。打ち消せる右手に質問し、返ってきた答えに彼は後にこう告げる。「お前のような奴が普通であってたまるか」
五条悟
2回殴られた人。1回目は不審者扱いされ、警察沙汰になって忙しくなったから諦めた。2回目でパンツ見て殴られた。術式を暴けない右手に興味を持つが、2回術式が破られ気絶した地味に不幸な男。
続く……か?