ある学校の放課後―――
廊下の一角で、一人の男子生徒が数人の女子生徒から暴行を受けていた。
「死んじゃいなさいよ!」
「この最低のクズ!」
殴られ、踏みつけられ、すでに男子生徒の体には痣が大量にできている。
「お、おい…何でイッセーばかり狙うんだよ⁉」
「そ、そうだぞ!俺達だって覗きの共犯だろ⁉」
すぐ近くで見ていた2人の男子生徒がそう言う。
「何言ってんの?松田君と元浜君が悪いワケないでしょ?」
「そうだよ。そうやって庇ったりするからコイツがつけあがるんだよ」
「2人は兵藤に誑かされただけなんでしょ?なら2人も被害者だよ。こんな奴のせいで根も葉もない悪評がついてさ……」
「こんな奴とつるむの、止めた方が良いって」
「「……………」」
しばらくして、飽きたのか気が済んだのか、女子生徒たちは去って行った。
「おい、イッセー……」
「だ、大丈夫か?」
「……大丈夫だよ。いつもの事だし」
そう言って3人は自分達の教室に向かう。
「何で、お前ばっかり標的になるんだろうな?」
「何もしていなくても、お前だけ必ず殴られるよな……毎日」
「もう日課になってるんだよきっと」
「「……………」」
3人は教室に入る。
「「「……………」」」
同時に3人の目に、墨汁をかけられた机が飛び込んできた。
机の上はもちろん、椅子や中にある教科書、ノートにも墨汁がかけられている。
その机の持ち主は、先ほど殴られていた生徒、兵藤一誠だ。
「おい」
「「「?」」」
背後から声を掛けられ、3人は振り返る。
同時に一誠は顔面を殴られる。
殴ったのは今声を掛けてきた男子、兵藤一誠の双子の兄、兵藤
「ふん」
一誠が殴り飛ばされた様子を見て、誠一は教室を出て行った。
「あ、誠一君」
「これから帰るとこ?」
「うん」
廊下に出ると、2人の女子生徒が誠一に声を掛けてきた。
「見てたよ、さっきクズ兵藤の事殴ったでしょ?」
「ああ」
「あいつの机に墨汁かけたのも誠一君でしょ?」
「ああ、そうだ」
「やっぱりそうだったんだ」
「にしてもアイツほんとしぶといよね。さっさと自殺すればいいのに」
「ホントだよ。昔からずっとああやってんだけどな~」
「病気でも交通事故でもいいから、さっさと死んでほしいよね~」
「あんなゴミみたいな奴が何で生きてるんだろうね?」
「全くだよな」
そんな事を言いながら、3人は仲良く帰路に着いた。
俺が兵藤一誠の双子の兄、兵藤誠一として、ハイスクールD×Dの世界に転生してから、瞬く間に十数年が経過した。
まだ原作は始まっていない。
俺は兵藤一誠が前世の頃から嫌いだった。
原作一巻ではアーシアを見殺しにしたくせに好かれて、二巻では正式に決まっていた婚約を私情同然の動機で無理やり破談にする。
自分の立場も考えずに話し合いに来ていたライザーや、交渉に来ていたゼノヴィアたちにケンカを売る。
戦い方だって、脳筋的な思考で、すぐカッとなって感情任せ。
人が死ぬような攻撃か、セクハラ同然の戦い方しかしていないくせにいつも成功する。
サイラオーグとのレーティングゲームなんかその最たるものだ。
自分のせいで人が危険な目に遭ってもお構いなし。
ヴァーリや曹操みたな悪党どもを簡単に許す。
その他にも挙げればきりがない。
何より許せないのが、それだけの事をやっても何も咎められずに、許されることだ。
主人公補正を貰って、それを使って好き勝手。
キャラクターたちをみんな洗脳して、世界を自分に都合よく歪める。
アイツが人に好かれる理由だって、裏を返せば悪いとこばっかりだ。
優しいだなんて、俺にも当てはまる長所だ。
だから俺は転生してから、アイツを徹底的に苦しめた。
アイツの物を壊す、肉体的な暴力はもちろん、万引きやカツアゲ、いじめの常習犯だって噂を流した。
濡れ衣だが、どうせ覗きや暴力による事件解決をするような奴だ。
たいしてウソでもないだろ。
上手くいけばアイツは自殺、もしくは両親から勘当される。
そうでなくても育児放棄、虐待されるんじゃないかって期待した。
そこまでは行かなかったが、アイツの味方はほとんどいなくなった。
当然、アイツにはこれからもセクハラの常習犯でいてもらう。
そうでなければ、俺がアイツに制裁を与え続けることができなくなるからな。
そうすれば原作が始まる前にアイツは自殺するかもしれない。
万が一死なずに始まっても、ヒロインはもちろんキャラクターたちがアイツと仲良くなることはないだろう。
でも可能ならば、やはり死んでほしい。
原作が始まったら、リアスとかに頼んで殺してもらおうか?
二巻分終了後なら、きっと聞いてくれるし、後始末もしてくれるだろう。