【完結】デート・ア・ロスト~華恋アンリクワイテッド~ 作:詠符音黎
「私が……殺した……私が……!」
華恋が壊れたラジオのように何度も繰り返す。
目を見開き、沢山の涙を流すその姿は、今までの快活な彼女からはまったく想像できない。
「華恋……落ち着け……華恋……!」
士道はそんな彼女に必死で声をかける。
吹き飛ばされ地面に打ち付けられた体が悲鳴を上げているにも関わらず、にである。
「華恋……! 無理をしなくていい、今は冷静になるのだ……!」
「大丈夫……私達が、側にいる……!」
士道だけではない。十香も、折紙も痛む体に鞭打ちながら立ち上がり、必死に彼女に呼びかける。
だが、華恋の耳に、その言葉は届かない。
「私は……逃げてきた……すべてを捨てて……私、なんてことを……すべてを滅ぼしたって言うのに……一人、ただのんきに……ああ、うわあああああ……!」
華恋はガリガリと自分の頭をひっかき始める。
彼女の綺麗な髪がボロボロと地面に落ち始め、指先が真っ赤に染まる。
「私は……なんて事を……私は……私は……!」
「華恋ッ! 華恋ッ!!」
叫び続ける士道。彼は一歩ずつ、体を引きずりながら華恋に近づく。
一方で彼女はそんな士道が目に入っていないのか、未だガリガリと自分の頭をひっかき続けている。
「華恋……!」
そしてついに、士道は華恋に触れられる程の距離に近づく。そのまま、華恋に手を伸ばす士道。
「あ……」
しかし、その士道の姿が。
必死に手を伸ばす、士道の姿が。
死ぬ間際の、優しく頬を撫でてくれた、“彼”と重なって――
「い、嫌ぁっ!?」
思わず華恋は、士道を跳ね除けてしまった。
「ぐっ!?」
精霊の力で跳ね除けられた士道は、地面に凄い勢いでぶつかり、一度バウンドしてまた地面に倒れる。
「シドー!!」
「士道っ!!」
「が……!」
叫ぶ十香と折紙。
かろうじて意識を保っていた士道だったが、どうやら傷は浅くなく口から血を吐き出す。
「ひ……!」
その姿が、またも“彼”と被る。死ぬ直前の姿をどうしても想起してしまう。
「ごめんなさい……士道……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
それがあまりに恐ろしくて、あまりに辛くて、あまりにも悲しくて。
口から飛び出すのは謝罪の言葉のみになってしまう。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
ブツブツと繰り返す華恋。
その姿は、誰がどう見ても壊れていた。
「か……れん……だい……じょうぶだ……だから、だから……」
それでも士道は彼女に言葉をかける。大丈夫だと。とにかく彼女を落ち着けようと、言葉をかける。行動しようとする。
だが、士道が頑張れば頑張るほど、その姿が死に際の“彼”に見えてきて――
「やめて……やめてえええええええええええええええ!」
華恋は叫ぶ。またも衝撃波が飛ぶ。それにより、再び士道達は吹き飛ばされてしまう。
「うぐっ……!?」
苦悶の声を上げる士道。もはや彼の体はボロボロだった。琴里の精霊〈
「か……れん……!」
だが、それでも彼は立った。華恋に呼びかけることを止めなかった。
強い意思を瞳に宿し、彼女を見据える。
「ああ……見ないで……こんな私を……こんな愚かしい私を、見ないで……!」
華恋は拒絶する。彼女を救おうとする士道の事を。
華恋は拒絶しかできない。もし受けれれば、また“彼”と同じ事になってしまうと思ったから。
そんなときだった。再び、空がピキッっという音を立てて割れた。
「ガアアアアアアアアアアアアッ!」
士道と彼女の間に、またもあの化け物が現れたのだ。
眩く赤く輝く、四足歩行の獣が。
「グルルルルルルルル……!」
狼のように唸り、士道と華恋の間でうろつく獣達。
そんな獣達を見て、華恋は言った。
「ああ……そうか……お前達は、私を連れ戻そうとしているのね……『世界』から『不自然』に消えた『力』のバランスを保つために……そう……なら……」
そうして華恋は歩み始める。破れた空の穴へと。
「華恋……ッ!」
「……士道、今までありがとう。そして……さようなら……」
華恋は士道に背中を見せたまま言った。そして、空に消えていく。獣達と共に。
すると、空の穴は修復され、後には何も残らなかった。まるで何も怒らなかったかのように、綺麗さっぱりと。
「……華恋んんんんんんんんんんんんんんんっ!!!!」
咆哮する士道。悔しさや、悲しさがないまぜになった、痛々しい叫びだった。
そして、その叫びと共に、士道はその場に倒れた。
「シドーッ!」
「士道……!」
十香と折紙は、痛む体を抑えながら士道の元に駆け寄る。
「なっ……!?」
「っ……!?」
そこで、二人は言葉を失った。
なぜなら倒れた士道の体が、青い炎で燃え盛っていたからである。
二人はその炎を知っていた。
それこそ、琴里の精霊、幾度でも傷を癒やすことのできる力を持つ〈