【完結】デート・ア・ロスト~華恋アンリクワイテッド~   作:詠符音黎

8 / 13
十一サイトシーング

「……ふふ」

 

 華恋は夜の自室で、写真片手に微笑んでいた。

 彼女が手にしている写真は士道の家において流れで開かれたパーティのときに撮られた写真だ。

 撮影したのはマリアで、華恋と士道、そして元精霊達が全員一枚の写真に収まっている。

 撮られた写真を、すぐさま〈ラタトスク〉が現像して、みんなに配ってくれたのだ。

 華恋ももちろん貰い、今こうして眺めている。

 

「なんとうか、結構楽しかったな……」

 

 華恋は一人そう言う。

 ここ数日のデートは、色々と風変わりではあったけれど、彼女に記憶を取り戻させ、楽しい時間を過ごさせてきた。

 それは、確実に彼女の心に響いていた。

 

「これであとは私の好きな彼の記憶が戻れば万々歳なんだけどね……」

 

 断片的な記憶は取り戻しても、肝心の想い人の記憶は取り戻せていない。

 それを取り戻せば大きく前に進める。少なくとも華恋はそう思っていた。

 

「みんなとのデートで戻っているし、また明日のデートで何かが変わるよね」

 

 そう、翌日にも華恋はデートを控えていた。

 相手は、十香と折紙だった。

 彼女らは元々大学の友人であるためデートと言うよりはただの外出になりそうな気がしないでもなかったが。

 

「とにかく、明日だね。となると、今日はさっさと寝るかしら」

 

 そうと決めると、華恋は写真をスケジュール帳に収めて、すぐさま歯を磨いて、服を脱ぎ下着姿でベッドに入るのだった。

 

 

「やっほー! おはようみんな!」

 

 そして翌日。

 華恋は天宮駅前の噴水の前で待っていた十香と折紙、そして士道の元へと手を振りながらやってきた。

 時間は朝の十一時。約束の時間きっかりだった。

 

「おお! 華恋! おはようなのだ!」

「おはよう」

「おう、おはよう」

 

 十香達がそれぞれ華恋に挨拶を返す。

 

「いやーこの前は楽しかったね。今日もよろしく!」

「うむ、任せておけ! この私がしっかりとでぇとの手引きをするぞ!」

「正確には私達。今回のデートプランは二人で考えた」

「む、そうだったな。すまぬ折紙」

「いやいい。気にしていない」

 

 親しげに語る十香と折紙。

 それを士道が楽しげに眺めている。

 華恋はそんな三人を見て、ふふっと笑う。

 

「やっぱ仲良いね君達。初めて会った頃から思ってたけど、こうして遊びに行くってなると尚更思うよ」

「ん? 何を言っているのだ、私達だけではなく華恋もだろう?」

「え? 私も仲間でいいのかい?」

 

 華恋は思わず聞き返す。

 確かに十香達は友人だ。だが、彼女達の仲は特別で自分はまだまだ及ばないと思っていたのだ。

 しかし、十香は不思議そうに言う。

 

「ああ、そうだ。華恋も私達の大事な友人で仲間だぞ!」

「それは、私が精霊だから?」

「いや、十香の言葉にそんな意味はない。華恋が精霊であろうとなかろうと、もう私達にとっては友人」

「そうだぞ華恋。まだ出会って数ヶ月だけど、俺はしっかりお前のことをいい友人だと思ってる。それとも、お前は違うのか?」

「いや、そんなことはないよ。むしろ、そう言ってもらえて嬉しいっていうか……」

 

 華恋は少し赤面し、俯きながら言う。

 内心では思っていた頃だが、面と向かって言うのはなかなかに恥ずかしかったのだ。

 

「は、はは……ま、まあ! つまり今回のデートは楽しみにしてるってことだよ! 今日は頼んだよ、十香! 折紙!」

「うむ!」

「任せて」

 

 勢いでとりあえずごまかした華恋。

 そんな彼女の内面を知ってか知らずか、二人は華恋に気持ちよく答える。

 

「俺も今回のデートプランについては知らないんだよな。だから楽しみだよ」

「おお! シドーにも存分に楽しんでもらうぞ! ではさっそくだが……最初は昼餉を取ろぞ! 腹が減っては戦はできぬからな!」

 

 十香はそう言って面々を先導する。その足取りは軽く、今日これからへの期待が現れているようだった。

 そんな彼女を見ていると、自然と華恋も楽しくなってきてしまう。その証拠に、華恋の足取りも軽快だ。

 

「ここだ!」

 

 そして駅から少し歩いて、華恋達はとあるレストランへと案内される。

 

「ここって……最近できたレストランだな」

 

 士道が言う。

 彼の言う通り、そこは最近オープンしたばかりのレストランだった。オープンしたてというのもあって、人が多く出入りしている。

 

「うむ! 新しくできると言うことでこの前一人で訪れたのだが、なかなかに美味でな! ぜひ士道達と一緒にここで昼餉を取りたいと思っていたのだ!」

「なるほどね……十香のイチオシなら期待できそうだな」

「そうだね。十香がグルメなのは私も知ってるし、楽しみだよ」

 

 期待に胸を膨らませながら店内に入る華恋達。

 店内にも多くの客がおり、面々は席が空くまで少し待たされる。それで二十分ほど待って、店内に促される。

 

「さて、メニューには色々あるけど、十香としてはどれがオススメだい?」

 

 席についてメニューを開いた華恋が聞く。

 すると、十香は待ってましたと言わんがばかりに口を開く。

 

「おお! そうだな、この店はハンバーグが専門店顔負けの美味しさなのだ! 照り焼きハンバーグに炭火焼きハンバーグ、俵型ハンバーグ……どれも美味だぞ!」

「へぇー、じゃあ私はこの炭火焼きハンバーグ頼むかな」

「じゃあ俺もハンバーグで。せっかくだしみんなでハンバーグ頼んでそれぞれの違いを楽しまないか?」

「おおっ! それはいいな!」

「士道が言うなら」

 

 そうして華恋が炭火焼きハンバーグ、士道がチーズハンバーグ、十香が照り焼きハンバーグ、折紙がきのこ添えハンバーグを頼む。

 四人は待つ間も大学での話をして少し時間を潰して、ハンバーグが来るのを待つ。

 すると、すぐさま四人分のハンバーグがやって来る。その光景に、十香はキラキラと目を輝かせていた。

 

「見ろシドー! いろんなハンバーグが一気にやって来たぞ! これは美味しそうだ……!」

「そうだな。よしじゃあみんなで食べようぜ」

「うむ!」

「だね」

「うん」

 

 全員が頷き、それぞれのハンバーグを食べ始める。

 

「んー! 美味だ!」

 

 すると、いの一番に十香が幸せそうな顔をして言った。

 

「おおっ、本当にかなりイケるなこのハンバーグ! レシピを教えてもらいたいぜ……!」

「ははっ、レシピって士道主婦くさーい。でも、確かに凄い美味しいね」

「同意する。さすが十香、料理の事に関しては信頼できる」

 

 十香に続いて感想を述べる各々。

 もちろん、その後それぞれのハンバーグをそれぞれに渡し、味の違いも楽しむ。

 

「うーん! きのこが肉汁と絶妙なハーモニーを奏でているぞー!」

「あー照り焼きってくどいイメージがあったけど、結構食べやすいねこれ。ガンガンいけそう」

「炭火焼きなだけあっていい火の通り具合だ……うちでも炭火焼きやってみたいなぁ」

「このチーズ、士道の味がする。美味しい……」

「一人だけ感想の方向がおかしくないですか折紙さん!?」

 

 四人はわいわいと話しながら食べ、あっという間に完食してしまう。その後も、十香が追加でおかわりを頼むなどしたが、とりあえずはそれで昼食を終え、レストランから出た。

 

「いやー美味しかった! 今度もまた来たいねここ」

 

 店から出た華恋が言う。すると、十香はとても嬉しそうな顔をする。

 

「ふふっ、華恋やシドーに教えることができてよかったぞ!」

「ああ、ありがとうな十香。それで次はどうするんだ?」

「次は私。こっちに来て」

 

 折紙はそう言って三人の先頭に立って歩き始める。三人はそれに談笑しながらついていった。

 のだが……

 

「……なあ折紙、なんかどんどん裏路地に入って行ってないか?」

「大丈夫。私を信じてついてきて」

「お、おう……」

「む? こんなルートだったか? 前の相談ではもっと……」

「え、何それ。私ちょっと怖くなって来たんだけど」

 

 暗く狭い道をガンガンと進んでいく折紙に不安を隠しきれない華恋達。

 だが、折紙はそんな彼女らのことを気にすることなく進んでいく。

 

「ここ」

 

 ついに折紙がとあるところで足を止め言う。そこは、とても妖しいビンなどが並んでいる、異様な雰囲気を醸し出す店だった。

 

「ええと、折紙さん……? 一応聞くけど、この店は一体……」

「最近見つけた薬剤店。表にある店では扱ってないような素材や薬が扱われている。オススメ」

「オススメじゃねぇよ!? なんつうところを華恋に案内してるんだよ!?」

 

 士道の鋭い声が飛ぶ。更に、驚いているのは士道だけではなかった。

 

「待て折紙!? 前日の打ち合わせと違うぞ! 隠れ家的な洋服店に行くのではなかったのか!?」

「隠れ家的ショップなのは変わらない。情報が少し間違って伝わっただけ」

「意図してるのを間違いとは言わねぇ!」

「こ、これはなかなかに……折紙的にはどういう狙いでこの店を……?」

 

 さすがに困惑する華恋。すると、折紙は冷静な表情を崩さずに言う。

 

「華恋にも好きな相手がいると言っていた。ならば、この手の店の事は知っておくべき。いつだって相手をやる気にさせるのは女の務め」

「ああやる気ってそういう……」

「ろくでもないことを華恋に教え込もうとするんじゃない!」

「いやしかし、案外必要な事なのかも……」

「華恋!?」

 

 結局、その妖しい店はさっさとすませて次に行くこととなった。

 華恋的にはわりかし見てみたいという気持ちもあったが踏み込んだら戻ってこられなさそうな気もしたのでとりあえずヨシとした。

 そんなこんなで裏路地を出ると、再び十香が先を歩くことに。そうして彼女が華恋達を連れて行った先は、ゲームセンターだった。

 

「お、ゲーセンか。確かにみんなで遊ぶのにはいいかもな」

「だろう? それに、ここではシドーに色々と教えてもらったからな。今度は私が教えたいのだ」

「へぇ、ゲーセンデートとかしてたんだ。士道もやるぅ」

「ま、まあな……」

「それで、最初はどうする?」

「そうだな。最初は……やはりアレだろう」

 

 折紙の言葉を受けて十香が指差したのは、UFOキャッチャーだった。

 ケースの中には可愛らしい人形やキーホルダーなどのアクセサリーがいくつも景品として並んでいる。

 

「UFOキャッチャーかー。言われてみればじっくり遊んだことはないかもなぁ」

「そうなのか? ならばすぐさまやるぞ! 私がお手本を見せてやろう!」

 

 十香はそう言い華恋の腕を引っ張る。

 

「お、おお!? 十香!?」

 

 華恋はそれに戸惑いながらも彼女についていく。

 彼女らのそんな後ろ姿を見て、士道と折紙は軽く微笑みついていく。

 

「はっ! そりゃっ! ……えい! どうだ!」

 

 並ぶUFOキャッチャーの一つに立つと、十香はさっそく中の景品を取るために格闘する。何度か失敗するも諦めず、小銭を投入する。

 そして、四回目のチャレンジで、十香は景品を見事手に入れた。可愛らしい犬のキャラクターがついたピンク色のストラップだ。

 

「どうだ! 華恋!」

「おおっ、凄いじゃん十香! たった四回で目当ての景品を手に入れるなんて、なかなかできることじゃないよ」

「ふふふ、いつもは士道に取ってもらっていたからな。私も自力で士道にプレゼントできるよう特訓したのだ」

「へぇ……まったく、幸せものだね士道は」

「ああ、まったくだ」

 

 ニヤニヤしながら言う華恋だったが、士道は恥ずかしげもなく答える。それがちょっと意外で、華恋は軽く驚く。

 

「おお、随分素直に認めたね」

「幸せなのを否定する気はないからな。みんなが楽しく過ごせる。こんな幸せな事はないさ」

「ふぅん。なるほどね……」

 

 華恋は士道の言葉に柔和に笑う。彼がどれだけ精霊達の事を気にかけているか、今の言葉で伝わってくる、そんな気がしたからだ。

 

「よしじゃあ、私も頑張ってみるかな。せっかくだし、十香と同じものを狙ってみよう」

 

 華恋はそうして十香が立っていた台の前に立ち、景品を狙い始める。

 が、なかなかうまくいかずどんどんと小銭を消費していく。

 

「うう……なかなか難しいね……」

「華恋、ここは大きく中央を掴むのではなく、端っこを狙ってみるといいぞ」

「そうなの十香? じゃあ……おっ、本当だ! 掴んだ!」

 

 十香のアドバイスにより、華恋はストラップを手に入れる。十香と同じ種類だが赤色の色違いのストラップだ。

 

「やった! やったよ十香!」

「うむ! よくやったぞ華恋!」

 

 二人で両手を合わせ喜び合う華恋と十香。それを見ていた士道と折紙が、二人に近づく。

 

「ははっ、楽しそうだな。じゃあ、せっかくだし俺も狙ってみるか」

「士道が狙うなら私も」

「おっ、みんなで同じストラップを? いいね、デートっぽい!」

 

 その後、士道がすんなりと、折紙が少し苦戦してストラップを入手する。それぞれ青色と白色の色違いだ。

 更にその後もゲームセンターで一同は遊んだ。格闘ゲームでしのぎを削り合ったり、レースゲームで競い合ったり。

 そうしてゲームセンターで遊んでいた時間は、なかなかに長かった。

 四人が満足して外に出ると、午後四時半を過ぎていた。

 

「む、予定より長く遊んでしまったな……すまぬ折紙。この後服屋にいく予定であったのに、時間を消費してしまった」

「大丈夫、気にしていない。むしろ、私の予定は飛ばして最後の場所に行ってくれてかまわない」

「いいのか? しかしそれでは……」

「問題ない。洋服店で水着に着替えて士道をドッキリさせる計画はまた今度にする」

「なんで俺を狙った計画が企てられているんだよ!?」

「ははは、折紙らしい。それで、最後はどこへ行くんだい?」

「うむ、折紙がいいなら……こっちだ」

 

 十香と折紙についていく士道と華恋。

 そうして四人がたどり着いたのは、天宮市を一望できる高台だった。

 

「なるほど、ここか……」

 

 士道が感慨深く言う。彼にとってそこは、馴染み深い場所であったからだ。

 

「おお、高台なんてなかなか来たことなかったけど、これは壮観だね……」

 

 夕日に照らされる天宮市を眺めながら、華恋が言う。その横で、十香が落ち着いた笑みを浮かべながら口を開く。

 

「ここはな、私が最初のでぇとでシドーに連れてきてもらった場所なのだ」

「そうなの?」

「ああ、そうだな」

 

 士道が頷く。その横で、折紙も色々と思いに耽った顔で街を眺めている。

 

「ここは他にも色々な思い出が詰まった場所でな……ぜひ、華恋にもこの景色を見てもらいたかったのだ」

「へぇ……」

 

 華恋は言われた通り、景色を眺める。

 街は、真っ赤に燃える夕日に照らされ、紅に染まっていた。その景色は、とても美しかった。

 

「ああ、とても綺麗だよ。ありがとう、十香、折紙、士道。この数日で、私はたくさんのものを君達にもらった。そんな気がするよ」

「なーに気にすんな。お前はもう俺達の大切な仲間の一人なんだ。なんなら、これからもいっぱい楽しい経験しようぜ」

 

 士道が言う。彼の言葉に、華恋は少し感動を覚える。

 

「……そうだね。まったく、精霊達が君に惚れているのが、よく分かっちゃうよ。ま、私は好きな相手がいるから、士道には靡かないけどね」

「ははっ、こりゃ難敵だな」

 

 笑って言う華恋に笑って返す士道。和やかな空気が、四人を包んでいた。

 華恋は、穏やかな笑みを浮かべながら街に目を戻す。

 

「しかし、本当に綺麗だ。でも、見方によっては街が赤く染まってるってのは、ちょっとホラーかもね」

「言い方の問題だろ、それ」

「ははははっ、まあね。でも、今日の夕日は一段と眩しいからさ。街が真っ赤に……真っ赤、に……」

 

 そのときだった。

 華恋の視界に、急に砂嵐のようなノイズが走った。

 

「あれ……?」

 

 違和感を覚える華恋。まるで大切な何かが表出しようとしてしかし出てこないそんな不快感を伴った違和感を。

 

「痛っ……!」

 

 そんなとき、華恋は高台の木製の手すりのささくれだった部分に触れてしまう。そして、指から血を流す。

 華恋はその血を見る。すると、どんどんと頭の中の違和感が大きくなっていき――

 

「赤い街……血……炎……」

「華恋……? どうした?」

 

 士道が彼女の様子を不審に思って聞く。他の二人も、急に華恋の様子が変わったのを不思議がっている。

 一方で、彼女は――

 

「街が……(あか)く……染まる……ああ、違う……これとは違う……でも知ってる……あの街を……私は……彼は……」

 

 華恋の頭に次々と、映像が流れる。

 

 血と炎に染まった街。

 

 迫りくる黒い影。

 

 響く悲鳴。

 

 横たわる死。

 

 そして――

 

「あ、ああ……彼は……彼が……彼が、死んじゃった……夕日と炎と血の中で……やだ……死なないで……私を、一人にしないで!」

 

 その叫びの瞬間、華恋の体から強烈な衝撃波が飛んできた。

 

「うわっ!?」

「きゃあっ!?」

「ぐっ……!?」

 

 大きく吹き飛ばされた士道達。

 だが、それだけでは終わらなかった。

 

「あ……ああ……!?」

 

 華恋が頭を抑えながらその場にうずくまったと思うと、高台の手すりの向こうの空が急に『割れ』始めたのだ。

 士道はその光景に見覚えがあった。そう、それは初めて華恋が精霊として目覚めたあのときの――

 

「私の……私のせいで……嫌……嫌あああああああああああああああああああっ!」

 

 大声で叫ぶ華恋。それと共に彼女は霊装となる。白と黒の着物、そして彼岸花のかんざしの霊装に。

 そして、同時に空のひび割れがピシッ、ピシッと音を立てながらどんどんと大きくなっていく。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 天まで響きそうな咆哮。それを鏑矢とするように、ついに空が、割れた。

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 そして現れる、不定形の狼達。

 何十匹もの化け物が、空から現れ華恋を取り囲んだ。

 

「華恋っ!」

 

 倒れながらも叫ぶ士道。

 

「あああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 が、次の瞬間、華恋が叫ぶのと同時にその化け物達は一斉に首を吹き飛ばされる。

 見えない死神の鎌に刈り取られたかのように。

 そして、ゆっくりと立ち上がる華恋。彼女は、重そうな頭を持ち上げ、士道を見る。

 彼女は、泣いていた。これまで士道が見たこともない、絶望に満ちた顔で泣いていた。

 

「士道……彼、死んじゃってた……私の、私のせいで……」

 

 そうして彼女は言う。

 涙を流しながら。今にも果ててしまいそうな苦しげな声で。

 

「私が……殺した……」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。