原作と変わらないところは基本カットで 原作と時間被ってるところは適当なところでイベント処理した扱いで
描きたい場面があればその都度
視点は基本ジョーカーと人修羅
投稿してからのミス発見と改訂多くなりがちです
よろしくお願いします
5月7日……思想奪われし路 エリア1
中野原を改心させ地下への扉を開いた帰り道……。メメントスを彷徨う内に、いつの間にか謎の階層に迷い込んだ俺たちは、大振りな二丁拳銃を携えた死神に追われていた。脇道や階段もなく延々続く一本道で、もし突き当たれば逃げ道は無いという絶体絶命の鬼ごっこをしている。
「だぁーっ!もっと飛ばせ!追いつかれんぞ!」
「これで全力だっつーの!文句言う暇があったらどうにかして少しでも時間を稼げよ!捕まったら全員お陀仏だぞ!」
慌てた二人の口論を尻目にバックミラーを覗くと、ボロ布の死神はまだしつこく追ってきていた。俺たちを仕留めようと鎖を振り回し、先端を叩きつけてくる。慌ててハンドルを回し、運頼みで何とか攻撃を回避。鎖が直撃したレールの末路を見て、ニャータリーエンジンは悲鳴と回転数をあげる。
「モナ、どうなってんだよこの階層は!行けども行けども脇道一本ねえじゃねぇか!」
「ワガハイだって知るかぁ!駄目だ、もうエンジンが限界だ!」
「ざけんなもっと踏ん張れ!」
「ワガハイが何分全力疾走してると思って…!」
「……あれ?ちょっと、みんな前見て!」
「空間がうねってる……?馬鹿な、今はターゲットはいないはずだ!」
「迷ってる暇はない、突っ込むぞ!」
メメントス ???
「う……」
気づけば俺たちは全員地面に倒れ込んでいた。空間の捻れに突入した時気を失ったのか?……辺りを見渡しても付近は静まり返っていて、もう鎖を引き摺る音も聞こえない。
緊張が急に緩和したことで、強い疲労感が体を支配した。警戒も後回しで座り込んでいるうちに、転がっていたみんなも順番に目を覚まし始めたようだ。
「うぐ……。みんな、無事か?」
「う〜ん……あたしは平気。逃げきれたのかな?」
「とんでもねぇ目にあったぜ……」
無事に逃げきれた事で一安心ではあるが、帰り道が分からない。入ってきた場所は空間が塞がってしまい、もう戻ることは出来なさそうだ。仮に戻れても、死神との鬼ごっこが再開するだけだろうが。
「モルガナ。ここから出口の方向は分かるか?」
「う〜ん……。多分、このまま進めば上への道がありそうだ。何とか帰れそうだな」
「助かったぜ……。このまま帰れねーとかまじ勘弁だかんな」
「にしても……ここ静かすぎない?ちょっと不気味」
気になっていたことを杏が言及する。ここまでの階層ではシャドウ達のざわめきや列車が走る音、風が吹き抜ける音、と常になにか反響していた。しかしここでは、一切何も聞こえない。
風景はこれまでと然程変わらないが、取り残された様な静かさに背筋が薄寒くなった。
「……進もう。今んとこシャドウの匂いもしないし、とにかくこのまま進めば帰れるんだ。行こうぜ」
モルガナのスタミナが回復するまでしばらくは歩くことにした。追われていた時と変わらず一直線に伸びる道を歩き続けていると、ふと薄暗いトンネルの奥に光るものが見えた。みんなも気づいたようで訝しげに目を凝らしている。なんだろうと思ったが良く見えない。近づくにつれ、それが人の形をしている事が段々分かってくる。
「ちょ、アレ……?」
「シャドウの気配じゃないぞ……?メメントスに、ニンゲン……!?」
この距離ならはっきり見える。男だ。背丈や年齢は俺と同程度。しかし、上半身は何も着ておらず、全身に黒と薄く光る水色のラインが入っている。よく見ると項に生えている……あれは角、だろうか?
少年をじっくりと観察していると、俺たちに気づいたのか、彼はゆっくり振り向いた。
暗がりの中で、その金の瞳は夜空の月の様に冷たく輝く。少し虚ろな視線に吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
「とにかく、シャドウじゃねえんだよな?……おーいあんた!誰だか知らねえけど、一人じゃ危ねえからこっちに来い!」
「そ、そうだよね。もしかしたら私達に巻き込まれたのかもしれないし……!」
少年に口を開く気配はない。微動だにしないまま俺たちを観察している。じっと数十秒時間をかけ、言葉が通じているのか、俺たちが不安になり始めた頃、ようやく言葉を発した。
「ここは何処だ?」
「ここは……なんて言やいいんだ?」
「渋谷の地下だ。少し危険な場所だが、ワガハイ達に着いてきてくれれば無事に帰れる」
「シブヤにまだこんな場所が……?地下鉄の入口なんて残っていなかったはずだが……。まあ、いい。お前達、出口を知っているなら案内しろ」
「偉そうな奴だな……。お前、なんて名前だ?どうやってここまで来たんだよ?」
「知らない。気づいたらここにいた。素性については、わざわざ教えてやる必要はないな。俺は急いでいる」
「なんだテメェ、ムカつく物言いしやがって……」
「おい、スカル……」
不遜な態度に軽く腹を立てた竜司が男を睨みつける。男は面倒そうに溜息をつくと、竜司を更に挑発した。
「死にたくなければ黙って案内しろ。お前一人いなくても、案内は他の三人でもいい……」
「テメッ……あ゛っ…ぐぅ…!」
竜司が男に掴みかかろうとした瞬間、膝からその場に崩れ落ちた。竜司は苦しそうに呻きながら腹を押さえている。竜司の腹があった位置には、男の握り拳が置かれていた。
杏が慌てて竜司に駆け寄り、『ディア』を唱え抱え起こす。
「スカル!」
「これでいいか?手加減はしてやったぞ。足りなければ、次は一人を残して他は殺す」
「待て!わかった、すぐ案内する!」
「それでいい。先導しろ」
「ぐ……クソッ、なんなんだこいつ!」
「よせスカル。何者だか知らないが、あいつ、明らかに危険だ。案内するだけで済むならそれでいい」
俺たちは男を連れて出口へ向かった。男は一定の距離を保って後ろを歩いている。竜司は男を強く警戒しているが、当の男は何処吹く風だ。
「風が吹いてる。この先が出口か?」
「ああ、このままそっちに行けば上へ行け……待て、この音は……!」
―――前方から鎖の音がする。こっちに近づいて来ているようだ。
「お、おい!この音って……!やべぇじゃねぇか!どうすんだよ!」
「またあいつ……!?後ろは行き止まりだし、逃げ場無くない!?」
「留まりすぎたか……!こいつはまずいな……。一か八かだが、煙幕を撒いて駆け抜けるしか手はねえ!」
「……俺が片付ける。そこをどけ」
死神に慌てふためく俺たちに、男は軽く言った。前にいる俺たちを追い越すと、そのままずんずんと死神に向かっていく。
死神が男に気づき、舐め回す様に眺める。銃口を向けるのと同時に、撃鉄を起こす音が聞こえた。
「馬鹿!死ぬぞ!」
「待てスカル、今なら逃げられるかもしれない!あんなやつほっといていいだろ!?」
「だからって見殺しにしていいわけねぇだろ!」
勝負は一瞬だった。闘気の膨張……いや、爆発。ほんの僅かに男が構えた瞬間、凄まじい衝撃が俺たちを襲った。力の逃げ場のないトンネルで、爆圧は容赦なく俺たちを吹き飛ばし、何とか目を開けた時には、死神は脳天から真っ二つに断ち割られ、その身体は赤い粒にほつれ始めていた。
「……さあ、早く行け。出口はもうすぐなんだろう?」
「な……」
「まじかよ……」
これが、『間薙 シン』との出会いの一部始終。そして、非日常に巻き込まれた怪盗団の運命が、更に狂い始めるきっかけだった。