ペルソナ5 混沌の反逆者   作:結露

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10.黒猫と少年

6月21日 放課後 メメントス

 

真へ怪盗団の説明をする為メメントスへ来た。シンは約束があるので遅れるらしいが、その間に俺たちとシンの関係を説明している。

 

 

「……シンが貴方たちに手を貸す事になった経緯はわかった。けど、肝心のシンの事は、彼が、その……悪魔?って事以外何もわからないわね」

 

「そうなんだよね。私たちも気にはなってるんだけど……」

 

「そもそもシンが人間じゃねえってどこで知ったんだよ?」

 

「夢の中で鼻の長い老人が……」

 

「夢かよ!んで誰だよ!」

 

「直接聞いても、あんまり話したくなさそうなんだ。肝心な事は教えてくれない」

 

「シンが俺たちに手を貸す理由は『帰る手がかりを探すため』だったな。だが、普通に帰るだけならいくらでも帰りようはある。ならば、帰る場所は少なくとも普通には行けない場所と言う事だ」

 

「忍者の隠れ里とかか?」

 

「漫画か。それにそんなの、私たちに協力したって何にもならないでしょ」

 

「私たちが手がかりになるかもしれない……。普通に考えれば、異世界関係よね。しかも、彼自身は自分がどこから来たのか覚えている節がある」

 

「モナみたいに異世界から来た?」

 

「なるほど……その可能性はあるな。産まれた時からこんな環境にいれば、あんな強さにもなろうというものだ」

 

「ううん、それも違うと思う。小さい頃に良くした遊びとか、どんな本が好きだったっていう話を聞いたから」

 

「現実で育ったのに異世界に帰りたい?どういう事だよ」

 

 

行き詰まってみんな黙り込んでしまった。

これ以上は材料がない。

 

 

「もうひとついいかしら。シンの力はペルソナなの?」

 

「……いや、あれはペルソナじゃないな。それっぽい匂いはするが……どちらかといえばシャドウに近い」

 

「シャドウに……」

 

「それも謎だな。どこであの力を手にしたのか……」

 

 

今は考えてもわからない。先にミッションを済ませよう。

 

 

 

 

 

メメントス 節制奪われし路 ???

 

怪チャンのミッションを消化した。メメントスの深度が増すほどシャドウは力を増しているが、俺たちも順調に強くなっているようだ。

 

 

「力の差が実感できる戦いだったわね。この後はどうするの?」

 

「一度戻ろう」

 

「うむ。じゃあワガハイの中に……。あれ?」

 

「どうしたモナ?」

 

「オマエら、アレを見ろ。入ってきた入口が……閉じちまってる」

 

「は!?嘘だろ!?」

 

 

入口を確認すると、確かに閉じてしまっていた。渦状のくぼみになった入口はもう開く気配がない。

 

 

「おいおい……ちょっと目を離しただけで閉じんのかよ。どうすんだ?」

 

「そんな事これまで一度もなかったのに……仕方ない。先に進もう。どこに繋がってるかわからんが、ここにいても状況が好転することはない筈だ」

 

 

モルガナカーに乗り込んで出発する。次は真が運転してみたいと言うので任せる事にした。しばらく走らせるが出口は見当たらない。だが、今回は死神もシャドウも見当たらないから楽でいい。

 

メメントスで妙な場所を走っていると、シンと出会った時の事を思い出す。あの時は刈り取る者に追われ続けて、大変だった。

ふと、この前見た夢の事を思い出した。金髪の老人……。新たな協力者、と言っていた。

 

そういえば、シンと出会った時もこんな状況だった気がする。突然迷い込んだ、シャドウが出現しない静かなメメントス……。

 

 

「……ん?おい待て、何か聞こえないか?」

 

 

祐介の指摘に、真は一旦停車しエンジンを切る。耳を澄ますと、確かに何か……人の声が聞こえるような気がしないでもない。

反響したエンジン音だったとしてもおかしくはないが……。

 

 

「向こうの方からだが……大分遠くからだな。もう少し近づいて見ないと判別がつかん」

 

「こんな所で、人の声?」

 

「……クイーン、顔めっちゃ青くなってるけど」

 

「運転代わろうか」

 

 

運転手を交代し音の発信源へと向かう。近づくにつれ、確かにはっきりと人の声だとわかった。

だが、この声は何処かで聞いた事がある気がする。というか、ほとんど毎日聞いているような……。

 

 

「……惣治郎?」

 

「え……?でも、確かに言われてみれば……」

 

「惣治郎って、誰のこと?」

 

「蓮が居候している喫茶店のマスターだ。当然ペルソナ能力は持っていない」

 

「何だかわかんねえけど、早く助けないとやべぇんじゃねぇか!?」

 

「ああ、早く…」

 

「待てオマエら!どう考えたって怪しいだろ!?」

 

「本物だったらどうすんだよ!」

 

「待ってよ!この声、なんて言ってるの?」

 

 

話し合っている間にも惣治郎の声は聞こえ続けている。その声は、確かに助けを求める声だった。

 

 

「ほら、聞こえてんだろ!仮に罠でも行くしかねえ!」

 

「……ったく、しょうがねえな!ワガハイもご主人には恩がある。行くぞオマエら!」

 

 

 

「……確か、この辺りだったわよね。声がしてたの」

 

「その筈だ。何も見当たらないが……やはり、シャドウのイタズラか?」

 

「どうだかな。にしても、なんだか生臭い……待て。ここでシャドウが倒された後の匂いがする。ついさっきだな」

 

「なんだと?」

 

「誰か居たって事か?そいつがどこに行ったのか……おわあぁああ!」

 

 

辺りを歩き回っていた竜司が唐突に悲鳴をあげる。よく見えないが何か見つけた様だ。

 

「どうした、スカル!」

 

「血……血が……」

 

 

竜司が腰を抜かしたまま指を指した床を見ると、まだ乾いていない血が大量に張り付いていた。しかも、よく見るとそこら中に細かい血痕が散っている。一人でこの量を出血したとすると、もう一刻の猶予もない。

最悪の想像が頭を過ぎった。

 

 

「こ……この血は……まさか……」

 

「落ち着けジョーカー!血痕は向こうに続いている、少なくともここでシャドウを倒した奴は生きてるって事だ!急いで後を追うぞ!」

 

「……ああ、急ごう!」

 

「ジョーカー大変!」

 

「どうした!」

 

「クイーンが血を見て気絶してる!」

 

「弱っ!」

 

「早く積み込め!」

 

 

 

 

 

惣治郎の声はもう聞こえない。地面に落ちた血痕を見つける度不安は募る。惣治郎がメメントスに迷い込む……。絶対にないとは言いきれない。俺たちのきっかけだってカモシダパレスに迷い込んだ事だ。

 

アクセルを踏みしめて長い直線をとばしていると、不意に小さな影がライトに照らされた。

 

 

「ジョーカー!あれ……」

 

「……猫?」

 

 

目の前に現れたのは綺麗な緑色の瞳をした黒猫だった。一見外傷はないようだが、足取りは右へ左へふらついている。

猫は、慌てて車から降りる俺たちに気づいたようだが、逃げる様子はない。鳴こうとしたのか、僅かに口を開けたその瞬間倒れ込んでしまった。

 

 

「猫!」

 

 

気を失った猫を抱きかかえる。シャドウじゃない。こんな所まで迷い込んで来たのか?いや、あるいは……。

 

 

「危ないっ!」

 

 

剣戟。顔を上げると、俺に向かって振るわれた刀を祐介が受け太刀していた。金属が擦れる音が響く。俺が下がると同時に祐介は硬直を振り払った。

しかし、また直ぐに激しい打ち合いが始まる。

 

 

「ッ……!」

 

「やる気か!」

 

「手伝うぜ!」

 

 

襲撃者は竜司と祐介を相手に、刀一本で全て受け流し機を伺っている。前のめりになり過ぎれば恐らく仕留められる。

鋭い動きに力強い剣閃。明らかに強い。……が、追えない速さじゃない。俺たちなら充分対応出来るはずだ。

 

襲撃者は、学生帽を目深に被り、学生服に外套を羽織った黒ずくめの少年。マントの内側で金属製のベルトが鈍い光沢を返している。

得物は刀。……見えにくいが、腰に拳銃。

道が狭くて全員一度にはかかれないが、危なくなったら安全に後ろに下がれる。じっくり相手をしよう。

 

黒猫を真に預け前線に出る。

 

 

「突っ込みすぎるな!カウンターを狙ってる!」

 

「おうよ!」

 

「フォックス了解!」

 

「りょーかい!」

 

「動き止めるぜ!」

 

 

祐介と切り結ぶ少年に、竜司が側面から射撃する。後ろに下がった少年の逃げ道を杏がアギラオで塞ぎ、俺が逆サイドから挟撃。

凌がれるが、竜司と祐介も別方向から再度詰めている。このまま押し切れる!

三人で決めにかかった瞬間、少年は外套を大きく翻した。一瞬視界を遮られたが、逃げ道はない。

 

 

しかし、外套の中に手応えはなかった。

 

 

「な……っ!」

 

「下!マント脱いでる!」

 

 

杏の声で視線を下に向けるが、もう遅い。屈んだ少年は収め直した刀に手をかける。

 

 

「シキオウジ!」

 

 

一閃。いや、三閃。峰打ちだったが、咄嗟にペルソナを付け替えた俺以外の二人はカウンターの直撃を受けて戦闘不能に陥った。

状況は不利。作戦を考えつつ少年を睨んだ俺は、自分の目を疑う光景を目にした。

 

 

「ジョーカー見ろ!なんだあの傷は……!」

 

 

服の色も相まって分かりにくかったが、外套を脱いだ今ならはっきり見えた。右脇腹に貫かれたような穴。そこから大量に出血しズボンと靴を濡らしている。

今更ながら、よく見ると呼吸は乱れ足にも力が入っていない。敵に弱みを見せまいと必死に庇っていたのか。

 

傷の大きさに動揺していると、少年が力の篭った声で呟いた。

 

 

「ゴウトを……ゴウトを、離せ……!」

 

 

少年の目は虚ろだ。あの出血量では当然だろう。もしかすると、最初からほとんど意識がなかったのかもしれない。

すぐにでも制圧して治療しなければ……。

 

 

「下がっててくれ。俺が止める」

 

 

後ろの三人を制止する。一騎討ちだ。

少年は、左手で剣先に軽く触れ、狙いを定めて突進してくる。俺のペルソナはシキオウジのまま。物理攻撃は通用しない。

タイミングを合わせた突進で強引に気絶させてしまおう。

 

 

―――ここだ!

 

 

攻撃を受ける瞬間、剣先から言い様のない悪寒が走った。

反射的にナイフで刀を跳ね除ける。俺の左胸にくい込んだ剣先は、肩口の方向へ逸れ浅くない刀傷を残した。

 

ぐっと痛みを堪え返しの刀を受け止める。鍔迫り合いへ持ち込み必死で押さえ込んでいるが、力では勝てなさそうだ。このまま押し切られるのも時間の問題だろう。

どうするか、と考えていると、突如として手応えがなくなり、少年はその場へと崩れ落ちた。

 

 

「……。シン……」

 

 

倒れる直前、か細い声だったが俺は聞き逃さなかった。確かに今、この少年はシンの名を呟いた。

 

 

「おい、大丈夫かよみんな!」

 

「俺は平気だ。早く、こいつに回復を……」

 

「馬鹿、オマエもだよ!それに、こいつのこの出血はワガハイの回復魔法じゃ間に合わん!急いで病院へ運ばないと……」

 

「運転は私がするわ!早く乗って!」

 

「出口はもうわかってる!ワガハイの言う方に進んでくれ!」

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