ペルソナ5 混沌の反逆者   作:結露

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22.砂漠

7月25日 昼間 屋根裏

 

あの後惣治郎から凡その事情を聞いた俺たちは、翌日、再度話し合う為に集まり直していた。

俺が参加する意味はあまりないが、ここまで関わってしまっては事の顛末が気になるし、双葉についても事情を聞いてさよならじゃバツが悪いだろう。

 

 

「双葉のパレス、やるでいいんだよね?」

 

「本人が望んでるんだもの。気に病む必要はないと思う。双葉の心が治ればマスターも助かるし、メジエド退治も手伝ってもらえる」

 

「双葉なら侵入者の心配もない」

 

「俺も賛成だ」

 

「マスターが昨日語ってた、『双葉に色々あって』っつーのも気になるしな」

 

「待て、オマエら。パレスの探索だが、今まで通りにはいかないかもしれないぞ?」

 

「なんで?」

 

「『本人に頼まれて、心を盗みに入る』なんて、極めてイレギュラーなケースだ。パレスの主がどういう心持ちでいるのか、どういう歪みなのか、見当もつかない」

 

「予想外の事態が起こる可能性が高い。それでも行くか?」

 

「行こう」

 

「わかった。用心しろよ」

 

「じゃあ、キーワード探すか」

 

「今、分かっているのは『佐倉 双葉』『佐倉 惣治郎宅』だけね」

 

「あとは『何』と思ってるかだな?」

 

「とりあえず、家の前まで行こう」

 

「マスターは店番だね?変に思われないように、気をつけないと」

 

 

 

「パレスのキーワードは……」

 

「引きこもりだとしたら家を『何』だと思ってるかだろ?」

 

「出られないなら『牢屋』じゃね?」

 

「出口のわからない『迷宮』?」

 

「うーん……『オアシス』とか?」

 

「引き返せない……。『塔』はどうだ?」

 

「ダメだな。だったら逆に『地獄』はどうだ?」

 

 

『該当しません』

 

 

「手がかりが少なすぎる……」

 

「直接訊ければいいんだが」

 

「なら、行こうぜ、双葉んとこ」

 

「何て言って入れてもらうの?」

 

「忍び込む」

 

「本気で?でも、さすがに鍵かけてるんじゃない?」

 

「鍵開けはワガハイにまかせろ。今回ばかりはやむなしだろう。昨夜の侵入の成果で、フタバの部屋の位置はわかってる」

 

「マスターに出食わしたら?今度こそ誤魔化しは利かないよ」

 

「店にいるから大丈夫じゃない?」

 

「腰が引けてんな、真?俺らは、こんくらい、いくつもくぐり抜けてきたぜ?」

 

「……それしか、ないのよね」

 

「いざとなったら気絶させよう」

 

「やめてくれ」

 

「双葉は蓮に接触してきたんだし……蓮になら、話してくれるかもしれない……」

 

「……わかった。行きましょう」

 

 

 

「ここがフタバの部屋だ」

 

「双葉ちゃん?いるんでしょ?」

 

「……返事がないな……」

 

「双葉ちゃん……いる?昨日、びっくりして叫んでごめんなさい。暗くて怖かったから」

 

「無反応だぞ」

 

「骨が折れそうだな……」

 

「聞いてるよね、アリババ?」

 

 

返答の代わりに、蓮のスマホからバイブレーションの音がする。

 

 

「アリババ?」

 

『なぜ、来た』

 

「なんでアリババだと反応すんだよ……」

 

「貴方、佐倉 双葉でしょ?」

 

「無反応だな?」

 

「名前を出されるのがイヤなの?」

 

「のんびりしてるヒマはねえぞ?アリババの正体より、キーワードが先だ」

 

「私たち、貴女のことが知りたいの。でないと、心は盗めない。ここに来た理由も、パレスに入るキーワードが必要だったから。そのために、アリババじゃなくて、佐倉 双葉本人と話がしたいんだけど」

 

「直接顔を見せなくてもいい。チャットでもいいから、答えてほしい」

 

『わかった』

 

「じゃあ、私たちのリーダーが……。ルブランの屋根裏に住んでる彼が、貴方と話をしたいって」

 

「頼んだよ、蓮。キーワードを聞き出して」

 

 

蓮はしばらくアリババと会話していたが、とうとうそれらしい言葉を引き出した。

 

 

「墓場?」

 

「まさか、それ?」

 

「『墓場』で入力してみろ」

 

『入力を受け付けました。目的地までのルートを検索します』

 

「きた……!」

 

『どうした?これでいいのか?』

 

「ええ、十分よ。貴方の依頼をこなしたら、手を貸してくれる約束、忘れてないわよね?」

 

『わかってる 取引だ』

 

「じゃあさっさと行こうぜ。ポチッとな」

 

「バカ、ここで押すなっ!」

 

 

 

 

奇妙な浮遊感と共に視界が歪む。やがて、突き刺すような眩しさと埃っぽい風が体を包み、目を開けると、そこは荒涼とした砂漠だった。

『向こう』を彷彿とさせるような雰囲気だが、青い空といい照りつける陽射しの熱さといい、やはり本物?の砂漠は違う。

 

 

「砂漠だな……」

 

「見りゃわかるわ。つうか、あれ?俺ら服まんま?」

 

「フタバ本人が『盗め』っつってんだ。敵視される方がおかしい。敵視されてないなら服装は変わらん、そういうこと」

 

「俺とモルガナは元々こっち側だからか、いつも通りだな」

 

「つか、『用心しろ』って言ったろ!いきなり押すんじゃねえよっ!」

 

「だから砂漠に飛ばされちまったの?墓場どこ?クソあちいんだけど」

 

「部屋のど真ん前で侵入したのに……中じゃないんだ?」

 

「よほど他者を遠ざけたいのかもね」

 

「なるほど……」

 

「もし家の外から侵入してたら、どれだけ離れたところに出てたかわからないね」

 

「お?俺逆にファインプレー?」

 

「結果オーライなだけだろ……」

 

「金城の銀行とは正反対の、荒涼とした感じ……」

 

「さっさと行こうぜ。パレスどこよ?」

 

「あっちか?」

 

「あ、キラキラしてんな?」

 

「砂漠の墓……なるほど。とにかく、あそこに向かいましょう」

 

「遠くない?」

 

「歩くの!?」

 

「まさか!肉球ヤケドするわ!」

 

 

モルガナが車へと姿を変える。こんなに目の細かい砂で走り出せるのか?

 

 

「待ってました」

 

「冷房ガンガン効かせとくぜ!」

 

「気が利くじゃん!」

 

「へへ、ま、まあな……」

 

「最初だけ後ろから押してスピードをつけてやる。道中は屋根の上に乗らせてもらうぞ」

 

「よっしゃ!出発だ!」

 

 

 

 

大きな砂埃を巻き上げながら、モルガナカーは進んでいく。屋根の上で座っている俺は風で巻き上がる砂埃をまともに浴び、髪の毛に砂が絡んで非常に埃っぽい。

黒い車体は尚更熱を吸収し、余裕で肉に火を通せる温度だろう。まともな身体なら大火傷だ。車内もクーラーがついているとはいえ、この気温じゃ暑い事には変わりないだろうし、こういう時はこの身体も便利だな。

 

途中、謎に車の挙動が狂い振り落とされそうになった。中でなにかあったらしいが、少しは上に乗っている人の事も考えてほしいものだ。

 

 

 

 

「あっつ……」

 

「エアコン全然効いてねえじゃん!なんだよ、あの生温い風は!」

 

「あれが限界なんだよ、文句言うな!」

 

「ったくほんと半端だな!」

 

「ああ?やるのか?」

 

「もう、うるさい!暑いんだからイライラさせないで!」

 

「まさかパレスがピラミッドとはね……」

 

 

俺たちの前に聳え立つ巨大なピラミッド。実物を見たことはないが、写真や映像で観たものよりは劣化が少ないというのか、綺麗な造りだ。

入口周辺の柱には、知らない文字が描き連ねられている。これも実際にある文字なのだろうか?

 

 

「なあ、ピラミッドって墓なんだろ?」

 

「王墓だな」

 

「それが有名だけど、諸説あるわ」

 

「死者の復活装置、なんて言われてたりもするし」

 

「死者の復活、ねえ……」

 

「昨日の双葉についての話を聞いたあとだと、少し思うところがあるな」

 

「あ……なるほど……」

 

「それにしても美しい……。黄金比……完璧だ……」

 

「おい、聞いてねえぞコイツ……」

 

「つかさ、もう、入らねえ?溶ける……」

 

 

 

 

「うお、中、涼しーッ!なんだこれ、冷房でもあんのか!?」

 

「現実の双葉の部屋に、冷房が効いてるせいかも。とにかく、助かったわね……」

 

「ピラミッドの中は実際涼しいらしいぞ。巨大な石造りの建物だからな」

 

「てか、中に入っても服が変わんない。こんなの初めて」

 

「警戒されてないのはいいが……周りを見ろ。いきなり四方全部壁だ」

 

「ま、墓だしな……入り易くはなってないだろう。辺りを探ってみようぜ」

 

「……待て。お前ら、その姿で同じように動けるのか?」

 

「んー……大丈夫そう。姿は変わらないのにペルソナ出せるのって、変な感じ」

 

「怪盗服は敵意や攻撃を防ぐ為のものだからな。ペルソナ自体は異世界なら好きに使える」

 

「そういうものか」

 

 

 

 

 

双葉のシャドウと話していたら突然全員の服が変わる。理由はわからないが警戒されたようだ。

階段の上から転がり落ちてきた大玉。破壊することも考えたが、メメントスの壁が壊せなかった事を考えて大人しく逃げる。大玉は何とか横に隠れた俺たちを飛び越し、崩れた穴に落ちてようやく動きを止めた。

 

 

「助かった……間一髪ね」

 

「何!?何なわけ!?」

 

「事情を訊こうにも扉を閉じられた様だな。どうする、行ってみるか?」

 

「いや、ここは一旦退いた方がいい。思ったより単純じゃなさそうだ。ちゃんと準備してから来ないか?」

 

「同じことを考えていた」

 

「そうね。一旦撤退して、後日しっかり準備してからパレスに入り直しましょう」

 

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