ペルソナ5 混沌の反逆者   作:結露

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25.フタバパレス 近くの街〜神殿 地下

 

7月31日 フタバパレス 遠くに見える街

 

「到着だな。ここがシャドウが言ってた『街』か」

 

「閑散としているな……。『盗賊しかいない』と言っていたが」

 

 

街には、とても人が住んでいるような気配はない。確かに、自分の家以外がこんな砂漠では認知存在も何も無いだろうが、それなら、盗賊とは一体誰の事だ?

気配を探りながら、静けさに満ちた街を捜索する。野良シャドウは数匹見かけたが、それだけだ。フタバは盗賊に大事なものを盗まれたと言っていた。パレスの主に逆らえるなら、盗賊は野良シャドウではなく、現実の人間を模した認知存在だろうと思ったが……。とてもそんな人物がいる気配は無い。

 

 

『よお、兄さんら。探し物かい?へへ、何か来やがったと思って出てみりゃ、何の事あねえ……』

 

『砂漠へようこそ、同業者さんよ』

 

 

一つの広場に辿り着いたところで、ふらっと近寄ってきたシャドウに声をかけられる。……確かに、これまで見てきたシャドウとは少し様子が違うが、このシャドウが盗賊?

 

 

「同業者だと?」

 

「んな事どーでもいいわ。オメー『盗賊』か?盗んだモン出せよ」

 

『ハッ!呆れたもんだ。同業狩りとは、随分な悪党じゃねえか。……やってみろよ、ただし追い付けたらな』

 

「ちょっ……!あーもう!スカル!行っちゃったじゃん!」

 

「はあ!俺え!?」

 

「話はあと。とにかく今はヤツを追いましょ」

 

 

逃げ出した盗賊を俺たちは慌てて追いかける。先んじて逃げ出されたので少し焦ったが、盗賊の動きは、普段メメントスで相手している二人に比べればなんて事はなく、あっさりと首根っこを掴んで捕える事が出来た。

盗賊は、捕まるや否や下手に出て許しを乞う。

 

 

『お、おい、マジになんなよ。な?ここは見逃してくれ』

 

 

盗賊のターバンと襟元を強く握る。更に、真と竜司に左右から銃口を突き付けられ、それを見た盗賊はお手上げだとでも言いたげに手をパタパタと振った。

 

 

「盗んだものを出せ」

 

『お前らだって墓荒らしに来たんだろ?エモノはまだある、お互い分け合おうじゃねーか』

 

「一緒にしないでよ!私ら双葉ちゃんを助けに来たんだから。あのお墓から盗んだ物返して!」

 

『やれやれ、どうしてもかい。ま……そういう事なら仕方ねーな!』

 

 

盗賊のターバンが、急に中身が消えたように手応えを変える。危険を感じ咄嗟に手を離すと、俺の手があった空間を、ターバンから飛び出した鋭い嘴が裂いた。

二人の銃口がほぼ同時に火を噴く。しかし、胴体部から飛び出した翼には強い気流が渦巻いていて、軌道を乱されあえなく宙へ消えた。

 

 

「来るぞ!」

 

 

盗賊の抜け殻は引き裂かれ、中から金色に輝く翼を持った鳥男が全身を現した。鳥男は俺たちの頭上で、風に乗って滑空しながら狙いを定めている。

それぞれ銃撃で応戦するも、街を逃げていた時より格段に素早くなっている。悠々と弾丸の間をすり抜けると、嘴を突き出し、ジェット噴射の様に猛加速してきた。狙いは……竜司だ。

 

 

『お前が一番遅そうだ!』

 

「テメェか俺か、だろ!いただき!」

 

 

竜司は抜群のタイミングで嘴へ武器を振り下ろし、強引に地面に叩き落とした。もうもうと立ち込める土煙が姿を隠しているが、まだ気配は消えていない。

煙の中から、振りほどく様に翼の殴打。僅かに意表を突かれたようだが、眼前に迫るそれを、竜司は危なげなく一歩下がって躱す。

 

 

「へいへい、どーしたよ。ご自慢の速さはそんなもんか?」

 

『……馬鹿め。手応えあったぞ!』

 

 

瞬間、突如竜司の頬が鋭く切り裂かれる。傷は長いが、それほど深さはない。支障はなさそうだが、一体なぜだ?ここから見ていても、今のは確実に躱していたはず……。

 

 

「んな、なんだぁ!?」

 

「カルメン!『アギラオ』!」

 

「スカル、代わって!」

 

『『ガルダイン』!』

 

 

困惑した竜司の隙を突き、鳥男の追撃。真が竜司を後ろに引き倒し、前進。振るわれた翼を拳で受け止め、僅かな拮抗の後強引に押し返す。

怯んだ鳥男が、迫るアギラオへ向けガルダインを放つ。鳥男の至近距離で大きな爆発が巻き起こり、鳥男も派手に巻き込まれた。が、まだ終わってない。

巻き上がる炎を翼で振り払った鳥男は、体の所々を焦がしながらもまだ余裕がありそうだ。鳥男は再び、先程より更に速度を上げ、今度は俺に突進してきた。

 

 

「ジョーカー、『スクカジャ』だ!」

 

「助かる!アルセーヌ!」

 

 

鳥男に向け、アルセーヌが踵の刃を突き出し防御。まず嘴、そして鉤爪で大きく弧を描く連撃。速いが、楽に受けれる速度だ

アルセーヌの片足で全ての攻撃を逸らし、トゥキックをみぞおちに突き込む。

 

もう一撃……!宙へ逃げた鳥男に追撃をしようと、右脚を踏みしめる。しかし、瞬間、右脚に激痛が走った。

予想だにしない痛みに生まれた隙を、モルガナと杏が魔法でカバー。

なるべく平静を保ってダメージを確認する。アルセーヌの右脚に幾重にも裂傷。俺にも同じ部位に、踵周辺からふくらはぎや脛まで傷が広がっている。また……どうしてだ?俺も竜司も、攻撃は一度として喰らっていないはず……。

 

 

「ジョーカー、風よ!そいつの攻撃を受けちゃダメ!気流に斬られるわ!」

 

「クイーン、俺の傷は大した事ねえ!それより自分の回復を……」

 

 

竜司の回復をしていた真が叫ぶ。真は、さっき攻撃を受け止めた右拳全体を痛々しく刻まれていた。ただ弾くよりも長く触れていたからか、俺と比べてもその傷は酷い。

 

 

「近づけないってんなら……!」

 

「ワガハイらの出番だぜ!」

 

 

モルガナと杏が魔法で激しく攻め立てる。それでも、巧みな気流操作で直撃を取れない。あの気流をどうにかしなければ……。

あの気流が永続ではなく任意で発動しているならば、何かしらの方法で不意を打てれば当たるかもしれない。このまま時間をかけ続けるより、ダメージ覚悟で確かめる価値はある。

 

 

「モルガナ、合わせてくれ。スカルは隠れて待機。トドメは任せた」

 

「任せろ!」

 

「了解!」

 

 

アルセーヌを突っ込ませ、格闘戦に持ち込む。当然、ダメージは受けるが必要経費だ。

間にアルセーヌがいることで、俺の手元は見えない。アルセーヌの影から三発の弾丸を発射する。最大まで察知を遅らせるため、最早しがみつく程の距離。交錯した部位どころか、全身に斬りつけられた痛みが走る。それでも、ここまで近づければ……!

 

弾丸が到達する直前でアルセーヌを引っ込める。背後から、鳥男の前に突如姿を現す弾丸。……しかし、鳥男は微塵も驚いた様子を見せずに、弾を風で逸らした。

 

 

『馬鹿が。発射音が丸聞こえなんだよ。それが作戦……ぐわあっ!』

 

「だからワガハイが必要なのさ。戦闘中にパチンコの発射音まで聞こえねえだろ?」

 

 

両翼にパチンコ玉の直撃を受け、鳥男が墜落する。翼からは羽根が舞い散り、身体は地面に叩きつけられる。だが、それだけでは大したダメージにはならない。

鳥男は呻き声をあげながら立ち上がろうとするが、そこでなんと、自分の身体が地面から離れないと気がついた。地面に触れた面が凍りついて張り付き、更に四肢の先から氷の手が伸びてくる。

 

 

「バサバサとやかましかったが、ようやく降りてきてくれたな。もう少しのんびりしていてもらおう」

 

『なっ、てめえ……。くそっ、『マハガル……』

 

「やらせっかよ!」

 

 

物陰から飛び出してきた竜司が、四つん這いの頭目掛けて特大の一撃を振り下ろす。氷像になりかけていた鳥男は粉砕され、完全に沈黙した。

 

 

「よっしゃ、大勝利!」

 

「中々手強い相手だったわね」

 

 

 

 

フタバパレス 神殿内部

 

盗賊から盗まれた物を取り返してきた。盗まれた物とはこのパレスの地図だったようで、シャドウがパレスを荒らす為に奪っていったらしい。

パレスの中を野良シャドウに好き勝手されているなんて、これまでの悪党共では信じられない事だ。これは本人がオタカラを盗まれたがっている、パレスの主である事を放棄しているからだろうか?だから、シャドウに対する支配力が弱まっている?

いや、結局オタカラを盗まれる事が望みだから、むしろ主の思惑通りに動いてはいるのか。

 

 

「随分、好き勝手にやられてるのね。貴方のパレスなのに」

 

『とにかくそれをやる。奥まで……あ』

 

 

神殿のどこかで、ガコッという音がした。何かを起動したような音だ。それを聞いた双葉のシャドウは『うっかり』という表情をしたあと、一人宙へ消えていく。

 

 

「何だ……?」

 

「え、双葉ちゃん消え……」

 

「……む、ライドウ、跳べ!」

 

 

何かしらの罠を警戒しようとした瞬間、フッと足元の感覚が消失する。

一人回避の間に合ったライドウさんをその場に残し、俺たちは真っ逆さまに穴の中へ落ちていった。

 

 

「マジかあああああああああああ!」

 

 

 

 

フタバパレス 神殿地下

 

「……おい、生きてっか?」

 

「いったた……大玉の次は落とし穴……。私ら、なんか怒らすような事した?」

 

「怒らせるというか……。拒んじまう衝動を、自分でもどうにも出来ない……。そういうことなんじゃないか」

 

「防衛本能かもしれないわね。あんな過去があったんだもの。人間不信も、無理のない話よ」

 

「ジョーカー、絶対救おう!双葉ちゃんの心のドア、開けてあげよう!」

 

「それはもちろんだけど、まず脱出だ」

 

「ああ、まずは自分たち自身の心配からだ。地上への出口を探すぞ。このままじゃワガハイらの墓になっちまうぜ」

 

「同感だ。……なあ、そういえば、ライドウさんとゴウトはどこへ行ったんだ?」

 

「落とし穴を避けたところは見たけど……」

 

 

ふと、俺たちの落ちてきたところから名前を呼ばれてることに気がついた。ゴウトの声だ。

 

 

「あ、呼んでるね。……お〜い、こっちは平気でーす!」

 

 

杏が返事をすると、向こうからの問いかけは止んだ。その数秒後、ライドウさんが穴から落ちてくる。

「ちょっ……!」と誰かの声が漏れ聞こえたが、当のライドウさんは壁に刀をガリガリと引っ掛け減速し、俺たちの位置を確認すると、壁を蹴り跳躍した。

バランスを保ったままの見事な着地を俺たちの前に決めると、刀を鞘にしまいペシペシと外套の砂を払う。

 

 

「……おう、んじゃ行こーぜ」

 

「いい加減こういうの、慣れてきたわね」

 

「後学の為にはなるな。次に落とし穴にかかった時には倣うとしよう」

 

 

 

 

地上を目指してパレスの探索を進めていく。道中に見かけるシャドウたちの大多数はこれまでのパレスとは挙動が違い、壁画や刻み模様をなぞっていたり、壁や床を探って仕掛けを見つけようとしたり……。結局、見つかった場合は襲ってくるのだが。

 

やはり、オタカラを守ろうとしている、というより探しているかのようだった。この違いはパレスの主本人の望みだからか、シャドウたちの自由意志なのかはわからない。

どちらにせよ、例えば双葉のシャドウが攻撃を受けたり、オタカラを持ち去られる可能性を考えると、良い状況とは言えない事は確かだ。

 

しばらく上に向かって進んでいると、小部屋と、その中に階段が見えた。先程から緩く風が吹いているし、外の匂いがする……気がする。勘が正しければ、あの階段の先には地上があるのだろう。みんなも同様に感じているようだ。

 

 

「なあ、でもよ……」

 

 

竜司の言わんとする事はわかる。小部屋の中、階段の前に見るからに強そうなシャドウが陣取っている。天秤を掲げた、黒い犬の様なシャドウだ。

シャドウは神話や伝承上の姿で現れる、パレスがエジプトモチーフだという事を合わせて考えると、一つの名称に心当たりがあった。

 

 

「多分……アヌビスね。古代エジプトで死者の神とされていたっていう。想像通りの魔法を使ってくるなら、恐らく私が対策できる」

 

「だとしても強そうだぜ。だが、他に外へ繋がりそうな道もない。気を引き締めろよ、オマエら!」

 

「ああ。よし、仕掛けるぞ!」

 

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