ペルソナ5 混沌の反逆者   作:結露

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32.フタバパレス ルート確保

 

8月9日 午後 フタバパレス

 

前回の攻略から一週間と少し。アマラ深界とメメントスで修行を積み、俺たちは再びフタバパレスへと踏み込んだ。

今日パレスの攻略をするとシンに伝えたところ、少し口を濁して『観光に行く』と言って着いてきた。言い淀むような事かと考えたが、観光というのは建前だったのだろう。素直に顛末が気になると言えばいいのに。

 

 

長い砂漠を抜け前回穴に落とされた場所まで来た。しかし、ずっしりと閉ざされた壁は微塵も動きそうはなく、シャドウ双葉の姿もないようだ。

 

 

「やっぱ開かねーか。ウッカリ閉め忘れ……とか思ったけど、ねーよな」

 

「あるわけないだろ……。オマエのパンツじゃねーんだからよ」

 

「どうする?他の入口を探すか?」

 

「この前アヌビスと交戦した小部屋の手前に別の道があったわ。他の入口を探るのはその後でもいいと思う」

 

「ああ、そういやあったな」

 

「ここは通れそうにないし、そっちを当たってみましょう」

 

 

前回の脱出ルートを引き返す。途中、シャドウと交戦して気がついたが、そこらをうろつく雑魚には以前ほどの脅威を感じない。ここ数日の成果は確かなようだ。

階段を降りて別れ道へと進んでいると、先行していた真からストップがかかる。

 

 

「待って、何かいるわね」

 

 

辿り着いた別れ道の先はまた部屋の形になっている。部屋の中央に3m程の段差があり、奥側と手前側で大きく高さが違うという、少し妙な部屋だ。

そして、部屋の手前側には筋肉が歪に肥大した、半異形のシャドウが陣取っていた。前回は見かけなかったが、倒されたアヌビスの代わりか?

 

 

「悠然としているな。ここまでの雑魚とは格が違いそうだ」

 

「ヘッ、ビビる事ねー!やっちまおうぜ!」

 

「やるぞ」

 

「しまって行けよ、それなりに強敵だぞ!」

 

 

 

 

『……守リ神ノ怒リヲ買ッタ、愚カナ墓荒ラシドモ』

 

『コレ以上先ニオ前タチノ道ハナイ。早々ニ消シ飛ブガ良イ!』

 

「来るぞっ!」

 

 

シャドウはその姿を、俺たちの二倍はありそうな巨大な棺へと変えた。

足もないのにどうやって動いているのか、床を滑り俊敏な動きで押し潰そうと迫ってくる。

 

 

「遅い遅いっ!」

 

 

狙われた杏がするりと回避。誤射に気をつけつつ横から射撃をするも、硬い棺に阻まれダメージには至らない。

続いて、竜司が飛び上がって渾身の落下攻撃。僅かにグラついたものの、これですら大した手応えがあるようには見えない。

 

反撃とばかりに棺は体を振り回し、その角で竜司を襲う。慌てて距離をとる竜司と入れ替わりに、横から真の飛び蹴りが炸裂する。

シャドウは大きく弾かれ、体勢を立て直す間もなく祐介が放った氷柱が直撃。氷は着弾点から床へと根を伸ばし、動きを阻害されたシャドウはフレイラとマハラギオンの全弾を正面から受けた。

 

……駄目だ。感じる気配に衰える様子はない。外からの攻撃では通用していない。どうにかして中身にダメージを通さなければ……。

 

炎によって拘束を解かれ、シャドウは落ち着き払った様子でふわりと浮かぶ。そして蓋は開き、這いだした指先は真へと狙いを定めていた。

 

 

『フクロノネズミ』

 

 

ぱちんっ、という少し間の抜けた音と共に、真の姿が白い煙に包まれる。煙はすぐに晴れたが、そこに真の姿はなく……。

 

 

「チュッ、チュチュー!?」

 

 

クイーンと同じ仮面をつけた、一匹の小さなネズミの姿があった。

 

 

「おうェ!?あれ、もしかしてクイーンか!?」

 

「ネズミになっただと!?」

 

『フクロノネズミ』

 

 

動揺した俺たちを再度魔法が襲う。真に意識が向いていた二人は反応が遅れた。竜司と祐介もすっかりネズミへと姿を変え、チューチューと走り回っている。

 

 

「おいおいマズイぞこれは!」

 

『フクロノネズミ』

 

「危ねっ!」

 

 

狙われたモルガナは間一髪で回避。狙われたら必中なんて類ではなさそうだ。なら、まだ避けようがある。

とはいえ、これ以上数を減らされたら危険な事に変わりはない。こっちの数が減ってヤツが油断している隙に、一気に勝負を決めよう。

 

シャドウは狙いを俺へと変えたようだ。指先の直線上に立たないように気をつけながら、棺の外へ出た腕へ発砲。風穴を空けられたシャドウが怯んだ隙に距離を詰める。

 

慌てたシャドウは再び反撃をしようとするも、魔法を使う暇は与えない。穴の空いた腕に今度はナイフを思い切り突き立てる。ナイフは腕に根元まで刺さり、魔力は霧散した。慌てたシャドウは棺に閉じこもろうとするが、ナイフの柄が引っかかり手こずっているようだ。

 

 

「カルメン!『アギラオ!』」

 

 

閉まりかけた蓋を無理やり引き剥がし、杏のアギラオが棺の中を焼き尽くす。熱される前にナイフを引き抜き、追い討ちに火炎瓶を投げつけた。

中身は燃え盛る棺を捨て慌てて脱出しようとするが、そうはさせない。さっき開けた蓋を今度は蹴り閉め、ワイヤーを何重にも巻き付けた。中はさぞ地獄だろう。

棺はしばらくガタガタと揺れていたが、やがて完全に燃え尽き、粒となって消えていった。

 

 

「……おっ!戻った!」

 

「良かった!ずっとあのままかと」

 

「あれはあれで貴重な経験だったな。鏡がないのが惜しいところだった」

 

 

ネズミにされたみんなも元に戻れたようだ。少しヒヤリとしたが、無事に済んだので先に進むとしよう。

 

 

 

その後、攻略はつつがなく進んだ。パレスの仕掛けは面倒なものが多いが、戦闘にもさほど手こずることもなく、順調と言っていいだろう。途中、アヌビス像に驚いて魔法を撃ち込むなんてこともあったが。

 

 

「こう見ると、お前たちも大分腕を上げたな。以前とは安定感が違う」

 

「こうも事件が続くとね。夏休みに入ってからは勉強してるより異世界にいる時間のが多いくらいよ」

 

「根を詰めすぎじゃないか」

 

「怪チャンからの依頼も増えている。公募の締切が近いのもあって、おちおち寝てもいられん」

 

「オマエそんな生活してたのかよ……。ただでさえ食ってねーんだから無理して来んなよ、フォックス。そのうち倒れるぞ」

 

「それよりオメーはどうなんだよ?最近あんまり顔出さねーけど、なまってんじゃねえか?」

 

「そう思うか?」

 

「そのうち弱っちくなって俺らにやられちゃうかもよ?」

 

「やってみろ。楽しみにしておく」

 

 

雑談をしながらパレスを進んでいると、通路の奥に双葉のシャドウが見えた。さっきから追っては罠を繰り返しているから、今度もその可能性は高そうだ。

 

 

「……どうする?このまま進むか?」

 

「他に道もない。進もう」

 

「オーケー、一応注意して進みましょ」

 

 

 

『遅い。死んだかと思った』

 

「充分死にかけたわ!オメー敵か味方かどっちだっつーの!」

 

『……分かんない。でも、あと少しだ』

 

 

シャドウフタバはそう言い残すと、さっき戦った棺型、ナーガ、ラミアの三体を残して姿を消す。

 

 

「あ……また!スカルがいじめるからじゃん!」

 

「余計な事をしてくれたものだな」

 

「俺かよおおおおおお!?」

 

『……神聖ナ場デ騒グノハ誰ダ』

 

『此処ハ王墓、王ノ眠リヲ妨ゲル事ハ、何人タリトモ許サヌ」

 

「クッ、今さら退路もないわ!やるしかないわね!」

 

「……待て。ちょうどいい、俺にやらせろ」

 

「お、やんのか?」

 

「スカルの言う通り、ここしばらく戦闘自体してなかった。技の使い方も忘れそうだ」

 

 

そういうとシンは一歩前へ出て、指先でシャドウを挑発した。

 

 

「聞こえただろう。少しは運動させてくれ」

 

 

そう言い終わるや否や、突き出されるナーガの槍。巻いた身体をバネにし、一直線に突かれたその先端を、挑発したままの指先で挟み止める。

あまりにあっさりと、止め方一つで分かる歴然とした差。ナーガは隠しきれない動揺を振り払うように、槍を持つ手に力を込める。しかし、動かない。

 

シンは槍の穂先を握り潰し、空いた手でナーガの頭を掴み高くかざす。ナーガの抵抗も意に介さず掴んだ頭をぶんと振り回すと、根っこから頭部を失ったナーガの身体は奥で機を伺っていたラミアへ激突し粉砕、二匹共に散らばった。

 

 

『マハジオダイン』

 

 

最後に残った棺は、溜めていた魔力をいかづちとして放つ。数多の電撃が直撃するも、シンは意に介さず歩みを進める。

シャドウは電撃は効かないと悟り、物理攻撃に切り替えたようだ。猛烈な勢いで突進を仕掛ける。しかし、それも無意味だ。

 

突進の勢いはどこへ消えたのか、シンは風船でも止めるように軽く掴み止めた。そしてゆっくりと握る力を強めていく。頑丈な棺に次第にヒビが入り、慌てたシャドウは一部を握りつぶされ欠けた棺で逃げだしはじめた。

 

 

「なんだ、逃げるのか……」

 

 

シンはナーガの遺したひしゃげた槍を投擲した。もはや投げるより撃つと形容した方が適切な速度でそれはシャドウに迫り、着弾の衝撃で槍もろとも砕け散り跡形もなく消えた。

 

 

「何も手応えがない。わざわざ戦う意味もなかったな」

 

「……強いわね」

 

「今更か」

 

「知ってはいたけど、改めて、ね」

 

「お前たちが相手になるほど強ければいいんだが」

 

「私たちよりライドウさんにでも相手になって貰えばいいじゃん」

 

「あいつとはあまりやり合いたくない。本気でやりあえば、お互い一撃で致命傷になる可能性もある。それに……」

 

「それに?」

 

「……今の俺では勝てない。どう足掻いてもな」

 

「なんだよ、ずいぶん弱気じゃねえか」

 

「元々の全力でやっても勝てるか怪しい相手だ。戦いから離れ衰えた今の俺が勝てるとは思えない」

 

「それはライドウさんも同じじゃないの?」

 

「多少の鈍りはあるかもしれないが、俺に比べればマシだ。人間の身体は、一歩間違えればどんな攻撃でも致命傷になる。あいつはそれをよく理解ってる」

 

「今こうして同じ家で生活していても、ゴウト含め二人が完全に油断したところは見た事がない。不意打ちも通じないだろうな」

 

 

そういうシンは少し悔しさがあるような、もどかしいような表情をした。その感情は、小さなため息となって吐き出された。

 

 

「さあ、早く進め。ぼーっとしてたらあっという間にXデーが来るぞ」

 

「……ああ」

 

 

今のシンは曲がりなりにも生活を満喫していると思う。今以上の力を求めるのは何故だ?それは今の暮らしと引き換えにしてでも求めないといけないのか?

一体シンは、何と戦おうとしてる?

 

少し考えて、すぐに思考を止めた。アマラ深界を進めばいずれ分かることだろう。今はパレスの攻略中だし、答えを出すのは一旦後に回そう。

 

シャドウフタバを追いかけパレスを進む。もうそろそろパレスも終わりのはずだ。とすれば、最後のイシもどこかにあるはず。いつものように強力な門番も待ち構えているだろう。

 

 

「おっ!?この気配は……」

 

「イシの気配を感じるぜ!華麗にいただいていくぞ!」

 

 

移動中モルガナがそう告げる。気配を頼りにワイヤーで昇って行くと……あった。イシの部屋だ。入口の前には門番もいる。今回も楽な戦いにはなりそうにない。

 

 

「足場が狭いわね。落ちたらどうなるか分からないし、全員で戦うのは危険だわ」

 

「そうだな。扉前のあの広さじゃ三人ってとこだろう。残りはここで待機して、ヤバくなったら交代だ」

 

「うっし。で、誰から行く?」

 

「どんな相手か分からないし、対応力で選ぶべきね。となると、ジョーカーは外せないわ。残りは……」

 

「それで言ったらクイーンでしょ。任せちゃってごめんだけど」

 

「そうね。じゃ、最後はフォックスお願い。まだ壁張れるよね?」

 

「ああ、任せろ」

 

 

 

 

『コンナ所ニマデ、湧イテクルトハ……。愚カナ墓荒ラシドモメ……』

 

『コノ先ニ……絶対、行カセハシナイ……。死ヌガ良イ!』

 

「来るぞ!」

 

 

シャドウはどこかのゲームで見たクリスタルのような形に姿を変えた。さっきの棺型といい、非生物的な見た目のシャドウは魔法主体で攻めてくることが多い。強い魔力を感じるし、こいつもその類いだろう。

厄介な攻撃をされる前に、先手を打つ。

 

牽制として銃撃。どれほどダメージが通るとも思っていなかったが、弾丸はシャドウに当たる寸前で、透明な壁に阻まれ真っ直ぐに跳ね返された。……先手を打つのは失敗したようだ。

 

さらに、跳ね返した弾丸と合わせて、ゆっくりと回転しながらブフダインを絶え間なく撒き散らす。魔法の発動が棺と比べても格段に早い。この狭いスペースで回避するのは至難の業だ。

 

 

「『ラケシス』!」

 

 

避けられないなら、受ければいい。ラケシスで氷結属性を無効化し、反撃の手を模索する。大量のブフダインの中、ペルソナを替えるのは自殺行為だ。ラケシスで使える攻撃魔法はブフーラだけだが……。

案の定、放ったブフーラは分解され取り込まれてしまった。

 

シャドウの攻撃は止まない。ブフダインと同時に気弾まで発射し始め、俺たちの動くスペースを削ってくる。

……全てを躱しきるのは無理だ。避け切れない気弾をガードしながら、一度退避する。俺たちは祐介の築いた氷壁の裏へ逃げ込み、嵐が止むのをじっと待った。

だが、攻撃は微塵も治まる様子がない。このままでは氷壁がぶち破られるのも時間の問題だ。

 

 

「ヨハンナ、『フレイラ』!」

 

 

視界を塗りつぶす程激しい攻撃の隙間を掻い潜り、フレイラはシャドウへ直撃した。これまで一切を無効化してきたシャドウは僅かに身動ぎし、魔法の発動を途切れさせる。

 

「ナイスだクイーン。そのまま魔法で削ってくれ」

 

「任せて!」

 

 

大した時間稼ぎにはならない。直ぐに攻撃を再開するだろうし、喰らいながらも攻撃され続ければ祐介の気力が尽きるのが先だろう。一刻も早く有効打を見つけ決着をつけなければ。

 

ペルソナをアラハバキに替え、ナイフを一閃。再び透明な壁に阻まれ、斬撃が反射される。斬撃が効かないのはアラハバキも同じ。念の為替えておいて正解だった。

クイーンが続けて放ったフレイラは、持ち直したシャドウが気弾を返し相殺された。まずい、また猛攻が始まる。

 

ポケットから咄嗟に掴んだ火炎瓶とスタンガンを投げつける。至近距離で放られたそれらを防ぐ暇はなかったらしく、二つの直撃を喰らうとシャドウは大きく体勢を崩した。

この怯み様、どちらかわからないが弱点だ。そう確信した俺は再び二つを投げつけ、待機中の仲間に指示を出す。

 

 

「パンサー!スカル!」

 

「もう交代してるよ!『マハラギオン』!もういっちょ『マハラギオン』!」

 

「キッド、『ジオンガ』!」

 

 

杏はマハラギオン、続けてマハラギオン、怯んだ隙に更にマハラギオンを連打する。一瞬の拮抗の後、集中が崩れたシャドウは今日一激しい炎に呑み込まれた。この狭い空間を直視出来ないほど真っ赤に染め上げ、もはや逃げ場はないだろう。

 

あとは叩きのめすだけだ。気配が消えるまで魔法を撃ち続け、撃つのをやめた時にはもう赤い粒すら残っていなかった。

これで無事最後のイシもゲットだ。この勢いのままルートの確保もしてしまおう。

 

 

 

 

「おい、開かねえぞ……。どっかに仕掛けあんのか?」

 

 

正面入口から続く長い長い大回廊も、そろそろピラミッドの中心に突き当たる。そこへ向かう最後の大扉を開けた……はずだったが、道は緑色に光るバリアに阻まれてしまった。ご丁寧に注意だとかプライベートだとか明示されている。

 

 

「あれ?この扉……」

 

「見た事があるな……」

 

「あ!双葉の部屋!」

 

「それだ!」

 

「何で開かねえの?」

 

「誰も立ち入らない、という認知か」

 

 

『よくここまで辿り着いたな。この先は王の間だ』

 

 

扉に打つ手がなく頭を悩ませていると、シャドウフタバがどこからともなく現れた。もう何度目かの罠を警戒したが、今度こそ何も起こらなさそうだ。

 

 

「だったら、この先にお宝あんのか?」

 

『そうだ。しかし、ここを開けるには、私の許可が必要だ』

 

「じゃあ開けてくれよ?」

 

『私は開けられない。招き入れてもらえ』

 

「なんでだよ?お前のパレスだろ?」

 

「モナ、どういうこと?」

 

「シャドウは、フタバであってフタバ本人じゃない。現実のフタバの許可が必要ってことだ」

 

「つまり、双葉ちゃんに部屋を開けさせて、中に入れてもらえればいいってことね?」

 

『ここまで来たお前らなら、出来るかもしれないな……』

 

 

シャドウフタバはそう言い残して、またどこかへ消えてしまった。

言っていた通りなら、斑目の時と同じく現実でのアクションが必要らしい。

 

 

「一度、現実に戻るしかないね」

 

「でも、確かマスターが言ってたわ。『絶対入れてくれない』って」

 

「重度の引きこもりだったな」

 

「どうやって入れてもらう?」

 

「力ずくじゃ駄目なのか?『誰も立ち入れない』という認知さえ変えてしまえばいいんだろう」

 

「乱暴だけど、最終手段としては仕方ないわね」

 

「それがあの子の望みなんだから」

 

「私も、強引にでも、やるべきだと思う」

 

「気合い入ってんな……」

 

「また忍び込まざるをえないか」

 

「ジョーカー、決行日は任せる。マスターに見つかった時の言い訳、考えといて?」

 

「無茶振りが過ぎない?」

 

「頼りにしてんぜ、リーダー」

 

 

今回も無事にルートを確保出来た。あとは双葉に部屋を開けてもらい予告状を渡すだけだ。

 

 

現実世界へ帰還するためピラミッドの外に出た。モルガナが車に変身しみんなが乗り込んでいると、シンは一人妙な顔をしてピラミッドの頂上を眺めている。

 

 

「どうしたの?不思議そうな顔して」

 

「……いや、上の方で妙な気配がな」

 

「妙な気配?それってシャドウ?」

 

「恐らく。……まあ、ただの杞憂だろう」

 

「脅かさないでよ」

 

 

そう言いつつ、俺も背筋が冷える気がした。気温はこんなに暑いというのに、なんなんだ。

今回は、これまでの様に本人のシャドウが立ちはだかる可能性は低い。とはいえ、用心しておくに越したことはない。また強力なシャドウが出てこないとも限らないし。

 

 

「おーい、なにやってんだよ。あちーし早く帰ろーぜー」

 

「ああ、今行く」

 

 

なんとなく、嫌な予感を抱えたまま、俺たちはパレスを後にした。

 

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