5月21日 夜 ルブラン
『相談がある。少しいいか?』
『あいよ』
『どした?』
『俺もいる』
『異世界の攻略について、シンに協力を取り付けたい』
『なんでアイツに? 俺たちだけで問題ねーよ』
『本当にそう思う?』
「確かにな……今日はアン殿の機転で切り抜けられたが、ギリギリもいいとこだった」
『俺の力が通用すればあんな紙ペラ野郎なんて……』
『それが通じないから問題なんだろう 俺の刀も通らなかった』
『攻撃の威力もヤバかったね……』
『この先もあのレベルを相手するとなると、今の俺たちでは力不足だ。怪盗の活動にも支障が出る』
『協力を求められるなら、そうしない手はないな』
『私はいいと思う 素直に協力して貰えるとも思えないけど』
『俺はあんまり賛成じゃねえ けど、悪党共をこのままにもしておけねえ 蓮に任せるわ』
『待て』
『どした?』
『シンとは誰だ?』
『今更かよ! けど、そういえばお前は知らなかったな』
『シンは……』
5月23日 放課後 教室
授業が終わった。あの後祐介にシンについて伝え、協力については俺から打診することになった。さて、どう話したものか。
シンはまだ教室にいる。帰る用意をしているようだ。
「話、してみるんだろ?」
「ああ。……シン」
「蓮か。何か用か?」
「少し話がある。この後いい?」
「……場所を変えよう」
学校中庭 自販機前
「何の話だ?」
「率直に言う。俺たちに戦い方を教えて欲しい」
シンはため息混じりに俯いた。
「断る。異世界には足を踏み入れないように忠告したはずだ」
「いいか?戦闘は子供のチャンバラごっこじゃない。命を懸けた本当の殺し合いだ。万全を期しても、ほんの些細なミス……ミスとも呼べない不運一つで死ぬ事にもなりうる」
「それは俺だってそうだ。今でも命の危険を感じる事はあるし、勝てるかどうかわからない相手に当たることもある。俺が今も生きているのは、強かったからだけじゃない。運も良かったからだ」
「全員束になっても俺一人の足元にも及ばない。そんなお前らが、生きていけようはずもない。全員向こうで野垂れ死んで、こっちに死体も戻らないのがオチだ」
シンは、話は終わりだとでも言うようにベンチから立ち上がった。
「それでも、退けない理由がある」
「……怪盗団の噂は俺も耳にした。正体はお前たちだな?名前も知らないバレー部の生徒たちの為に、独裁的な教師を追い出したらしいな。異世界で傷ついてまで……馬鹿げている」
「見知らぬ他人の為に自分を浪費するな。力も伴わないのに、半端な善意や功名心で戦って命を落とすのは馬鹿のする事だ」
「そんなんじゃない!……鴨志田をのさばらせておけば、俺と竜司は退学になるところだった。杏も鴨志田に目をつけられて、どんな目に遭っていたかわからない。杏の友達に至っては、屋上から飛び降りるまで鴨志田に追い込まれてた」
「……そうだったのか」
「俺たちの戦う理由は自分の人生を生きていく為。それは今だってそうだ。自分たちに手を出してくる悪党を、放ってはおけない。……だから、シン。俺たちを助けてくれないか」
「身にかかる火の粉をはらう為、か……」
シンは振り向かない。手に持った缶コーヒーを見つめたまま、何か考えている。
少し経って、一気に缶の中身を飲み干すと、ゴミ箱に空き缶を投げ捨てた。振り向いたシンは、鋭い目つきで俺に告げる。
「それでも、俺がお前たちに手を貸す理由はないな」
シンからの返事は俺の期待していた言葉とは違った。諦めるしかないか……。
「だが、お前たちの戦う理由を勝手に推測したことについては謝ろう。そこまで言うなら詫びとして、どれだけやれるのか見せてもらう。最初にあった異世界の入口で待つ。全員呼んで、準備が済んだら来い」
メメントス
全員に集合をかけ、メメントスへと侵入した。急ぎの連絡だった為まだ理由については伝えられていない。
「急にどうしたよ?ターゲットでも見つかったか?」
「違う。けど、すぐに戦える準備はしておいてくれ」
「アン殿、急に申し訳ない。ただ、昨日の事で……」
「昨日の?あ、間薙くんに協力取り付けられたの?」
「ふむ、件の……。しかし、姿が見えないようだが」
「ここだ」
不意に後ろからかけられた声に、思わず振り向く。いつの間にか、初めて会った時と同じ格好のシンが立っていた。
やる気だ。威圧感に、背中に嫌な汗が伝う。
「まとめてかかってこい。どうせ当たらない」
みんなは戸惑っている。俺から仕掛けよう。
「エリゴール!スクンダ!」
シンの動きを鈍らせ、ナイフで仕掛ける。しかし、紙一枚の距離で見切られ、膝蹴りを腹に突き刺された。
「がっ……!」
「てめぇ、やんのか!?ぶちかませ!キッド!」
「ちょっといきなり!?カルメン!『タルンダ』!」
「ジョーカー!こんなもんで終わるなよ!『ディア』!」
「面白い!俺の剣捌き、見せてやろう!ゴエモン!」
竜司と祐介が左右から攻撃を仕掛ける。当たらない。その場で一歩動いただけで、受けることもせず躱し切る。余裕の表れか、これもまた紙一重。補助魔法に至っては避けようともしない。
攻撃の振り終わりに合わせ二人に足払い。体勢を崩された竜司と祐介は、痛烈な打撃を叩き込まれ俺たちの後方まで吹き飛んだ。
「ぐっはっ…!」
「うがっ…!」
「いくよカルメン!『アギ』!」
入れ替わりに杏が火球を放つ。目の前に迫る火球を、シンは口から火を吹き押し返した。火球はシンの放ったブレスと混ざり合い、放たれた瞬間よりも速度を増して、杏に直撃する。
「ちょっと、マジ!?あいたぁーっ!」
「どうした!こんなものか!」
それぞれが闇雲に動いたところで、シンには到底かすりもしない。だが、今は一対五。しかも、シンは明らかに俺たちを舐めてかかっている。連携と意表の突き方次第で、わずかでもチャンスは作れる筈だ。……多分。
「……みんな、一つ作戦がある」
「ジョーカー、何か思いついたのか?」
「バラバラに攻撃しても順番に対処されるだけ。やるんなら一斉にだ。作戦を説明する。………………どう?」
「なるほど……。こりゃワガハイの責任重大だな」
「いいぜ。ぜってーに一発かましてやる!」
「一糸乱れぬ連携……成功すれば、美しいな。のった」
「準備はいい?それじゃあ、私から仕掛けるよ!」
「ほう。何か考えたみたいだな」
「いくよ!『アギ』!」
「我が雄姿を見よ!『ガル』!」
シンの目の前で二つの魔法はぶつかり弾ける。炎は風で勢いを増し、シンの視界を赤く覆った。
炎に乗じて、残りの三人で接近戦を仕掛ける。
「目眩しか。拙いな。お前たちが仕掛けてくるのもわかっている」
「ジョーカー、『スクカジャ』だ!」
シンは常にギリギリの回避を狙っている。避けられる直前に、祐介のスクカジャで攻撃を加速させフェイントをかける。それも対応され躱されるが、それも予想通り。ほんの少しでも余裕を奪ったところに、すかさず他の誰かが追撃する。
「今の工夫はいい感じだ」
「合わせるぞ!」
杏とモルガナでもう一度炎幕を張る。竜司、杏、祐介の三人は距離を取り多角的に銃撃するが、全て弾かれているようだ。だが、最初に比べれば明らかに手数を使わせている。
一か八か隙を突くため、俺とモルガナで上下から突撃を仕掛けた。
「モナ、決めてこい!『タルカジャ』!」
炎を抜けた先には、シンの靴の裏が大きく広かった。顔面に蹴りを喰らい押し返されるが、まだだ。無理やり距離を詰める。
モルガナは……。反撃を受け、天井に触れるほど高く真上に飛ばされていた。上手く逃げる方向をコントロール出来たらしい。よく作戦通りにこなしてくれた。
―――ここしかない。
「マタドール!『電光石火』!」
「チッ……!」
至近距離で俺の攻撃を防いだとき、ようやくシンは異変に気づいた。頭上で車に変身したモルガナが、その重量で突撃してきている事に。
シンはガードに回ろうとするが、手が足りない。更に、竜司と祐介がモルガナを後押しする。
「ゴエモン!」
「キッド!」
「駄目押しだ。『チャージ』!『電光石火』!」
攻防の最中、シンと一瞬視線が交錯した。同時にガードするシンの力が緩んだ。その表情は、口角が上がっているように見えた。
一点に集中した力が爆発する。真っ黒な土煙が晴れた後、その場に立っていられたのはシンだけだった。
「……あの炎は単なる目眩しじゃなく、影を消すことが目的だったわけか。途中から銃を撃ち続けたのも、銃声でエンジンの音を悟らせない為……」
「それに……まさか、最後の攻撃はまともに当てられるとは思わなかった」
「その割には傷がないな」
「ちゃんと当たった。合計で、30ダメージぐらいは。……もしや、最後の猫も陽動か?力を溜めていたのを見たぞ」
「夢中だっただけだよ」
シンは座り込んだままの俺を掴んで立ち上げる。周りのみんなを見渡しながら、言葉を続けた。
「いいだろう。協力してやってもいい。だが、これは取引だ。俺の要求も呑んで貰う」
「俺の目的は元いた場所に帰ること。その手がかりは、まだ掴めていない」
「お前たちは、この世界に関しては俺よりも知っているんだろう。協力してもらうぞ」
「ああ……。取引だ」
我は汝…汝は我…
汝、ここに新たなる契りを得たり
契りは即ち、
囚われを破らんとする反逆の翼なり
我、『混沌』のペルソナの生誕に祝福の風を得たり
自由へと至る、更なる力とならん…
混沌王 間薙 シン
Lv99
HP 999 MP 885
力 魔 体 速 運 全て最大値
万能属性を含む全ての属性に耐性を持つ
即死無効 バッドステータス無効
物理・複合物理属性は相手の相性を貫通する
あらゆるスキルを習得し行使するが、その中でも好んで使うもの八つ
至高の魔弾 タルカジャ
地母の晩餐 ショックウェーブ
死亡遊戯 フォッグブレス
雄叫び 気合い
その中でも『至高の魔弾』『地母の晩餐』『死亡遊戯』に関しては人修羅の奥義とも呼べるスキルであり、例え同名のスキルを習得しようともその性能は桁違いに高い。
得意な属性
物理 銃撃 補助 万能
苦手な属性
なし