無職転生 - 異世界如何に生きるべきか -   作:語部創太

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 中世の貴族のお屋敷ってどれだけ綺麗だったのか気になる。
 埃とかまったくなかったのかな。
 絨毯とかは汚れたらすぐ新しいの買ってそうなイメージある(偏見)。


第十話「兄さまは十歳」

 甲龍歴。

 前の世界で言う西暦。

 

 この世界は今、物語でいうとどの時代にあたるのか。

 果たしてルーデウスはいるのか。それとももっと前の時代、後の時代なのか。

 この問いを導き出すのは簡単だった。

 

 といっても、まさかこの世界の歴史を全部覚えてるわけじゃない。

 私が覚えてるのは()()()()()()()()()()()だけだ。

 逆に言えば、それだけあれば充分ということ。

 

 ルーデウスが産まれたのは甲龍歴407年。

 私が3歳になった現在の甲龍歴は412年。

 つまり私が産まれたのは409年。

 

 私はルーデウスの2歳年下として産まれた。

 ということは、ルーデウスは現在5歳。

 ちょうどロキシーの卒業試験に合格する頃合いだ。

 

 

 

---

 

 

 

 パーティも無事に終わり、翌日の朝が来た。

 昨日は結局、壁の近くに立ってご飯をモグモグしてるだけで終わった。

 お父さまとお母さまは、私のドレス姿を見てすごく喜んでくれた。

 

 フフッ、羞恥心を忍んでスカートを履いた甲斐があったぜ。

 ただもう二度と履かないけど。

 動きにくいし邪魔だしトイレしにくいし。

 いいことないね、ドレスって。

 

 そうそう。

 ずっと顔色が悪かったお母さまだけど、昨日はだいぶ良くなってた。

 身体の調子でも悪かったのかな? 元気になったようで何よりだ。

 何かに怯えるように震えるお母さまの姿は見たくないからね。

 

 さて、目が覚めたのはいいけどまだ早朝。

 カーテンを開けてもまだ辺りは薄暗い。

 そろそろ太陽が昇り始めるかな? って時間帯だ。

 

 うん。さすがに早起きしすぎたらしい。

 昨日は疲れて日が沈む頃には寝てたからなぁ。

 

 どうしようか。

 朝のお掃除を手伝うのはグレースさんに禁止されちゃったし。

 あの人、この屋敷のメイド長なんだね。お父さまの乳母として雇われてからドンドン出世したらしい。

 

 お父さま、あんな怖そうなおばさ……お姉さんのオッパイ飲んでたのか。

 正直そんなに羨ましくない。

 なんなら私はアメリアさんのオッパイ飲んでたい。

 可愛いよねアメリアさん。クリッとした目に、腰まで伸ばした緩やかなウェーブ状の髪。

 ドジっ子なところがまたいい。守ってあげたくなっちゃう。

 

 私専属のメイドなんだし、ちょっとくらい手を出しても……。

 いや、やめとこう。聞いた限りだと下級貴族のご令嬢らしいし、なんか面倒くさいイザコザがないとも限らない。

 

 せっかく早起きしたんだし、散歩でもしようかな。

 この屋敷すごく広いから、まだどこになんの部屋があるか把握しきれてないんだよね。

 自分の部屋と食堂、お父さまとお母さまのお部屋くらいしか覚えてない。

 

 ということで、さっそく早朝のお散歩に行くとしよう。

 アメリアさんが来る時間はなんとなく分かってるから、それまでに部屋に戻ればいいでしょ。

 前の家で着ていた服(もちろんズボン)に着替えて、私はウキウキと部屋の外に出た。

 

 

 

---

 

 

 

 …………迷った。

 

 とりあえず食堂と反対方向に歩いてみたけど、どこがなんの部屋か全然分からなかった。

 使用人さんたちが清掃してる部屋を片っ端から覗いてみたけど「お嬢様!? 何故ここに!?」みたいな反応されたから逃げてきちゃった。

 

 見せてよぉ。異世界の清掃技術とか知りたいじゃんか。

 この屋敷、ほぼすべての箇所に清掃が行き届いてるからどうやって掃除してるのか気になるんだよぅ。

 あっ糸くず。拾っとこ。

 いやホント。なんの洗剤使ってるのとか特殊な道具はあるのとか色々質問してみたい。

 掃除に魔術とか使ってるのかな。

 いや、魔術は戦闘用のもののみなんだっけ。

 

 考え事しながら歩いてたら、外に出ちゃいました。

 庭…………なのかな? それにしては観葉植物とか植わってないけど。

 あれ、人の声が聞こえる。この声は……

 

「――踏み込みが浅い! それでは敵に立て直す余裕を与えるぞ!」

「はい!」

 

 おじいさまだ。

 あともう1人、中学生か高校生くらいの男の子もいる。

 昨日のパーティの主役にして私の従兄『マーカス・サンドモール』だ。

 

 2人は向かい合って、汗だくになりながら木剣を構えている。

 どうやら、おじいさまがマーカス兄さまに剣術の指南をしているらしい。

 

「ん? おお、ソフィアちゃん!!」

 

 キリッとしてたおじいさまの顔がデレッとした。

 

「剣のしゅぎょー中ですか?」

「うむ。久しぶりに会ったマーカスを鍛え直しているところだ」

 

 悔しそうなマーカス兄さま。

 たしかずっと領地の方にいたんだよね。

 久しぶりに会ったおじいちゃんにコテンパンにされて悔しいってところかな。

 薄々気付いてるけど、サンドモール家の人たちって負けず嫌いだよね。

 

「見ててもいいですか?」

「もちろん、ぜひ見ていきなさい。剣術も学んでおいた方が良いからな」

「待ってください! ソフィアの見ている前でなど――」

「女に見られて鈍る剣など捨ててしまえ!」

「っ!」

 

 ありゃ、なんかマーカス兄さまは反対っぽい。

 まあ自分がボコボコにされるところを見られるなんて、男として嫌だよね。

 でも諦めてちょうだい。せっかくのチャンスを逃すなんてできない。

 

 近くに落ちてた桶をひっくり返して腰かける。

 剣神流と水神流の上級の腕前を見ることが出来るなんてラッキー。

 

 今は魔術を学んでるけど、完全にそっちの道に進むって決めたわけじゃない。

 もしかしたら剣術の方が才能に恵まれていて、剣士としての道を進む可能性もあるわけだし。

 とにかく将来の選択肢を増やすためにも剣術を学んでおいて損はないだろう。

 

 互いに剣を構える男たち。

 カッコイイなぁ。やっぱり男だったら剣振り回して戦いたいよな。

 誰でも一度は憧れた光景が目の前にある。

 

 あとで、おじいさまに頼んでみよう。

 「剣術を教えて!」ってね。

 たしか女性騎士もいたはずだし、サンドモール家は騎士の家系だ。

 断られることはないだろう。

 

 ピクンッ

 

 中段に構えるおじいさまの剣先がわずかに揺れた。

 

「でぇあー!」

 

 それを受けて、上段に構えたマーカス兄さまが飛び出す。

 …………いや、勢いはいいけど。

 完全に攻撃を誘われたように見えるのは私だけ?

 

 マーカス兄さまの攻撃がもう少しで当たるところで、

 おじいさまの剣がヌルッと動いた。

 剣に剣を当てて滑らせるように受け流す。

 そして返す一閃。

 ガラガラに空いたマーカス兄さまの身体が、後方に吹っ飛んだ。

 

「ぐはっ!」

「簡単に引っかかりおって! もっと相手の身体全体の動きを感じろ!」

 

 おー。

 すごい。あれが水神流ってやつか。

 一連の動作にまったく無駄がない。

 無骨な印象を受けるおじいさまから、あんな繊細な動きが出るなんて思わなかった。

 

 パチパチと拍手すると、おじいさまがこっちを向いてデレッと表情を崩す。

 ルーカス兄さまは、そんなおじいさまの様子を憎々しげに睨んでいる。

 うーん、負けず嫌い。

 

 それからしばらく、おじいさまが孫を叩きのめす光景が続いた。

 ようやく終わった頃には、従兄の顔が疲れ果ててゲッソリしててなんだか不憫に見えてくる。

 座っていた桶に水を汲んで2人に差し出すと、身体が拭けると喜んでくれた。

 布を水に濡らして顔や腕をゴシゴシ。

 気持ちいいよねソレ。()も夏の炎天下で作業してた時、休憩中には濡れタオルで上半身を拭いたもんだよ。

 

「まったく、そんな調子では中級になるのはまだまだ先だな」

「精進します……」

 

 身体を拭いてる途中に、おじいさまがマーカス兄さまにダメ出しをする。

 マーカス兄さまは10歳で初級なのか。

 この世界での剣術の平均習熟度ってどのくらいなんだろう。

 ふと気になったことはさておき。

 

 おじいさまったら、そんな厳しく言わなくたっていいのに。

 すっかり落ち込んじゃってるじゃん。

 仕方ないなぁ。ここは私が一肌脱いであげるとしよう。

 

 布を握って項垂れてる従兄の手にそっと触れる。

 よし、こっち見たな。

 目を合わせてちょっとの間、見つめ合う。

 その後にニコッと笑顔で応援の言葉!

 これで元気にならなかった奴はいない!

 

「がんばってください! マーカス兄さま!」

「貴女が天使か」

 

 ――――あれ?

 なんか急にマーカスが気持ち悪く見えてきたぞ?

 

 ……………………あるぇえ???

 




 感想、評価、ご指摘などお待ちしております。

- 追記 -

 まさか日間ランキングで一桁に載るなんて思いませんでした。
 多くの人に読んでいただけて本当に嬉しい限りです。
 より一層、頑張っていきます。
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