『人生、如何に生きるべきか』
これはいったい誰の言葉だったか。
前世、就職活動に臨む数か月前に聞いたこの言葉。
どこで聞いたかも今となっては思い出せない。そんな、どこにでもありそうな1文。
ただ、そんなありふれた言葉が私の短い一生における金言となり、座右の銘にもなった。
清掃業という3Kと言われる仕事に就いたのは、人の役に立ちたかったから。
人々が営みを生む場所を綺麗にしていく仕事が、尊敬できるものだと思ったから。
後悔してない、といえば噓になる。
取りたい資格もあった。設備管理の仕事もしてみたかった。もっと色んな小説を読んでみたかった。
長い人生を謳歌できなかったのはとても残念だ。
でも。それでも。
自分が選んだ仕事を全うした。未熟で、人災を起こした自分だけど。
自分が進みたいと思う道を進むことが出来た。
だから、前世に対する未練は一切ない。
私は、胸を張ってそう言い切ることが出来る。
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まずは、知らなければならない。
この世界で生きる目的を探すにしても、私はこの世界について何も知らない。
それに気付くのに半年と少しもかかってしまったのは情けない限りだ。
まず、ここは現代日本ではない。それは確信できる。
何故なら、文明レベルがまるで違う。
電気がない。鏡がない。服が化学繊維じゃない。料理に旨味が足りない。灯りは燭台。家は木造建築。
……両親がめちゃくちゃ貧乏な可能性もあるのかな?
父親はどうやら出稼ぎみたいだし。
でも、それだと母親がゆっくり子育てに専念してるのはちょっと不思議な気もするんだよなぁ。
それに帰ってきてから2人が働いてる様子もないし。最低限の家事と育児を済ませたら、イチャイチャラブラブしてるし。お金がないならそんな余裕ないよね。
前世が童貞だった私に見せびらかしたいのかな? ムラムラしても身体にそういう兆候がないから自分で慰めることも出来ない私のことも考えてほしい。まったく娘の情操教育に悪影響だとは考えないのかね。
呪うぞこの野郎。
「宮廷魔術師は忙しいのね」
「ですが、もう半月はこちらでゆっくり過ごせますから」
……
…………
………………はい?
いま何て言ったのお母さま?
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朗報、と言えばいいのか。悲報と言うべきなのか。
どうやらこの世界は、剣と魔法のファンタジー世界らしい。
そして私の父は、とある王国の宮廷魔術師と。
魔法大学を卒業する程の秀才らしい。母との出会いも、その魔法大学なのだとか。
愛に火が付いた2人はそのまま学生結婚。母はあと5年在学予定だった大学を中退して専業主婦になったのだとか。
超がつくエリートじゃん。
めっちゃ高給取り。本当なら王都に小さな屋敷を構えられるほどの地位とカネを持っているのだとか。
すごいやダディ。まさに一家の大黒柱だね。
王都から2日ほど馬で移動した所に我が家を構えたのは、母が静かな暮らしを望んだかららしい。生まれてくる子どもをノビノビ育ててあげたかったんだとか。マムの海より深い愛に私、感激して泣きそう。
舌足らずながら両親に質問攻めする。せっかくこの世界のことを知る機会が来たんだ。これを活かさずどうする。
「きゅーてーまぅーし?」
「そう、宮廷魔術師よ。お父さまは
「……お母さまには遠く及びませんけどね。魔法の才能も地頭も、とても敵いませんよ」
「もう! その話はしないって約束でしょ?」
「……そうでした」
待って。ちょっと待って。イチャイチャし始めないで。なんか今、重要な国名が出てきた気がするんだけど?
「しーろーん?」
「そう。シーローン王国よ。発音が上手ね~」
ふにゃ~♪ お母さまから頭撫でられるの好き~♪
……………………違う違う。誤魔化されるところだった。
え? シーローンって、あの? 某小説に出てくるあの国名?
いや待て、落ち着け。偶然。そう、偶然の一致って可能性もある。
「ほかのくには?」
「他の? 有名なのだと
アッハイ。
これ、完全にアレだ。
『六面世界の物語』。ルーデウス・グレイラットの子孫が世界を救う物語の世界だ。
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