クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
先日シェリーとの
出していたクリーニングを取りに行くのを思い出した俺は、急いで米花町にあるサンサンクリーニングへと向かっていた。
ちゃんと石川茂子さんがいることを確認してから店内へと入り、少しばかり遅れた事を謝りながらクリーニングされた衣服を受け取って世間話なんかをして
いやー遅れちゃってごめんなさいね。ちょっとばっかりお仕事が入っちゃって出張してたもんで…
これくらい全然問題ない?それは良かった。あ、これお土産なんですけど是非貰ってください。
珍しい欧米のお菓子なんですよ。Oh米花!なんちゃって…面白くないですよねゴメンナサイ。
茂子さんと春香ちゃんのお口に合うかわかりませんけど召し上がってくださいな。
そういえば春香ちゃんは元気ですか?そうですかそれはそれは良い事ですねー。
「今度米花町に来る時にはぜひ
「ええ。うちの子もちょうど歩き回るようになったので、きっとお姉ちゃんができて喜ぶと思います」
「それはそれは元気でいいですね。まだ会った事はありませんが、将来は活発な子になりそうで茂子さんもとても楽しみでしょうね。私も
「ふふ、今はとても手がかかる子ですけどね」
石川茂子さんとの会話を楽しんだ俺は、そのまま米花町を出てシェリーが待つ隠れ家へと戻る。
ちゃんとクリーニング出した言い訳もあるし、大阪での様々なシミュレーションも完璧だ。
「ククッ、お待たせシェリー。任務も終わったから観光旅行に行こうじゃないか」
「あら、おかえりなさい。あなた帰ってきたばかりじゃないの。少しくらいゆっくりしたら?」
「…そういえばそうだな。
その晩に和葉ちゃんへと「前回案内してもらった事を姪っ子ちゃんに話したらすっごい羨ましがられて、俺も大きな仕事は終わってしばらく休みだから連れていく事になったんだけど、良かったら和葉ちゃんまた案内してくれないかな?」という内容のメールを送り「いつ来てもらってもええですよ!」という返事をもらっている。
人見知りな女の子だからちょっと男の人とか苦手なんだよねーってのもちゃんと伝えてあるから、これならばきっと西の名探偵を連れてくることはないだろう。
なんで和葉ちゃんの連絡先を知っているのかって?そりゃ前回
数日後、シェリーを連れて遂に大阪へとやってきた!
ちなみにちゃんとクリーニングした服を着てもらっている。
渡した時に「そんなに楽しみだったの?」と呆れられたが楽しみなものは仕方ない。
「そうそうシェリー。実は案内を頼んだ子がいるんだが、一応周りに気をつけるために人見知りだって紹介するけど構わないかい?」
「別にいいわよ。元々そんなお喋りじゃないわ」
「ククッ、それもそうだね」
そうして待ち合わせの場所へと向かい、俺は和葉ちゃんがやってくるのを今か今かと待ちわびていた。
まぁ待ち合わせ時間の20分前だからまだ早いんだが…と思ったら和葉ちゃんもやってきた。
どうやら早めに来て待っててくれるつもりだったようだが、俺たちのほうが更に早く着いてしまったらしい。
「やぁ和葉ちゃん、少しばかり久しぶりだね」
「ええ、お兄さんもお元気そうですね。その子がメールに書いとった姪っ子ちゃんですか?」
「そうなんだ、紹介するね、この子は……ファーストと呼んであげて」
「ファースト!?あだ名かなんかですか?」
「あー違う違う。ファー(↑)ストじゃなくてファー(↓)ストでよろしく。さんはい」
「ファーストちゃん?」
「いや、ちゃんはいらないよ。これはあれだよ、ミドルネームなんだ」
(ちょっと?ミドルネームって何の事かしら?)
(いや、この子は工藤新一とも関わりのある子なんだ。何がきっかけで名前を出されるかもしれないだろ?だからシェリーも灰原哀も教えたくなかったんだよ)
(だからってなんでファーストなのよ)
(え、えーと、下手に固有名詞出すよりもこのほうが他人が聞いてもわからないだろうなーって思ったんだけど…)
(…ふーん。まぁ聞いても詳しくは教えてくれないだろうし、あなたの事だからどうせくだらない事なんでしょ)
和葉ちゃんのほうは特に疑ったりはしてないみたいだな。最初は野球で言う時の発音で「ファースト」だったが、ちゃんと直してくれた。
しかし危なかった。和葉ちゃんに対する言い訳は用意してたけど、シェリーに対する言い訳を準備するの忘れてた。
おかげでシェリーからジト目を頂いてしまった。決してご褒美ではない。ご褒美はこれからなんだから。
しかし、見透かされるように「ふーん」とか言われるとドキッとするのは何でなんだろうな?考えても答えは出ないから後にしよう。
「ついでに和葉ちゃん、申し訳ないんだけどファーストはまだちょっと方言の聞き取りが難しくてね。できれば標準語のイントネーションで話してくれると(俺が)嬉しいんだけど…」
「うっ、ちょっと自信ないけどがんばってみますね」
「あと、この子はちょっと人見知りなところがあるから口数が少ないかもだけど許してあげてね」
「ふふ、それくらいでいちいち怒ったりしませんよ。それじゃ行こ、ファースト。おいしいところいっぱい案内してあげるね」
キタ!!面倒見のいい優しいアスカと無口なレイの再現キタ!!!
手を繋いで一緒に歩いていく様子はまるで姉妹のようだ。俺も入りたいけど我慢だ。レイとアスカの会話に
和葉ちゃんが俺に案内してくれた時のように、「あのお店が…」「このお店はな…」と教えてくれたり、教えてくれたお店に入ってみたりと町を周っていった。
「そういえばファーストは大阪に来るんは初めてなん…なの?」
「ええ、そうよ」
「そっか、じゃあいっぱい美味しいもの食べて帰ってな…ね?」
「…別に無理しなくてもいいのよ?あの人の言う事は適当に流しておく事をお勧めするわ」
ひどいなシェリー。俺はいつでも真剣そのものだぞ?
しかしこうして平和な町を散策するのも悪くないな。組織絡みの事件なんかは今日は起こらないし、とても平穏な1日って感じだ。
ぐるっと町を一回りしてから和葉ちゃんのお勧めのお店でお昼ごはんを3人で食べて、これからどこに行こうかなんて話をしながら休憩していた時に思わぬ人物と遭遇してしまった。
「お?和葉やんけ。こんなとこで何しとんねん?」
「平次?アンタこそなんでこんなとこにおんねん」
「俺はアレや。家で寝とくもの何やから、ちょっと買い物がてら飯食いに出とったんや」
「ふーん。まぁええわ。アタシはこの子らの観光の案内してるから、邪魔せんとってな」
「ほー、観光か。それやったら俺も一緒に行ったるわ」
まさかの服部平次のご登場だ。…こいつも何かセンサー付いてるのか?なんで今会うんだよ。
しかもなんでその会話の流れで合流することになるんだ?重ねて言うが今日は事件なんて起こらないんだぞ?
しかし服部平次か…まぁいい。自分のネビュラチェーンで首を締めに来たようだな。
ククッ、その意気や良し!俺がその心意気をしっかりと
その前にちゃんと挨拶しとかないとね。
やぁ、君が和葉ちゃんの言っていた幼馴染の服部平次くんで合っているかな?
俺は前に関東から仕事でこっちに来てね。ちょっとした縁で和葉ちゃんと知り合って大阪を案内してもらった事があったんだ。
それで今日は姪っ子も連れて、また観光の案内をお願いしたんだよ。
え?工藤新一を知ってるかって?工藤新一くん
へー、最近とんと噂を聞かなくなったからわざわざ会いに行こうとしてるの?でもどこに?
あー、毛利小五郎に会いに行くんだね。確かに入れ替わるように有名になってるもんね。
それならお土産は大阪名物とかがいいと思うよ。あそこ君たちと同い年くらいの女の子と小学生の男の子がいるからね。
なんで知ってるのかって、そりゃ有名だもん。みんな知ってるよ?
ククッ、これでパイカルフラグが立たなくなったはずだ。
別に知られて困るわけじゃないんだけど、一時的にでも元に戻れるってわかって下手に組織の事を調べようとされても面倒なだけだ。
ちゃんと俺がタイミングを見計らってシェリーに伝えるからコナンくんは少し我慢してなさい。
そのまま合流した服部平次と軽く世間話をしてから町を案内してもらい、ちょっと休憩がてらということでゲームセンターで遊んでいこうということになった。
なぜかそこで服部くんと和葉ちゃんがスコアを競うようになってしまい、2人ともヒートアップしていろんなゲームで戦っているようだ。
お前ら観光案内の事忘れてるだろ…これがもしシェリーじゃなくて年相応の女の子だったら案内失格だぞ。
「あの2人はまったく…シェリーは楽しんでいるかい?」
「ええ、それなりには気分転換させてもらってるわね」
「ククッ、それならよかったよ。ついでにお土産でも買って帰ろうか」
「2人で大阪に来てるのにお土産買っても私たちが食べる事になるわよ?」
「それもそうだな…食べたくなったらまた来ればいいだけか」
シェリーとそんな話をしている間に、どうやらゲームで戦っていた2人はいい勝負をしているらしい。
なかなか決着がつかないので最後に大声を出して点数を競うゲームで勝敗を決めることにしたようだ。
これなら…アレいけるか?
和葉「平次のアホーーーーーーーー!!!!」
先に叫ぶのは和葉ちゃん、マイクに向かって叫んだのがそれなのか。
和葉ちゃんの高い声も相まっていい点数出てるけど、君確か幼馴染の事で俺に相談してたよね?
俺がしたアドバイスとか全部頭から抜けてない?もしかしてあれって雑談程度の認識だったの?
…まぁいい。とりあえずせっかくの機会だしこっちを優先だ。
ククッ、服部くん。ちょっといいかな?次は君の番?あぁ、そんなに時間はかからないよ。
実は外国にも大声を出すイベントがあるのは知っているかい?
そうそう、このゲームと同じようなものだね。今思い出したんだが、実はある国ではそれで町興しをしようとしたところがあってね。
しかもその時に町の特産品の人参の名前を叫ばせることで話題にさせようとしたことがあったんだ。
そこで人参、つまりキャロットと叫ぶはずだったんだが、緊張してしまったのか………と叫んだ人がいてね。
しかもその人がその日一番の大声だったから、盛り上がってそれ以降はみんなそう叫ぶようになったという話があるんだよ。
何が言いたいのかと言うと、つまり君もそれを挑戦してみたらどうかと思ってね。
なんで俺がって?ククッ、和葉ちゃんに負けたくないんだろう?ものは試しだと思わないかい?
もしそれで君が負けても俺が和葉ちゃんを嗜めておくから心配いらないよ。
「なんで俺がそんなん付き合わなアカンのかわからんけどまぁええ。せっかく大阪に観光来てくれたヤツの言う事くらい聞いたるわ」
「ククッ、君の魂の叫びを期待しているよ」
「ほないくで………カカロットォォォォ!」
「もっと感情を込めて!」
「カカロットォォォ!!!」
「そのまま、よくも俺のブルマを!って言ってみて!」
「よくも……アホ言うな!そんな事言えるか!」
…残念。そういえばブルマって名前だと知らなかったら変態だなコレ。
危うく服部くんの好感度を下げてしまうところだった。ごめんよ服部くん。
そしてそれを提案した俺の好感度も下がるところだったよ。気をつけろよ俺。
大声勝負は和葉ちゃん勝利のようだ。やはり野菜王子がNo1になるにはまだまだ時間がかかるようだな。
さて、和葉ちゃんが調子に乗って服部くんに勝ち誇る前に話しかけておこう。それが俺から
ねぇ和葉ちゃん、前に君が相談してくれた幼馴染って彼の事なんでしょ?
言わなくてもわかってるよ。和葉ちゃん、男の子はあれくらいの年はまだ気恥ずかしさとかあってね。
女の子のほうがリードしてあげるくらいが丁度いいんだよ?
ここに遊園地のチケットが2枚あるから2人で行っておいでよ。
一緒にゲーセンとかで遊ぶのもいいけど、やっぱりデートとかで雰囲気作りとかって大事だと思わない?え?2人だと恥ずかしい?
なんで君は俺の前だと可愛い女の子になれるのに、彼の前だとそんなに意地張っちゃうんだい?
…じゃあこうしよう。俺たち明日もこっちにいるから、その時に一緒に行こうよ。約束だよ?
それじゃ白熱して勝負してたからもういい時間だし、気を取り直して夕ご飯食べに行こうか。
あぁ、気にしなくていいよ。君たちの仲の良さはとても伝わってきたからね。
ちょっと休憩のつもりのゲームセンターで(主に2人が)盛り上がってしまったので、4人で最後にまた別の美味しいところを案内してもらって夕食を取る。
思わぬ
今日はもう遅くなってしまったが、まだまだお楽しみは続くのさ!
そう、服部平次が特殊召喚されたならば丁度いい!つまり、まだ俺の
和葉ちゃん、服部くん、俺たち明日も大阪で遊ぶつもりなんだけどさ。
本当はホテルにでも泊まろうと思ってたんだけど、良かったら服部くんの家に泊めてくれないかい?
お店で美味しいところに行くのもいいけど、その地域の家庭料理とかも食べてみたくてね。
ついでに和葉ちゃんも一緒に泊まってお泊り会しようよ。他所では聞けない地元の話とか聞いてみたくてさ。
服部くんのお父さんが出張でお母さんしかいない?それはこうつご…いやなんでもないよ?
ほらほら和葉ちゃんも幼馴染なんだから問題ないでしょ?ついでに明日遊園地も行こうよ。
それじゃあ服部くんの家に行こうか。いやー楽しみだなー!
「シェリー、そんなわけで彼に泊めてもらうことにしたが構わないかい?」
「ええ、けれど随分と愉快な2人みたいね。…それであの2人があなたの今回の目的だったわけ?」
「目的というほどの事はないさ。今回のメインはシェリーとの旅行を楽しむ事だからな」
「ふーん、いつも何かを企んでるようにしか見えないのだけれどね」
クククッ、(今回の大阪旅行は)まだ続くんだぜシェリー