クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
シェリーと一緒に大阪観光に行き和葉ちゃんに案内してもらっていたところに、まさかの服部平次登場によって4人で行動していた俺たち。
だがそれならばいい機会だと思いつき、服部平次の家に泊めてもらう事に成功した。
このチャンスを逃すと次はいつになるかわからないから、どうしても今回の偶然を活かしてやりたかったんだ。
ククッ、さぁ蛞蝓姫よ!俺の前で優雅に参上してくれ!
そのまま4人で服部家へと移動していく。どうやらゲーセンでの失態に気付いた和葉ちゃんはシェリーにいろいろと話しかけてくれている。そうだそれを見たかったんだ。
しばらくして着いたけど家デケーな。さすが大阪府警本部長といったところか?
玄関先で1人の女性が俺たちを出迎えてくれた。
「平次から突然連絡があって驚きましたが、ようこそおいでくださいました。私は平次の母の静華でございます。あんまり大層なおもてなしはできませんが、ゆっくりしていってくださいね」
「こちらこそ突然押しかけてしまって申し訳ありません。せっかくの大阪旅行なので、家庭料理の味も食べてみたいと平次くんに少しわがままを言ってしまいまして…」
「いえいえ、今日は主人も出張でおりませんから、お客さんがいてくれたほうが賑やかでいいですわ。ささ、中にお入りくださいね」
「ありがとうございます。あぁ、この子が一緒に来た姪っ子でして、少し人見知りのため口数は少ない子ですが許してあげてくださいね」
服部くんの母・静華さんが出迎えてくれた。シェリーがいることで子供連れに見える上に愛息子も一緒にいるという警戒させない要素てんこ盛りだ。
俺1人でも静華さんと会うチャンスはいくらでも作れるが、きっかけが作為的になってしまうためこの機会があって助かったぜ。
ちなみに最初の広田雅美ボイスは静華さんボイスなのだが、その時はきっと変装と一緒に声も変えていたのだろう。
一旦部屋に案内してもらい、シェリーと共に荷物を置いておく。
「ククッ、和風の屋敷というのも良いものだなシェリー」
「あなたがわざわざホテルをキャンセルしてまでここに来た理由はわからないけど、あんまり変な事はしないでよね」
「あぁ、別に大した理由なんてないよ。ちょっと和葉ちゃんへのおせっかいなだけさ」
「ふーん、恋の応援なんて珍しい事をするものね。あなたの事だから他にも何かあるんでしょうけれど」
「俺の今回の主目的はシェリーの気分転換であり、これについてはできるなら和葉ちゃんと平次くんを少し進展させてあげようかって程度だったんだ。前に来た時に幼馴染との仲を相談されててね。観光案内のちょっとしたお礼のつもりだったのさ」
「…呆れた。あなたそんな事までしようとしてたわけ?大体、もし彼のほうと偶然出会わなかったらどうするつもりだったのよ?」
「その時は普通に恋バナ聞いてあげてアドバイスして終わりだな。まぁシェリーもせっかくだし静華さんと話してみるといいさ」
シェリーから少々疑われはしたが、俺の目的が「大阪府警本部長の妻の声」なんて知っているはずがないもんな。
それにさっき言った和葉ちゃんの応援も間違ってはいない。2人で行くのが恥ずかしいって言うから一緒に行ってあげるわけだし、そのために少しだけ五代目火影に会うのに利用させてもらっただけだ。
そして応接間へと集まってお茶を出してもらったので、飲みながら雑談に花を咲かせる俺たち。
というか、平次くんと和葉ちゃんが勝手に掛け合いしてたりするから、自動的に俺とシェリーと静華さんになる。というかまた勝負事みたいなので優劣を決めるらしい。
安心しろシェリー。ここにみんなで集まる前に静華さんに少しお願いをしておいたから。
ちなみに静華さんに説明したのは…
静華さん少しいいですか?実はうちの姪っ子ちゃんなんですが、帰国子女なもんで日本語を話せるんですが方言は少々聞き取りにくいみたいなんですね。
ええ、そうです。標準語のほうで話してもらえると助かります。
実はあの子少々甘える事を知らない育ち方をしちゃったもので、静華さんさえ良ければ少し構ってあげてください。
ええ、よろしくお願いします。きっと寂しがり屋さんなので、お姉ちゃんみたいに接してもらえると嬉しいです。
え?いえいえ、本当にお若いですよ。…まさか忍術とか使えませんよね?
こんな感じで俺の作り話をシェリーのバックストーリーにしてある。
これならシェリーをダシにして
服部平次?彼は恐らくもうすぐ江戸川コナンに会いに行くだろうから、あまり接点を増やして話題に出されても困るからね。
ちなみにシェリーがちょっとでも小学生女子の演技をやってくれるなら、今女の子に流行りのアニメだとか言って静華さんに優雅なセーラー服美少女戦士とかやってもらえるんだがなぁ。
しかし目を瞑って聞いていると世話焼きの綱手姫の会話に聞こえてくるんだからすごいもんだ。
「お嬢ちゃんはまだ小さいんだから遠慮しないでいいんだからね?」
「…うん」
「ほんと女の子は可愛いわね。うちの息子にも可愛げがあったら良かったのに。私もこんな可愛い娘が欲しかったわ」
「…静華さんも十分綺麗よ」
「ふふ、とても嬉しいわ。私ももういいおばさんだからね」
シェリーのやつ、どう対応していいのかわからず戸惑っているな。どこのド○クエのメ○ゴーストだよ。なんかまごまごしてるぞ。
もしかしてこれがシェリーの子供演技なのか?どうせならコナンを見習え。あいつはたまに高校生であることを忘れていると思えるくらいになりきってるんだぞ。
滅多に見れないものを見れたのはいいけど、せっかくだから阿笠博士の録音機に録画機能も付けてもらうべきだったか?
静華さんは夕食の準備に出ていってしまったのでシェリーと2人、未だに白熱している和葉ちゃんと服部くんを眺めている。
これは恐らく遊園地に行ったくらいじゃ進展しないだろうな。仲はめちゃくちゃ良いんだが。
…そういえばライバル的な女の子がいるとか和葉ちゃんが言ってたような。かるたの女王だったか?それは静華さんだったっけな。
確か俺の記憶じゃ
でも蛞蝓姫とカツユのコンビは再現してみたいな。同時には無理だが個別にならなんとかなるか?
どうやら今日の夕食は静華さんの得意なてっちりのようだ。というかわざわざ用意してくれたのか。
白熱した勝負を繰り広げていた2人もやっと落ち着いたみたいだし、まぁゲームとかで勝負してるんだから可愛いものだ。
これが肉体言語とかになったら…それならそれでもっと野菜王子出せるか?
まぁあり得ないし2人は今みたいにカードゲームなり人生ゲームなりで戦っていてくれ。ただし俺も参加する時はイカサマしてでも負けてもらうがな。服部くん、お前にNo1はまだ早い。
てっちりも堪能し、後片付けは和葉ちゃんも手伝うようだ。シェリーも手伝おうかとしてたみたいだがお客さんだからとやんわり断られていたので一緒にいる。
「なぁ、聞きたかってんけどな。和葉とはどこで知り合うたんや?」
「あぁ、俺が仕事で大阪に来ていた時に、たまたまチンピラ数人に絡まれている女の子を助けてね。それが和葉ちゃんだったんだよ」
「ほー、そういうことか。けど、それでようそこまで仲良うなったもんやな?」
「お礼をしたいと言われても何も思い浮かばなくて、そのままこの町の案内をお願いしてね。それで姪っ子がいるから一緒に来た時は案内頼んでいいかな?ってお願いしてたんだよ」
「なるほどな。確かにあいつやったら面倒見ええから小さい子とかとも仲良うなれるもんな。そっちの子がおってくれたから、うちのおかんが喜んどったな」
「喜んでくれてたのなら連れてきて良かったよ。この子も今は俺と二人暮らしだから、もしかしたら寂しい思いをしている事があるのかもしれないしね」
「はは、おかんのあの様子やと娘でも出来た気でおるんちゃうかな」
そうか、それは良かったよ。もしかしたらまた大阪に来る時はシェリーも一緒に行くって言ってくれるかもしれないしね。
ただ服部くんよ。もしかしたら義理の娘になるかもしれない子が今、静華さんと一緒に仲良く洗い物とかやってるぞ?まぁ俺にとってはどっちでもいいからそこはノータッチだ。
食後の休憩も終わりお風呂も頂いて今は、服部くんと和葉ちゃんとシェリーと4人で部屋で雑談している。
内容は明日の予定だな。明日は遊園地に行くって決まってる予定があるから、何時に出発してとかそんな話だ。
服部くんはてっきり「遊園地なんて行って何がおもろいねん」とか言うのかと思ってたんだが、シェリーがいるからかそういう事は言わなかった。そこには気づかえるのか。
まぁ現地に着いたら別行動をするつもりだし、和葉ちゃんにはそう言ってあるので和葉ちゃんも気合が入っているのかもしれない。
「突然の来訪にも関わらずもてなして頂いてありがとうございました」
「いえいえ、私も楽しかったですよ。ぜひまた大阪に来られた時は遊びにいらしてくださいね」
「その時はまたこの子と一緒に寄らせていただきますね」
一泊した翌日、見送りをしてくれた静華さんにお礼を言い、ちゃんと「また来ます」と伝えておく。
社交辞令?俺は言った事を守る男なんだ。まぁさすがに服部くんや和葉ちゃんと一緒に来るつもりだが。
ただ服部くんの親父がちょっとネックなんだよな…引き離すのは簡単だけど、この世界の主要キャラの親父連中は勘が鋭いからな。
毛利小五郎?あれはコナンが腹話術するための
遊園地では予定通りに2人ずつに別れたわけなんだが、当然シェリーは遊園地を楽しむような性格ではない。
なのでいくつかアトラクションを周ってベンチでゆっくりしていた。
あ、2人が戻ってきた。なんか様子がおかしいな。和葉ちゃんがぐったりしてる。
「2人ともおかえり。ところでどうして和葉ちゃんはそんなに青い顔をしているんだい?」
「あー、あれや。コーヒーカップ乗ってな、はしゃいで回しまくったら酔うてもうたらしいわ。ほんま世話の焼けるやつやで」
「うぅ…」
これは…もしかしたらチャンスかもしれない!
さぁ和葉ちゃん!今の気分をちゃんと言葉にして俺に聞かせてくれ!
「和葉ちゃん大丈夫かい?気分はどうかな?」
「うぅ…だいじょぶです。ちょっと休んどったらマシになりますんで」
「大丈夫そうには見えないな。服部くんは和葉ちゃんに何か冷たいものでも買ってきてあげてくれないかい?和葉ちゃん、今の気分はどうかな?」
「う~…気持ち悪い」
「もっと無感情に目の前に賢者モードの相手がいると思って言ってみて」
「なんなんそれ…?あ”ー…気持ち悪い」
「ありがとう。あ、飲み物買ってきてくれたよ。和葉ちゃんはちょっと大人しく座って休んでいようね」
ありがとう和葉ちゃん!まさかコレが聞けるとは思わなかったよ。
たまには遊園地ってのもいいものだね。シェリーもおしぼりもらってきてくれたんだ。
和葉ちゃんもこんなだし、少しみんなで休憩にしようかな。
そこからは和葉ちゃんが元気になるまでのんびりして、元通りになってからは4人で園内のアトラクションを巡っていった。
そして日も落ちてきたので帰り支度を整え、和葉ちゃんと服部くんに見送られながら大阪を後にする。
「2人ともいろいろとありがとうね。服部くんには家に泊めてもらって、美味しいご飯をまで馳走してもらって楽しかったよ。静華さんにもまた遊びに伺いますって伝えておいてくれるかい?」
「いつでも遊びに来てええで。そっちのちっこい子がおったらおかんも喜ぶわ」
「アタシらもほんま楽しかったです。ファーストもまた遊びにきてな」
「…そうね、その時はまたこの人に連れてきてもらうわ」
特にお土産なんかは買わなかったので荷物なんて少ないものだ。
今回は新幹線を利用したのだが、空席も多い車内なので混雑もせずゆったりしたものだった。
なかなか実りある大阪旅行だったな。シェリーも俺も楽しめた旅行になったんじゃないだろうか。
「気になってたのだけれど、今日わざわざ遊園地に行った目的はあの2人をくっつける事だったわけ?」
「いや、あの様子じゃくっつかないだろうな。遊園地に行ったのは本当に和葉ちゃんへの応援みたいなものだ。昨日も言ったが2人で行ってきなってチケット渡したんだけど恥ずかしがってしまってね。後は、たまにはシェリーも童心に帰るのも悪くないだろう?」
「童心に帰るのはこの身体になった事だけで十分だわ。中身まで戻ってしまったら研究も何もできないじゃないの」
「それはそうなんだが…たまにはこういう日があっても良いだろう?」
「そうね。たまにならいいんじゃないかしら。あなたもそういう時くらい影で動いてないで、ゆっくりすればいいんじゃないかしら?」
クククッ、(心配はありがたいが、次は)お前の番なんだぜシェリー