クククッ、逃さねぇぜシェリー   作:きりりん

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クククッ、一苦労だなシェリー

 

 

 

俺は今、日売テレビに来ている。いつも生放送されているテレビ番組「日本まる見え探偵局」で、今回のゲストとして毛利小五郎が呼ばれているのだ。

前回の放送時に告知されていた事でそれを知った俺は米花町へと向かい、毛利小五郎たちと話しているうちに付き添いに入れてもらったというわけだ。

本来ならば付き添いはコナンくんと蘭ちゃんだけなんだが、せっかく知ったこの機会を俺が逃すなどあり得ない。

 

本当はシェリーも連れて来てあげたかったものだが、状況的に掛け合いが見れるわけではないからな。

本人はそれよりも早くパイカルの事を聞いてこいって感じだ。ちょっとくらい待っててくれ。

 

 

ちなみに、どうやって付き添いになったのかと言うと、前日のうちに毛利探偵事務所に行ってきただけだ。その時の様子は…

 

どうも、毛利探偵。以前依頼させて頂いたアンケートを受け取りに来たんですが…

あぁどうも、ありがとうございます。蘭さんこんにちは。相変わらず可愛いですね。

コナンくんもこんにちは。うん?どうしてここにいるのかって?前に毛利探偵に依頼していたアンケートを受け取れなかったからね。それで今日時間があったから来たんだよ。

そういえば聞きましたよ毛利探偵。明日テレビの生放送に出演されるとか。

さすが名探偵ですねー。これでまた更に有名になっちゃいますねー。

テレビ局なんて行ったことないから羨ましいなー。え?いいんですか?

蘭さんとコナンくんも構わないかな?大丈夫、()()()()()()()()()()何もしないよ?

コナンくん怖い顔してるね。さては俺が蘭さんと一緒にいるからヤキモチかい?

それじゃ明日また来ますね。楽しみにしてますよー。

 

と、いうわけでみんな俺が一緒に行くことを快諾してくれたわけだ。

 

 

テレビ局なんて行く機会がないからワクワクするな。事件が起きるかもしれないけど、そこは名探偵(コナンくん)に任せておけば大丈夫。

その時は俺は周りの動揺しているみんなを落ち着かせたりしていることにするよ。

 

もし事件が起きなかったら、それはそれで結構な事だ。その場合はちょっと番組プロデューサーとお話したりするだけだな。

うまいこと煽ててあげれば気分良くなってくれるだろう。ダメならダメで構わない。

 

 

ククッ、つまりどっちにしても俺にとってはとても楽しめる1日なのである。

 

 

そして翌日に再度毛利探偵事務所へと向かい、3人と合流して日売テレビに来ているというわけだ。

 

番組が終わるまでの間は特にやることもないので、蘭ちゃんとコナンくんと一緒に眺めているだけだった。

本来ならばこの番組のほうが目を引くはずなんだろうが、俺からすればこれは前座に過ぎない。

 

というわけでコナンくん、いくら俺が組織の人間だからって別に俺を警戒する必要はないぞ。ちゃんと何もしないって言ったじゃないか。

疑うのも探偵の性分みたいなものなのかな?まぁ君がそうしたいなら好きにすればいいと思うよ。

 

 

…あぁ、なるほど、そういうことか。

君は俺が蘭ちゃんに余計な事を言わないか警戒していたのか。確かに風邪引いて蘭ちゃんに添い寝してもらった事が俺にバレてしまったから、もしかしたら俺の口から工藤新一がそれをしていた事がバレることを恐れているんだね。

 

大丈夫だ名探偵よ。俺は「お約束」とか「様式美」には理解がある人間だ。

 

ヒーローの変身シーンには敵は黙って待つように、敵が過去を語り出したらヒーローも黙って聞くように、そういう時に無粋な真似などしない。

だから「工藤新一=江戸川コナン」ということも、わざわざ俺から明かしたりはしないさ。

 

 

 

ただ俺は思うわけだ。仮に然るべきタイミングで蘭ちゃんに「工藤新一=江戸川コナン」であることを伝えたとしても、決して感動的なシーンにはならないと。

 

例えば俺が組織の力まで使って協力してあげたとして、蘭ちゃんを人質にして工藤新一の姿でそれを助けさせたとして、その後に苦しみながらコナンの姿に戻ったとしてもさ。

 

どこかのタキシード着た仮面つけた人とセーラー服美少女戦士なんかは、普段は仲が悪くても正体わかって距離が近づいていったけどさ。

 

いくら良いように考えてもコナンの場合「新一はずっと私を近くで見守ってくれてた…トゥンク」とはならないだろう。

そこまでいったら蘭ちゃんの脳内はお花畑通り越してホラーだ。俺では理解できない領域にあると思う。

 

そしてコナンのほうも、今まで一緒に生活してきてたのがバレたということだから「すまないな蘭、実は俺が生きているとバレるわけにはいかないから、おっちゃんを利用するために毛利探偵事務所にいたんだ」とか言えないだろう。思いっきり打算すぎて好感度マイナス間違いなしだ。

 

かといって「お前の事が心配だから、心苦しかったが遠くにいると言って、本当は近くで見守ってたんだ」とか言ったらそれはそれで怖い。ストーカーここに極まるって感じがする。

 

 

「あの…ずっと何か考え事してるみたいですけど、どうかしましたか?」

 

「ん?あぁ、ちょっと収録を見ていただけですよ。テレビの現場なんて見る機会がないから、どこを見ても珍しいものだらけですからね」

 

「確かにそうですよね。お父さん、変な事言わなければいいんですけど…」

 

「そこは信じるしかないでしょうねぇ。蘭さんが代わりに出るわけにもいかないでしょ?テレビ映えするのは蘭さんのほうなんですけどね」

 

「うぅ、あんまりそういう事言われると恥ずかしいんでやめてくださいよぉ」

 

 

蘭ちゃんに声をかけられるまで思いっきり思考が違うところに飛んで行ってしまった。

危なかったな…だがなんとか誤魔化せたようだ。

あとそこそこの時間無駄な事を考えてしまっていたようで、番組もどうやらもうすぐ終わるようだな。

 

 

やっぱり事件が起こってしまった。毛利小五郎が出演した「日本まる見え探偵局」を担当する諏訪プロデューサーが銃で頭を撃ち抜かれているところを発見されたみたいだ。

 

もったいない人を亡くしてしまったものだな…せめて最後は野菜の人に負けて自爆する人造人間のような叫びを聞きたかったよ。

まぁ犯人はわかっているけど、そこは名探偵にお任せしておいてと。

俺は当初の予定通りに動揺している人を落ち着かせてあげることにしよう。

 

 

「大丈夫ですか?大変な事になってしまいましたね」

 

「ええ、あの…あなたは?」

 

「あぁ、私は毛利探偵の付き添いで観覧させて頂いておりました。永井さん、震えているようですが気を強く持ってください」

 

「ええ、でもどうして諏訪プロデューサーが…」

 

「そうだ、私がいいおまじないを知っているんです。こういう時は自分に言い聞かせるように繰り返すんです。逃げちゃダメだ…とね」

 

「逃げちゃダメだ…?」

 

「そうです。それを小さな声でいいんです。何度も言ってみてください。特に15~6才の少年のような気持ちで声を低くして言うと(俺に対して)効果が高いですよ。さぁ、言ってみてください」

 

「…逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」

 

「そうです。この言葉はきっとあなたにとって勇気をもらえる特別な言葉になると思います。犯人は毛利探偵が突き止めてくれますので、どうかその時を待っていてください。あなたなら必ずこんなアクシデントも乗り越えられます」

 

 

ククッ、逃げちゃダメだ(シンジくん)キター!

 

 

どうやら事件は毛利小五郎(コナンくん)が解決したみたいだな。これにて一件落着だ。

てか、推理ショーとか生で放送するのはテレビ局の勝手だからいいけど、目暮警部が犯人を庇う立場になってて問題ないのか?

これ完全に警察が引き立て役になってるぞ。そして警察が解決できなかった事件を探偵が解決することによって毛利探偵スゲーまではいいが、下手すれば警視庁無能ってレッテル貼られたりしないのかな?

 

テレビ局にいるからってわざわざ犯人を追い詰めるために放送まで使ってくれてるおかげで、こっちはその状況を見ている事ができるので大変俺に優しい状況となっているな。

 

 

「蘭さん、コナンくんが映ってますけどいいんですか?」

 

「え?あっ、コナンくんったら。また勝手にお父さんに着いていったのね」

 

「なかなか活発な男の子ですね。蘭さんも大変なんじゃないですか?」

 

「えーと、アハハ。でも活発なのっていいことですよね…」

 

 

コナンくん事件に夢中になるのはいいが、俺と蘭ちゃんを一緒に置いといていいのか?

いくらテレビ局内で、人も多いからって少々危機感が足りないぞ。

これも実は俺への信頼の表れなのか?「オレが事件を解決している間、蘭の事は任せたぜ!」みたいな感じなのかな。

もしかしてコナンくんって蘭ちゃんにはストーカーで俺にはツンデレなのか?属性盛りすぎだろ。

 

 

 

事件は解決したが番組プロデューサーが殺害され犯人であるタレントさんも逮捕で、これから大変だろうがそこは俺の関知するところではない。

もうここにいる必要もないし、それじゃあ毛利探偵事務所に向かうとするか。と思ったら永井さんに話しかけられた。

 

 

「あの、先程はありがとうございました」

 

「いえいえ、少しでもお役に立てたのなら嬉しい限りですよ」

 

「これから番組がどうなるのかわからないですけど、教えてもらった言葉を忘れずに頑張ってみますね」

 

「ええ、ぜひ忘れないでください。これからも永井さんを応援していますよ。私はテレビ関係者ではありませんので難しいかもしれませんが、また会える時を楽しみにしていますね」

 

 

どうやら番組アシスタントの永井亜矢子さんは落ち込んではいないようだ。

わざわざお礼まで言ってくれるとは…これは思ったより好感触か?

まぁ今ここで連絡先を聞いたりするような事はしないが、次の機会を作ってやれば話し相手くらいならいけるかもしれない。

なんとか大阪まで連れて行って永井亜矢子(セーラーウラヌス)服部静華(セーラーネプチューン)と会わせてみたいもんだ。

 

…待てよ?外部太陽系三戦士いけるなコレ。

 

一堂に会する事は無理でもそれぞれならやれそうだな。やっぱり連絡先聞いておくか?

結局連絡先の交換などはせずにそのままテレビ局を出てきたわけだが…

 

てかコナンくん事件を解決してから俺を見て「しまった!」って顔してるから、俺が蘭ちゃんと一緒にいた事忘れてたな?

まぁ俺の用事も終わったし、コナンも何も言わなかったから俺も忘れてやろう。

 

もしこれで「蘭ねーちゃん何か変な事されなかった?」とか聞いたりした日には、俺の脳内ストーリー「コナンは新一!?真実を知る蘭」を実演するところだったぞ。

 

さて、今日のイベントは終わったしさっさと帰ろう。これ以上俺が蘭ちゃんたちと一緒にいたらコナンくんの胃に穴が空いてしまうかもしれない。

 

 

いやー今日は大変な1日でしたねー。でも毛利探偵の名推理が見れたのは嬉しかったですよ!

何も覚えてない?いやいや、あなたがいるから事件は解決できてるんだからいいじゃないですか。

それじゃあ私はこのへんで失礼しますねー。また近いうちにでも探偵事務所のほうにお邪魔しますんで。

コナンくん、蘭さんが心配していたよ?好奇心旺盛なのもいいけど、あんまり心配かけちゃダメだよ。

それじゃあまたね!

 

 

少々急ぎ足みたいになってしまったが、別れの挨拶をして米花町を出ていく。

収穫はあったし、永井亜矢子の感触も悪くなかった。あの様子なら次は毛利小五郎、というかコナン抜きで会いに行っても良さそうな感じだな。

 

ククッ、俺のチルドレンコレクションにまた1つ追加されたわけだ。

 

 

 

「ただいまシェリー」

 

「おかえりなさい。見たわよテレビ、まさか全国放送で事件を解決するなんてね」

 

「まぁこれくらいならいいんじゃないか?見られたところで問題はないさ」

 

「あら、随分と楽観的なのね。組織の誰が見ているかもわからないのに」

 

「今のところ組織で工藤新一が江戸川コナンだと知っているのは俺だけだ。工藤新一が自ら墓穴を掘らない限り、その状況が続く事は間違いない。もちろんあの事件の解決を江戸川コナンが行っていたら、また話は変わってきていたかもしれないがな」

 

 

コナンが実際にテレビに映っていたのはほんの少しだけだ。ジンは殺したと思っているから、もう工藤新一の顔も覚えていないだろう。

ウォッカは覚えているかもしれないが、もし放送を見ていたとしても工藤新一と江戸川コナンを繋げるような考えはないだろうしな。だってマダオだし。

 

シェリーは万が一の事も考えているようだが、例えどんな名探偵や推理好きだったとしても、今の状況で工藤新一と江戸川コナンを結びつけるのは、それこそバーボンやベルモットでも現時点では不可能だ。

そういう説明をしたらシェリーも安心してくれたようだな。コナンのやつめ、蘭ちゃんだけでなくシェリーにまでいらん心配させやがって。

まぁ蘭ちゃんは保護者的な心配で、シェリーは正体バレ的な心配なんだが。

 

 

しかしうまい具合に永井亜矢子(シンジくん)を聞けたし、次はどうしようかな?

 

新世紀な汎用人型決戦兵器シリーズに走ってみるか?

 

それともセーラー服な美少女戦士シリーズってのも悪くないか?

 

ってどっちもキールがいるじゃん。しかもかなり主要なところに。

 

 

まぁいいさ、これからも俺のやる事は何も変わらないのだから…

 

 

 

 

 

クククッ、(魅力的な標的が多すぎて選ぶだけでも)一苦労だなシェリー

 

 

 

 

 

 


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