クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
組織から指令がきた。それ自体はいつもの事だから別に構わないんだが、今回は俺が日本にいるから丁度よかったそうだ。
丁度いいも何も、基本的に言われたら海外だろうと行ってるから関係なくね?
連絡してきたジンに詳細を聞かないと全然わからんな。
「…それで?俺は今回はどこの裏切り者を粛正すればいいんだ?」
「今回は組織の情報が漏れる前の口封じだ。標的の手が後ろに回る前に始末する。ピスコが殺る予定なんだが、お前が日本にいることを思い出してな」
「俺が代わりに標的を殺ればいいってことか。了解だ。詳細な情報をくれ」
「いや、お前にはピスコのフォローをさせるつもりだ。俺も今日本に来ているからあとで合流しろ」
ピスコが殺す予定って事は、これって確か最後はピスコが殺されるやつか。
それが俺がいることでピスコへのフォローが俺に来ちゃったわけね…
確かピスコはシェリーの正体に気付いたヤツだったな。まぁ今回ピスコはシェリーに会う事はないんだが。
…そういやベルモットは来てるのかな?まぁ俺の事は知られてないだろうから、ここはもう全力スルーの方向でいくとしよう。
しかしピスコのフォローをするとなると、コナンやらとも遭遇する可能性が高いよなぁ。
これはどう動いたら俺にとって都合がいいんだ?何もしなければたぶん標的が死んでピスコも死んで原作通りになるだろう。
ならばピスコが生きていたら…コナンの正体がバレる可能性があるのか?
今のコナンって組織の事をまだ調べてるのか?俺があれだけ口止めして余計な事はするなって「忠告」したのに?
いや、思ったより簡単そうだな。俺がコナンを足止めしつつピスコの代わりに標的を始末すればいいだけか。
そうすればコナンの事をピスコに勘付かれる可能性もなくなり、組織の幹部が減る事もなくなり、パワーバランスが大きく傾く事もなくなる。俺にしかわからない事だが、本来は組織にとってマイナスのはずのものが消えるんだから実質プラスになってるってわけだな。
まだジンに提案した各国スパイ大作戦が始まってないだけに、潜入者じゃないコードネームであるピスコを失うのは俺的によろしくない。
そうと決まれば善は急げだ。さっさと行って準備しないとな。
「シェリー、任務が入った。長くはならないが、今回は念のため外に出ないようにしておいてくれ」
「あら、そこまで言うほどの何かがあるのかしら?」
「ああ、この近くではないがジンが日本に来ている。それにピスコやら他の
「っ!…わかったわ。あなたの言う通りこの隠れ家で大人しくしておくことにするわね」
「そう不安になる事もないさ。終わったらシェリーの好きなものでも食べに行くとしよう。確かケーキや甘いものが好きだったよな」
まぁこれは本当に念のためでしかないんだがな。元々シェリーは一人で外に出かける事自体が少ない。てか、俺がいない時に出かけてる時なんてあるのか?
まさかシェリーに限って、コナンもいないのに勝手に隠れ家を飛び出して、ピスコやジンの前に姿を現すような迂闊な真似はしないだろう。
高校生探偵に対抗して、研究者探偵シェリーか。わざわざピスコの前に行って犯行を暴いたあげく「私は
そしてまだジンはトラウマなのか。名前聞いただけでビクッってなるって相当だな。何をやったらそこまでになるんだ?
まぁいい、とりあえずジンと合流して詳しい話を聞いておかないとな。
と、まぁジンと合流しに向かうわけだが、ここでちょっと2ヶ所ほど寄り道してから行く。
1つは組織の研究所で今回使う物を調達しておくわけだ。ピスコの代わりに俺が殺すなんて言っても、俺にシャンデリアを撃ち落とすような射撃の腕なんてない。
ピスコは公衆の面前で事故死を装いたかったんだろう。そしてどこを見ても目を引く大物たちに紛れておけば気づかれないと思ったんだろうが、大物たちがいるって事は当然記念にと撮影する事だって十分に考えられただろうに…
そんなピスコの凡ミスを
研究所で物を受け取った俺はそのまま移動し、もう1ヶ所でとある人物と接触した。
そして研究所で受け取った物を渡して、それを確認した後に合流ポイントへと向かった。
ジンと合流して詳細を聞いてみたところ、やはり標的は政治家・呑口重彦だそうだ。
収賄容疑で逮捕直前のため、下手に組織の情報が漏れたりする前に口封じに始末する算段らしい。
俺はピスコにも正体を明かさずに近くにいて、何かあればフォローする担当のようだ。
ちゃんと用意されていた招待状も受け取り、正装に着替えて時間が来たら会場へと入っていく。
今開催されているのは「映画監督・酒巻昭を偲ぶ会」だ。
ここに集まっているのはかなりの大物ばかりだな。映画会の巨匠は伊達じゃないということか。
あー…やっぱりコナンいるな。まぁ今の俺は変装してるからバレないとは思うが…
ベルモットみたいな完璧な変装じゃなくても、服装や小物でもかなり雰囲気は変わる。
直接話したりと接触すれば探偵の勘に引っかかるかもしれないが、今のコナンには組織センサーであるシェリーはいない。まぁチョロチョロと調査するなら足止めはするけど。
コナンは今は放っておくとして、まず俺が動くのはピスコ…いや大手自動車メーカー会長である桝山憲三のほうだ。
「失礼します。桝山会長、この手紙を桝山会長に渡すように言われたのですが…」
「私に手紙?ふむ、受け取ろう。ご苦労だったな」
さて、手紙を見てピスコは何やらキョロキョロしているが、なんて書いてあったんだろうな?
まぁ書いたのも渡したのも俺なんだけどさ。別に大した内容は書いてない。
どうやら偲ぶ会は歓談から亡くなった巨匠のスライドショーへと移るみたいだな。
…ということは、そろそろか。
本来はここでシャンデリアがガシャーンってなって呑口重彦は事故死するはずなんだが、今回は何も落ちてこない。
俺も離れた場所でのんびりと流れている映像を眺めているだけだ。
そして映像が終わり、会場の照明が戻った時、呑口重彦はその場に倒れていた。
最初は何事かと思い呑口に話しかけたりしていた人たちも、呑口が死んでいる事がわかり会場に悲鳴が響き渡る。
さて、次はこっちをフォローしてあげるとしますか。
「やぁコナンくん。こんなところで会うとか奇遇だね」
「なっ!…なんでこんなところに」
「それはこっちのセリフだよ。子供の君がいるほうがどちらかというと不自然だろう?」
「まさか…呑口議員を殺したのもお前らなのか」
「ククッ、証拠もなく疑うのは探偵の性なのかな?ただ、今回は君に大人しくしておいてもらおうと思って声をかけたのさ」
「なんだと…?」
本来なら好き勝手に捜査したり危険に首を突っ込んだりしていくんだろうが、俺がいる以上それをさせるわけにはいかない。
いや、捜査するとかくらいなら別に構わないんだが、それで調子に乗って「江戸川コナン…探偵さ」とかやられるわけにはいかんのだよ。
下手すればジンやピスコが見てる前で「お前らもあの男の仲間なのか!?灰原を返せ!」とか言い出されたらたまったもんじゃない。
なので万が一を考えて今回の件には一切関わらせないのが確実なのだ。
そしてコナンくんも俺がいる事で何かを察してくれたみたいだ。ちなみにコナンくんに今回の犯人はわからんと思うよ。
警察も来て捜査されたりしたが、最後は原因不明の心臓発作による急死とかで終わるんじゃないかな。
「てめーら、一体何考えてやがる!」
「随分な言い草だな。君のためにわざわざ止めてあげたというのに」
「…それはどういう意味だ?」
「なに、シェリーが君たちの事を心配していたのは知っているだろう?だから
「…つまり今回の件はお前ら黒ずくめが関わってるってことか」
「調査をさせるわけにはいかないが、今あるヒントで推理するのは自由だ。なんなら次に会う時に答え合わせにも付き合ってあげよう。ヒントは既にあるだろう?なにせ……ジンに盗聴器を仕掛けるくらいなのだからね」
驚いているところ悪いなコナンくん。これが俺にできる精一杯の譲歩だ。まぁ毛利小五郎経由などで遺体の解剖の結果を知るくらいは構わないさ。
この会場にいた全員に聞き取りとかされるとピスコに当たるからストップをかけただけだ。
それに今ある情報だけで推理しても構わないって言ってあるし、答え合わせだって付き合ってあげるんだから破格の条件だろう。
ほんとよくジンのポルシェに気付いたな。本来ならシェリーが気付いてそこから始まるはずだったのに、この世界ではシェリーがいない分直接ジンを見つけるとかのズレが起きてるのか?
まぁいい、あとはジンに終わった事を伝えて任務終了だ。
「ジン、何もしていないがこれで一応任務完了だな」
「標的が勝手に死ぬとはな。…まぁいい」
「ちなみにこの前話した
「恐らく実行される事になるだろう。俺からあの方に出した話だから、そっちはウォッカが纏める事になるだろうな」
「ククッ、それは僥倖。他の知らないヤツに任せたくなかったんで丁度良かった」
「ああ、そういうことだ。お前にもそっちのフォローもしてもらうぞ」
「了解。本格的に動く時は教えてくれ」
これでピスコは生きていて、コナンは見つからず、組織としても俺としてもコナンとしても最良の結果を生み出せたんじゃないだろうか。
ベルモットがいたのかどうかはわからんが、会わなかったのだから特に言うこともない。
そして各国スパイ大作戦はウォッカが音頭を取るのか。これも朗報だな。
少しばかりたくさんウォッカにはアドバイスしてあげることにしよう。
わざわざアピールする必要もなかったからジンにも言わなかったが、今回の事件の黒幕は俺だ。
研究所から研究中の薬、証拠が残らないという試作品の濃度を上げたものをカプセルに入れて事前に呑口重彦に飲ませただけだ。間違っても子供にならないように、確実に失敗の薬をな。
カプセルの溶ける時間を計算して飲ませておけばあとは勝手に薬が仕事をしてくれる。
今回の偲ぶ会のタイムスケジュールはわかっていたから、スライドショーを上映する時間にある程度合わせていただけだ。
まぁ上映時間とズレてたとしても、呑口重彦が突然倒れるだけなんだがな。
そう考えたら別に暗い中で倒れる必要なかったな。ピスコの犯行を知ってたから、俺もそこに引っ張られてしまったようだ。
「ただいまシェリー。終わったぞ」
「…おかえりなさい。もう大丈夫なの?」
「ああ、もう大丈夫だ。どうやら少し怖かったようだな。顔色が悪いぞ?」
「いくらあなたに匿われてるからって、暢気にしているわけにはいかないもの」
「そうか。一応伝えておくが、あの名探偵のボウヤも首を突っ込みそうだったから止めておいたよ」
「彼、自分が殺されるかもしれないって可能性を考えないのかしら?」
「さてな。それはそうと、約束していた食事にでも出かけようじゃないか。ケーキバイキングにでも行くか?」
「…そうね、あまり悪い方向にばかり考えても仕方ないものね。それじゃ準備するわ」
どうやら
言っても理解できないだろうから仕方ない事だが、それでもマシなほうだぞシェリー。
無鉄砲な探偵に付き合って閉じ込められたり、その結果ジンに見つかったりするより大人しく隠れ家にいるほうが断然いいだろう。
こういう時は日常を実感することで恐怖が薄れたりするものさ。
ということで、シェリーと一緒にケーキバイキングにやってきたわけだ。
俺1人ならば来れない場所ではあるが、今の俺には
こういうところは女性客が多いからね。
まぁその
シェリーが今まで心細かった分、今度は俺に味わえってことか?
クククッ、(勢力バランスも俺たちも)フェアじゃないとなシェリー