クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
今日は日曜日だ。世間的には休日なんだろうが、基本的に俺にはあまり関係がない。
まぁ黒の組織が日曜日定休とかだったらビックリだよな。「あいつを始末してこい」「残業代出るんですか?」とか会話のある犯罪組織とか嫌だ。
俺の場合は直の上司があのジンなせいもあって指令が来たら即行動を心がけている。その分結構好き勝手させてもらってるので他のヤツはどうか知らんが俺は動きやすいと思っている。
前回ピスコを助けた事で無駄に組織としての力を落とすような事にはならなかったし、俺としてはひとまず安心といったところだ。
まぁ俺の事をピスコは知らないんだけどさ。今はまだそれでいい。
これから先俺の目的のためにも、ピスコの表の立場・大手自動車メーカー会長というのは切り捨てるにはもったいないからな。
これでピスコが生存したことでアイリッシュとジンの確執フラグも折れたし、いざという時はしっかり働いてくれる事だろう。
ジンや他の面々が日本にいたことで少々気負っていたシェリーも今じゃすっかり元通りだ。
相変わらず読書したり紅茶飲んでたりと姿はちっちゃいのにしっかり才女といった感じだな。
そんなシェリーだが、今は研究を一時中断してのんびりと過ごしている。
というか「工藤くんが元の姿に戻ったっていうそれを持ってきてもらってから研究したほうが効率がいいから」という事で、つまり俺待ちという事だな。
せっつかれてるわけでもないので、そのうち大阪に行って服部平次と話してみようとは思っているがいつになるやら…
何せ今俺がいるのは大阪の服部のところじゃなく東京の喫茶店なのだから。
別に組織の仕事というわけではない。そう、いつもの俺の目的のためだ。
ただこれがまた難易度が高くてどうしたもんかと考えている状況だ。いや、接触したりするのは簡単なんだが…
一応いつもの如く二兎を追いながら1匹得られればいいというプランで行くつもりではあるんだが、
「お待たせしました。遅くなってごめんなさい」
「いえいえ、むしろ日曜日なのに呼び出してこちらこそ申し訳ありません。どうにも他の日が都合つかなかったもので…」
「大丈夫です。私は事務所で一番下っ端ですから。ちゃんとお仕事取ってこないと叱られちゃいますしね」
待ち合わせ場所にしたのはオフィス街の近くにある喫茶店だ。日曜日ということもありオフィス街に人はそんなに多くはない。この喫茶店も俺たちだけしかいない。
目の前にいるのは
今の俺は「デザインの依頼をしたいが、打ち合わせする時間が取れないので日曜日でも構わないか?」という事を事前に連絡し、その結果一番年下の森由紀子が来たということだ。
これ自体は予想通りだな。まずは架空のお仕事の話でもしながら好感度を上げるところから始めるとするか。
それじゃ森さん今日はよろしくお願いしますねー。あんまり堅苦しくしなくていいですよ。
緊張しててもいい仕事はできないですしね。リラックスしてリラックス。
その調子でいきましょ。実は依頼したいのは………といった感じなんですよー。
まぁ急いでないので気長に良いものを作ってもらえれば構わないですんで。
話は変わりますが森さんは…あぁ由紀子でいい?それじゃ由紀子さんと呼びますねー。
由紀子さんは日曜日なのにお仕事してて良かったんですか?デートとかしなくて。
え?別れちゃったんですか?可愛いのにもったいない。あー、なるほど。同僚の方と…
今はすっかり仲良し?そうでしたか。あら?来週がその彼の誕生日なんですか?
うーん。事前に接触して段々と仲良くなる計画だったが、これは来週犯行に及ぶということか。
ここで森由紀子に手を貸すのは簡単だが、あんまりコナンにこんな事件まで組織が関わってると思われたくないな。なんかせっかく上げたコナンの好感度が下がりそうだ。
だが、だからといってここで手を引いてもいいのか俺?否、そんな事はあり得ない。
かの聖帝様のように俺も「退かぬ・媚びぬ・省みぬ」の精神でやってやるぜ。
最悪
他に聞きたいセリフはいくらでもあるんだからな。
俺から見たら森由紀子が未練を残しているのは一目瞭然だ。恐らく表面上仲が良くても、その彼氏を奪っていった女に対する憎しみは降り積もっているのだろう。
しかしその奪った女を殺したところで、森由紀子がまた彼女に戻るなんて都合のいいことになるのか?
結局のところ同じ事を繰り返すだけになる気がするんだが…これも一種のヤンデレか?
最後はちょっと誰かと話しただけで「あの女が私の彼氏に色目を使った」とか言って殺すところまで想像できたぞ。
今二十歳だって言ってたし、周りが見えないくらい熱中しちゃったからなのかな?
まぁ人の恋愛模様なんぞどうでもいいんだが。一応良いように表現すれば一途ってことになるだろう。
…でも蘭ちゃんも一途だよな?やっぱり最後はこうなるんだろうか?
蘭ちゃんが「新一!あの女誰なのよ!?」とか言ってハイキックかますのが、ものすごくリアルにイメージできたぞ。
事件の度に飛び出していく新一、その時に女性と話したということで最後は蘭による嫉妬制裁という黄金パターンか。需要あるのかそれ。
でも蘭ちゃん乙女なところもあるからな。今が待ち続ける女的な感じだしどうなんだろ?
ちょっとだけ「工藤新一は女性と一緒に暮らしている」みたいな噂を流して様子を見てみるか?
噂は所詮噂だし、
…そうじゃない。蘭ちゃんがヤンデレかどうか確認してどうすんだ。
喫茶店での話は軽い仕事の依頼の打ち合わせを行い、そこからは森由紀子の好感度を上げる事に集中していたのでそこそこの時間を費やしてしまった。
まぁ今回は初対面だったし、事件なんかの最中でもないからこんなものだろう。
「せっかくの休日にお時間頂いてありがとうございました」
「いえ、私もただ家にいるより仕事をしていたほうが気が紛れますから…」
「ククッ、あまり悲観的に考えないほうがいいですよ。また数日後に来ますから、友達と話すように今は軽く挨拶しましょう」
「…そうですね。話を聞いてもらってありがとうございました」
「もっと軽くいきましょう。そうだなぁ…アデュー!とか言ってみてください」
「え?バイバイとかじゃなくてですか?」
「ええ、なんとなくそっちのほうが良いと思ったんですよ。さぁ、言ってみてください」
「えっと、あでゅー」
「いいですね。それでは名前を呼ぶみたいにもう一度」
「アデュー!」
「うんうん、いい感じです。それでは次回も楽しみにしていますよ」
ククッ、とりあえず覇王大系な竜騎士の名前を呼んでもらうことができたぜ。
問題はあの平和主義お嬢様のほうだが、こっちは次に会う時になんとかするしかないな。
ただ言ってもらうのがなかなか難易度が高いんだよなぁ。まぁどっかの五歳児を演ってもらうよりもマシなほうか。
これ以上ここにいても仕方ないし、仕切り直しということで一旦隠れ家に戻るとしようかな。
俺も次に向けてセリフを言わせるためのストーリーを考えなくてはな。
サンサンクリーニングの時みたいにちょっとずつ顔合わせしながら雑談しつつ、好感度を上げていこうと思ってただけだったからそこまで考えてなかったんだ。
こうも猶予がないとなると、せめて
幸いにも数日は考える時間があるからその間にと思いながら隠れ家に戻っていった俺だったが、そんな事を考えている暇がなくなってしまった。
ウォッカから連絡が入り、以前ジンに提案していた各国スパイ大作戦の件で相談があるとの事だった。
どうやらまとめ役はジンが言っていた通りウォッカが担当することになるのだが、その補佐を立案した俺にやれということだ。
人選については大まかに決まっているらしく、そして潜入させた後はしばらく放っておく事になるため、最後の調整と指示などを俺に任せるということだった。
仕方ない。少々予定が狂ってしまったが、それならそれでやりようはある。
森由紀子のほうには予定が入ってしまったため次回の打ち合わせの延期の連絡をし、シェリーに少しばかり国外へ出ると伝え、すぐさま指定の場所へと向かい集まった面子の様子を見ていく。
なるほど。ほとんどは傘下の人間を使うというわけか。だがそれだけだと少し不安が残るな。
人選は問題ないだろうが、万が一の事を考えて配置などを少し入れ替えたりしながら調整し、表向きの伝手などを利用しながら各国警察組織などへとスパイたちを送り出していった。
「ウォッカ、少々配置をいじったりはしたが後はヤツらの働き次第だ」
「そうか、これで兄貴にもいい報告ができるってもんだ」
「そうそう、この件はウォッカやジンあたりで情報は止めておいてくれよ。ライっていう前例があるからな。あまり
「そこまでしなくても大丈夫な気はするがな。まぁ兄貴には伝えておく」
せっかくここまで来たんだ。バーボンたちに情報が流れたら目も当てられん。
言われた仕事は終わったので日本へと帰ろうと思ったら、なぜかジンから直接連絡がきた。
ウォッカの報告では何か足りなかったのか?
「ジンか、さっきウォッカに報告したばかりなんだが…」
「ああ、それは聞いた。わざわざ配置をいじったらしいがなぜだ?」
「1つの組織に数人ずつ潜り込ませるからな。その地域の傘下のやつらばかりなら芋づる式になりかねん。だから最悪そいつが捕まっても他のヤツに目が行かないようにするためだ」
「俺とウォッカ以外に言うなと言ったのはなぜだ」
「ライの件があったからな。俺は他の幹部連中を知らん。ならばわざわざ広めてやる必要がないだけだ。ジンが必要だと思うのならその時に伝えれば問題ないだろう」
「…お前は俺より用心深いからな。まぁいい。あの方には伝えるが、お前の言う通り他のヤツに教えてやる義理はねぇな」
「どこに
どうやらジンは俺がウォッカにした報告だけでは足りなくて直接聞きたかったようだな。
まぁ配置を入れ替えたりした事の確認は前置きで、本命はなぜ幹部にも黙っていろと言ったのかってところか。
俺の思惑はバーボンたちスパイに知られたくないってだけなんだが、ピンポイントで教えるなって言うほうが怪しいからな。
それなら誰にも教えるなっていうほうが用心深いジンには合っているだろう。俺もジンと同じく用心深い認定されてしまったが。
慎重に動いてるのは確かだし、いろいろと暗躍してたりもするから間違ってはいないしな。
しかし結構時間を使ってしまった。もう環状線事件は起こった後だろうな。
俺はまだ日本に戻ってからも今やったように日本の警察関係に潜り込ませるスパイへ指示を出さないといけないし、もうしばらくは自由に動けそうもない。
日本でのスパイ潜入させる件についてはピスコの力も借りたようだ。このあたりはウォッカがやり取りしてたから詳しい事は聞いていない。
ただ、ピスコにもスパイを潜り込ませるという事は伝えていないらしい。少し探りたいことがあるからという程度で伝手を使って根回ししたようだ。
ピスコのほうも、主に潜入を担当するウォッカからの話だし特に疑う事もなかったんだろう。
子分肌だったウォッカが威厳を持ち出したというか、幹部に相応しい振る舞いになりつつあるということは俺の耳にも入っている。
良かったな
これで俺の組織の仕事は終わった。次は俺の目的のほうで仕事の疲れを吹き飛ばすとしよう。
環状線の電車内で殺人事件があった事を確認した後に警視庁へと向かい、目暮警部に事情を説明して森由紀子に面会を頼んでみた。
理由は「彼女自身に仕事を頼んでおり、それを引き継いでもらうにもその旨を伝えてからにしておきたい」という適当な理由だ。
「由紀子さん、まさかこんなところで会うことになるとは思いませんでしたよ」
「…ごめんなさい。いろいろ話を聞いてもらったりしたのに、結局私は清美が許せなかったんです」
「いつの世も痴情のもつれというのはあるものです。なかなか平和な世の中にはならないものですねぇ。あなたさえ良ければ、私があなたの望む平和をご用意しましょうか?」
「なっ!?」
「なに、あなたのような方が一時の感情で突き進んでしまうのも仕方ない事です。ならば求めるものが手の中にあればあなたもこんな事にはならなかったはずですよね。差し上げますよ、あなたの平和を」
「バカにして…平和は誰かから与えられるものではありません!私は自分で掴んでみせます!」
「おや、それは失礼しました。ならば私は応援するだけにしておきますね。もちろん協力できる事は多いと思いますのでいつでも仰ってください」
「あの…失礼な事を言ってすみませんでした。つい興奮しちゃって。せっかく頂いた依頼も…」
「元々気長にとお願いしていたものです。由紀子さんが出てこられてからでも構いません。その間の慰み程度にでも考えておいてください」
ククッ、任務完了。
つい脳内でTwo-Mixが流れてしまった。決してコナンではない。コナンではないんだ。
さすがに留置所をシェルターに見立てて「シェルターは完璧なんだな!?」とかEndless Waltzやりたかったけど無理だった。ツインバスターライフルとか持ってないしな。
あと俺が自爆するといろいろと大変な事になりかねない。
面会も終わったし、このまま次の標的へと移るとしよう。もう接触するための布石は打たれている。
クククッ、(