クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
「おまえさんを待つ~ ♪ その人はきっと ~ ♪
(ほんとコレいい曲だよな~)
路上に捨てくされ、やるせなさ ~ ♪
(マタムネとの別れ思い出してきた…泣きそう)
寂しい重い謎、かかえ夜 ~ ♪
(まだシェリーが残っててアンナさんの高さはちょっと足りないけどそれでもいい…)
愛は出会い・別れ・透けた布キレ ~ ♪
(やっぱりこういう切ない感じの曲はシェリーもちゃんと歌ってくれるな)
慕情にもならぬ、この詩も ~ ♪
(十六夜と悩んだんだけどどっちも泣けるんだよな…)
恐山ル・ヴォワール ~ ♪
恐山オー・ル・ヴォワール ~ ♪」
「やっぱりいいねシェリー。君は研究者にしておくのはもったいないよ」
「あなたしれっと私の本業を向いてないって言ってない?」
「いや、そんなことはないんだが…」
「あなたの趣味だから付き合ってるけど、他の誰かに聞かれるとか恥ずかしくて死ねるわよ?」
「心配しなくても誰にも聞かせたりしないさ。後はもうちょっとテンション上げてセリフ言ってくれると嬉しいんだが…」
「…無茶言わないでよ」
シェリーも結構吹っ切れてきたのかリ○=イ○バースとかは難しいけどそれなりに対応してくれるようになってきた。
てか呪文の詠唱なら別に今でもいけると思うんだけどな~
言ったらジト目で見られるから
ちなみにシェリーは歌うこと自体はそんなに嫌いじゃないことを知っている。
何かしてるときに、無意識なのかもしれないが「Fly me to the moon ~♪」って歌ってるのを見たことがある。ちなみに鼻歌バージョンもあるんだぜ。
そして俺はそれを指摘したりせずに聞きながら悦るのだ。
「さて、じゃあ締めのセリフいってみようか」
「…ほんとに言わせるつもり?まだそんな時間じゃないわよ」
「いいじゃないか。聞きたいんだから。さっ、いってみよう」
「…………おやすみ、byebye」
「最高だシェリー」
まったく最高だ。
今日も今日とてシェリーに癒やされながら隠れ家にいるわけだが、決して組織の仕事をしていないわけではない。
ただライこと赤井秀一は組織を逃亡しているのは間違いないんだが、喫茶ポアロにバーボンこと安室透がいるのかなんかは見てみないとわからない。
今のところ何も行動を起こす予定はないが、この2人はシェリーこと宮野志保と結構関係があるから悩みどころなんだよな。
正確には宮野明美やその母親の宮野エレーナだったりするわけだが、こいつらからしてみれば唯一残されている
ククク、お前らにシェリーはやらんけどな!
「ちょっと?」
「うん?どうした?」
「何を考えているのか知らないけど、米花町に行くのならついでに工藤くんの血液をもらってきてちょうだい」
「あぁ、研究に使うのか」
「ええ、わたしだけじゃなくてサンプルは多いほうがいいわ」
「了解した。ただ素直に渡してくれるのかどうかが心配だな」
「そこは普通にわたしが研究してるからで理解してくれると思うわよ?」
まぁ工藤新一も元の身体に戻るのは賛成だろうし、確かにそのまま言えば協力してくれるかもしれないな。
…そういえばシェリーに
ただなんで知ってるのかって聞かれると答えられないんだよな…
コナンってなんでパイカル飲んだんだっけな…あー風邪引いて服部に飲まされたんだったか。
こうなったらコナンに水ぶっかけて風邪引かせてから俺がパイカル飲ませるか?
それか服部連れてきて偶然冷水がコナンに降ってくるように仕向けるか?
俺が普通にパイカル持っていって「飲め」って言っても絶対飲んでくれないよな。
まぁ急ぐわけでもないしその内教える機会もあるだろ。
俺はシェリーに伝えていた通り米花町へとやってきている。
今回の俺の目的はいくつかある。
まず
これについては
ポアロも確認して安室透がいるのかどうかも見ておかないと…
さすがに朝だからまだ通勤通学の人たちが多いな。
まぁ狙って来てるから当たり前なんだが…
そしてまず1つめの布石を打ちますか。
ねぇ君、実はお兄さん今日から始まる仮面ヤイバーの映画のチケット持ってるんだけどさ
お兄さんはもう見ないから君もらってくれないかい?
お友達の分?もちろんあるよ。はい、4枚あげるね。
早速今日見に行くのかい?はは、気をつけてね。あぁそれじゃあね。
これでよしっと。
ふむ、どうやら今はまだ安室透はポアロにいないようだ。
俺が組織内でバーボンの事を嗅ぎ回るのは悪手だからこればっかりは仕方ないな。
とはいえ、ポアロにいないのならば普通に利用できるということでもある。
後は
…マジでどうすればいいのか考えつかん。普通に声かけたら怪しい人だしなぁ。
よし、少し遠回りだがこれでいくか。
あーもしもし、毛利探偵事務所さんですか?実はちょっと依頼したいことがあるんですが…
えぇ、はいそうです。では今日の○○時にお伺いしますね。よろしくどうぞー
ククク、これで2つ目の布石は打った。
毛利探偵事務所に行けばターゲットに会えるんだが、当然そこには江戸川コナンも住んでいるため帰ってくる可能性はある。
だが、1つ目の布石を打ったことでコナンは少年探偵団と一緒に仮面ヤイバーの映画を見に行くはずだ。
「こんにちは。先程お電話にて依頼した者ですが」
「あぁ、あなたが依頼人の方ですな。私が名探偵の毛利小五郎でございます!」
「あなたの名声はこちらもよく聞いております。今日はよろしくお願いします」
「それで、依頼内容のほうを伺いたいのですが…」
ククク、依頼内容はこうだ。
俺はフリーのライターをやっていて、今回は民間人と政界人や著名人などとの感覚の差がどれくらいあるのかを調べることにした。
だが自分では一般人からのアンケートなどはできるが、有名人などにはアポを取ることもできない。
だから
と、言っても日本全国を巡る必要はなく、今日行ける範囲のお知り合いの方数名に
アンケート内容はこちらで用意してあるので回答してもらいながら雑談してきてくれればいい。
俺はその間米花町内で路上アンケートなどを行っていく。時間は夜になる前くらいまで。
というものだ。
当然街角アンケートなどやらない。毛利小五郎を追い出すことが目的だ。
後は高校生が帰宅する時間を狙って戻ってくるとしよう。
ついでに米花町を見て回ってみようかな。こんな機会めったにないし。
ふむ、これがトロピカルランドか。なんでジンはこんな所を取引場所にしたんだろうな。
ほう、これが米花商店街か。普通の商店街だな。
東都タワーたけーな。そろそろ(事件で)このタワー折れてもおかしくなくね?
そろそろいい時間だな。毛利探偵事務所に戻ろうっと。
少し待つだろうがこればっかりは仕方ないよな。
毛利探偵事務所へと戻り、中には誰もいないため当然鍵がかかっている。
しばらく待てば、そこに家に帰ってきたターゲットが姿を現した。
「あれ?お客さんですか?」
「うん?今日毛利探偵に依頼したんですが、私のほうが思ったより早く終わったので伺ってみたんです。どうやらまだ毛利探偵はお戻りになっていないようですね」
「そうだったんですね。中に入ってお待ちになりますか?」
「うーん、どうしようかなぁ。ちなみにあなたは毛利探偵のご家族の方ですか?」
「あっ!私、毛利小五郎の娘の毛利蘭と申します。自己紹介が遅れてすいません」
「いえいえ、しかしこんな可愛い娘さんと2人で待ってると毛利探偵も心配でしょうから、良かったら下の喫茶店に少しだけ付き合ってくれませんか?」
この探偵事務所でもいいんだが2人っきりは警戒される恐れもあるからな。
心配いらないよーって意味も込めてポアロに誘う。
何せポアロは毛利蘭にとって自宅の下にあるし、よく利用しているから店員も顔見知りで安心できる場所のはずだ。
可愛いと言われた事に照れながらも、やはりポアロなら安心できるのか付き合ってくれるみたいだな。
ポアロのドアを開けると来客を告げるベルが鳴り、2人でカウンターへと座った。
ちなみに今回米花町に来た俺の真の目的は「毛利蘭の
あれが髪の毛なのか実は骨もあるのかずっと気になってたんだよな。
もしかしたら鬼丸くんの生まれ変わり説も俺の中では有力だったりする。
もしそうならば黒の組織どころか、ラスボス確定のバトルパート突入だがな。
そこからは雑談を交わしながら俺はチャンスを窺っていく。
蘭さんって呼んでもいい?そう、ありがとう。
蘭さんは高校生なの?へぇ、帝丹高校なんだ。あそこって有名な高校生探偵の子いなかったっけ?
えっ?知り合いだったんだ。でも最近事件の解決のために休んでる?
そっか、心配だよね。蘭さんを見てると仲良かったんだろうなってよくわかるよ。
さりげなく「トイレに行く」と席を立ち、戻ってきた時に毛利蘭の
「蘭さん、髪の毛に糸くずが付いてますよ」
「えっ、…取れました?」
「まだですね、ちょっといいですか」
「蘭ねえちゃん!!」
「あら、コナンくん。そんなに慌ててどうしたの?」
ちっ、
てかこのヒロインのどこがいいんだ?いや、いい子なのはわかってるんだけどさ。
可愛いし性格もいいし一途なのも知ってるから魅力のある子だとは思うよ?
たださ、「もしかして新一かもしれない。新一なの?」からの
「やっぱり違うコナンくんだわ。そんなはずないよね」って言いながら
「でもやっぱり…新一?」とかループする電波女だぞ?……電波?
…そうか!謎はすべて解けた!
この角は電波塔だったのか!!
触れられたら困るから
てことはあの電波塔は受信だけじゃなく発信までできるってことか!?
そしてその発信された電波を
道理で都合よく「らぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」って登場するもんだなと思ってたんだよ。
あんまりにもタイミングいいから疑問だったがやっと謎が解けてスッキリしたぜ。
まぁその江戸川コナンは今もずっと顔色真っ青の状態ながらもこっちを睨んできているわけなんだが…
これシェリーのおつかい達成するの難しくないか?
とりあえず2人だけになる機会を作らないといけないな。
と思ったら江戸川コナンのほうから小学生モードの話し方で「ねぇ蘭ねーちゃん。ボクもこのお兄さんとお話したいな~」とか言ってくれた。
ナイスタイミングだコナンくん。だが声が少し震えているぞ?もっと演りきれ!
もう
江戸川コナンと毛利蘭と一緒にポアロを出て毛利探偵事務所へと入る。
毛利蘭は学校の課題があるから「コナンくん。お兄さんに迷惑かけちゃダメだよ?」と言い残して自室へと戻っていった。
「おい!灰原は無事なんだろうな!?」
「ククッ、まぁ落ち着きたまえ新一くん。君に教えてやる義理はないが教えておいてやろう。あの時も言ったが危害を加えたりなどしていないさ。無論元気にしているとも。まぁ…少々恥ずかしい思いをさせていることは自覚しているがね」
「(やっぱりこいつ灰原を…!)やめろ!それ以上灰原をひどい目にあわせるんじゃねぇ!」
「そう言われてもな…だが最近では彼女も(歌うのが)気持ちよくなってきたみたいだぞ?」
「(やっぱり
「趣味嗜好など人それぞれだろう。君に(声豚の)文句を言われる筋合いはない」
「…なっ!?(くそっ!どうすりゃいいんだ!?)」
まぁシェリーからしたらひどい目にあってるって言えるのかな?
ただ最初からそんなに嫌がってはいないぞ?照れてるだけで。
あと腐った趣味は頂けないぞ工藤新一。
子供ボディで意中の相手と1つ屋根の下生活を満喫している君も人のことを言えないだろうに。
…むしろそっちの方がひどくね?
正体が判明した時に「事件を解決するためって嘘を言いながら実は女子高生と暮らしてた」って客観的に見たら結構なやべーヤツだってわかってるか?
まぁとりあえずさっさと終わらせて帰るか。
「そうそう、少し頼みたいことがあってね。わざわざそのために君と話す機会を作ったんだよ。実は君の血液が欲しいんだ。シェリーのしていた研究は知っているだろう?それに必要だって(シェリーから)頼まれてね」
「(こいつも組織と一緒で灰原の研究を利用するつもりか!そして組織とは別の研究者に頼まれて灰原以外の
「嫌なら嫌で構わないさ。(シェリーにはお使いもできないのかって呆れられそうだけど)その時はシェリーの血液だけで調べることになるんじゃないかな?」
「…オレが研究に必要なだけ渡す。だから灰原の血液は使わないって約束してくれ」
「(シェリーは自分の血液と比較して調べるって言ってたから)それは無理だ」
「(つまりオレが拒否すれば灰原が弄ばれるだけじゃなくオレが血液を渡さなかった分まで実験体に…)…わかった」
「クク、協力感謝するよ。…これでよし。そうそう、毛利探偵には依頼人は急なアポが入ったから後日受け取りに来ると言っていたとでも伝えておいてくれ」
ふむ、思ったよりも拒んだりごねたりしなかったな。
シェリーから頼まれていた血液も採取することができたし、ちゃんと恥ずかしいから言うなって言われてた事についても誤魔化しておいた。
だがさすが名探偵だけあって何か気づいたっぽいな。
ヒントも何もなかったはずなのに探偵の勘ってやつか?大したもんだ。
感心しながら俺は毛利探偵事務所を出て米花町を去っていく。
「クククッ、(ついにLANねーちゃんの秘密を)知ってしまったんだぜシェリー」