クククッ、逃さねぇぜシェリー 作:きりりん
今日の俺は組織の指示もなく、ひとまずは今後に繋げるためにいくつか小さい布石を打っていく予定だ。
いくらなんでも四六時中シェリーに
だからそういう時は俺も静かに本を眺めたりテレビを見たりしていることが多い。
まぁそういうとき大体は原作知識を思い出して次はどこに行こうかとか考えてるんだが…
本音で言えば個人的に毛利小五郎と2人でゆっくり話したいところではあるんだが、本人はいいとしても周りが厄介すぎる。
何せコナン側とは敵対関係の立場にいる以上「遊びに来たよ!」というわけにもいかないし。
今のところ、毛利小五郎にとっては「前に依頼してきたやつ」だろうし、娘の蘭にとっても「依頼人の方でお父さんを待ってる間に喫茶店でお話した人」くらいだろう。
一応次に毛利探偵事務所を訪れても問題のないように「前回急用で帰ってしまったため、依頼していたアンケート結果を受け取りに来た」という大義名分は残してきてある。
どうせだからお土産に牛丼を持っていくか?毛利小五郎のあのノリなら牛丼一筋300年ワンチャンいけるか?
だが娘の蘭ちゃんもいたら牛丼とかお土産としては相応しくないよな。かと言って蘭ちゃんにコンパクトとか渡したら
それなら…みかんなら大丈夫か?あと風車とか。
もういっその事また大阪に行って今度は服部平次を狙うか?
いや、ヤツもまた西の名探偵と呼ばれる男だ。普通の会話の中から何かを感づく可能性は否定できない。
あいつを狙うくらいならまだ和葉ちゃんのほうがいい。
できればシェリーを一緒に連れて行って和葉ちゃんと会わせたい。
その時は和葉ちゃんに「この子の事はファーストって呼んであげて」って言うけどな。
あれ?これならいけるんじゃないか?案外うまくいきそうな気がしてきた。
姪っ子に大阪でのお土産話を聞かせてあげたら「私も行きたい!」って言われて連れてきたんだけど、知り合いなんていないから、以前案内してもらった和葉ちゃんにまた案内お願いできないかなって言ったらやってくれる気がする。
しかも今度は俺だけじゃなくて小さい女の子もいる事だし面倒見も良いだろうから断らないだろう。たぶん。
あとは男の人怖がるから俺以外懐かないとか言っとけば服部平次を呼ばれることもないだろう。
ククッ、我ながら名案すぎる!後は実行するために下ごしらえをしていくだけだ!
そんなことを真面目に考えていたらシェリーにジト目で「またくだらない事考えてるわね」って言われた。
なぜか最近シェリーは俺の考えている事がわかる気がする。だが俺にはシェリーの考えている事がまったくわからない。…不公平だ。
ちなみに最近のシェリーは研究一色ではなく、多少は気分転換にゆっくりすることも増えてきている。
なお、俺の目的はシェリーの気分転換にはなっていなかったようだ…
シェリーも読書をしていたりテレビを観ていたりと、やっている事自体は俺と同じなんだがなんとなく全然違う気がする。
読書も研究書だったり推理小説だったりその時の気分で読むものを変えているのかな?
さすがに組織の研究所から紙媒体を持ち出すのはリスクが高すぎるのでやっていない。
それにシェリーがいなくなった事でそこまで頻繁に研究所に出入りすることもなくなったってものあるしな。
元の姿に戻る方法だってシェリー自身と江戸川コナンの血液だけで研究がそこまで進むわけでもないし、組織のほうの研究データだって同じだ。
何せシェリーがいなくなった事で研究のスピードが遅くなってジンが苛ついてたくらいなんだから、その成果データって言っても大したものではないんだろう。
そのあたりは俺ではまったくわからないからノータッチなんだけどな。
「シェリー。今日は組織の指示もないし、なんなら米花町に顔でも出しに行くか?」
「…突然ね。何か私を連れていく理由でもあるの?」
「いや、どちらかというとシェリーの気分転換、くらいの理由だな」
「…それならやめておくわ。どこに誰の目があるかもわからないもの。下手に動き回って私とあなたが一緒にいるところを組織に見つかってごらんなさい。一緒にいた子供は誰だなんてなったら目も当てられないわよ」
「それもそうだな。それじゃあ俺はちょっと用事を済ませてくる。会う予定はないが、もし工藤新一に会ったら何か伝えておくか?」
「そうね…研究も進んでないし特にないけど、工藤くんのほうが見つかる可能性高そうだし、私のほうは心配いらないって言っておいて」
確かにそれもそうか。下手に一緒にいるところを見られたらあれは誰だってなるよな。
俺だってジンが子供を連れてたら全力で調査すると思う。あり得ない光景だけどさ。
ライとバーボンが仲良く爆笑しながら酒を酌み交わしてるくらいあり得ない。
シェリーからの伝言を一応預かり、一度自室に戻って準備をしていく。
準備といってもクローゼットからシャツやジャケットを取り出して、ちょっとクシャクシャにしてからカバンに入れるだけなんだが…
あと話のネタのためにちょっとコレも借りて…と。コレは絶対にバレないようにしなければ…
その後シェリーに出かけてくると声をかけてから隠れ家を出て米花町へと移動していく。
さて、目的地の米花町に行く前にひとまず存在するのか確認したい人物がおり米花市役所に到着したんだが、その目当ての人物がどこにいるかわからないんだよな。
部署とか何も情報がないし、誰かに聞くにしても用事もないから聞けずにキョロキョロしてるだけだ。
適当に用事を作って聞いても、「それならあちらの部署です」とか言われたらそれで終わっちゃうし、名前だけを手がかりに探すのは大変だな…
まぁ会えなかったらまた来ればいいだけなんだけど、あんまりにも何度も何度も用もなく市役所うろつくのもおかしな話だ。
まぁ今回はその人物に運良く会えたらちょっと話したいだけなんだが。
その後仲良くなれたら「んもっふ!」とか「
いきなり初対面の人にそんなことを言ったらおかしい人だけど、だからこそファーストコンタクトは今のうちに行っておきたいものだ。
結局、その人物は休みなのか外出してるのか、米花市役所内では見つけることができなかった。
…ククッ、まぁいい。こっちはできたら顔合わせしておきたかった程度だ。
まだまだチャンスはいくらでもある!だからうがいして待ってろ村上さん!
市役所を少し残念な気持ちで出ていき、気分を入れ替えて米花町に向かう。
何せ次の人物は間違いなくそこにいるはずだ。外出している可能性も低い。
よし!目的地に近づくにつれ段々と期待が膨らんできた!
だが落ち着け俺。シェリーの時とは状況が違う。まずは仲良くなるところからだ。
到着したぜサンサンクリーニング!
クリーニングを出すだけなのにワクワクするのなんて生まれてはじめてだ。
だが、もし目当ての人物がいなかったらどうしよう…いやきっといるはずだ!
用意してきたカバンを片手に持っていざ入店!
「いらっしゃいませ~」
「すいませんクリーニングお願いしたいんですが…」
「ではこちらのカゴにお入れください。あとこれに記入お願いしますね」
ではこのシャツ数枚とジャケットをお願いしますね。
あとこれもいいですか?姪っ子の服なんですが汚しちゃって…
えーと、石川さんも小さいお子さんがいらっしゃるんですか?
そんな風には見えないですね~。いえいえお若いですよー。
ふふ、ほんと小さい子供って大変ですよね~。
えっ?まだ2歳なんですか?それはもっと大変でしょうね~。
2歳ってもう話したりできるんですか?へー可愛いですね~。
ですよねー。機会があればお友達になれたらいいですね。
記入は…と。これでいいですかね?
はい、明日は用事があるので数日以内に受け取りにきますね。
いえいえ、お子さん…春香ちゃんでしたっけ?そのうちお会いしたいもんです。
ええ、その時はぜひ!仲良くなってくれるといいですよねー。
「ふふ、つい長話しちゃってごめんなさいね」
「いえいえ、こちらも姪っ子ですが子供と一緒に暮らしてる身ですから、茂子さんのアドバイスは参考になりますよ」
「でも聞く限りそちらのお子さんはとても大人しい子のようですし、よくお手伝いのするいい子ですね」
「ええ、私も
「あら、お客様ったらお上手ですね」
いや、ほんとに楽しい時間だ。これで「すべては必然なのよ」とか
それにこれはこれで運命ゼロのホムンクルスお母さんと話してると思えば感慨深いものがあるのだ。
茂子さんの娘はイ○ヤじゃなくてル○ズだけど。
あー、春香ちゃんが2歳じゃなくてもうちょっと成長してたらなー。具体的にはあと10年くらい。
…ここだけ切り取って考えると危ないやつだな。やめとこう。
後は服を勝手に持ち出してクリーニングに出した事をシェリーにバレなければ完璧だ。
…シェリーも名探偵ほどじゃないだろうけど、結構勘が鋭いから念のために今のうちに言い訳考えとこ。一応、あくまで念のため。
サンサンクリーニングでの楽しい会話が終わり、後日受け取りに来ることを告げて出てきた。
今日の用事終わっちゃったし、この後どうしようかと考えていたところにウォッカから連絡が入った。
どうやら先日伝えた他の組織が襲撃者を用意しているかもっていう情報で、もっと何か詳しい事は知らないのかということだ。
そうは言われても本当に噂程度の話でしかないので、もっと他に詳しい情報をよこせと言われても困る。
そういうのはどちらかというとベルモットとかの担当だと思うんだが、あーベルモットに聞く事もできないってことなのかな。
俺もベルモットには会いたいんだが、実際問題としてそれはかなり難しいところだ。
今の俺の立場でベルモットと接触なんてしようものなら、ジンにいらぬ疑いをかけられる可能性が非常に高い。
それならまだ今のところは現状維持を優先してチャンスを窺ったほうが賢いやり方だろうな。
ウォッカにはそのまま「噂程度に流れていたのを聞いただけだ」と伝えておき、またどこかで同じような話があるようなら報告すると言っておいた。
ちなみにウォッカは前に俺が
ジンといる時など普段の時はあまり使わないが、傘下の組織や企業とのやり取り等ではゲ○ドウスタイルは役に立っているということだ。
なお、俺が提案した襲撃者へのカウンター・やちるについては何も触れられなかった事から無かったことにされている模様。
だがそうか、ウォッカの役に立ってくれたのならば良かった。俺の私欲でアドバイスした甲斐もあるってものだ。
ウォッカよ。是非次に俺と会うときはまた聞かせてくれ。ジンがいないところでな。
ウォッカとの電話を終えて今日の用が全部終わった俺は米花町を後にしようとしながら今後の事を考えていた。
ククッ、さて次のターゲットは誰にするかな…
たまにはシェリーに1日中付き合ってもらうのも悪くないな。
そうそう、そういえば阿笠博士になんとかうまいこと言って超小型超高性能録音機とか作ってもらえないかな?
隠れ家は設備が整ってるからいいんだけど、持ち歩く市販の録音機ってちょっと音悪いんだよなー
おかげで和葉ちゃんにもう1回「あんたバカぁ!?」を言ってもらわないといけないんだよ。
さすがにもう知り合いになれたから茶番をやる必要はないだろうけど、普通に頼むにしてもちょっと敷居が高いよなこれ。
もちろんウォッカにもだ。あの研究所の時が大成功に終わっただけに音質が悪かったのが悔やまれるぜ…
もう1回研究所で同じ事やってくれっていっても難しいだろうな。同じ状況ってことはその時にはもう研究者が始末される段階だろう。
とにかく一刻も早く外での録音環境を整えないとマズいな。どうするか…
あっ、いいこと思いついた!何も難しく考える必要なかったんだ!
普通にコナンくんに頼めばいいじゃん!
今の俺は黒の組織の一員として敵対の立場というか、コナンに敵視されてはいるんだろうけれど、シェリーを保護してるって点では味方とは言えないけど消極的中立くらいの印象のはずだ。
そしてそんな俺からの頼みならコナンも決して無碍にはせず阿笠博士に頼んでくれるはずだ。
もしかしたら
全部希望的観測でしかないが比較的現実味のある予測だと我ながら思う。
ならば次の目的は決まった!
待ってろ江戸川コナン!
クククッ、(