クククッ、逃さねぇぜシェリー   作:きりりん

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クククッ、心の準備はできたか?シェリー

 

 

せっかく和葉ちゃんやウォッカからうまいこと名セリフを引き出した俺だったが、持参していた録音機の音質的な問題で振り出しに戻ってしまった。

どうにかならないかと頭を捻った結果、かつて黒幕疑惑がものすごい勢いで出ていた阿笠博士に頼めばいいことを閃き、阿笠博士に頼むのをコナンくんに頼めばいいことを思いついた。

 

コナンくんの俺の印象も悪くないはずだしこれで超小型超高性能録音機がゲットできるって寸法だ。

あれだけ数々の便利アイテムでコナンを支援してきた阿笠博士ならば間違いなく理想の録音機を作ってくれるはず。

こちらが注文するのはとにかく音質だから、今まで作ってきたキック力増強シューズやら蝶ネクタイ型変声機に比べたら楽勝だろう。

 

 

ククッ、待ってろ阿笠博士!そして超超高音質の録音機をお願いします!

 

 

早速俺は阿笠博士の住む米花町2丁目へとやってきた。

場所は以前シェリーを迎えに来た時に工藤新一宅にお邪魔したからよく覚えている。

わざわざ帝丹小学校で待ち伏せしたり毛利探偵事務所で帰ってくるのを待つくらいなら、直接阿笠博士のところで待たせてもらえばいい。

それなら阿笠博士からコナンに直接連絡をしてもらえるだろうし、コナンだってダッシュで来てくれるはずだ。

 

阿笠博士は俺の事を知らないだろうからなんて説明しようかな…

知り合いだとちょっと弱いな。以前事件で知り合って近くに来たとかでいいか。

 

さっそく阿笠博士の家のインターホンを鳴らし出てくるのを待つ。

 

「はいはい、どなたかな?」

 

「こちら阿笠博士のご自宅ですよね?以前コナンくんにお世話になりまして、近くに寄ったもので少しお話できればと思い寄らせて頂きました。コナンくんからは阿笠博士の事を聞いていたので、是非一度阿笠博士とも話してみたかったのでこちらにお邪魔しました」

 

「ほお~なるほど、しんい…コナンくんのお知り合いでしたか。どうぞどうぞお上がりください。年寄りの一人暮らしなもので少々散らかっておりますが」

 

「いえいえ、コナンくんからは高名な発明家だと聞いております。是非いろいろとお話を聞かせてください。」

 

無事に阿笠博士の家に招いてもらえたので後はコナンが帰ってくるのを待つだけだな。

阿笠博士にコナンの連絡先を知らないから俺が来ていることを伝えてもらうのと、学校の帰りに直接こちらに来てもらえるように頼んだ。

だが、どうやら今日は学校が終わってから阿笠博士の家に少年探偵団が遊びに来る予定だったらしく、コナンだけでなく他の探偵団の子供たちも一緒にこちらに来るそうだ。

 

うーん、できればコナンだけ来てくれて話ができれば手っ取り早く終わったんだけどなぁ。

まぁ子供たちと出かけると言っても夕方過ぎくらいまでだし、他の子たちが帰ってからコナンと阿笠博士と話をすればいいか。

そう思い直して阿笠博士とお茶を飲みながら世間話に花を咲かせ時間が過ぎるのを待っていた。

 

 

なるほどー、話に聞いていた通りいろいろと便利なアイテムを作っておられるんですねー。

いやぁ、謙遜なさらずとも他にはない画期的なものばかりだと思いますよ。

私にはそこまでの閃きとか技術がないので羨ましいです。いや、ほんとに。

なるほど東都大学の工学部卒業なんですね。いえいえ十分にすごいと思いますよ。

仰るとおり確かに天才発明家ですね!あはは、変な発明品とはひどいことを言いますねその子たちも。

 

 

そんな話で盛り上がっていたところにパタパタと軽い足音が聞こえてきた。どうやらコナンwith少年探偵団が登場したようだ。

ククッ、コナンの「なんでお前がここにいるんだ…」って表情が楽しみだな。

「博士ー!遊びにきたぞー!」なんて声が聞こえてきて博士が出迎えに行き、子供たちを連れて部屋へと入ってきた。

 

「なっ!?」

 

「ククッ、やぁ、久しぶりだねコナンくん。あの時は助かったよ」

 

どうやらコナンくんへのドッキリは大成功のようだな。めっちゃ驚いてくれて俺も嬉しいよ。

少年探偵団の子供たちは俺の事を知らないから誰なの?ってなってるが、そのうちの1人が俺を思い出してくれたようだ。

 

「あっ!兄ちゃん前に仮面ヤイバーの映画のチケットくれた兄ちゃんだ!」

「え?そうなの?」

「この人が元太くんにボクたちの分までチケットくれたお兄さんだったんですね」

 

「そういう君は確かに私がチケットをあげた子だね。映画は楽しめたかい?」

「ああ!もらった日は光彦が用事があって行けなかったけど、次の日みんなで観に行ってめっちゃ面白かったぞ!」

「そうか、それなら良かったよ。お兄さんじゃあ、もうあんまり楽しめなくてね。君たちが楽しんでくれたならあげた甲斐もあるってものだ」

 

どうやらコナンの帰宅を遅らせるために打った布石は機能していなかったらしい。

ま、まぁ、こうやって少年探偵団にいい人認定されてるから無駄じゃなかったし、俺の考えていた通りに事が運んでいるから想定通りだ。

 

子供たちはお礼を言ったあとに、今日はカードゲームをするとかなんとか言いながら席についてワイワイとやっている。

 

どうしたコナンくん。君もしっかりと小学生ライフを満喫しなさい。

 

そういえばコナンって少年探偵団の時は小学生(乱○郎)モードの話し方してないような気がするな。声はちゃんとしてるっぽいけど。

大人たちや他人に対しては徹底してるくせに、身近なお友達にはやらなかったら違和感しかないと思うんだがいいのか?

 

一切子供モードで話さないシェリーも隠れる気があるのかと問いたいが、君のはそれはそれで隠す気あるのかと思ってたんだ。

しかも大人でも犯人の前だと「江戸川コナン…探偵さ」とか決めセリフ言ってるけど正体バレたいのかバレたくないのかどっちなんだ。

 

 

しまった。子供たちがいて暇だからって無駄な事考えてしまった。

 

 

どうやら子供たちはゲームをしながら、突然いなくなったシェリーの事を心配しているようだ。

「哀ちゃん元気にしてるかな~?」等と聞こえてくる。大丈夫だよ。シェリーはめっちゃ元気にしてるよ。

 

なんでコナンはそれ聞いてこっち見るんだよ?

 

てかお前もっとゲームに集中しろ。さっきからこっち見すぎだぞ。

心配しなくても阿笠博士とのんびり話しながら帰るの待つから今はお友達と遊んでろ。

 

 

おや?ゲームが一段落したからか、光彦くんから杯戸町のフランス料理店で殺人事件があったという話が飛び出した。

すげーな少年探偵団。カードゲームの合間の話にその話題チョイスはすげーとしか言えねぇよ…

 

なんでもエスカルゴを扱うお店で女性オーナーが殺されたらしい。

コナンも毛利探偵から話を聞いていたとかで、更に詳細な情報を話していった。

店で仮眠していたオーナーが誰も居ないと勘違いした空き巣に見つかって殺されたらしい。

犯人の顔を見てしまったのが運の尽きだったってのが警察の見解なんだそうだ。

 

だからお前たち話題がおかしいって気づけ!

顔見られて運の尽きだったら、俺の顔見たコナンなんてとっくに死んでるわ!

あ、俺は別にコナンの前で犯罪してないから関係ないか。

 

しかし歩美ちゃんは何やら様子がおかしいがみんなは気づかないのか?

これも俺だけしか気づかない違和感みたいなやつなのか?

 

最後は阿笠博士が「子供たちがそんな殺人事件の話なんてするもんじゃない」って宥めてたけど、阿笠博士もっと早く言ってあげるべきだと俺は思うぞ。

 

 

その後しばらくしてお開きとなり、少年探偵団の子供たちは家に帰っていった。

ここに残っているのは俺と阿笠博士とコナンだけだ。

しかし随分と長居してしまったな。阿笠博士には申し訳ないことをした。

せめて今からする話し合いだけは早く終わらせるように努力しよう。

あ、後いくつか聞いておきたかったんだ。

 

 

「ククッ、お友達とのゲームは楽しかったかい?コナンくん」

 

「くっ、一体何の用で博士の家にいやがったんだ。てめーに要求されたもの(血液)はちゃんと渡したはずだ!」

 

「あぁ、確かに受け取って渡してあるとも。今日は別件で少し話があってね。その話には毛利探偵事務所よりもこちらのほうが都合がいいからここで待たせてもらったんだよ」

 

「…おっちゃんの所よりも博士の家のほうが都合がいい?どういうことだ」

 

「その前に2つほど確認なんだが。まず1つ目。今君の家に誰か住んでいるかい?」

 

「は?オレ(新一)が住んでないんだから、当然誰も住んでないに決まってんだろーが」

 

よし、今はまだ沖矢昴、いや赤井秀一は工藤邸には住んでいないようだな。

この世界が時系列まで同じとは限らないし、俺が存在していて、更にシェリーを連れ出した事からも変化が起きている可能性は高い。

一応そのあたりは注意しながら立ち回ってはいるが、どこまでその波紋が広がっているのかなんて想像もできないしな。

いっその事工藤邸に盗聴器でも仕掛けておくか?

 

「そうか、なるほど理解した。それでは2つ目だ。君、まさかと思うが俺たちの事を誰かに話したりしていないよな?」

 

「!?」

「おいコナンくん。一体どういうことじゃ?」

 

おいコナン。お前誰に話したんだ。もう答えなくてもその顔見たら答えわかっちゃったぞ…

てか君犯人を追い詰める時は自信満々で言葉巧みだけど、逆に追い詰められるのは慣れてないからか随分と顔に出てるぞ。

 

まったく…俺を見習え。どんな時でも平常心で余裕を持たないと黒の組織ではやっていけないんだからな。

ただの質問にそんな顔してたら即刻裏切り者疑いの烙印押されちゃうぞ?

他のコードネームのやつらがスルーするのか疑わしいと思うのかはわからんが、ジンの場合は確実に怪しむし裏切り者疑いをかけるはずだ。

そこまでならまだいい。最悪は疑いで殺しにかかるのがジンだからな。気をつけろよ?

 

あと阿笠博士がこの流れを理解できずに戸惑っているな。

だがあなたへの俺からのお願い事はもうすぐコナンくん経由で届きますのでもうちょっと待っててください。

 

「…他の誰にも言ってない。ただ…阿笠博士には伝えた。元々灰原を匿ってもらってたからな」

 

「なるほど。つまりここにいる人間以外は誰も知らないということだな?」

 

「あぁ、それは間違いねー」

 

「ククッ、ならば良しとしようじゃないか。阿笠博士、俺がシェリーを連れて行った(保護した)張本人だよ」

 

「なんじゃと!?お前さんが哀くんをか!?」

 

あれ?コナンからシェリーを連れて行ったって聞いてたんじゃないのか?

あー、連れて行った事は聞いてるけど人相とかは聞いてなかったってことかな。

まぁこれなら俺の頼みも聞いてもらいやすくなったって事だ。

 

 

実は超小型で超高性能で超高音質な録音機が欲しくてさ。

阿笠博士って発明得意でしょ?さっきも言ってたもんね。

だから俺にもそれを作ってほしいんだ。なんで悩んでるの?

ほらコナンくん、君からもしっかりお願いしておくれ。

うん?博士は変な発明品しか作らないからそんなの無理?

御冗談を。君が使っている便利グッズを俺が知らないとでも?

あぁ、わかってくれたようで何よりだよ。

できればネクタイピンとかそういう感じのほうが好ましいかな?

あと周囲の雑音はとにかく除去するようにお願いね。

とにかく音質重視だからそこを徹底してくれたら多少は目を瞑るよ。

わかってると思うけど余計な機能(GPSとか追跡機能)はいらないからね?

それじゃあ頼んだよ。できるまでは米花町にいるからなるべく早いほうがいいな。

 

 

よし!これで阿笠博士から録音機を作ってもらうことができる。

ありがとうコナンくん。君からの説得が功を奏したようだよ。

俺がコナンくんを説得し、コナンくんが阿笠博士を説得するという見事な連携プレーだった。

後は完成するまでの間を米花町で心待ちにして過ごすだけだ。

 

あーそうだ。効果があるかどうかはわからないが、一応これ言っとくか。

 

 

「素直に俺の要望を聞いてくれて嬉しいよ。ところで、君はシェリーから組織の事は概要だけでも教えてもらっているのかい?」

 

「(何が素直にだ!灰原を連れ去った上にオレの周り全部人質にしておいてよく言いやがる)…あぁ、てめーらの組織が世界中に手を伸ばしている犯罪者組織だってのは知ってるぜ」

 

「その通りだ。細かい事はシェリーも知らないだろうから、少しだけ教えてあげよう。今、君が言った通り俺たちは世界中のあらゆるところまでその手を伸ばしている。そしてその手は当然ながら警察なども例外ではない」

 

「な…なんだって!?」

 

「ククッ、なぜ不思議に思うんだい?我々を捕まえようとしている機関に組織の手を忍ばせるのは至極普通の事ではないかい?FBIやCIA、MI6など…あぁ、もちろん日本の警察組織だってそうなんだよ。君がいたずらに動き回ってその正体が露見してしまえば、せっかく俺が君と君の周りを見なかったことにしてあげている事が無駄になってしまうかもしれないね」

 

「…1つ教えてくれ。なんでそれをオレにわざわざ伝えたんだ?」

 

「そうだな…俺の依頼で阿笠博士に録音機を作成してもらうだろう?だからそのお礼代わりの情報料みたいなものだと思ってくれていい」

 

 

まぁ実際はただの「裏切ったな、名探偵(コナン)」って言葉が聞けるかもしれない布石として赤井秀一や安室透なんかを簡単に信じさせないようにしたいだけなんだが。

だが、これでコナンは例え赤井秀一や安室透なんかがFBIや公安だからといっても組織側のスパイなんじゃないかって多少は疑いを持つはずだ。

そしてあいつらの疑いは簡単に晴れはしない。なにせ組織のコードネームを持っているのは間違いないのだからな…

 

 

 

ククッ、そしてこれでシェリーと一緒に和葉ちゃんに会いに行っても問題がなくなった。

 

 

 

 

 

 

シェリーだってたまには外の空気を吸って気分転換したい時があるはずだ。

少年探偵団にいたときだってめっちゃ外出してたんだから、俺と一緒に大阪に行く事だってお願いしたら一緒に行ってくれるだろう。

 

あっ、ウォッカのサングラスをもらってきてシェリーに持たせて「…絆だから」をやってもらうか!

俺がウォッカにサングラスをあげて、今使ってるやつを回収するか…

いや、うまいこと立ち回ってウォッカのサングラスがヒビが入って使えなくなる状況に持っていくほうが望ましいな。

どうやったらそんな状況を作れるのか皆目見当もつかないがなるようになるだろう。

 

 

数日後に阿笠博士の元へと行き、録音機の進捗を確かめてみたがまだ完成していなかった。

まぁかなりこだわりの一品になるはずだから多少時間がかかっても仕方ないな。

それに阿笠博士だって自称天才の発明家だ。中途半端な出来栄えで妥協するはずもない。

進捗の確認が終わり、まだしばらく米花町にいることになったので、ホテルに籠もりながらなんとかシェリーを連れ出す合理的な言い訳を考えておく事にした。

 

 

さすがに警察関係者の身内に会いに行くってのはマズいだろうし、観光しに行くなんて言ったら呆れられるのが目に見えてる。

いや、もう普通に「組織の人間に見られる可能性が少ないし、シェリーもちょっとは人と関わっておいたほうがいい」とかなんとか言ってがんばってみるしかないか。

後はお願いすればきっとわかってくれるだろ。

 

もはや何の解決にもなっていない気もする案で納得した俺は、更に数日後再度阿笠博士の家に行き念願の録音機を手に入れた!

どうやら要望通りネクタイピン型の録音機で、とにかく音質とノイズキャンセル機能に特化した仕上がりになっているらしい。

 

うむ、パーフェクトだ阿笠博士!

 

本当は今ここで録音機を試すとかの名目で阿笠博士にお願いして色々と言ってもらいたいものだが、どう見ても目の前の阿笠博士は警戒心バリバリすぎていい結果にはならなさそうだ。

…コナンのやつ俺のことなんて言ったんだ。

 

だがこれならば俺のこれからの仕事に対する意欲も倍増するってものだ。

今回の米花町はいろいろと収穫があってとても有意義だったよ。

村上雅也さんに会えなかったのと石川春香ちゃんが2歳なのは残念だったけど、それでもまだ石川茂子さんに会いに行く口実は既に作ってある。

 

そうか!シェリーに勝手に服持ち出したのがバレたら旅行に行くからおめかしするためにクリーニングに出したって言えばいいのか!

 

それなら怒られないで済むし言い訳としても完璧だ。

それじゃあ後は隠れ家に戻ってタイミングよくシェリーに提案してみるとしようかな。

 

 

 

 

クククッ、(外でも録音される事になる)心の準備はできたか?シェリー

 

 

 

 

 


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