クククッ、逃さねぇぜシェリー   作:きりりん

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クククッ、そう簡単にはいかないなシェリー

 

 

「ただいまシェリー。遅くなってすまなかったな」

 

「おかえりなさい。随分と用事に時間がかかったのね」

 

「あぁ、ちょっと頼んでいた物が手に入るまでに時間がかかってね。そっちは…いつも通りだったようだな」

 

「ええ、特に何もなくいつも通りよ」

 

 

組織の指示があって海外に行ったりするよりは短期間ではあるが、少しばかり隠れ家を留守にしてしまっていたので心配していたが、いつも通りだったようだ。

 

あっ!シェリーからの伝言をコナンに伝えるの忘れてた。

 

…まぁいいか。恐らくだがそのうちまた会うことになるだろう。

 

シェリーが近くにいない以上コナンが工藤新一だとバレる可能性も高くはないはずだ。

まぁコナンが組織のコードネーム持ちなんかの目の前で堂々と推理を披露したりすれば話は変わってくるんだが。

一応警察なんかにもスパイがいるって言っておいたから立ち回りなんかはさすがに気をつけるだろう。と思いたい。

それに今回録音機を作ってもらう際に、コナンから俺たちの事は阿笠博士にしか伝えていないことは聞いているので、これ以上の情報の流出がなければシェリーの事を知られる可能性はほぼないに等しい。

 

後はシェリーの様子を見計らって大阪に遊びに行こうって言うだけだ。

 

慎重に言葉を選べ俺!ここが分水嶺なんだ!

なにせ和葉ちゃんに会いに行って組織に見つからず、事件にも巻きこまれず、何も問題がなかったら次もまた誘いやすくなる。

だが何かしら問題が起こってしまったらシェリーは危険を回避するために隠れ家に引きこもってしまうかもしれない。

そうなったらもう直接の掛け合いを見るためには誘拐してきたりするしかなくなる。

 

 

ねぇシェリー。この隠れ家に来てから買い物くらいしか出かけてないじゃん?

どうせだからたまには遠出とかしてみない?まぁ旅行とかしてみない?

あぁ、組織のほうは今国外で活動してるから大丈夫だよ。

今すぐってわけじゃないんだけど、たまにはシェリーも遊びに行く事も必要だと思うんだ。

場所はもう決めてあるよ!この前任務で大阪行ったら食べ物がいろいろあって美味しかったから、ぜひシェリーにも食べさせたいなって思ってたんだよ。

行くよね?あーよかった。こっちで全部準備するから安心してね!

 

 

「ククッ、シェリーの了承も得たし後は日時の設定だけだな」

 

「どうして突然旅行なんて言い出したのか知らないけど、あまり籠もりっきりも良くないしね。米花町にいた時だって出かけてたんだし、たまにはいいんじゃないかしら」

 

「そんなに頻繁に旅行したりしないさ。ただ、今は日本が若干手薄になっているから丁度いいと思ってね」

 

「そういう情報が手に入るっていうのがあなたの強みよね。そういうことなら私から言うことはないわ」

 

 

ククッ、作戦は見事に成功だ。実際にウォッカに流した情報から組織の警戒は欧米へと向いている。

決して日本がノーマークって意味ではないが、ピンポイントで大阪で鉢合わせする可能性は皆無と言っていいだろう。

これは決してシェリーを連れ出すためにウォッカに偽情報を流したわけではない。

実際に手に入れた情報で組織の目が逸れたのをシェリーお出かけの好機とみただけだ。

つまり組織は実際に襲撃などに備えることができ、シェリーは組織の目を警戒せずに旅行ができる。

win-winの関係ってやつだな。更に和葉ちゃんと会って目的が達成できれば俺も勝者だ。

win-win-winってもう最高だな。コナンでは決して導き出すことのできない結果だ。

 

 

 

 

 

そう思っていた時期がありました…

 

 

 

 

 

ジンから呼ばれ襲撃者の対策に俺も参加しないといけなくなった…

どうやら噂程度だぞって言ってた内容を調査して疑わしい組織をいくつかピックアップしたらしい。

そして一番怪しいところがもうすぐ幹部を集めて会合を開くらしいので、俺にそこを確認しろって事だった。

簡単に言えば「お前が仕入れてきた情報なんだからお前も当然働け」って事だったよ。

こればっかりは仕方ない。割り切ってお仕事がんばるとしよう。

 

とはいえ、今回は襲撃を計画しているかもっていう程度なので、実際に襲ってきた襲撃者と争ったりこちらから襲撃を仕掛けるといった内容ではない。

あくまでもそういう噂がある組織を監視する程度の任務だ。

そして俺は単独で監視するのかと思ってたんだが、キャンティとコルンも一緒に行動することになるらしい。

と言っても2人とも狙撃手なのでそれぞれ別の場所に配置に着くことになるんだが。

この2人の仕事はあくまでも襲撃情報に確信が持てた段階だ。

ただ、疑わしいのに放っておくということをしないのは、ジンの判断なのか組織の判断なのかわからん。

 

 

ククッ、まさかここでキャンティ(永遠の17歳)と会えるとは思わなかったぜ。

 

 

これはシェリーを連れて和葉ちゃんに会いに行けない俺に対する別のご褒美か?

 

コルンは比較的無口なほうだから難しいが、キャンティならばいろいろと話せそうだ。

お互いジンの部下でもあるし、接点はほとんどないが嫌われているってこともないだろうしな。

 

 

「アンタがジンの言ってた襲撃情報を持ってきた張本人かい?」

 

「あぁ、一応再度言っておくが襲撃者を飼っているという情報だ。確実に襲撃を計画しているとはまだ言えない段階だな」

 

「そんな事はどうだっていいさ。敵対するってんならあたいが撃ち抜いてわからせてやるよ」

 

「どちらにしても傘下でも協力者でもないんだ。殺るなら好きにしろ。ただし、その時はちゃんと殺った事を自分でジンに言えよ」

 

「ちっ、いけ好かない男だねアンタ」

 

 

えっ?何も確認せずに狙撃して俺に後始末させるつもりだったの?

 

キャンティよ、いくらなんでもそれはないだろ。

敵対って言ったって現在黒の組織と抗争してるならともかく、火種をこっちから積極的に撒きに行ってどうするんだ。

そんな事をするような犯罪組織だったらとっくに世界中の警察組織に潰されてるだろうに。

まぁきっとキャンティなりの仕事に対する意欲が高い事をアピールした冗談だと解釈しておこう。お仕事に積極的なのは良い事だもんね。

 

今回の敵対組織はこちらと積極的に争いに来てるわけじゃない。ただ水面下で不穏な動きがあることを事前に察知することができたからその確認だ。

そして何もなければキャンティと話せた!で終わる話だし、実際に敵対行動を取る確証が得られたのならばその計画を頓挫させればいい。

下手に争いになって労力を割くよりも、反抗的な考えを持つトップや幹部に思い直してもらい、傘下に入らせることができれば最良の結果とすることができる。

 

組織としては無駄な抗争を避けた上に敵対組織を改心させ傘下に収める事ができ、キャンティやコルンに対しては敵対組織の幹部たちに逆らわないほうがいいよーって理解してもらうために狙撃の機会を与えることができる。

俺はキャンティやコルンと顔つなぎをすることができたので、後はがんばって好感度を上げていく作業に移れる。

 

本当は潜入任務として誰かに潜り込んでほしかったんだが、そこまで根回しする時間もなかったからこうなったんだろう。

 

幹部たちが今日の夜から集まって会合を開くことは既にわかっているので、後は集まって俺たちに関係のない話をして終わるのか、襲撃を仄めかす言質を取ることができるのかはその時次第だ。

 

 

「一応盗聴の用意はしてある。後は目的の人物たちが集まってくるのを待つだけだ。それまではコーヒーでも飲んで待っているとしよう」

 

「……」

「…アンタ、名前(コードネーム)持ちでもないのに随分とジンに重宝されてるみたいじゃないか」

 

「別に特別扱いはされていないと思うが?ただ使い勝手が良いの間違いだろう」

 

「どうだか。まぁあたいらの邪魔をしなけりゃいいし、他のヤツらよりかはマシだと思っておいてやるよ」

 

「俺は今のところ他のコードネーム持ちと関わったことがない。ウォッカ以外だとキャンティとコルンだけだ。だから他のヤツらってのがどんなやつなのかわからんから何とも言えんな」

 

「ハッ、どいつもこいつも一癖も二癖もあるようなヤツらばかりさ」

 

 

この反応だけじゃ既にベルモットを嫌っているのかどうか判断がつかないな。

でも下手に名前を出して逆撫でするわけにもいかないし、とりあえず余計な事は言わないほうがいいだろう。

お、標的たちが集まりだしたな。キャンティとコルンもそれぞれの待機場所へと戻っていったので俺も同じく移動し盗聴器から聞こえてくる会話を確認していく。

 

 

あーなるほど。最近勢力拡大が難しくなってきてるんだね。

でも他のところと手を組んでまでっていう人と、利害が一致するならっていう人で意見がまとまってない感じかな?

これなら意固地になってる人をどうにかすれば傘下に収めるのはそんなに難しくなさそうだなぁ。

今のところ襲撃だとかそういう話も出てこないし、一部の幹部が独断で空回りしちゃってる感じっぽいな。

うちの手の者がどうこう言ってるってことはそういうことなんだろう。

これだけじゃ言質も何もあったもんじゃないから確証に至れないな。

お、もう今回の話し合いはお終いみたいだ。そろそろ解散かな?

 

 

会合場所から出てきた顔を見るに、ガンガンいこうぜって感じの幹部は2人いた。

こいつらがいなければ残りは中立と穏健派なんだろう。

ひとまず待機していたキャンティとコルンと合流し、まずはジンへ今回の監視の報告を入れる。

 

 

「……俺だ」

 

「報告だ。今日の会合では襲撃の話は出なかった。おそらく総意じゃない。そしてどうやらこの組織はタカ派の2名を抑えれば後は簡単に懐柔できそうだ。ウォッカか誰か潜入させてから来月の会合の際にでも目の前で始末してやれば楽に傘下に収めることができると判断した」

 

「…わかった。そっちには俺から指示を出しておく。報告はそれだけか」

 

「あぁ、あと標的の2人はキャンティとコルンにやらせてやってくれ。今日は餌にありつけなくてな」

 

「そういうことか。わかった」

 

 

これで任務完了だ。キャンティとコルンに出番は用意してやれなかったけど、ちゃんとジンに来月には出番あげてねって伝えておいたし、まぁいい感じの結末になったんじゃないだろうか。

後は日本に戻ったらいつ旅行しようかなって考えてたんだが、キャンティが何か言いたそうにこっちを見ているな。何か用なのか?

 

 

「なんでアタイらを推薦したんだい?アンタ一体何を考えてる?」

 

「うん?今日何もせず待ってただけで終わったからな。この組織を傘下に収めるための標的も知れたし、後はキャンティとコルン、そして潜入する懐柔役の仕事だからさ」

 

「ちっ、まぁいい。このアタイがしっかりと殺ってやるさ」

 

「おそらくまた会うこともあるだろう。その時はその腕をしっかりと見せてもらうとするさ。コルンもな」

 

「…あぁ」

「次はその目にしかと見せてやるよ」

 

 

俺はキャンティ・コルンとも別れ、日本に戻るために空港へと向かいながらも今回の事を考えていた。

確かに任務としてはまぁ成功したと言ってもいいんだが、俺の目的としては成功とは言い難い。

いや組織としてはプラスになったし悪い印象ではなかったと思うんだが、キャンティの好感度で考えるとマイナスではないんだろうが、どれくらいプラスになったのか全然わからん。

あのキャンティに女神様になってもらうためには、一体どれほどの好感度を稼げばいいんだ?

先が長すぎて気が遠くなりそうだな…まぁ諦めるなんて選択肢はないんだが。

 

まぁ今回もまた次に繋がる第一歩だったと考えておこう。

 

この任務自体は想定外の出来事ではあったが、俺にとっても決して悪いものではなかった。

自分から下手に動くことなくウォッカとキャンティやコルンと会えたのは僥倖だ。

まぁここまではいいとして、もしベルモットやバーボン、スコッチにキールなんかと会う事になるのであれば気をつけないとな。

 

会わないという事もできないことはないだろうが、それはもったいないし少し言葉に気をつければ大丈夫だろう。

 

とにかく今はシェリーと大阪に遊びに行くほうを優先して…

 

 

 

あ!クリーニング取りに行くの忘れてた!

 

 

 

すぐに隠れ家に戻るんじゃなくて、1回米花町に寄ってクリーニング受け取ってからだ。

危ない危ない…数日以内に取りに来ますって言っといて遅れるわけにはいかない。

1回下がった好感度を上げるのは大変だからな。

いくらこっちがお客さんで遅れた理由が仕事だったって言っても、俺に別の目的がある以上はいい印象を持ってもらわないと…

 

 

 

 

 

クククッ、(女神様の好感度を上げるのは)そう簡単にはいかないなシェリー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




俺たちの冒険はこれからだ!
(ストックなくなりました)

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