ある日、ある町、ある公園。そんなどこにでもあるような光景。
しかし今回は少し違う。そこにあるのは笑顔のない泣き顔の少女と、彼女をイジメていたのだろう男子達の姿。

故に彼らはいじめっ子の男子達に戦いを挑む。人々に笑顔を与えるエンタメデュエリストの名に懸けて。

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遊戯王Arc-V~榊遊矢とファントムが双子の兄弟になって一緒にデュエルする話~

 ある日、ある町、ある公園。そこでは四人の少年が睨み合っていた。

 

「テメエ、俺達に何か文句でもあるのか!?」

 

「小さな女の子をイジメて泣かせておいて! 何を言ってるんだ!」

 

「ハン、こんなガキがレアカードを持ってたって何にもならねえだろうがよ。俺様みたいな強いデュエリストが使ってやった方がカードも喜ぶってもんだろうが!」

 

「女の子を、人を笑顔にも出来ないどころか泣かせるような、そして人からカードを奪うような奴がデュエリストなんて俺は認めない!」

 

「偉そうなこと言いやがって!」

 

 大柄な少年と、細身の身体で前髪が緑色で後ろ髪が赤色の独特の髪色をし、額にゴーグルをかけた少年が言い合い、やがて大柄な少年と、その隣に立つ取り巻きっぽい少年が、左腕につけている装置──デュエルディスクを構えた。

 

「デュエルだ! テメエらみたいな軟弱な奴には少し身の程ってのを教えてやらなきゃならねえな! タッグデュエルでかかってこい!!」

 

「望むところだ! 兄さん、行くよ──って!?」

 

 大柄な少年の言葉に細身の少年が頷いてデュエルディスクを構え、隣に立つ相棒を呼ぶ。

 

「もう泣かないで、お嬢さん。ほら、これをプレゼントするよ──」

 

 その相棒はいつの間にか彼の隣から消えており、細身の少年が言っていた、大柄な少年にイジメられて泣かされたという女の子なのだろう。彼女に目線を合わせるように姿勢を低くして声をかけていた。

 細身の少年と同じ体格で、背部をマントのように改造した白いパーカーを着用し、フードを被っているため顔は窺い知れないという見ようによっては怪しい雰囲気を出しているとも言えなくもない彼は何も持っていない右手を彼女に向ける。

 女の子がきょとんとした顔をしてその右手を見た時、ポンという音と小さく弾けた煙と共に一本の薔薇がその右手に出現。女の子は「わー」と声を上げて笑顔になると薔薇を受け取っていた。

 

「兄さん!! デュエルだってば!!」

 

「女の子を泣かせたままっていうのは、エンターテイナーとして失格だろ?」

 

「だー、そうだけどさ……」

 

「ま、分かってる分かってる」

 

 細身の少年の言葉にフードの少年は彼の元に歩き寄りながら笑うような調子で答える。そのマイペースな言動に細身の少年は呆れ顔を向けるが、フードの少年は気にする事なく大柄な少年を一瞥してフードからチラリと見える口元にニヤリとした不敵な笑みを零した。

 

「この、女の子から笑顔を奪う悪役(ヴィラン)を懲らしめようって話だろ?」

 

「……それが分かってるならいいけどさ」

 

 フードの少年の言葉に細身の少年は呆れ顔を見せながら頷き、二人はデュエルディスクを構えて大柄な少年チームに向かい合う。

 

「おっと。せめて名乗りはしないとね。オレは(さかき)遊幻(ゆうげん)

 

 フードの少年──遊幻はわざとらしく名乗りを上げ、今まで自分の顔を隠していたフードを取り除き、その下から覗く緑色の前髪と赤色の後ろ髪を陽光に煌めかせ、左目につけたお洒落なモノクルをキラリと輝かせる。その顔は細身の少年とまさしく瓜二つだった。

 

「気軽にファントムと呼んでくれ」

 

「か、顔が同じ、だと……」

 

「双子なんだよ。俺はこいつの弟の榊遊矢」

 

 笑顔を浮かべ、パチリとウインクしながらファントムと愛称も名乗る遊幻の顔に大柄な少年が驚くと、細身の少年──遊矢が苦笑しながら説明して名を名乗る。

 

「ヘッ。俺様は暗黒寺ゲン、テメエらがボコボコにされるデュエリストの名前だ。覚えておきな、さあデュエルだ!!」

 

 遊幻、遊矢に続いて大柄な少年──暗黒寺ゲンが名乗ってデュエル開始を宣言。取り巻きが「えっ」と言いたげな顔を見せるが逆らう事も出来ずにデュエルが開始された。

 

「お、俺の先攻だ!」

 

 運が良いのか悪いのか、今までデュエルに参加するのに半ば蚊帳の外だった取り巻きが先攻になり、手札を取る。

 

「俺はモンスターをセット! カードを二枚セットしてターンエンドだ!」

 

「次はオレの番だな。ドロー!」

 

 取り巻きはモンスターとカードを裏側表示でセットする、基本に忠実な陣形でターンエンド。続いて遊幻にターンが移る。

 

「オレは[EMハンサムライガー]を攻撃表示で召喚するよ」

EMハンサムライガー 攻撃力:1800

 

 遊幻が呼び出すのはライガーを思わせる縞模様の鎧を身に着けたハンサムな侍。そのハンサム具合にデュエルと見て集まってきた観客の中の女性陣が目をハートマークにして色めき立っていた。

 

「バトルだ! ハンサムライガーで守備モンスターを攻撃!」

 

「く……」

 

 ハンサムライガーが正体不明のモンスターに斬りかかり、そのモンスタ──―人間の頭のドクロを片手で持てるほどに巨大なネズミが一刀両断される。

 

「ハンサムライガーの効果発動! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動でき、デッキからレベル5以上のペンデュラムモンスター一体を手札に加える! オレはレベル5の[オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン]を手札に加えるよ!」

 

「こっちも戦闘によって破壊された[巨大ネズミ]の効果発動! デッキから攻撃力1500以下の地属性モンスターを一体攻撃表示で特殊召喚する! 俺が特殊召喚するのは[カイザー・サクリファイス]!」

カイザー・サクリファイス 攻撃力:200

 

「オレはリバースカードを一枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 遊幻の手札にペンデュラムカードが渡り、同時に取り巻きの場に帝と呼ばれるモンスターを小型化したようなモンスターが出現する。遊幻はさらに伏せカードを一枚セットしてターンエンドを宣言した。

 

「俺様のターンだ、ドロー!!」

 

 次のターンプレイヤーは暗黒寺。勢いよくカードをドローした彼はニヤリと笑って、今回のルール上共有となっているカイザー・サクリファイスを見る。

 

「俺はカイザー・サクリファイスをリリースし、[バーバリアン2号]をアドバンス召喚!」

バーバリアン2号 攻撃力:1800

 

 カイザー・サクリファイスを贄として出現するのは緑色の肌をし、棍棒を手に持って腰布を身に着けたまさしく野人。だがそれだけでは終わらない。

 

「カイザー・サクリファイスは自身をリリースしたアドバンス召喚に成功した時、手札に戻る。さらにリバース・マジックカードオープン[二重召喚(デュアルサモン)]! このターン、二回の通常召喚が可能になる! さらに魔法カード[コストダウン]! 手札を一枚捨てる事で、このターン自分の手札のモンスターのレベルを2つ下げる! これにより、俺は手札からレベル3になった[バーバリアン1号]を召喚!」

バーバリアン1号 攻撃力:1550 レベル5→3

 

 贄にして利用したカイザー・サクリファイスが手札に戻る事を利用してコストを賄ったコンボによって、先程出てきた野人と似たような格好をした赤肌の野人が姿を現す。と、その二体の野人が呼応するように咆哮した。

 

「バーバリアン1号、2号の効果! 1号と2号は互いがいる時、その数×500ポイント攻撃力がアップする!」

バーバリアン1号 攻撃力:1550→2050

バーバリアン2号 攻撃力:1800→2300

 

「ワンターン目から攻撃力2000越えのモンスターが二体……」

 

「バトルだ! バーバリアン2号! その雑魚を粉砕しろ!!」

 

 暗黒寺の指示を受けた緑肌の野人がハンサムライガーに突進、振り下ろした棍棒をハンサムライガーは刀で受けようとするもあまりのパワーに刀がへし折られ、そのまま殴り飛ばされて破壊されてしまい、ハンサムライガーが破壊されたことに観客の女性が悲痛な声を上げた。

 

「く……」LP4000→3500

 

「続けてバーバリアン1号でダイレクトアタックだ!!」

 

「おっと、そうはいかないよ。EMハンサムライガーが破壊された瞬間、トラップ発動! [EMリバイバル]! 自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動でき、自分の手札・墓地からEMモンスター一体を選んで特殊召喚する! オレは手札から[EMユニ]を特殊召喚!」

EMユニ 守備力:1500

 

 遊幻の呼びかけに応えるように出現するのは金髪ポニーテールにショーのアシスタントのような格好をした美少女。その姿に今度は観客の男性陣が魅了され始める。

 しかしそのステータスはバーバリアン1号を下回っており、容赦ない攻撃であっという間にユニの出番が終了。今度は観客の男性が悲痛な声を上げた。

 

「チッ、ターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 こちらの攻撃をすかされた事に苛立ったように舌打ちを叩いてターンエンドを宣言する暗黒寺。

 そしてこのタッグデュエル最後のデュエリスト、遊矢にターンが回った。

 

「俺は[EMシルバー・クロウ]を攻撃表示で召喚し、バトル! シルバー・クロウでバーバリアン1号を攻撃だ!」

EMシルバー・クロウ 攻撃力:1800

 

「はっ、攻撃力の低いモンスターで攻撃とはな!」

 

 遊矢の場に現れた誇り高き銀狼が主の指示に従って赤肌の野人目掛けて突進。だがその攻撃力は銀狼の方が劣り、暗黒寺は遊矢の愚かな攻撃を鼻で笑う。が、その時銀狼が己を鼓舞するように咆哮した。

 

「シルバー・クロウの攻撃宣言時に効果発動! 自分フィールドのEMモンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで300アップする! シルバー・クロウ自身もEMモンスターのため、その効果の対象内だ!」

EMシルバー・クロウ 攻撃力:1800→2100

 

「なんだと!?」

 

 咆哮で己を鼓舞した銀狼が棍棒を振るう赤肌野人にも臆せず挑みかかり、その牙をもって野人を打ち倒す。その光景に彼の相方たる緑肌の野人も臆したように覇気を失ってしまった。

 

「バーバリアン1号がフィールドから消えた事で、バーバリアン2号の攻撃力も元に戻る! 俺はカードを一枚セットしてターンエンド! この瞬間、シルバー・クロウの効果も終了する」

EMシルバー・クロウ 攻撃力:2100→1800

 

「クソ! こんな掠り傷程度で!」LP4000→3950

バーバリアン2号 攻撃力:2300→1800

 

 遊矢はリバースカードを出してターンエンドを宣言し、同時にシルバー・クロウも昂っていた己の気迫が落ち着いてきたのか攻撃力が元に戻る。

 暗黒寺は苛立たし気に悪態をついて自分の取り巻きを睨みつけた。

 

「おいテメエ! なんとか出来なけりゃ分かってんだろうな!」

 

「ヒッ……お、俺のターン、ドロー!」

 

 暗黒寺の恫喝に取り巻きは怯えた声を出しながらカードをドロー。ドローカードを手札に入れて別のカードを取った。

 

「俺は[トロイホース]を攻撃表示で召喚! さらに魔法カード[破天荒な風]を発動! フィールドの表側表示モンスター一体の攻撃力・守備力は、次の自分のスタンバイフェイズ時まで1000ポイントアップする! 俺が選ぶのはバーバリアン2号!」

トロイホース 攻撃力:1600

バーバリアン2号 攻撃力:1800→2800

 

「く……」

 

 相方を失って覇気を失っていた緑肌の野人が突如気合いを入れたように咆哮、攻撃力が爆発的にアップする。

 

「バトル! バーバリアン2号でシルバー・クロウを攻撃!」

 

「くっ……ペンデュラムモンスターであるシルバー・クロウは破壊された時、墓地ではなくエクストラデッキに送られる」LP3500→2500

 

 勢いよく突進してきたバーバリアン2号の棍棒を受けたシルバー・クロウが破壊され、彼らの場からモンスターが消える。

 

「続けてトロイホースでダイレクトアタック!」

 

「そっちは通さない! 借りるよ遊幻! 墓地の[EMユニ]の効果発動! 相手ターンに、自分の墓地からこのカードとEMユニ以外のEMモンスター一体を除外する事で、このターン自分が受ける戦闘ダメージを一度だけ0にする! 俺はユニとハンサムライガーを除外して戦闘ダメージを0に!」

 

 墓地にいたハンサムライガーとユニの美男美女コンビが幻影の姿で出現し、トロイホースの突進を防ぐ壁となる。

 ハンサムライガーは最後に主を守る事が出来たと儚げながら満足そうな笑みを浮かべて、ユニは遊幻や遊矢、そして観客の皆に「またね~」と笑顔で手を振ってそれぞれ消えていき、その二種類の笑顔に観客の男女両方が魅了されていた。

 

「お、俺はリバースカードを二枚セットしてターンエンド!」

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 遊矢は上手い具合にトロイホースの攻撃を防ぐことに成功し、取り巻きはリバースカードを出してターンエンドを宣言。

 次のターンプレイヤーである遊幻が勢いよくカードをドローし、そのカードを見て「来たか」と小さく呟くと周りにいる観客にチラリと視線を向けてその内の一人である、ある意味このデュエルのきっかけになったイジメられていた少女に向けてパチリとウインクを行った後、仰々しく手札から取った二枚のカードを上空に掲げるように右手を挙げた。

 

Here(ヒア) we(ウィー) go(ゴー)!! It’s(イッツ) () show(ショウ) time(タイム)!!」

 

 仰々しく、それでいて壮大に。これこそがこれから行われるショーの幕開けの宣言なのだから。

 

「オレはレフトペンデュラム・ゾーンに[オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン]をセット! そしてライトペンデュラム・ゾーンに[EMカード・ガードナー]をセッティング!!」

 

 遊幻がデュエルディスクの両端に二枚のカードをセッティング。その瞬間、彼の背後、その左右に二つの光の柱が立ち上る。片方の光の柱の中には巨大な「1」という数字とオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンが封じられ、もう片方の光の柱の中には巨大な「8」という数字とEMカード・ガードナーが封じられていた。

 この光の柱こそがこれから行われるショーに必要不可欠。そしてその光の柱の間を大きく揺れる振り子(ペンデュラム)が姿を現した。

 

「揺れろ、運命の振り子!! 迫り来る時を刻み、未来と過去を行き交え!! ペンデュラム召喚!!!」

 

 二つの光の柱の間を揺れる振り子。その揺れの間に存在する空間に穴を開き、その穴から一つの光が舞い降りた。

 

「現れろ、レベル7[オッドアイズ・ファントム・ドラゴン]!!!」

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン 攻撃力:2500

 

 遊幻の場に姿を現し、咆哮を轟かせるのは本来ならば二体のリリースを必要とする最上級モンスター。その姿に暗黒寺と取り巻きが怯み、周りの観客が「おぉー!」と笑顔を見せた。

 

「ペ、ペンデュラム召喚だと……」

 

「ペンデュラム召喚は、ライトとレフト、二つのペンデュラムゾーンに置いたペンデュラムモンスターに存在するペンデュラムスケールの値の間にあるモンスターを特殊召喚する召喚法。これがオレのとっておきのショーさ」

 

 遊幻は暗黒寺達に笑顔とウインクを向け、「いいぞー!」「すげー!」と歓声を送ってくる観客に手を振って応えた後、トロイホースを指差した。

 

「さあバトルだ! ゆけ、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン! 夢幻のスパイラルフレイム!!」

 

「うわああぁぁぁっ!!」LP3950→3050

 

 オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの放つ螺旋を描く火炎放射がトロイホースを焼き尽くし、残る炎が取り巻きにもダメージを与える。

 だがそれだけでは終わらない。そう言うように彼のペンデュラムゾーンのオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンが眼を輝かせた。

 

「お楽しみはこれからだ! オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの効果発動! ペンデュラム召喚したこのカードの攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時に発動でき、自分のペンデュラムゾーンのオッドアイズカードの数×1200ダメージを相手に与える! オレのペンデュラムゾーンのオッドアイズカードはオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの一体! よって1200ポイントのダメージを与える! くらえ、幻視の力! アトミック・フォース!!」

 

「な、うわああぁぁぁっ!!」LP3050→1850

 

 オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンが追撃のブレスを放ち、さらにライフを大きく削る。これでライフは逆転、ワンターンでの大ダメージコンボに観客が大きく沸き立った。

 

「オレはリバースカードを二枚セットし、ターンエンド!」

 

 最後に遊幻は全ての手札を伏せ、ステージ上の役者が出番を終えるというように恭しいお辞儀を決めてターンエンドを宣言した。

 

「クソ、この役立たずが! 俺のターン、ドロー!」

 

 暗黒寺が取り巻きに役立たずと吐き捨ててカードをドロー。同時にリバースカードを発動する。

 

「トラップ発動[リビングデッドの呼び声]! この効果で墓地のトロイホースを特殊召喚!」

トロイホース 攻撃力:1600

 

 暗黒寺の場に先ほど破壊されたトロイの馬が出現。同時にそれが光に包まれた。

 

「トロイホースは地属性モンスターをアドバンス召喚する時、二体分のリリースに出来る!」

 

 その言葉と共にトロイホースが消えた場所に出現したカードから巨大な腕が伸びた。

 

「密林の奥地から巨木をなぎ倒し、現れやがれ! 未開の王国に君臨する蛮族の王。[バーバリアン・キング]!!」

バーバリアン・キング 攻撃力:3000

 

「こ、攻撃力3000だって!?」

 

「心配ないよ遊矢。オッドアイズ・ファントム・ドラゴンがやられてバーバリアン2号の攻撃を受けても、まだライフは残る」

 

 巨大な腕に見合う巨人が暗黒寺の場に出現。オッドアイズ・ファントム・ドラゴンをも上回る攻撃力に遊矢が声を上げると遊幻は余裕綽々な様子で安心するようにと答えた。その時、暗黒寺が得意気に「ヒャハハハハ!」と大笑いを上げる。

 

「残念だったな! 永続罠発動[バーバリアン・レイジ]! 自分フィールドの戦士族モンスター一体の攻撃力を1000アップし、そのモンスターが戦闘で破壊したモンスターは墓地へ送らず持ち主の手札に戻す! これでバーバリアン・キングの攻撃力アップだ!」

バーバリアン・キング 攻撃力:3000→4000

 

「こ、攻撃力4000!?」

 

「おっと、これはまずいね……」

 

 暗黒寺の発動したカードの効果によって強化された野人の王の攻撃力に遊矢が怯み、遊幻もフッと笑みを零す。

 

「まだだ! バーバリアン・キングの効果発動! 一ターンに一度、このカード以外の自分フィールドの戦士族モンスターを任意の数だけリリースする事でこのターン、バーバリアン・キングは通常の攻撃に加えて、この効果を発動するためにリリースしたモンスターの数まで一度のバトルフェイズ中に攻撃できる!

 俺はバーバリアン2号をリリースする事で、バーバリアン・キングはこのターン、バトルフェイズに二回攻撃を可能にする!」

 

「攻撃力4000の二回攻撃……」

 

 野人の王が緑肌の野人を喰らい、その力を奪い取る。あまりの圧倒的な攻撃スタイルに遊矢が声を漏らした。

 

「生意気な口叩きやがって、これで終わりだ! バトル! バーバリアン・キングでオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを攻撃!!」

 

 主の攻撃指示を受け、野人の王が己の武器である棍棒を、幻影(ファントム)の名を持つドラゴンに叩き付ける。その破壊力はドラゴンを一撃で粉砕するだけに留まらず、生じた衝撃波だけで遊幻の身体を吹き飛ばす程の勢いを誇っていた。

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!」LP2500→1000

 

「遊幻!」

 

 吹き飛ばされる遊幻と悲鳴を上げる遊矢、心配そうに声を上げる観客。

 

「なんてね♪」

 

 しかし遊幻はニカッと笑みを浮かべた。その時、彼の背後に吹き飛ばされる彼を受け止めるように風船が出現。まるでクッションのように遊幻の身体が風船へと沈み込み、吹き飛ばされる勢いを殺した。

 

「な、なんだ!?」

 

「借りるよ、遊矢! リバースカードオープン! 速攻魔法[イリュージョン・バルーン]! このカードは自分フィールドのモンスターが破壊されたターンに発動でき、オレは自分のデッキの上からカードを5枚めくる。そしてその中からEMモンスター一体を選んで特殊召喚し、残りのカードはデッキに戻してシャッフルする。まずは一枚目!」

 

 遊幻が勢いよくカードをドローすると同時に彼を受け止めていた風船がパァンと大きな音を立てて破裂。

 しかし彼は破裂した勢いを利用して宙を舞い、空中でクルクルと回転して体勢を整えると綺麗な着地を決めて決めポーズを取った。その華麗なアクションに観客達が笑顔で拍手を送るも、暗黒寺はイライラとした表情で彼を睨みつけていた。

 

「チッ。さっさとめくったカードを公開しろ!」

 

「そう慌てないで。一枚目のカードは──」

 

 暗黒寺の怒声を受け流して遊幻はさっきめくったカードを確認。同時にソリッドビジョンシステムで投影されたウインドウにめくったカード──EMピンチ・ヘルパーを映し出した。

 

「残念。EMピンチ・ヘルパーは永続罠、モンスターではありませんでした。では気を取り直して、二枚目!」

 

 大仰に額に手を当てて残念がる遊幻。それに釣られてか観客も残念そうにため息を漏らし、遊幻は気を取り直してと二枚目をドロー。再びウインドウにカードが映し出される。

 

「このカードは[オッドアイズ・ランサー・ドラゴン]! モンスターではあるんですが、残念ながらEMではありませんでした。これではイリュージョン・バルーンによる特殊召喚の条件を満たしません」

 

 あちゃあと肩をすくめる遊幻。まだ二枚目だからか周りからくすくすと笑いが零れたり「次があるぞー!」と声援が届いてきた。遊幻もその声援に「応援ありがとうございます!」と手を振って返し、では三枚目とドローする。

 

「三枚目のカードは──[ドタキャン]! トラップカード、当然召喚不能です」

 

 これでイリュージョン・バルーンの効果処理の半分以上が終わったが、未だに逆転の兆しとなるモンスターどころか召喚可能なモンスターすら来ない。

 このまま何も引けずに終われば次のバーバリアン・キングのダイレクトアタックを受けて終わりの可能性は極めて高く、周りのざわめきも強くなる。

 

「四枚目! っと、これは[EMショーダウン]! ワオ! これはいいカード!」

 

「なんだと? それはトラップカード、モンスターじゃねえだろうが」

 

 四枚目のカードを見た遊幻の顔が喜色に染まり、その嬉しそうな言葉を聞いた観客が「おぉ!」と盛り上がりを見せるが暗黒寺は怪訝な目を向ける。

 その通り、EMショーダウンはEMの名を冠するもののトラップカード、イリュージョン・バルーンの効果による特殊召喚は出来ない。この状況に置いては外れのカードだ。

 

「いえいえ。ショーダウンとは即ち“対決”、これは五枚目のカードがこのデュエルの対決へと誘ってくれるカードという暗示……なのかもしれません」

 

最後の場面(ショーダウン)の暗示じゃなければいいんだけど……)

 

 遊幻は不敵な笑みを浮かべて暗黒寺に対決を暗示させ、隣の遊矢は苦笑しながら心の中でぼやく。

 しかしなんだかんだで未だに召喚可能なモンスターはいないまま、次が最後のチャンス。観客が固唾を飲んで見守る中、遊幻の「五枚目!」という宣言と共に最後のカードがドローされ、ウインドウに映し出される。

 

「このカードは[EMクリボーダー]! 当然EMモンスター、よってイリュージョン・バルーンの効果によって特殊召喚!」

[クリクリー]

EMクリボーダー 守備力:200

 

 最後の最後で壁モンスターを引き当てた。その姿に観客が盛り上がるも、暗黒寺はチッと舌打ちを叩いた。

 

「対決だなんだと大層な事言いやがって、結局引き当てたのはそんな雑魚かよ! バーバリアン・キング! 粉砕しろ!」

 

「バーバリアン・レイジの効果により、さっき破壊されたオッドアイズ・ファントム・ドラゴン共々クリボーダーも手札に戻る」

 

 バーバリアン・キングはもはや棍棒を使うまでもなく巨大な足でクリボーダーを踏み潰す。しかしこれで二回の攻撃権を使用し終え、結果的に遊幻はバーバリアン・キングの猛攻を潜り抜ける事に成功した。

 

「リバースカードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 そして暗黒寺はリバースカードを出してターンエンドを宣言する。しかしその次に彼はこちらを見下す笑みを遊幻達に向けてきた。

 

「なんとか耐えたのは褒めてやるよ。だがそんな運任せの戦法でこの俺を倒せるとでも思ってんのか?」

 

(たしかに、攻撃力4000のバーバリアン・キングは健在、なのにこっちの場にモンスターはゼロ。このままじゃ……)

 

 暗黒寺の言葉通り、どうにか五枚目でモンスターを引き当てたもののかなりギリギリの防御であった事に変わりはなく、さらにこの攻撃で榊コンビのフィールドからモンスターは消えた状態にも関わらず暗黒寺タッグの場にはバーバリアン・キングが残っている。状況はかなりピンチと言ってよく、遊矢はそう考えて怯んでいた。

 

「運任せだって? ノンノン、演出さ」

 

 しかし遊幻は怯む事もなく、不敵ながら笑顔で指を振り、そう答えていた。

 

「たしかに大ピンチの状況、これを次のターンでひっくり返す劇的な大逆転。それが出来ればきっと盛り上がるんじゃないかな?」

 

(これを、ワンターンでひっくり返す?……)

 

 遊幻の言葉を遊矢は心の中で反芻する。フィールドにモンスターはゼロ、手札に逆転のカードはない。遊幻が運任せのイリュージョン・バルーンに頼った事から伏せカードも確実な防御のカードはない可能性が高い。そんな絶望的な状況だが、逆にそこから大逆転を決めれば──

 

(それはきっと、いいや絶対……すごく皆を楽しませられる(エンターテインメント)!)

 

 皆が楽しみ、笑顔になる。それこそが自分達の目指すエンタメデュエルだ。

 

「遊矢、この対決(ショーダウン)。お前に任せた!」

 

 隣に立つ相棒からも託され、遊矢はふぅと息を吐いて集中。確かにまだ逆転の手段はない。ないならそう、これから作り上げればいい。

 

「レディース、(エーン)、ジェントルメーン!!!」

 

 覚悟を決め、遊矢は両腕を高く掲げて決め台詞を放つ。

 まずは舞台作り、今は相手に向かっているであろう流れをこちらに持ってくる事からだ。

 

「お集りの皆々様。見ての通り、この絶望的な状況。このままターンを明け渡せば私共はあの狂暴なる野人に叩きのめされる事間違いなし! ですがそれを私がワンターンで逆転してみせましょう! それが出来れば御喝采!!」

 

「頑張れー!」「いいぞー!」「よく言ったー!」「やってみせろー!」様々な声援や野次が飛んでくる。

 言ってしまった。もう引き返せない。だがこれで流れは引き寄せられたはずだ。遊矢はそう信じて「俺のターン!」と宣言し、カードをドローする。

 これで手札は五枚。だがそこに逆転のカードはない。だがしかし、可能性となるカードは存在する。

 

「手札から速攻魔法発動[揺れる眼差し]! お互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊し、その後、この効果で破壊したカードの数によって異なる効果を適用する! 一枚以上の場合は相手に500ダメージを与え、二枚以上の場合はデッキからペンデュラムモンスター一体を手札に加える事ができる! 俺が破壊したペンデュラムカードは二枚、よってこの効果が適用される!」

 

「ぬぐ……」LP1850→1350

 

「さらに俺はペンデュラムモンスター[オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン]を手札に加える!」

 

 手札に入れるのは彼の切り札。しかしそのレベルは7、さらにそれを召喚出来るペンデュラム召喚の要であるペンデュラムカードは今彼自身の手で破壊してしまっていた。

 

「遊幻、借りるよ!」

 

 だがそれも遊矢の計算の内。そう言うように彼らのチームの場に伏せられた、先ほどのターンに遊幻が伏せたカードが翻る。

 

「リバース・マジック発動[金満な壺]! 自分のエクストラデッキの表側表示のペンデュラムモンスター及び自分の墓地のペンデュラムモンスターを合計三体選び、デッキに加えてシャッフル。その後、デッキから二枚ドローする。俺はエクストラデッキのシルバー・クロウ、ペルソナ・ドラゴン、カード・ガードナーの三体をデッキに戻してシャッフル。そして二枚ドロー!」

 

 遊幻が残した希望が繋がり、手札が七枚になる。だが、まだ逆転にはパーツが足りない。

 しかしまた新たな希望が繋がった。

 

「魔法カード[EMキャスト・チェンジ]! 手札のEMモンスターを任意の数だけ相手に見せ、デッキに戻してシャッフル。その後、デッキに戻した数+一枚をデッキからドローする。俺は[EMプラスタートル]、[EMオオヤヤドカリ]、[EMスプリングース]の三枚をデッキに戻してシャッフル。四枚のカードをドローする!」

 

 一挙に四枚の大量ドロー。それに観客が「おお!」とざわめき、遊矢もドローカードを確認。

 

(来た!)

 

 その内容を見て希望が繋がったと確信。遊矢は七枚の手札の内二枚を手に取った。

 

「俺はスケール3の[EMパートナーガ]とスケール8の[EMカード・ガードナー]で、ペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 デュエルディスクの両端にペンデュラムカードを配置すると共に遊矢の背後に立ち上る光の柱、それには3と8の文字が刻まれていた。

 

「これでレベル4から7のモンスターが同時に召喚可能! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚!! 出でよ、俺のモンスター達!!」

 

 空中に現れたペンデュラムの描く軌跡から空間に穴が開かれ、そこから四つの光が降り立つ。

 

「レベル4[EMロングフォーン・ブル]! レベル5[EMドラミング・コング]、[EMチアモール]! そしてレベル7、雄々しくも美しく輝く二色の眼! [オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン]!!」

EMロングフォーン・ブル 攻撃力:1600

EMドラミング・コング 攻撃力:1600

EMチアモール 守備力:1000

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力:2500

 

 モンスターのいなかった場が一気に四体のモンスターで埋められる。観客からも「すげえ! 一気にモンスターが四体!」と歓声が上がった。

 

「EMロングフォーン・ブルの効果発動! このカードが特殊召喚に成功した場合に発動でき、デッキからペンデュラムモンスター以外のEMモンスター一体を手札に加える。俺は[EMソード・フィッシュ]を手札に!」

 

「ハッ、いくら雑魚を並べたところで俺様のバーバリアン・キングの足元にも及ばねえ!」

 

「それはどうかな? 俺は[EMソード・フィッシュ]を召喚し、効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動し、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は600ダウンする!」

EMソード・フィッシュ 攻撃力:600

 

「なにっ!?」

バーバリアン・キング 攻撃力:4000→3400

 

 遊矢チームの場の最後のモンスターゾーンも埋められ、さらに出現したソード・フィッシュが仲間を呼んでバーバリアン・キングに突撃、その剣のような身体で相手の身体を傷つけ弱体化させた。

 

「お楽しみはこれからだ! EMパートナーガのペンデュラム効果発動! 一ターンに一度、自分フィールドのモンスター一体を対象として発動し、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、自分フィールドのEMカードの数×300アップする! 俺が対象にするのはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

「遊矢の場のEMカードはパートナーガ、カード・ガードナー、ロングフォーン・ブル、ドラミング・コング、チアモール、ソード・フィッシュの六枚! よって1800ポイントアップするよ!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力:2500→4300

 

「こ、攻撃力4300!?」

 

 パートナーガの力により、まるで手を繋ぐようにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにEMの仲間達から力が分け与えられる。これで弱体化した今はもちろん、強化状態だけだったバーバリアン・キングの攻撃力をも上回った。

 

「さらにEMチアモールの効果発動! 自分メインフェイズに元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター一体の攻撃力が元々の攻撃力より高い場合、そのモンスターの攻撃力は1000アップする!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力:4300→5300

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力が5000を超え、暗黒寺はまさかの攻撃力に怯みつつチラリと取り巻きがさっきのターンに伏せたカードを見る。それを遊幻の冷めたように細めた目は見逃さなかった。

 

「バトルだ! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでバーバリアン・キングを攻撃!! その二色の眼でとらえたすべてを焼き払え! 螺旋のストライクバースト!!!

 この瞬間ドラミング・コングの効果発動! 一ターンに一度、自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に、その自分のモンスター一体の攻撃力はバトルフェイズ終了時まで600アップする!」

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力:5300→5900

 

 主からの攻撃指示を受けたオッドアイズが螺旋を描くブレスでバーバリアン・キングを攻撃し、ドラミング・コングが己の胸であるドラムを叩いて演奏し、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを鼓舞して援護する。その瞬間暗黒寺が「ハハハハハ!」と笑い出した。

 

「引っかかりやがったな! この瞬間トラップ発動[バーバリアン・ハウリング]! このカードは自分フィールドの戦士族モンスターが相手モンスターの効果の対象になった時、または相手モンスターの攻撃対象に選択された時、相手フィールドの表側表示モンスター一体を対象として発動でき、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与え、そのモンスターを持ち主の手札に戻す! これでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの元々の攻撃力2500が跳ね返されてお前らの負けだ! ざまあみろ!!」

 

「おっとそうはいかないよ! 遊矢!」

 

 バーバリアン・キングが咆哮し、その咆哮の衝撃波がオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのブレスと拮抗。そのままブレスを跳ね返さんとする勢いに、意地の悪い笑みを浮かべて遊矢を嘲笑う暗黒寺の台詞に遊幻が割り込んだ。

 

「ああ! リバースカードオープン[トラップ・ジャマー]! バトルフェイズ時に相手が発動した罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

「遊矢のショーは邪魔させないよ!」

 

 遊幻の残した最後の希望が暗黒寺の罠を粉砕。バーバリアン・キングの咆哮とそれによって生み出される衝撃波をオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのブレスが打ち破った。

 

「く、くそ! トラップ発動[ハーフ・アンブレイク]! フィールド上のモンスター一体はこのターン戦闘では破壊されず、そのモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは半分になる!」

 

 暗黒寺の発動したトラップにより、バーバリアン・キングの身体が彼の身体を包む不思議な膜のような光の壁で守られ、直後オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのブレスが直撃。

 この戦闘で受ける暗黒寺の戦闘ダメージは2500、しかしハーフ・アンブレイクの効果で半減し、1250まで抑えられる計算になった。

 

「これで俺のライフはまだ残り、バーバリアン・キングも生き延びる! 次のターン、お前の場の雑魚を潰して俺の勝ちだ!」

 

「そうはいかない!」

 

 暗黒寺の叫びに遊矢も切り返す。その時オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの胸の巨大な水晶が光を放った。

 

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果! このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる!!」

 

「な……なんだとぉぉぉぉぉっ!!??

 

 つまり、元々暗黒寺が受けるはずだった戦闘ダメージ2500がハーフ・アンブレイクの効果で半減し、1250に。だがそれがオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果により再び倍化、元々受ける2500に戻るわけだ。

 

「いけ! リアクション・フォース!!」

 

「っ、ぐわあああぁぁぁぁぁっ!!!」LP1350→0

 

 遊矢がこのターンの最初に宣言した通り、劇的な大逆転によってこのデュエルの終幕(フィナーレ)が飾られるのであった。

 

 観客が「すげー!」「ホントにあの状況をひっくり返しやがった!」「面白いデュエルだったぞー!」と歓声を送り、遊矢と遊幻は手を振ってそれに応える。観客達の笑顔を見た二人の顔にも自然と笑顔が浮かんでいた。

 

「す……すごい。あんな状況から逆転しちゃった……」

 

 対戦相手の暗黒寺の取り巻きも、へたり込みながらも思わず笑いがこみ上げてしまっていた。

 

「何笑ってんだ、テメエ」

 

「ヒッ」

 

 だがそこに怒り心頭の様子の暗黒寺がギロリと彼を睨み、見下ろしていた。その姿に取り巻きもか細い悲鳴を上げる。

 

「お前が役立たずだったせいで俺が負けちまっただろうが!!」

 

 暗黒寺が怒号をあげて腕を振り上げ、殴られると感じた取り巻きが目を瞑って頭を庇うように腕を出す。

 

「……え?」

 

 しかし殴られる衝撃や痛みが来ることはなく、取り巻きは呆けたように目を開けて顔を上げる。

 

「テ、テメエ……」

 

「せっかく皆が笑顔になってるのに、水を差さないでほしいな」

 

 いつの間にかフードを被って暗黒寺の背後に立っていた遊幻が、暗黒寺の腕を後ろから掴んで彼の動きを止めていたのだった。

 

「ほいっ」

 

「ぬあっ!?」

 

 そして遊幻は自分の膝で相手の膝を後ろから押して相手の体勢を崩させる小技──所謂膝カックンで暗黒寺の体勢を崩させ、尻もちをつく形でずっこけさせる。

 

「テ、テンメエ……」

 

 ギロリと睨みを利かせる暗黒寺だが尻もちをついてずっこけていては迫力なんてなく、さらに彼は周りの観客がクスクスと笑っているのに気づくと顔を赤くして立ち上がった。

 

「テ、テメエ! 覚えてやがれ!!」

 

 そして捨て台詞を吐いて逃げ出し、遊幻は二ヒヒと笑って彼を見送った。

 

「やっと見つけたわよ遊矢!!」

「遊幻! そこを動くな!!」

 

 そこにそんな怒号が響き、遊矢と遊幻はビクッと身体を震わせて声の方を向く。そこにはさっきの暗黒寺に勝るとも劣らぬ怒りの形相をした、ピンク髪をツインテールにまとめた女の子と青髪をポニーテールに結った女の子が観客をかき分けて自分達のところまで突進してくる姿があった。

 というか少年二人が怯んでいる隙に少女二人は既に駆け寄ってきており、遊幻は頬を引きつかせながら軽く右手を挙げる。

 

「や、やあこれはオレ達の幼馴染の双子の姉妹、柊柚子さんと柊セレナさんではないですか……」

 

「何をいきなり訳の分からん説明口調で話している!?」

「今日は塾の特別授業の手伝いをしてもらうって前々から話してたわよね!? サボってこんなとこでデュエルなんていい度胸してるじゃないの……」

 

 ギロリと睨む青髪ポニーテールの少女──セレナと、その隣でこちらも目を吊り上げているピンク髪ツインテールの少女──柚子。遊矢がささっと遊幻を壁にするように彼の背後に隠れ、遊幻が「あ、ずるい!」とか叫ぶがもう遅く、遊幻が柚子とセレナ二人に睨まれる羽目になっていた。

 

「あ、いや、これは人助けの一環というかエンタメデュエルを広めるためのそう所謂塾の宣伝ぐふっ!?」

 

 怯んで頬を引きつかせつつそれでも誤魔化そうと口から出まかせで話し出すがその言葉は不自然に息を吐くような声で留まる。彼の腹にはセレナの右拳が突き刺さっていた。

 

「セ、セレナさん……いきなり腹パンは反則……」

 

「貴様の口八丁に付き合っている暇などない」

 

 的確に急所をついた腹パンは一撃で遊幻の意識を刈り取り、がくりと倒れた遊幻をセレナは「よいしょ」と掛け声一つで軽く担ぎ上げる。

 

「さあ遊矢。大人しくついてくるか、遊幻と同じ道を辿るか。好きにしなさい? けど私セレナ程こういうのに慣れてないから、ちょっと痛いわよ?」

 

 拳をボキボキ鳴らしながら話す柚子は笑顔なのだが目が全く笑っておらず、(遊幻)が消えた遊矢は「あはは……」と苦笑を漏らして降参を示すように両手を挙げた。

 

「大人しく塾に戻ります……」

 

 よろしい、と柚子が頷いて踵を返し歩き出すと、遊矢はまるで警察に逮捕されて護送される犯人のように項垂れて、先を行く柚子の後を追う。その後ろから気絶した遊幻を担ぎ上げているセレナがついて来ており、遊矢が逃げようとしないように監視もするつもりらしい。

 

「あ、あの……」

 

 するとそんな遊矢に声をかけてくる者がいた。目を向けるとそれは例のイジメられていた女の子で、遊矢は彼女に目線を合わせるようにしゃがみこむ。柚子が「遊矢、その子は?」と尋ね、遊矢は「さっき助けた子」と言葉少なく説明。女の子に「どうしたの?」と尋ねた。

 

「え、えと、助けてくれてありがとう……そのお兄ちゃんにも、伝えて?」

 

「ああ。分かった」

「ふふ、気にしなくていいわよ。でもこいつらが役に立ったなら嬉しいわ」

 

 女の子からのお礼を遊矢は受け取り、柚子もふふっと笑う。少女が再び不思議そうな顔でこてりと首を傾げた。

 

「お兄ちゃん達、誰?」

 

「ああ、そういえばそういう意味ではちゃんと名乗ってなかったっけね」

 

 遊矢は立ち上がると少女と、周りのデュエルが終わった事でまばらになった人達をちらりと確認。両手を大きく広げた。

 

「レディース、(エーン)、ジェントルメーン!!」

 

 笑顔で大きく宣言。少女の顔がパッと輝き、周りの人達もなんだなんだと視線をこちらに向けてくる。それを感じながら遊矢は再び口を開いた。

 

「大変遅ればせながら、今回は私と兄遊幻のデュエルをご観賞いただき誠にありがとうございました! そして改めて名乗りましょう。私達は遊勝塾! デュエルをする人、見る人、勝っても負けても皆が笑顔になれる! そんなエンタメデュエルを目指す者達です!」

 

 さりげなく塾の宣伝を開始。彼が「柚子」と小さく声をかけると彼女もハッとしたような顔になって、女子中学生が苦も無く持ち歩き出来る程度の大きさのバッグから慌ててチラシを取り出し、「セレナ」と声かけ。セレナもうんうんと頷くと気絶している荷物な遊幻をその場にぽいっと投げ捨てて柚子からチラシを受け取り、二人は周りの人たちにチラシを配り始めた。

 

「こ、こちら塾のチラシになっております! 興味のある方はぜひ一度見学だけでもおいでください!」

 

「強いデュエリストは歓迎する。もちろん初心者でも大丈夫だ」

 

 逃げた二人を探しに出かけただけなのにちゃんと宣伝用のチラシは常備して持ち歩いている幼馴染の抜け目なさに遊矢はほっと息を吐き、少女に向けて再びしゃがみこんだ。

 

「まあ、君にはまだ早いかもだけどさ。もうちょっと大きくなって、デュエル塾に入塾できるようになったら遊びに来てみてよ。その頃には俺も兄さんももっとすごいエンタメデュエリストになってみせるからさ」

 

「うん!」

 

「さーてと。兄さん、いい加減起きてチラシ配り手伝わなきゃ、今度こそセレナから蹴っ飛ばされるよー」

 

「う、ぐ……セレナの馬鹿力め、しかも衝撃を逃がす隙も与えてくれなかった……」

 

 遊矢が揺り動かすと遊幻はあっさり意識を取り戻し、セレナへと悪態をつきながらも逃げるのは諦めたのかセレナの方に歩いていき、彼女からべしりとチラシの束で顔を叩かれながらチラシを受け取るとチラシ配りに参加。

 遊矢もなんだかんだで仲がいい二人を見て控えめに笑うと、自分もチラシ配りを手伝うために柚子の方に歩いていくのだった。




 初めましての方は初めまして、こんにちはの方はこんにちは。カイナと申します。
 なんとなく思いついて書きたくなったので書いてみました。アニメ版遊矢と漫画版遊矢(本作では差別化のため「遊幻」と改名したり外見全く同じなのもどうかと思うからアクセサリーで差別化した)のタッグデュエル。
 もっとも遊矢は遊幻という双子の兄がいたり、そもそも今回の世界線では遊勝が失踪してないので「臆病者の息子」といじめられてないためメンタル脆くない(どころか破天荒な兄に振り回される苦労人ポジション)ツッコミ役になってますが。
 遊幻の方も、特にこっちは多重人格じゃなくなったり見た目が当然だけどアニメ遊矢とダダ被りだからゴーグル外してモノクルつけさせたりとか外見にアレンジ加えたから半オリ主化してますね……そこら辺上手い手段思いつかなくて申し訳ありませんでした。

 なお柚子とセレナが双子になってるのは「この世界は原作Arc-V世界とはパラレルワールド」なのを示すためと、オチをつけるには遊幻が口八丁で逃げようとするからそれを物理で黙らせられる奴が必要だった&柚子一人だと二人相手には弱くなりそうって理由からセレナを放り込んだ形になります。

 ぶっちゃけ思い付きのまま書き上げてこの先の事全然考えてないので多分短編で終了になると思います。っていうかここから先を書けと言われてもなぁ……ってなります。ネタがないです。

 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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