summer pocketsに登場するしらとり号のモデルである『めおん号』。
そのラストクルーズが近づいてまいりました。
そしてこれは、筆者のめおん号への感謝の意を込めたSSとなってます。

どうぞ立ち止まって、ぜひ読んでいってください。

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のみき視点です。


サマポケSS(めおん号引退SS)~笑顔刻んで、縁結んで~

「「「しらとり号の引退?」」」

 

 私の発言に対しての良一、天善、蒼の三人の返答は一緒だった。

 

「ああ。今の型はもうずいぶんと長い事使われていたらしい。この間、新しい型の船が建造され、そちらに移行するそうだ」

 

「そうは言っても・・・なんか実感わかねえよな」

 

「ああ。卓球に突如コールドゲームが組み込まれたような感じだ」

 

 天善のはともかく、二人の言ってることは本当にその通りだ。

 

 私がしらとり号の引退をいち早く聞いたのは、この間の寄合。それでも、最初は想像できなかった。

 

 本土に行くための舟、通退学のための舟。思えばずっと、あのしらとり号には世話になった気がする。

 あの舟があることが、いつしか生活の一部になって、それが当たり前のようになって。

 

 そんなものが無くなる。それは、想像できないものだった。

 

 しかし、引きずっても意味はない。変わらない事実に文句は必要ないから。

 

「まあ、と言うわけだ。引退は2月の28日。ちょうど休日だ、存分に乗り回そうじゃないか」

 

「そうね。その・・・お礼、みたいなこともしたいし」

 

「そうだな。さんざん世話になったんだ。最後まで世話になって、ありがとうの言葉に変えてやろうぜ」

 

「ああ」

 

 鳥白島少年団の一存は、違うことなどなかった。

 

 

---

 

 

 2月28日の空は、雲一つない晴天だった。

 どこまでも天を貫く蒼穹。夏ほどではないが、眩しさが私たちを包んだ。

 

 12:00から島を出る舟。その1往復が、しらとり号のラストクルーズだ。

 

 港には、大勢の人だかりができていた。島民の全てを集合させても足りない人だかり。きっと、この舟に、島に世話になった人間がたくさん来ているのだろう。

 この舟はそれほどまでに、多くの縁を結んでくれたのだと実感する。

 

「よう、のみき」

 

「鷹原・・・来てたのか」

 

「そりゃあ、俺だってこの舟にお世話になった旅人の一人だしな。みんなほどお世話になってないけど、気持ちは一緒だ」

 

「そうか」

 

「ここで話すのもなんだし、乗ろうぜ。そろそろ出発だろ? ほら、みんなが待ってるぜ」

 

 鷹原が指さす方向を見ると、少年団のみんなが手を振って待っていた。

 

「行こ? のみき」

 

 しろはの優しい声が聞こえる。

 

 そうだ。ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

 踏み出せば別れと知っていて、それを怖がっていても。

 きっと、それから逃げちゃいけないから。

 

 そして私は皆の背中を追いかけて、鉄の階段を上り始めた。

 

 

 

---

 

 

 

 舟は一度本土へ向かう。

 そこでも多くの人が待っていた。しらとり号の最後の雄姿を見届けるために。

 

「すごい人ねー・・・。みんな一度島に来たこととかあるのかしら?」

 

「そうだろうな。この舟が島と人を結んだ証だろう」

 

「一度訪れれば、皆家族みたいなもの。だっけか?」

 

「ああ。みんなまとめて大家族だ。・・・そして、この舟も」

 

 何十年も海を渡って。

 多くの出会いを別れを見届けて。

 たくさんの縁を結んで。

 

 そして今日、この舟の役目が終わる。

 

「・・・」

 

 どうしてだろう。考えるだけで、悲しくなってしまう。

 ああ、やっぱり私は・・・。

 

 

「っ・・・!!」

 

 いてもたってもいられなくて、私はそっとデッキの隅の方へと移動した。

 

 周りに誰もいない場所から、一人遠く、小さく見える鳥白島を見つめる。

 私の帰る場所。この舟の帰る場所。

 

 でももう、次に会うことはない・・・。

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

『今日から高校生デビューか・・・、なんかムズムズするな』

 

『天善はやっぱり、卓球部に入るのか?』

 

『当然だ。新しい環境に囲まれて、俺はまた強くなる』

 

『・・・羽目は、外さないでね』

 

 

 

・・・

 

 

『のみきと二人きりで本土でショッピングなんて、はじめてじゃない?』

 

『そうだな。女の子同士水入らずってのもなかなかいいものだな。・・・あの阿呆が脱がないか心配だが』

 

『大丈夫よ。今日は良一の妹ちゃんがのみきの代わりをするそうだから』

 

『それは頼もしいな』

 

『しろはもくればよかったのにね』

 

『いつでもチャンスはあるだろう。私たちはずっと一緒なんだからな』

 

『そうね』

 

 

・・・

 

 

 

「うっ・・・ひぐっ・・・」

 

 ダメだ。悲しくて寂しくて、仕方がない。

 なんで・・・別れなんて、存在するのだろう?

 

 ずっと、このままでいてほしいのに・・・。

 

 

「のみき」

 

 優しい言葉と共に、肩に手がかかる。そこにいるのが良一だという事は、顔を見ずとも分かっていた。

 

 スンと鼻を鳴らして、目じりを赤く腫らして良一の方を向く。

 良一は、笑っていた。

 

「この舟にお世話になった17年間、楽しかったよな」

 

「・・・ずっと、お世話になった。私たちの成長を・・・見届けてくれた・・・。この舟をずっと・・・高台から見下ろしていたんだ、私は・・・!」

 

 思い出なんて言葉でくくれるほど小さいものじゃない

 言葉にするだけで、また涙があふれてくる。

 

「ずっと・・・このままでいてほしかった・・・!」

 

「だな。・・・でも、そうできないのが人間なんだろ」

 

 柵に肘を置いて、良一も遠く島を見渡す。

 だんだんと、舟は島に近づいていた。それと同時に、この舟とのお別れも。

 

 見かねたのか、それとも違うのか。それは分からないが、良一は私の頭をポンと撫でた。

 

「しんみりした別れってきっと、この舟も嫌だろうからさ。最後くらい笑おうぜ。泣いてもいいから、な?」

 

「笑って・・・」

 

 そうだ。この舟はずっと、笑顔を運んでいた。

 しらとり号に刻まれたたくさんの笑顔は、指折り数えても数えきれない。

 そしてきっと、ずっと忘れることはないだろう。

 

 だから私も、忘れない。

 この舟の事。たくさんの笑顔の、思い出のことを。

 

「そうだな」

 

 涙にぬれたぐしゃぐしゃの顔で、私はようやく笑って見せた。

 

 

 

---

 

 

 舟が島に辿り着く。階段を下りてしまえば、ここで別れ・・・。

 

 ・・・うん。大丈夫だ。言葉は決まってる。

 

 

 地に足をついて、私は振り返る。

 涙などいらない。・・・さあ、行こう。 

 

 

「今までありがとう、しらとり号」

 

 

 

 

 

 

 たくさんの笑顔を刻んでくれた、しらとり号。

 最後の私のこの笑顔も、どうか刻んでくれますように。

 

 

 

 

 




別れってのは、悲しいものです。
だけどだれも、悲しい終わりなんて望んでないと思うんです。
 
だから最後は笑って、笑顔でお別れをしたい。
そう願って書いたSSでした。


最後に。
めおん号、34年間お疲れさまでした。

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