「あの、清志さん。少し相談したいことがあるんでけど」
そりゃ珍しい。京介が俺に相談してくることって最近はめっきり減ってたよな。てっきり頼れるお兄さんポジションはパーフェクト筋肉に盗られたと思ってたんだが。
「信用も信頼もしてますよ。俺が独り立ちしたいから清志さんのとこに行くのを控えてたんです」
寂しいこと言わないでくれよ。俺を頼ることがあったとしても、お前が立派にやれてることの否定にはならないよ。玉狛の連中からもちゃんと認められてるんだろ?
「そうですね。みんな良くしてくれてます」
ならそれで十分じゃないか。あのトリガー、ガイストって言ったっけ。攻められっぱなしでジリ貧にされたから驚いたよ。
「それでも倒しきれないんだから、上の壁は厚いなって実感させられますけどね」
まぁ、一人でなんでもかんでも出来る必要はないさ。一緒に頑張っていきゃいいんだよ。
「それ、ソロでやってる清志さんが言いますか? 他にそんなことしてるの迅さんと天羽くらいじゃないですか」
……そう言われると、実力がどうこうと言うよりも人格面で協調性が微妙な感じがして嫌だな。
「そうですね。自分が全部やればいいって思ってる人たちの筆頭って感じですよね」
あの、烏丸君、もしかして怒ってたりします?
「いえ、ちょっと過去を思い出して腹が立っただけですんで、気にしないでください」
怒ってるじゃねーか。……まぁ、この話は一旦忘れよう。相談したいことってなんなんだ?緊急なら頼れそうな連中呼ぶよ。
「あ、それはちょっと。清志さんの心だけに留めておいてほしいんですけど」
む、俺だけとな。レイジさんや林藤支部長もダメなんだろうか。人格も能力も問題ないと思うんだが。
「その人たちに問題があるって訳じゃないんですけど、気恥ずかしいところがあって」
恥ずかしい?
「その、実は女の子から告白されたときの断り方について相談したくって」
………………は?
「女の子から告白されたときの断り方について相談したくって」
いや二回言わなくても分かるわ。ちょっと待ってね。頼れるお兄さんとして相談に乗ってあげたかったんだけど、脳が沸騰しそう。
「この俺にそんな話題を振ってくるとはいい度胸だなぁ、おい」
「あ、頼れる兄を維持するより、ムカつきの方が勝った感じですかこれ?」
……おほん。まぁ、詳しく話してみたまえ。
「ギリギリ持ち直しましたね。イメージは修復不可能かもしれませんけど」
うるさいよ。さっさと話しなさい。
「なにも特殊なことはないんですけど、学校の同級生からラブレター貰いまして」
なにそれ羨ましいいぃぃぃーーーー!!!!
「今時ラブレター!? 下駄箱に入ってた感じか! やべぇそんな青春ってリアルにあるのな。俺もこんど遥ちゃんの下駄箱に入れてみるか!」
「たぶん読まずに捨てられるからやめた方がいいですよ」
なんでだよ!? 綾辻なら読むくらいはしてくれるだろ!
「危険物が入ってる可能性とかありますからね。その辺は割りときっちり対応してるみたいですよ」
え、そんな人気アイドルみたいな事態になることあんの?ボーダーのマドンナって色々と大変なんだな。
「じゃあ、直接『ラブレターです!』って渡すか。考えてみたら一度もラブレターって書いたことなかったし、ウケる子もいるかもしれんな」
「まぁ、直接渡すなら大して問題にはならないと思いますけど、間違って怪文書作らないでくださいね」
怪文書ってなんだよ!?俺の情熱的な愛を綴った素敵文書になるに決まってるだろ!俺は国語の成績もいいからな!
「"ボーダー"にいると、頭が良いことと常識があることは別なんだって実感しますよね。頭が悪くて常識がないよりはマシですけど」
それは太刀川さんのことを言ってるのか?あの人は雑に戦場にぶち込んでおけばそれが一番いいんだよ。
「それで本題なんですけど、どう断るのがいいと思います?」
いや待て。本題に入る前に聞きたいんだけど、なんで俺なんだよ。断るプロならそれこそ綾辻とか隠岐辺りに聞くのがいいんじゃないか?
「その二人に聞くのも恥ずかしいですし、断る側からじゃ相手の気持ちって分からなくないですか。その点、清志さんは断られるプロだから、どういうのが傷付くとか熟知してるじゃないですか」
……一応言っておくけど、断られるプロ扱いされるのも傷付いてるからね?
「そこは可愛い弟分の悩みを解決するためと思って我慢してくださいよ」
ふてぶてしくなったな京介!それも玉狛のせいなのか。やはり預けたのは失敗だったのだろうか。
「色々と考えてはみたんですけど、やっぱりストレートにごめんって言うしかないですかね」
そうだろうなぁ。ぶっちゃけ断られる時点で傷付くのは確定だし、どんな理由付けたって言い訳にしか聞こえないよ。
「ちなみに清志さんはどんな風に断られたりしたんですか?」
えぇ、思い出したくないんだけど。……『ふっ』って失笑されたり『嫌』って一言どころか一文字で両断されたり『お笑いネタの練習は余所でやってちょうだい』って言われたり。
「もう断るというより、なに冗談言ってるのって感じですね。俺がそれ言われたら立ち直れないと思います」
ほんとだよな。ちょっと可愛くて性格が良くて頼りになるからって、言っていいことと悪いことがある。
「まぁ、清志さんそれでいいなら俺は特になにも言いませんけどね」
よくないよ!いい加減、誰かと付き合ってみたいのに成功率ゼロなのはどういうことなんだよ!ニノさんのアドバイスも役に立ってるのか分かんなくなってきたわ!
「アドバイスどうこうは関係なく"ボーダー"内じゃいくらやっても成功しないんですけどね」
なんでだよ……。職場恋愛禁止とかってルールあったっけ?もう仕方ないから所属してない子で誰か探してみようかな。
「それも間違いなく阻止されますけどね。というか"ボーダー"外で付き合ってみたい子とかいるんですか?」
いない、こともない……ような気がする。
「念のため報告は上げておきますけど、とりあえずは大丈夫そうで安心しました」
報告って誰にだよ。
「そういえば断る前提で相談に乗ったけど、京介は誰とも付き合う気ないの? 任務とバイトが忙しいのは分かるけど、そういう事情に理解のある子かもしれないだろ」
特別な関係になって初めて分かる人間性ってたくさんあるらしいぞ。
「その少女漫画の受け売りの正誤はともかく、今は誰かと交際するつもりはないですね。手の掛かる兄姉の面倒見るのに忙しいんで」
今、『きょうだい』って言ったよな?弟妹にしてはニュアンスが妙だったような……。
「まぁいいか。ところで京介ってどんな女の子がタイプなんだ?」
今までに告白されたことがないって訳じゃないと思うんだが、好みの子はいなかったんだろうか。
「そうですね……愉快な人、でしょうか」
……ふーん。"ボーダー"にいる京介のファン女子って木虎と氷見と香取だよな。なら全員愉快だから案外可能性あるのかもな。
ジャケットなしでシャツにタイを付けてるゆりさんが素敵だなって思いました(小南感)