モンスターハンター:オリジン   作:食卓の英雄

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前々から書きたかった。悔いはない。…等と申しており…


ハンターのいない村で
夢だと分かってても死にたくは無いよね。夢じゃないけど


 燦燦と輝く太陽、穏やかな草原、小鳥のさえずり。そしてブモォ〜という鳴き声。なんとも牧歌的でのどかな雰囲気なのだろう。きっといつもの俺だったらそれに感動するか、写真でも撮るだろう。

 しかし今は状況が違う。見つめる先には念入りにカモフラージュした罠。

 ここ数日でルートを確認したから大丈夫だろう。もしもの時の為にもいくつか用意してある。

 

「ブモォ〜ッ!?」

 

 掛かった、大きさから見て子供。しかしここで油断してはいけない。親が助けようと駆け寄り、辺りを警戒する。こうなれば親は意地でも動かない。

 だからそれを狙う。

 石を反対側に投げると、親はそちらに意識を向ける。その内に素早く駆け寄り、柔らかい喉を搔っ捌く。

 突然の事に驚き戸惑う親だったが、少しすると地に伏せピクリと痙攣するだけになった。

 残るは子供だけだ。目の前で親を殺された子供は恐慌状態に陥り、罠から抜け出そうと必死にもがく。しかしその程度で解けるような罠ではない。

 

「ゴメンな」

 

 これまた一息に喉を斬る。みるみるうちに親子の死体が並ぶ。ちゃんと息絶えているか確認すると、近くに隠していた荷台にこの2体の亡骸を乗せ、歩き出す。

 

 それは男にとって五度目の狩りだった。といっても、内三度は失敗な為、実質的に狩ったのは二度だ。

 

 そこまでは地球上でもよくある行為だろう。ただ一点、荷台に乗るその生物が、地球で言うところのパラサウロロフスという恐竜に酷似している所以外は。

 

 この生物の名は『アプトノス』。あるゲームにおいて生肉の為に狩られ続ける“モンスター”である。

 

 


 

 気づいたらそこに立っていた。

 正しくその表現があっているだろう。というよりそうとしか言えない。さて一体どういうことか、俺は家に帰って今日買ったばかりのモンハンの新作を遊ぼうと歩いていたのだが…

 

「どこだここ…?」

 

 見渡す限りの平原。やっぱ嘘。森とか山とか色んなとこ見える。

 訳も分からず取り敢えず歩く。こんな自然豊かな場所なんか訪れた事もない。ひょっとしたらオーストラリアか?とも考えたけど、それはいくらなんでも馬鹿みたいだ。

 

「…マジで何処だここ?人工物がないんだけど…」

 

 大自然!とか叫んでいると、ある生物が目に止まる。それは自分がもっとも好きなゲームそっくりの姿で…。

 

「アプトノス…?」

 

 そう、モンスターハンターでもメジャーなあのアプトノスである。後方に伸びるトサカのような角、棘の生えた先端を持つ尻尾、肩から尻尾にまで張り出した背びれ。

 いずれの特徴もゲームと一致する。それが20匹程の群れで固まっていた。

 

「…え?マジで!?何でアプトノス!?……あ、そうか、これ夢か。夢までモンハンとか…どれだけ好きなんだよ」

 

 そう苦笑すると、足早に近づく。群れの一番外側にいる個体はこちらを一度だけ見たが、すぐに草を食み始める。

 

「うわ〜、でっけぇ……。ゲームのハンターもこんな感じなのかな……。さ、触ってもいいよな?」

 

 ピトッと手を当てると、鳴き声を上げてびびったが、特に気にも留めて居ないようで、そのままザラザラとした表皮を撫で続ける。

 

「すげー、質感までちゃんとしてる…。動物園で触ったイグアナみたいだ……」

 

 よくよく見ると確かに個体差がある。模様だったり角や尻尾の棘等。ゲームではあまり注目されない部分までしっかり見える。

 

「夢じゃないみたいだ…」

 

 感慨に浸っていると、アプトノスは顔を上げ、ある方向を眺め始める。

 すると、立ち上がって嘶き始めた。それに呼応するように他のアプトノス達も二本足で立ち上がったり、何かを警戒するような声を上げる。

 

「何だ?」

 

 何やら反対側から小さな影が5つ向かってくる。それは恐竜のラプトルによく似た、橙の体にエリマキトカゲの様な襟巻きを持つ動物。多分ジャギィだ。

 

 それは散開すると、近くのアプトノス目掛けて襲いかかる。爪が皮膚を裂き、血が噴き出す。アプトノスも負けじと尾を振り回して抵抗するが、数の暴力には勝てず、地に伏せる。

 それを見てすぐに逃げ出した。リアル過ぎる。夢だと分かっていてもあれは恐い。

 慌ててアプトノスの群れに紛れて逃げるが、走っているアプトノスも時々ぶつかりそうだ。しかし逃げる方向からはより大きなドスジャギィが現れ先頭のアプトノスへ食らいつく。

 

 前も塞がれたアプトノスは滅茶苦茶に走り出す。

 

「痛っ!おぐっ」

 

 急な方向転換のせいで何匹かが耐えられずに転ぶ。中側を走っていた俺はぶつかり合うアプトノスに挟まれたり、尾の棘が腕を掠る。

 もみくちゃにされながらも何とか逃げるが、逃げようとする思考とはまた違った冷静な頭で考える。

 

(痛い、キツイ、偶に跳ねる小石が地味に辛い。これ夢じゃないのか!?現実!?何で!?ちょ、危ない危ないアッ―――!)

 

 跳ねられ、体が宙に浮く。そのまま何度か飛ばされて最終的にあるアプトノスに騎乗する。

 

「うわあああぁぁぁぁっ!!」

 

 乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。なんてものじゃなく、暴れるアプトノスのせいで掴まるのにも必死で動くたびに体が浮く。落ちかけたり打ちつけられたりでまるでロデオだ。

 

(このままじゃ死ぬぅ!)

 

 そんな一心で耐える事十数分。なんとか木々が乱立する川辺に辿り着いたアプトノス達。その数は最初の半分以下になっている。

 危機を回避したアプトノス達は腰を降ろす。当然、無理な態勢で乗っていた俺も転げ落ちる。

 

「うぷ、おえぇ……」

 

 転げ落ち次第、気持ち悪くなる。さっきまでは興奮状態で気が付かなかったが、相当に酔っていたらしい。

 服は汚れほつれ破れ、出血は治まったもののじくじくと痛む。ガンガンとぶつかった尻は痛いし、汗まみれで貼り付いた砂が気持ち悪い。

 

「綺麗な水だな…」

 

 川の水で体を清める。浴びる水は火照る体には刺すように冷たく、これが否応なく現実だという事を実感させる。

 

(何だよこれ…、異世界転生?いや、こういう場合は転移か。ゲームの世界に?それもモンハン?)

 

 普通なら馬鹿げてると思うか頭のイカれた人の与太話だと笑うだろう。実際、もし自分が聞かされてもマンガの見すぎだと相手にしない。

 

(だけど…)

 

 痛む傷と何よりも心臓の鼓動がそうではないと訴える。これは現実なのだ。馬鹿げているけれど全てが本当のことなのだ、と。

 

(なら、死ぬわけにはいかないか…)

 

 案外、死ねばリアルな夢だった、と自室のベッドの上で起きるかもしれない。けれどそれは危険だとなんとなく思う。

 死んだら最後、二度と目を覚ますことは無いだろう。

 顔を洗いながら計画を立てる。

 

(次はどうするか……。もしここがモンハンの世界なら危険なんて地球と比べて山ほどある。モンスターに話なんて通じないし……安全確保を…)

 

 グウゥ〜

 

(取り敢えず、食料だな)

 

 空腹には勝てなかった。

 

――――

 

「うし、これで一応釣り竿完成か?」

 

 いい感じの棒と、モンハン世界によくあるやたら丈夫な蔦を結び、そこらへんで跳んでたバッタを餌にした。なんか王冠みたいな頭してたけど気にしない。MH3以前は釣りバッタだってあったんだ。ならこれでも釣れるだろう。

 

 そして釣り糸を垂らす事数十秒、早速手応えがあった。

 

「フィーッシュ!」

 

 釣れたのは鯵によく似た魚。けれど硬い。鱗も大きく硬いが、何よりヒレが硬い。

 

「じゃあこれ、キレアジか?」

 

 キレアジ(仮)をレジ袋にしまい、釣りを続ける。どうやらまだバッタは原型を残している。再フィッシュだ。

 

2フィッシュ目

「フィーッシュ!!ってうわっ!はじけた!?」

 

3フィッシュ目

「フィーッシュ!!!なんだこりゃ…デメキン?」

 

4フィッシュ目

「フィーッシュ!!!!アロワナ!?」

 

5フィッシュ目

「フィーッシュ!!!!!ちょ、デカ、ってこれバクレツアロワナじゃ…?」

 

 そんな感じで、何故か破裂系魚ばかり釣っていると、流石の皇帝バッタもヘタれてきた。次が最後になるだろう。

 

「フィーッシュ!…おお、ついに普通の魚が!」

 

 最後に、普通の魚を入手して釣りは終わった。

 何かの役に立つかと思って破裂系魚はしっかり死亡後を確認してから鱗だけを頂いている。

 

 モンハンワールドで、効果があるのは鱗で、しかも普通に持つぶんには問題は無いと分かった為、最初の破裂で無事だった物を厳選した。

 

 身は良く分からないから捨てておいた。はじけイワシは兎も角、その他はそもそも食用じゃないし、ハレツアロワナ以降なんて火薬の臭いが漂っている為多分無理だろう。

 最後に釣った魚は、色々調べた後、焼くことにした。たまたま買いに行ってたチャッカマンのお陰で火に困りはしなかった。……といっても一時的なものだが。

 

「さて、いただきます」

 

 切り分ける為のナイフなんて無い。故にそのまま齧り付く。取りきれてない鱗が気になるが、それでも旨かった。やっぱ空腹だから味付け無しでも美味しく感じるのだろう。

 

「あれ…眠く……」

 

 方向感覚が覚束なくなり、瞼が重くなる。段々と微睡んで瞳を閉じる瞬間に原因に思い至った。

 

(あ、これ……眠魚…だ…わ…)

 

 そのまま、彼の意識は夢の中へ落ちていった。

 しかし今は夕刻、夜になれば夜行性の肉食モンスターは活動し、先に発見することも叶わなくなる。何より、火を焚いたまま寝ているなど、小型モンスターなら兎も角、一部の大型モンスター以外にとっては格好の餌だ。

 しかし眠魚の睡眠作用は強く、起きる様子もない。

 

 そんな彼の背後の草むらが揺れ、そこから何かがゆっくりと姿を現した。

 

「……人?……おい、人が倒れているぞ!ジモ、フリーダ!手伝ってくれ!」

「うわっ、本当だ。こんな夕暮れになんで…」

「どうでもいいから村まで運ぶぞ!」

「ふむ、どうやらこの魚を食べた事が原因の様だな」

「この荷物も?」

「早くしろ!もうじき夜だ!」

「よしっ!皆!急げ!」

 

 そう言うと、10人程の集団は彼を抱えて足早に去っていったのだった…。




今回はここまで。
モンハンとか良く分からない要素だらけだからね。
書くのは慎重に調べてからになります。
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