まあ、人物が割と自由に動かせるから原作ありきの二次創作よりも書きやすいです。はい。
あれから、使い物にならなそうな死骸は少し離れた森の中に埋め、後は全て工房へと持ち帰る。もうすぐ夜だというのに頼むのは憚れたのだが、三人は喜々とし鎚を持ち出した。 その日は村で唯一明かりが絶えない場だったとの事。
「……ここまで使い潰したが、加工の目途が全く立たんわい!」
「…不甲斐なし」
「うぇ〜!難しいよ〜!」
翌日工房を訪れた時の反応だ。工房には加工に失敗したと思われる甲殻が散らばっており、いよいよ本当にお手上げという状況だった。
「モンスターの素材、どれほどの物かと使ってみたのはいいが…ほれ」
渡されたカンタロスの甲殻には亀裂が走っており、軽めに叩くとヒビがより広がっていった。
素材自体の解体が難しいのは勿論、その小ささと強度が問題だ。幾重にも折り重ねた甲虫の甲殻は鋼鉄すらも上回る程の強度を見せ、鋭く尖らせた武器は飛竜の鱗にも通用するだろう。 しかし、加工出来なければ何の意味も無い。
「この通り、一つ一つは割れやすい上、弾性はそれなりにあるが一定のラインを超えれば破損する。組み合わせるにはデカいし、梳ろうとすれば割れる。思う様に扱えんわい」
「お手上げ〜って感じ!せめて鱗とかならもう少しやりようはあったんだけど〜」
一応、カンタロスやランゴスタの素材はまだ残っているのだが、いい加工法が分からない以上下手に無駄にしてしまう事は避けたい。
と、その時、素材の山の更に奥に見慣れないものを見かけた。
「これは?」
石桶には何とも形容し難い液体が並々と貯まっており、その独特な臭いに思わず顔を顰める。
「あ!もしかしてあの甲虫達の汁か?」
アランの一言で思い出す。確かにこの臭いはつい先日、嫌というほど嗅いでいたものだ。
「そうです!ええ!よく気付きましたね。どうやらこのモンスターの吸い取った汁と消化液が混ざって出来た様で、物同士を接着する用途に長けているのです。特に自然由来の物とは相性がよく、今までは削る位しか出来なかった竜骨の可能性が広がりましたよ!」
珍しく興奮した様子で話すエイル。この体液は後で捨てようと思っていたらしいが、用途が見つかりすっかりご満悦だ。
「えーと、それで…何か用があるって話だったよな?」
「はい。先日貸していただいたあの巨大な骨があるでしょう?」
巨大な骨というと、カンタロス相手に無双していたあの骨だろうか。
「はいそれです、それ。甲虫に行き詰まった腹いせに……ではなく気を静める為に加工してみたんですよ。すると結構様になったんですよね」
よいしょっという掛け声と共に現れたのは、削られ、しっかりと頭部と柄の境目が分けられ、ハンマーとしての姿を手に入れた骨だった。
「確かに様にはなりましたが、そんなもので満足する訳にはいきません。あくまで試作品。改良の余地はまだまだあるのです」
「まあ、そう言う訳じゃ。最近ジャギィがここらにまで姿を見せるようになったと聞く。その討伐がてら試してみてくれ」
「ついでにジャギィの鱗とかもよろしくね〜!」
アランはそれを手に取り、重量に負けることなく振って見せると、満足げに頷いた。
「うん、いい感じだな。これ、名前とかあるのか?」
「……試作品だからと考えてもなかったわ」
「……どうします?」
「……骨を削っただけだし、もう『骨塊』とかでいいんじゃない?」
「「それだ!」」
そんな適当な名付けが終わり、俺達はジャギィ討伐に赴くのであった。
◇◆◇◆◇
「…にしてももうちょっといい名前がよかったな」
村を出てから数分、アランはポツリと言葉を零す。
「まあまあ、試作品って話だしいずれちゃんと名前を与えるだろ。実際、骨塊ってのも間違ってはいないんだし」
「でもよ、そのハンターナイフみたいな感じにこう、武器って感じがしないだろ?ただの骨の塊だぞ?」
「事実だろ」
「いやそうなんだけどさ…」
そんな取り留めもない話をしながら、今回のターゲットへと思いを馳せ。
ジャギィ。首の周りにあるエリマキと橙の鱗に紫の皮を持つモンスター。ランポスと同じ鳥竜種に属しているが、こちらは狗竜上科に分類されており、その仲間にはバギィやフロギィといった種類が確認されている。 肉食モンスターとしては非常に小柄であるが、それはあくまでオスだけだ。メスはジャギィノスと呼称されており、一回り以上も大きな体格を持っている。
俺が初めての狩りをした時にも、茂みの中から現れては獲物を奪い去っていった相手だ。今回で所謂リベンジということになる。
「…にしても、何でジャギィ達はこっちまで上って来たんだろうな」
何とか自分の中で呑み込んだのか、それとも誤魔化す為か、アランがそんな事を聞いてくる。
「さあ?ジャギィも群れだから、餌とかが足りなくなったんじゃないか?」
「わざわざか?こっちは元々ランポスもいるのにそんな事するのか?……まあ、単純に移動してきただけかも知れないけどよ」
結局出てきた案はどれも当たり障りなく、疑問を晴らすことにはならなかった。
「と、そろそろ目撃された地域に入るな。あんまり音を立てるなよ?特にその骨塊は今までのと違ってデカいんだから、気付かずにぶつかって襲われました。とか嫌だぞ俺」
「分かってる分かってる。安心しろって、出来るだけ善処するから」
「おい、不安になること言うなよ」
「やりやがったなテメェーッ!」
「悪かった!」
「「アッ、オーウ!アッアッ、オーウッ!」」
村を出た直後のやり取りがそっくりそのまま実現し、俺達に襲いかかるジャギィ達。急いで逃げようにも、今の咆哮で背後からやって来たジャギィに退路を塞がれる。
「やるしかないか…後ろは俺が!」
「前は任せろ!」
即座に戦闘態勢に移行し、背後に迫る三匹の内の一番右側。その鼻先へと力一杯振り下ろす。不意を突かれた一匹は悲痛な声を上げて大きく仰け反った。が、浅い。すぐに態勢を立て直して他二匹と同時に取り囲む。
「最初に一匹くらいはやっときたかった…っと!」
左右から同時に繰り出された尻尾回転を前に転がり回避。したところに最後の一匹が噛み付きかかって来る。
「ふん!」
それを右の盾で殴りつけ、回転攻撃から立ち直っていない一匹の胴体を斬り上げる。今度の一撃は芯を捉え、鮮血が舞う。硬直するジャギィにシールドバッシュを叩き込み、すかさず旋刈り。先の盾攻撃で頭をカチアゲられたジャギィの喉元に渾身の一撃が入る。 これにはジャギィも耐える事は出来ずにか細い鳴き声を上げて絶命。
右から迫る二匹を横向きに一閃。一匹には直撃するがもう一匹はバックステップにより回避。そのままの勢いで走り込むジャギィを躱し、傷をつけた方にトドメを刺した。
「これでラスト!」
飛び掛かりを盾で反らして体ごと突き込む。深く刺さった切っ先を抜くと、ジャギィはばたりと倒れ込んだ。
「ふぅ…。よし、練習通り上手く動けるな。アランの方は…終わったか」
振り返った瞬間視界に入ったのは、骨塊を振り上げるアランと吹き飛ばされて宙を舞うジャギィの姿だった。
「初めてなのにしっかり使えてるじゃないか」
「ん、マサミチの方も終わったか。剣を造ってくれたおやっさんには悪いけど、こっちの方が俺には合ってるかな」
「まあ、その力を活かすにはハンマーの方がいいよな」
お互い苦戦せず討伐出来た事を喜び、強くなっている事を実感する。今の戦いが無傷で終わった事が何よりの証拠だ。体の動かし方が分かってきたと言える。
「このジャギィ達はどうする?」
「一々持ち帰る訳にもいかないし、それに気を取られるのは危ないな。少しだけ剥ぎ取って、後は自然に任せよう」
昨日も活躍したケルビ革袋に無事な鱗や傷の無い皮、欠けていない牙などを仕舞い込む。剥ぎ取りは教えられながらアプトノスの体で覚えた。これも村のみんなのお陰だ。
「さて、ここから先はランポス達の縄張りだった場所だが…こんなにジャギィがうろうろしてるときた。……となるとアイツがいるかも知れないな」
「アイツ?」
「ジャギィ達のボスだよ。ジャギィと似たような見た目だが、一回りも二回りも大きくて、ずっと強いやつ」
「アッアッオーーウッ!」
遠くから今のジャギィ達よりも低く、大きな鳴き声が響き渡る。
「!これがそのボスの鳴き声か?」
「ああ、間違いない!」
急ぎガサガサと茂みを掻き分けて進み、草原地帯へと差し掛かかったその時、更に大きな遠吠えが耳に届いた。
「…あそこだ!」
「アイツが……」
平原の中央に佇むその影は、堂々とした足跡を地面へと刻む。
紫の体毛と白いたてがみは風に揺られ、力強い足腰はアプトノスすら容易く抑えつける事も可能な程の筋肉に覆われている。子分であるジャギィ達を統率し、凍てつくような鋭い目を周囲に向けている。自らの存在をこれでもかと主張する、ジャギィより遥かに大きな襟巻きは、まさしく王者たる証。
――そこに居たのは、純然たる《竜》だった。
「ドスジャギィ…!」
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▶ WARNING !◀
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懐かしのアレ↑
ちょっとした裏話
実はマサミチのが1歳上。ケルビ革袋や荷車は近づく前にカモフラージュしてから放置しているよ。終わったら持ってきて乗せる感じ。
一体いつから私が感想クレクレマンで無いと錯覚していた?