モンスターハンター:オリジン   作:食卓の英雄

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モンハンサンブレイクやべぇぇぇい!
密林復活!まさかまさかのエスピナス&ゴア・マガラ復活!ルナルガ参戦!半ライスとは言わせない!追加アップデートの予定は来年まであるぞ!
体験版樂しいぞ!


溶岩地帯の巨大蟹

「キシャァァァァァァァッ―――!」

 

 ギチギチと耳障りな音を立てながら落下してくるそれに、俺の意識は奪われた。

 大岩のような巨大でビクともしないはずのものが、明確にこちらを狙っている。天井からの予想外の奇襲に頭で分かっても肉体が追いつかない。その最中にもどこか冷静な思考が今すぐ避けろと全力で警鐘を鳴らすが、呆気にとられた人間というのは咄嗟の行動が出来なくなるらしい。俺もその例にもれずに、事の顛末を他人事のように眺めていた。

 

(不味――)

 

「マサミチ!」

「うあぁっ!?」

 

 間一髪。走り寄ったアランが体当たりを敢行し、俺の身体もろともその範囲外へと弾き飛ばした。

 

 すぐ真後ろで巨大な地響きが鳴り渡り、少なくない風がこちらの頬を突き抜けてゆく。

 ショックから立ち直れていない体を何とか動かして、尻餅をついた状態から立ち上がる。

 

 その頃には相手も落下の衝撃を殺し終えたのか、はたまた仕留めた手応えがないことに不思議がったのか、ゆっくりと無機質な黒目を向けてきた。

 

「すまん、助かった」

「気にするな。それよりも…」

 

 今の今まで気が付かずに先制攻撃を許してしまったという驚嘆と、死地にあったという事実にどっと冷や汗が吹き出る。ガミザミという目に見える障害を退けたということと、この熱波によって集中力が薄れていたのだろう。そこを突かれたという形になるわけだ。

 

 こちらに振り向き直る巨大な存在に、否応なしに本能が警鐘を鳴らす。見た目は先程現れたガミザミを巨大化させたような外見だが、大きいというのは、それだけで武器になるのだ。

 ガミザミは細い手足を折ることが出来たが、ここまで大きいと動きを阻害することすら至難の技だろう。

 背負うヤドは飛竜の頭骨、元の形がわからないほどに風化してしまっているが、それが脆いということにはならない。青い外骨格は幼体時とは比べ物にならないほど強固になり、鎌のような爪はより鋭く、より長大に発達している。

 

 鎌蟹―――ショウグンギザミ。

 

 甲殻種に分類され、並の飛竜を凌駕する危険度の強力なモンスターだ。

 

 それはギチギチと自慢の爪を軋ませ、こちらを注意深く観察している。

 

「…さっきの奴らの親玉って訳か」

 

 アランが決して視線を離さずに言葉を紡ぐ。突き飛ばした勢いのままに振り返ったため、ショウグンギザミの鎌の範囲外に位置している。しかし、それでも油断できる距離ではない。少し前に踏み出せばそれこそ二人纏めて斬り捨てられるだろう。

 

 絶大な緊張感が身を震わせる。怒り狂ったモンスターの眼光は恐ろしいが、表情というものが見えないショウグンギザミはそれらとは違う不安が過ぎる。

 

「なんでこんな…いや、火山だったんだ。そりゃいるだろ…!」

「こいつを知ってるのか?」

「…こいつはショウグンギザミ。かなり手強いモンスターだ。この前出会った、あいつよりもな」

「あの飛竜よりもか…!」

 

 あの手痛い仕打ちを思い出しているのだろう。それを超えると言われれば険しくなるのも仕方がない。

 

 二人とショウグンギザミは完全に膠着状態に陥っていた。二人は強大な力を持つモンスターへの、ショウグンギザミは初撃を回避した見慣れぬ不思議な生き物を警戒していた。

 

 だが、その均衡も長くは続かないだろう。ショウグンギザミに危険ではないと判断されればすぐさま仕掛けられる。反面、下手な一撃でも命に関わりかねない二人は、攻めるにも逃げるにも、慎重にならざるを得ない。

 

 ショウグンギザミは爪を重なり合わせる。痺れを切らしかけているようだ。

 自然、ハンターナイフを握る手に力が籠もる。こっちはドスジャギィを倒した程度の実績しかない上、装備も心許ない。あの三人の仕事を疑うわけではないが、チェーンシリーズやハンターナイフでは刃が立たないのは明白だ。

 

 絶対に、今戦っていい相手ではない。

 

 動かなければこのままショウグンギザミに攻勢を譲ることになるだろう。そうなれば、俺達はなりふり構わず逃げるしかない。それも、絶対ではないという徹底っぷりだ。

 戦っても敵わず、逃げるには近すぎる。どうすればいい……!?

 両方別々に動く眼を忙しく動かしこちらを捉える。どうやら相手も吟味を終えたらしい。なら、最早やることは一つ。

 

「う、おぉぉぉぉぉぉぉ―――っ!!」

 

 盾を構えて雄叫びと共に駆け出す。まさかショウグンギザミも予想だにしていなかったのだろう。急に走り寄る生物へ対処しようと鎌で薙ぎ払おうとするが、一歩遅い。

 なんとか爪の内側に入り込んで伸び切った腕に一撃を見舞う。

 

――ガキィンッ

 

「っ…!」

 

 ドスジャギィのような筋肉の分厚さを感じさせる弾力性ではなく、岩を殴りつけたかのような感触に思わず手を引いた。全力で振りかぶった一撃がこうもあっさりと弾かれる。

 ただ純粋に、硬い。

 

「ちっ、危っ!?」

 

 大きく仰け反った体を狙って振りかぶる爪を体を投げ出して回避。だが、避けることに必死だったせいでその後のことに繋がらない。隙だらけの体を晒してしまった。

 追撃はない。

 

「うらあぁぁぁ――っ!」

 

 マサミチが駆け出すと同時、ショウグンギザミの注意が離れた瞬間にアランもまた走り出していた。

 アランは正面に立つマサミチを見て、直ぐに背後へ回り込んだ。そして叩き込まれる遠慮のない暴力の嵐。

 ショウグンギザミの最も弱い部分は頭。次いで胴、脚、それ以外となるが、頭部以外は明確な弱点と呼べる場所はない。――それが、斬撃によるものだったなら。

 

「シギャア!」

 

 口元の小さな顎脚を蠢かせ、ショウグンギザミはアランに向き直ったのだ。

 ショウグンギザミは斬撃には強いが、こと打撃となると脆い。斬撃では刃が立たないような場所でもその力と重さで強引に突破することが出来る。

 攻撃位置は弱点を庇うために背負われた巨大なヤド。これもアランは知らないのだろうが、ヤドは頭同様に打撃が特に通じやすい。

 弾かれた片手剣の一撃よりも、弱点を庇うヤドに強烈な攻撃を加えたアランの方を脅威と見たのだろう。

 

 お陰でマサミチは一旦持ち直すことが出来た。アランはその前に位置を移しているが、やはり攻めに転ずることは出来ない。

 俺に背後を晒していることになるが、突発的な動きの多い甲殻種相手では迂闊に踏み込むことは命取りになる。

 

「アラン!悪いがもう少し引き付けてくれ!急な動きの変化もよく見れば分かる!」

「お、おう!…つっても!っ…俺もっ、余裕が!あるわけじゃないんだがっ」

 

 アランはひいこらといいながら必死に爪の一撃を躱していく。完全に防戦一方。警戒されるまでの最初の攻勢以降は武器を抜く余裕がない。宣言通りにそう長く持つものではないだろう。

 

「さてどうする…?」

 

 俺のハンターナイフはドスジャギィ戦後に鉄鉱石で強化して多少攻撃力は上がったが、ショウグンギザミに有効な攻撃を与えられるかと問われれば別だ。

 しかし、狩猟しなければならないという訳ではないのだ。この場所にわざわざ訪れる人もいなければ、ショウグンギザミが村まで追ってくるという心配もない。なら、選ぶ道は一つ。

 

「アラン! 無理に攻撃しなくていい! 隙を見つけ次第撤退だ!」

 

 呼びかけ、反応を待つまでもなく攻撃に集中して止まっている脚の一本に叩きつける。硬い感触は健在だが、腕ごと弾かれるということはない。

 

「よし、ここは変わらないか…」

 

 ゲーム通り、脚や顔ならこのハンターナイフでもまだ通る。硬質な甲殻にごく僅かな掠り傷程度ではあるが、気を惹くことは可能なはずだ。

 

「ギシャシャァ!」

 

 一、二、三、四。身体を捻り、最大限に体の力を乗せた斬撃の連打。撃つたびに手に伝わる衝撃が込めた力の程を実感させる。

 息が切れるまで続いたその攻撃は、しかしてショウグンギザミの甲殻を貫くことはなく、表面の浅い甲殻を斬り裂いただけに留まった。

 

 ただ、目的は達した。すっかりアランに執心だったショウグンギザミがこちらの攻撃に何かを覚えたらしい。伸びた黒目をギョロギョロと動かして俺の位置を把握する。

 

「よーしよし、いいぞ。しっかり狙えよ…!」

 

 喉が焼ける様な灼熱の余韻を受けながら、滴る汗にも動じずただショウグンギザミの一挙手一投足に注視する。

 まず、左の鎌を僅かに震わせ、瞬時に叩きつける。が、そこには既に俺はいない。より右に、ショウグンギザミの側面を位置取った。その瞬間、見失ったその時を狙ってその体躯を支える脚の関節部に刃を滑らせる。

 今度は、弾かれない。確かに関節を覆う薄い皮膜に傷をつけた。勿論それで痛手にはならない。これを百度と繰り返してようやく姿勢が崩れるかどうかといった攻撃だが、もとよりハンターは小さな事の積み重ね。悲観はせず、万全の態勢で以て迎え撃つ。

 

「ギィイイイッッッ!!」

「そっちか!」

 

 三撃程度で行動を再開するショウグンギザミに、再び向き直る。旋回によって側面から距離を詰めてくるが、それは予想できていた。進行ルートと鎌を目測で回避し、ギリギリで躱してから直ぐに前進。

 斬り降ろし、斬り上げて、薙ぎ払いの動作に入ったショウグンギザミから離れる。読み通りにいったことに安堵を覚えつつ、気を引き締めるようにグッと歯を噛みしめる。

 

 更に接近してくるショウグンギザミの、何の感情も宿さない瞳と視線が交差する。踏み込みかけた足を気力で抑えて横に跳ぶ。細かな牽制が先程までの場所に見舞われ、黒岩を浅く削る。

 反対の爪での追撃を何とか盾で防ぎ、金属同士がぶつかった様な音がこの洞窟に木霊する。想像より速く、思い一撃に腰を浮かされかけるが何とか耐え、背後に迫るアランに視線を送る。

 

「おぉおりゃあっっ!!」

 

 痛打。全霊を込めた殴打の衝撃が背後のヤドから本体へと伝播する。僅かな身動ぎを返すショウグンギザミも標的が二つに増えて迷ったようだった。

 

「ぜぇいっ、やあ! ぬぁらっ、どりゃあっ!」

「オオオオオ――ッ!だりゃぁっ!」

 

 瞬間二人揃って攻勢に出る。恐らく積み重ねが今やっと効いたのだろう。驚いた様子を見せるショウグンギザミへ更なる追撃を仕掛ける。

 

 立ち直ったショウグンギザミがアランを狙い、離れた側から俺がもう一歩踏み込んで怒涛の連打。反対に、俺が狙われている間は注意を向けないように付かず離れず、浅い傷や防具への傷は増えていく一方だが致命的な一撃は食らっていない。

 ちょこまかと動き回り攻撃を加える俺たちに苛立ったのか、上気したような吠声を上げて顔の前に鋏を交差する。

 

 ギャリギャリギャリギャリン!!

 

 不協和音を奏でながら正面で打ち鳴らされる双鎌。とてつもない速さで擦り合わされた鎌は火花を放ち、その標的の姿を映し出す。

 

「――アラン! 横に飛び込め!」

 

 声をかけるのが早いか、打ち鳴らしが終了した瞬間にショウグンギザミの体躯が宙を舞う。あの細い脚の何処にそんな力があるのか、バネのようにしならせてアランに向かってその鋏を強烈に叩きつけた。

 

「のわっ!? くそ、危なかった!」

 

 アランは指示が聞こえるやすぐさまハンマーすら放り投げて緊急回避の体勢に入っていた。投げ出した身を風切り音と共に鎌が通り過ぎる。

 アランの無事を確認し、大技後に硬直するショウグンギザミの懐に潜りこむ。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!」

 

 持てる力のすべてを右手に持つ盾に込めて。殴り、殴り、打ちつけ、殴り抜く。

 

「いよしっ! そこ開けろマサミチ!」

 

 背後から迫る足音と豪声。ダメ押しのバッシュを叩き込んで横に転がり避けると同時に骨塊が炸裂する。身じろぎするショウグンギザミの動きに危機を覚えつつも、アランは止まらない。

 

「オォッ! ヌンッッ!ゼアァッッ!」

 

 体のしなりを用いた三連撃のスタンプが打ち込まれる。

 込めた力がそのまま還された反動すらも威力を高めるための火種とし、猛烈な鎚の乱打は完成する。

 しかし、それでもショウグンギザミはあっという間に向き直ると再び爪でその矮小な獲物を手に掛けようと振りかぶる。

 

「――最後ぉッッ!!!」

 

 身体全体を振り回し、風車のように己ごとハンマーを振り回し、回転の力を保ったままその柔らかい顔に向けて叩きつけた。

 

「ギシャアアアァァァッッ!!??」

 

 巨体が、転倒した。片脚を崩し、わけも解らずバタバタと藻掻くさまは相当の混乱に陥っていることが確認できた。

 

(―――『気絶』した!)

 

 モンハンでは打撃を頭部に加えることでモンスターを気絶状態にさせることが出来たが、それは現実となっても同じらしい。いや、より現実らしいと言うべきか。

 弱点である頭に弱点である打撃を加え続けられたショウグンギザミはとうとう地に伏したのだ。

 

「…っ、今だ!全力で逃げろーっ!」

 

 声を荒げ、未だ朦朧としている鎌蟹の横を走り抜ける。モンスターは往々にして強靭な生命力を持っているため、いつ回復されるか分かったものではない。

 拘束時間を一秒でも無駄にしないために、二人は全力で駆け出した。




久しぶりの更新。
地道に評価とかお気に入りとか増えてきて嬉しいです
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