昼には書き始める予定だったのに夕方からになっちゃった。昼過ぎてキュリアになったわ(激ウマギャグ)(傀異化)
遠方からランポス達の悲鳴や雄叫びのようなものが聞こえてくる。アランはしっかり耐えているみたいだけど…。見に行くわけにもいかない。
俺が出来るのは、アランがみんなを守り抜くか、はたまた相手を打ち倒すのを信じて急ぐことだけだ。
「その角にあるのが俺の家だ! 裏手から少し離れたところに袋をいくつか隠してあるからそれをこっちまで持ってきてくれ! あ、絶対に乱暴に扱ったり衝撃を加えるなよ。危険だからな!」
「了解ニャ!」
「そんにゃにですかにゃ?」
二匹にそれを命じて、俺は一つの大きなタルを運び出す。これは建築時のあまりや、伐採時に貰った木の板から自作した大タルだ。素材の良し悪しや加工に手間取ったが、遠征前には満足いくものまで完成させることが出来た。水もこぼれ落ちないほど密度はしっかりしている。
どこにも欠損や不具合がないのを確認していると、ムートとアミザが一抱えほどの袋を一匹ずつ持ってきた。
「ありがとう。まだまだあっただろ? あれを全部持ってくるぞ」
「ニャア…あれを全部かニャ」
「これって何なのニャ?」
彼らの体躯には重かったであろうそれを複数回往復するさまを想像したムートはげんなりとし、アミザは袋の中身を知りたがる。ここにも性格が現れているなと少し空気が緩んだ。
「これに入ってるのは爆薬だ。強い衝撃が加わると爆発するから扱いは繊細にな?」
そう。これは俺が最初の狩りの武器として活用した爆薬だ。
あの時、確かにモスを仕留めるという効果を齎したが、やはり自衛手段がないままでは危険だと判断し、一度は諦めていた。だがしかし、それはそれとして、爆薬自体は有効であるとの結果は取れた。あの時は量が量だったし、リスクが大き過ぎたが、こうやって物資と、狙うべき相手がいるのならむしろ活用するべき強力やアイテムになる。
ここまで言えば分かるだろうが、俺が作ろうとしているのは大タル爆弾だ。
大タル爆弾といえば、ハンターは必ず一度は使用したことのあるものだと思っている。特に慣れない内や、装備の整っていない序盤から中盤。そして眠っているモンスターへの強力な一撃として重用したことだろう。
残念ながらここにカクサンデメキンもバクヤクウロコも持ってないし、タルの大きさもそれを想定したものではない。
それでも、この子供の背丈くらいは優に超えるタルに並々と爆薬を詰めるのはかなりの緊張感がある。
聞いたことはないだろうか。テレビでも何でもいい。花火師なんかの仕事で、あの花火星に収まる量の火薬で、その場にいる人間は吹き飛ぶと。
俺が扱っている爆薬の量はその比ではない。そして、モスを通してこれが生物を殺し得る代物だと知っている。
「これで最後…!」
「しんどかったニャ」
「いっぱいですニャ…」
コツコツとニトロダケと火薬草から作り上げた爆薬はそれはそれはかなりの量ある。これを今から大タルに移す作業に入る。
「…二匹とも、危ないから離れててくれ」
正直、怖い。この量の爆薬がもし爆発してしまえば、いくら防具を着ていても助からないだろう。……これが、強力なモンスターのものだったらまた別なんだろうけどな。流石大自然。
緊張で手は震えそうになるし、手汗も滲んでくる。でも、それだけはしちゃいけない。震えた手で作業し、もし衝撃を与えたら? 滲んだ手汗で爆薬が湿気たら?
そう考えると、最早それすら許されない。4のハゲガンナーはよくもまあティガレックスの迫る中冷静に二つの大タル爆弾を配置出来たものだ。
「でも、命の危機はどこでも同じだ」
今頑張っているアランだって、体力が尽きればドスランポスに殺される。むしろ、明確に殺しに掛かってくる相手がいるだけ俺よりも難易度が高い。
「今更怖気づくなよ」
素早く、繊細な手付きで袋の結び目を解くと、それをまるごと大タルの中に注ぎ込んでいく。一袋程度じゃ、全然足りない。でも、一度やれてしまえばその勢いに乗るまでだ。
次々と、それまでの逡巡が嘘かのように爆薬を投入していく。けれど、決して雑ではなく、むしろ丁寧に丁寧に、僅かな量でも零れ落ちないように。しっかりと全てを入れ替えながら。
―――…
「……完成だ」
随分と集中力を使ったのか、この寒い中だというのに顔から汗が滲む。……今思えば、寒冷期前に作ったのは正解だったな。
そうして出来上がった大タル爆弾に蓋をする。こちらもまた密閉率は高く、下手な扱い方をしなければ中の爆薬も洩れないだろう。
因みに、流石に中が全て爆薬でパンパンになっているわけじゃない。そんなに詰めてしまうと運搬が大変だし、些細なことで爆発したり爆薬が溢れてしまう。
「後はこれを運ぶだけだが……」
鉱石類を積んできた荷車は、移動の邪魔にならないように村の外周部に置いてきた。ムート達に手伝ってもらうわけにもいかず、これは俺が抱えて中央まで行かなければいけない。
「力仕事な上リスクも莫大か…」
ムートほどではないが、げんなりとしつつ、ムートとアミザに護衛網を敷いてもらう。これで、万が一ランポスに遭遇しても、不慮の事故で大タル爆弾が爆発してしまうことは防げると思う。
待ってろよアラン…。必ず、コイツを持っていくからな。
◆◆◆◆◆
一方、アランとドスランポスの戦いは、アランの劣勢となっていた。
「ふぅ…ふぅ…。どらッ!!」
『ギャギャオゥ!!』
一進一退の攻防と言えば聞こえはいいが、人間より強靭な肉体を持つドスランポスとでは体力、タフネス共に下回っている。同じだけ消耗したとして、絶対値の小さな人間の方が先に力尽きるのは当然の理だ。
ハンマーという得物の性質上、素早く振り回すにはその分息も必要だ。これが万全の態勢で、狩猟に赴いているのならばまだ上手く戦えていたのだろうが、生憎と自然はそう易しいものではない。
今のアランは遠征によって疲弊した体力も、削られた精神力も必死に絞り出して動いている。正しく空元気。しかしその状態でドスランポスから背後の人々を守りつつ、まともな一撃を受けていないのは驚嘆するべき事実だろう。
だがしかし、それも時間の問題だろう。息が切れれば、補充するだけの隙が必ずある。それを見逃すドスランポスではない。
『ギャァオッッ!!』
「くぉっ!」
疲れ切った体に鞭を打ち、ドスランポスの飛びかかりを避けるが、棒のようになった足は上手く動かない。
目の前で転倒した。これでは格好の餌だ。動けない獲物に舌舐めずりをしたドスランポスは、これ以上逃げ回られないように脚で体を押さえつける。
「うぐぁっ……!」
「アラン!」
その重さに肺の空気が吐き出される。鋭い爪がギャリギャリと鎧の表面を削り、もしこれが無ければ深く体に突き刺さっていたであろうことは容易に想像できる
「こんのっ…!」
咄嗟に標的を変え、よく弦を引き絞った一矢をドスランポス目掛けて放つ。しかし、それは表面の鱗を削り、僅かに肉に到達したであろう地点で運動を停止する。
ギロリと、より鋭い視線を下手人に向けて一声。
それにより、今まで包囲網を取っていたランポスの数頭が動き出す。どうやら手下に命じて今の攻撃を放った敵を殺そうとしているらしい。
肝心のアランは、未だドスランポスに捕らわれたままだ。迫る噛みつきを右に左に、頭を動かし、手甲で逸して凌いでいる。
「うわっ…、やばっ」
「ぅぁ、くそっ、フリーダ! 俺のことはいいからジモを守れ!」
「アラン!? …っ、分かった!」
アイルーに翻弄されていたランポスも、同時に動き出しており、その標的はジモだ。ジモは彼女なりに応戦しようと矢を放っているが、リーダーの指令を受けたランポスは今までより高い動きをする。
細身のそれが複数迫る中、冷静に狙いをつけ対処しろというのも酷な話である。
事実、少なくない傷を与えた個体はいても、それで死亡したランポスはいない。そして、死兵の覚悟を持ったランポスがその程度で止まるはずもない。
「リーダーがいるだけでこんなにも違うかっ!」
最も近い一体を斬り伏せ、そのその細っこい首を蹴り飛ばす。大きく転げたが、すぐに起き上がってこちらを目指す。
「にゃ~!?」「うにゃにゃ」「ニャー!」「ニャッニャッ!!」
アイルーもさせるかと数体のランポスに纏わりつくが、一時的な足止め以外の効果はない。アランを助けるには、今襲い来るランポスを全て打倒しなければならない。
しかし、ジモもフリーダも、これが初陣だ。それを為すだけの基礎能力は備えているものの、このような状況下では真価を発揮できるとは言い難い。
フリーダすら無視してジモに迫るランポスに、驚愕しながらも対処していくが、それで精一杯。
正に絶体絶命。その様子を横目にドスランポスは肩口を抑え込み、より確実に息の根を止めようとその喉元に牙を―――。
「みんな目ぇ瞑れぇ!!」
「え?」
「っ、早くしろ!」
アランがその意図にいち早く気づき、号令を受けた他の衆も一斉に視界を覆う。
その瞬間、過剰なほどの閃光が瞬き、白い光が網膜を焼きつくす。
『『『ギャァッッ!!?』』』
次に聞こえたのはランポス達の悲鳴。強い光に目を焼かれたランポス達は、何が起こったかも分からずに目を回す。それはドスランポスも同様だ。
「離れろこの野郎!」
『ギィッ!?』
そして駆け寄る一つの影が、ドスランポスを果敢に攻める。突然の閃光と、目の見えない間の攻撃。
ドスランポスは驚き戸惑いながら体を仰け反らせる。
そして、自由になったアランはすかさずその背中を見る。
「大丈夫か?」
「悪ぃ、任せろっつったのにな」
「いや、これはしょうがないだろ。俺だって助けてもらった。お互い様だよ」
「へっ、そうだな」
ぐわしっと、防具に覆われた手を掴み合う。マサミチに引き上げられる形で立ち上がったアランは、先程までの疲弊を思わせない姿でハンマーを構える。
「あと、これ飲んどけ」
「回復薬か? 有り難いが、わざわざ作ったのか?」
「家に置いといた分だよ。あって良かっただろ?」
ぐいっとその緑々しい液体を飲み干し、ぐっと体を伸ばす。その頃になるとフリーダも、ジモもそれを認識出来ていた。
「ありがとう! 助かった!」
「マサミチ、今の光は…?」
目を回すランポス達の包囲網を抜け、駆け寄る。ジモは礼を言い、フリーダは先の光の正体が気になるらしい。
「ジモも、フリーダも、その姿は…。いや、今は取り敢えずランポス達だ。積もる話は後だ。そろそろ閃光の効果が解けるぞ」
言われて見れば、ボスであるドスランポスを筆頭に、正常な視界を取り戻し始めたランポス達がこちらを警戒しながら見つめている。
「アラン、まだいけそうか?」
「勿論!」
「ジモ、矢の残りは?」
「えっと、いちにさん…三本。使ったの回収すればまだある」
「分かった。出来ればでいいけど、最低一本は持っといてくれ。その時が来たら言う」
ジモはその指示に少し逡巡するも、アランが頷いたのを見てひとまず理解した様子を示す。
「フリーダ。ジモとアイルーと一緒にランポスの相手を頼む」
「アイルー? ああ、あのモンスターか。分かった。お前たちはドスランポスか」
「ああ。当然決定打は持ってきてる。けどランポスの邪魔が入れば使えないんだ。頼んだぞ。ムート、アミザ、他の奴らの指揮をしてやってくれ」
「ランポス相手なら慣れてるニャ」
「みんにゃで頑張りましょうにゃ〜!」
そう言って武器を掲げると、今までもたついていたアイルーも調子を取り戻し、「ニャー!!」と鳴く。
その様子にフリーダは目を点にして……?
「モンスターが喋っている…だと…!?」
そういえばそうか。俺は知ってたから特に不思議に思わなかったけど、フリーダ達からすると猫がいきなり人間の言葉を話したようなものか。……まんまだな。
フリーダのあんな顔は中々見ることが出来ないけど、生憎ともうランポス達も復活した。丁度こちらの作戦会議も終わったタイミングだ。
まだ思案げなフリーダにアランが活を入れ、各々の相手に対して陣取る。
「それも含めて説明する! ジモは奥に構えてフリーダとアイルー達でランポスを散らすんだ! アミザは万が一に備えてジモの側で待機! 好機と見ても堅実に攻めろ!」
「「分かった」」
「マサミチ! ランポスから引き離すぞ! その決定打ってのは!?」
「戦いながら誘導する! とにかく注意を引き付けられればいい! 無理に攻めるよりは誘き出すことに専念するぞ!」
「おう! それじゃあ…行くぞ!!」
アランの号令を機に、戦いの火蓋は切って落とされた――。
実際あの量タルに詰め込むって正気の沙汰じゃないよね。
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