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アランが号令を上げ、態勢の整った狩人側は、これまでと違い冷静に、安定した動きを徹底出来ていた。
ジモとフリーダは言われた通りにアイルーと共闘し、これといった支障もないままランポスを確実に落としていき、ムートとアミザ、二匹の獅子奮迅の活躍によりトドメもかなり楽に刺せる。今までは、深追いすれば他のランポスがフォローに回って中々数を減らせていなかったのが嘘みたいだ。
守られる後衛、攻め手の前衛が共にその効果の程を実感し、テキパキと新たなランポスへと狙いを定めるその一方。
戦いの場から少し離れ、けれど決して遠くは無い場所で二人の人間が協力してドスランポスに挑みかかっている。
二人の戦い方は面白みは無く、けれどその分実戦的で隙が少ない。それはどちらか片方が狙われている間のみ、もう一方が全力の攻撃を果敢するというもの。
単純で、戦いの基礎とも呼べるものだが、それ故に対応もしやすい。もしこれが多様な攻撃手段を持ち、強大な体躯を誇る大型モンスターであれば更に一工夫必要なところだが、相手は中型のドスランポスであり、その攻撃手段は鋭い牙での噛みつき、高い跳躍力を活かした飛びつき、そして長い爪を駆使したひっかき程度のものだ。
そう、ドスランポスは別方向にいる対象を一度に纏めて攻撃する手段を持ち合わせていない。ドスジャギィであれば体まるごと使ったタックルや薙ぎ払いなどの力押しが出来たが、ドスランポスの身体構造上そのようなパワープレイは難しい。
堅実。故に安定。
安定。故に平静。
平静。故に安全。
この三つが正しく当て嵌まる。
ドスランポスの噛みつきを盾で防ぎ、ガラ空きの横顔をアランが殴り付ける。怒ったドスランポスはこれまで以上に機敏に、激しい攻撃を雨あられのように浴びせていくが、一日の長。二人は何とか捌いていく。
ドスジャギィの時のような、常に綱渡りをしている感覚とは違う。明確に相手の動きを見極め、目前の脅威に対処し、文字通り狩ることを念頭に置いて動く。
まだまだ拙いながらも、後の世に広まるハンターの心構えをここに実行していた。
「喰らえっ!」
『クァァァ!!』
怯んだ隙に直ぐ様一閃。全力で叩きつけられたハンターナイフはある鱗に亀裂を与え、そう結合している訳でもない鱗数枚を弾き飛ばす。すると鱗が剥がれ防御力の低下したそこへ、すかさずハンマーの一撃。
ドスランポスは悲鳴を上げ、たたらを踏んで怒りに目を血走らせる。
激しい攻撃は時に離れ、時に大袈裟にでも躱し、合間を縫って武器を振るう。ドスランポスにとってすれば、追いかけたネズミが尽く自らをおちょくって逃げているようなものだ。苛立つ理由も十分と言えよう。
「もう一発!―――と、ぉわっ!」
「マサミチ気をつけろ!」
今までの行動パターンから、攻撃に移ったマサミチに向けて更なる一撃。これは防ぐが、ドスランポスの動きが雑になってきた。
怒り状態により、興奮したドスランポスは、身体能力が上昇するが、その分思考が短絡的だ。鬱屈を晴らすように無差別に放たれた攻撃に巻き込まれかけた、ということである。
「今のは危なかった」
相手はモンスター。怒り状態であれば何をしてきてもおかしくはない。それを心の中のハンターノートに書き加えた。けれどそれはそれで好都合。モンスターの注意を引くという面で見れば前までの冷徹な狩人のままでは難しかっただろう。
烈火の如き怒りは時に注意力を散漫にさせる。素早い連撃と、時折重く響くハンマーの一撃。それらを幾度も受けて尚健在である姿は野生の力強さを感じさせる。
しかし、相手も相応の攻撃を受け、体の部位のいくつかの鱗は剥げ、血も垂れている。これでも致命傷にはなり得ないが、着実に効果的なダメージは与えている。…後は、何か大きな一撃があれば、それは確実なものとなる。
そして、その手段がこの先に待っている。
チラッと、ジモ達の方を見れば、最後のランポスに対してフリーダが刃を振るっている最中であった。
強くドスランポスにハンターナイフを叩きつけ、鱗の薄い皮から出血させた。中々良い攻撃が通った。
こちらに襲いかかる爪を転がって避け、走り込んできたアランの一撃を受けて僅かに体が止まる。
…今の内がチャンスだろうな。
「アラン! そいつを少しの間頼む!」
「ん? そうか、例の…。分かった! やってくれ!」
そう言って、怒れるドスランポスの注意を一身に引き受けるために、余計に強い一撃で引き付ける。案の定、冷静な思考を放棄したドスランポスは目の前をちらつく
「よし…、今なら…!」
建物の影、喧騒が聞こえる中、俺は大タル爆弾を抱える。重い。だけどこの重さがそのまま威力になることを考えれば途端に頼もしい。
「よっ、と…!」
大タル爆弾を道の真ん中へと持ってきて、アランに合図をする。すると、今までの注意を引くような付かず離れずの距離から一転。頭を勝ちあげてこちらに走り寄る。当然、ドスランポスは一歩遅れて追随する。
「ジモーッ!! 合図したらこのタルを撃てー!!」
「え、ドスランポスじゃなくて!?」
「そうだ! 頼んだぞ!」
そう言って、アランが俺の側で構えると同時、ドスランポスを迎え撃つ。これで、誘導は完了した。
「後は、頃合いを見て離れる…!」
ハンターナイフを叩きつけ、微かでも傷を与えて怯ませる。そう上手く行けばいいのだが、怒り狂ったモンスターはまるで疲れなど知らないかの様に動き回る。
アランも奮戦してはいるが、あまり腰が入っていないように見える。やはり疲れは誤魔化せるものではない。分厚い皮に刃を通し、微かな悲鳴を上げたドスランポスを蹴って後退。アランが横から殴り付ける。ドスランポスはたたらを踏み、痛手を与えた存在を割れたその瞳で睨みつける。
これで、配置は完璧。しかし背を向けて逃げればドスランポスも追ってきて十分な威力を期待できない。が、それを予測に入れてない筈もない。
「もいっちょ喰らえっ!」
「ぬあっ!?」
もう一度の閃光。素材玉に捕まえていた光蟲が投げられたことで身の危険を感じ、生存本能から莫大な光量を以てドスランポスの目を焼く。
投げ込まれた閃光を直に浴びたドスランポスは大きく後ろへ仰け反って動きを止めている。
それを確認し、アランと共に即座に背を向ける。
「ジモ! 今だ!!」
「―――やっ!」
刹那、ひょうと乾いた空気に木霊して矢が放たれる。鋭いその軌跡は違うことなく大タル爆弾に吸い込まれていき――。
「飛べぇーっっ!!」
――――轟音。
あれだけの爆薬の炸裂は生半可なものではなく、体を投げ出した二人の背中を爆風が押す。
その爆発に、隠れていたみんなも何事かと顔を出し始める。
「痛つつ…」
「ぺっ、ぺっ!」
爆風に煽られた土煙を吸ってしまったのか、アランが唾を吐きながら立ち上がる。お互いに薄汚れており、それに少し笑ってしまう。
だが、安心は出来ない。即座に振り返って、黒煙立ち昇る爆心地を眺める。
―――影は、動かない。
「アラン」
「…ああ」
慎重に、武器を構えて近づく。ぐっと手に籠もる力が強まる。
そこに、ドスランポスはいた。
『クアァ……ァ…』
鱗は剥げ、皮は焼け、自慢のトサカは折れてそこに転がっている。……虫の息だ。
その僅かに閉じかけた瞳は近寄る俺達を捉えるが、最早体を起こす気力もないのか、小さく鳴くのみに留まっている。放っておいても、その命が長くないことは明らかだ。
「…トドメを刺してやろう」
「…そうだな」
横たわるドスランポスの首筋にハンターナイフを当て、押し込む。そこには今までのような抵抗はなく、意外なほどすんなりと刃が通った。
『キャァ……』
最後に微かな断末魔を漏らしたドスランポスは、その生命活動を確かに停止させた。それを見届けると、村のみんなに伝えるために戻る。
「みんな、もう出てきて大丈夫だ!」
「この通り、襲ってきたランポスは俺達が倒した! 安心していいぞ!」
僅かな静寂。
そして、ワッと巻き起こる歓声。
「ありがとう!」「おかえり二人共!」「本当に倒しちまいやがった…あいや、疑ってたわけじゃないぞ」「二人共大丈夫か?」「アラン兄ちゃん達スゲェー…」
一斉に家から出たみんなが俺とアランを取り囲む。その勢いにちょっと押され気味だ。
「うおっ、とと、はは。誰も欠けてないな」
「ああ、俺が来るまではジモとフリーダがランポスを倒しててくれたんだ」
肩の荷が下りたといった風に武器を起き、座り込んだアランが言う。
「ああ、とはいってもお前たちが来てくれなければ時間稼ぎもままならなかっただろうが…」
「いや、あの数相手に村のみんなを守ってたんだ。手遅れにならなかったのはフリーダたちがいたからだ。だろ? みんな?」
アランが他のみんなに問うと、一斉にそうだそうだと声が上がる。
「ジモお姉ちゃんもフリーダお兄さんも有難う!!」
「…まあ、無駄でなかったのなら。良かった」
「えへへ…」
もみくちゃにされていると、人並みを分けて村長が目の前に立つ。
「アラン」
「じいちゃん…」
今までのぎこちない関係性を知っているのか、村人もその雰囲気に軽口は叩けない。……しばらく見つめ合った後、先に口を開いたのは村長だった。
「…ありがとう。お前が来てくれなければ、村を棄てなければいけないところだった」
「…ハハ、そこは村人のみんなが、とかじゃないのかよ。……まあ、じいちゃんならみんなを連れて逃げるくらい出来そうだけどよ。どうだい? 孫の狩猟を直に見ての感想は?」
「危なっかしくて見ていられなんだ。特に拘束されたときなど終わったとみな思っていたぞ」
「うぐ、それを言われると痛い…」
以外にも飛び出した追求に、耳が痛いと苦笑するアラン。あれはマサミチがいなければ捕食まっしぐらだったからだ。村人も肝が冷えたのは道理だろう。
「…だが、悪くはなかった。強大なモンスター相手に怯まず、立ち向かっていく勇気は認めよう。……成長したな」
「へへっ、だろ? っと、おおぉ…?」
気恥ずかしげに笑ったアランは、そのまま倒れ込んでしまう。
「なんか、すげえ眠…」
「そりゃそうだ。徹夜で歩きっぱなしだったんだ。しっかり休むのも大切だぞ? あとのことは俺がやっとくから、アランは眠っとけ」
「…ぉう、任せた…」
辛うじて聞き取れる声で俺に言うと、アランは規則的な寝息を立てて眠りについた。
「よし、みんな! 聞きたいことは山程あるだろうが、とりあえずは――――――」
◆◆◆◆◆
そして時が経ち、夜。
外から聞こえる騒がしい音にアランは目を覚ました。
「にゃ、起きたニャ」
「アミザ…? と、そうだ。俺が寝てからどのくらいたった…?」
己の枕元にいた存在に、疑問を投げかける。
「アランが眠ってからは夜が来たところだにゃ」
「そうか、そんなに寝てたのか…」
見れば、己の姿格好もあの防具からいつもの服に、怪我した部分などに薬草が貼られている。
そして、ガヤガヤと聞こえる音が気になり、まだ少し痛む体を起こして外へ出る。
「お、アラン。おーいみんなー! アランが起きたぞー!」
「先に始めてるぞー」
そこには少し前の宴と同じ様な光景が広がっていた。どうやら俺が寝ていたのは村長…じいちゃんの家だったらしい。
村の中央広場に焚き火を設置し、みんなでそれを囲んで肉を頬張る。
戦闘があったという痕跡は残ったままだが、ランポスの死体や血などは除去されていた。
「アランもこっち来てくれよ」
「そうだぞ。お前が居てくれなければどうなっていたことか…」
「流石ハンター様だ。ほれ、食え食え。マサミチがいい焼き方を教えてくれてな。あんだけ寝たんだから腹も減ってるだろう」
言われてみれば朝昼も抜いていたことになる。自覚してみれば尚更ぐう、と腹の虫が空腹を訴える。
「うん、滅茶苦茶旨い」
「そりゃよかった」
「……でも、何だ? アプトノスの肉じゃない? だが何処かで食ったような……」
「お、すげえ。気づいたか。これはモスの肉だよ。お前が眠った後、マサミチがフリーダ達と一緒に獲ってきたんだよ」
「そうか、フリーダ達も。……って、いや、何でみんなハンターのことを知ってるんだ!?」
感慨深げに、姿の見えない三人の姿を思い浮かべて、その言葉に驚く。
「ああ、それに関しちゃ…まあ、適した人がいるだろ」
そう言って目を送った先の建物から姿を覗かせる人影。マサミチ達とじいちゃんだ。
「アラン! 起きたのか!」
「マサミチ。ああ、まだ痛むが特にこれといった支障はないな。…じいちゃんと、何か話してたのか?」
「ああ、俺達のこれからによく関わる話だ。このあと全員に対しての呼びかけをするらしい」
「フィシ村の諸君! 宴の席だが聞いてくれ!」
中央に陣取ったじいちゃんが、村のみんなに向けて語りかける。そのはきはきとした語り口調からは年齢による衰えを感じず、昔から見てきた厳格な村長としての声音だ。
みんなも、その姿に大人しく目を向けている。
「我が村はこの僅かな間だけでも幾度の危機に陥ってきた! 寒冷期における甲虫共の襲来による食糧不足!」
食料庫番のストレイが頷く。
「そして南方より北上してきた狗竜によるこの森の生態系への侵略」
おやっさん達鍛治師が頷く。
「最後に、今朝村の内部に群れを引き連れて現れたランポス共による壊滅の危機!」
間近に迫って来ていた恐怖を忘れないであろう。今度は村民全員が頷いた。
「それらの危機をそこにいるマサミチとアランが退けた!」
おぉー!! と歓声が上がる。
「マサミチ曰く、モンスターを狩って生計を立て、生活を豊かにしながら自然と共に生きる。そのような人々をハンターと呼ぶらしい」
ガヤガヤと囃し立てる声や子供の盛り上がったような叫びが聞こえる。
「マサミチ、アラン、ジモ、フリーダ。村長としての権限で以上の四名をフィシ村のハンターとして任命する!!」
わっ! と更に人々が湧く。村長の言葉に盛り上がる人もいれば、任命された彼らへの賛辞の言葉を投げかける者もいた。
「そこで、マサミチとの話し合いにより我々は次の段階を目指すべきだろうと判断した!」
「みなも知っての通り、モンスターは恐ろしい存在だ。だが、我等の食糧問題を解決したのも間違いなくモンスター。そして、ハンターたるマサミチがドスランポスを打倒した瞬間を見た者も多いだろう! 今まではどのようなことであれモンスターに怯える他ない身だったが、これからは違う!」
そうして、強く宣言する。
「ハンターである彼らの力を借り、これからのフィシ村は変わる! 山で出会った小さな隣人たちもこの村の一員として力を貸してくれることだろう」
その言葉にアイルー達がにゃーと鳴き声を上げ、みんなと騒ぎ立てる。そうか、既にアイルーが混ざっていると思ったら、話はつけてあったのか。
「手始めに、この村の外周部を整え、今日のようなことは起こさせん! 寒冷期に入る今だからこそ行うべきことであり、その間の不安はハンターである彼らによって保障される! よいか、明日からは働ける者を総動員し、村の安全を確保する! その他の者にも彼らの助けになっていただきたい!」
その演説には、これまでの鬱憤や不安。弱さと希望が籠もっていた。
「詳しい説明は後日に回す。今はこの食事に感謝し、明日に向けて英気を養ってほしい! ……私からは以上だ」
村長の言葉が終わって、村のみんなは時代のうねりを確かに感じていた。
ある者は友と共に笑い、ある者は明日の活動への意欲を高める。そしてまた、ある者はハンターと呼ばれた彼らの活躍に胸躍る期待をしていた。
「全く、調子のいいこと言って…」
「ああ、いくらドスランポスを倒したとはいえ、近くにはイャンクックだっているんだぞ?」
当事者たる身からすれば、それは中々に大きな期待だ。この程度の実力でそれを背負うには中々に辛いが……。
「まあ、ご期待に添えられる様に頑張るか」
「おう。こうなったらイヤンクックでもなんでも倒して、一人前のハンターにだってなってやらぁ!」
―――――こうして燃えている以上、登り切ってやるさ。ハンターの高みってやつに。
そう、夜空に瞬く星に誓うのであった。
これにて最序盤の序盤は一区切り! ここまで来るのにどんだけかかってんだって話ですけどね。
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決めろ!炎のクリティカル!