あのBGM大好き。ソードマスターの重ね着で挑むことにします。
そんなことより記念すべき30話だ!!みんな大好きなあのモンスターが登場するぞ!
翌日、俺とアランは探索組を引き連れてあの草原まで向かっていた。
みんなも外に出るのは慣れたものなのか、特に怖気づくというわけでもなく周囲へ気を向けながら着いてきてくれている。とはいえ、流石に今回の役割には僅かながら緊張しているらしい。
それもそうだ。数ヶ月前までモンスターの狩猟すら考えの外にあった彼らにとって、それを生きたまま捕らえ、それを村まで運ぶというのはさぞかし不安だろう。
あのあと、エストの家を飛び出した俺はネムリ草とマヒダケを調合して捕獲用麻酔薬と呼べる程度には完成させ、探索組に声をかけた。断るのも自由だと言ったのに、それでもみんな良い返事を返してくれたのだ。各々仕事があるために仕方のない場面もあったが、必要に足る人数は早々に満たすことが出来たのだ。
こうしてメンバーは集まり、その後日、これまでの経験からアプトノスが食事を終える時間になってから俺達は村を飛び出したのだった。
移動中の会話もそこそこに、すでに草原の端が見えてきた。
「よし、予想通りだ。すっかり寛いでる」
アプトノス達はのんびりと体を休めており、そのゆったりとした所作から恐らくは食事も終えているだろう。つまりピッタリの時間に来れたという訳だ。
聞こえが悪いが、攫いやすそうな孤立した個体などを探す。そして、見つけた。他のアプトノスが複数体で集まって和を形成している中、やや離れた位置で倒れている一体だ。
「アレを狙うのにゃ」
「ああ、俺達が先に出る。合図したらゆっくり静かに着いてこい」
小声で話すアランに、みな沈黙のまま頷く。温厚なアプトノスとはいえ、急に大人数が駆け寄ってきたら驚愕もする。下手すれば、仲間を呼ばれて抵抗に合うやもしれない。
ここまで散々失敗してきたのだから、慎重にもなるというものだ。
「よし、いくぞ」
合図し、そろりと草陰から身を露わにする。一瞬外周部の個体が音に反応するが、すぐに興味を失ったかのように頭を下げる。
そのままゆっくり急ぐというやや矛盾した状況を維持し、そのアプトノスへと近づいていく。草食竜とはいえ流石の肉体を誇っており、小型鳥竜種が単体なら下手に手出しが出来ない相手のようにも見えた。
ぞろぞろと引き連れた人の群れを見るのは初めてなのか、今までとは違って顔をこちらに向けて観察するような視線を送ってくる。
「よし、こいつを飲ませて……と」
腰に備えた捕獲用麻酔薬を取り出してアプトノスへと差し出す。アランが顔を押さえて、その隙に俺が喉へと流し込む。
その筈だったが……。
途端、俺達に差す太陽が遮られる。俺達の上空を、何かが横切ったのだ。それの真っ先に反応したのは誰だっただろう。俺だったかもしれないし、アランだったかもしれない。はたまた、同行してくれた探索組か。
アプトノス達が途端に周囲を警戒し始め、その羽音を捉えた瞬間にみなが警告を発しながら立ち上がり、我先にと逃げていく。
「なっ…」
「あれは…!」
悠々と空から舞い降りるは大怪鳥。それは本来、こちら側には姿を見せないはずのモンスターだ。何せ、フリーダの報告にあった方角が怪鳥の縄張りであり、範囲もそう広い訳では無い。
まして、イャンクックの生活に全く困らないほどの環境が整っていて、何故。
そして、イャンクックが降り立ったのは、俺達とアプトノスの群れのその狭間。奇しくも群れとアプトノスを完全に分断する形になってしまっている。お陰でこちらの側にいるアプトノスも警戒して仲間の元へと逃げられないようだが、その程度の距離しか離れていない。イャンクックは直ぐに俺たちの存在に気がつくだろう。
「アラン、急いで飲ませるぞ」
「っ正気か? 目の前に怪鳥がいるんだぞ」
「どの道この人数じゃ気づかれる。それより俺たちで注意を反らしている間に運んでもらった方がいい。眠ったアプトノスも暫くは起きないはずだ」
「…分かった。皆聞いたな? 俺達がアイツを引き付ける。だからアプトノスは任せた」
未だイャンクックを警戒するアプトノスに麻酔薬を飲ませるのは簡単だった。最初は体の力が抜け、微睡んだ後、僅かな抵抗を残して沈黙。ぐうぐうと規則的な寝息が繰り返される。
そしてその音で気がついたらしい。とうとうイャンクックがこちらに顔を向ける。その形相からは感情を読み取ることが出来ないが、強い敵意を抱いていることは分かる。
本来臆病で縄張りから出ないイャンクックが、何故最初から敵意を剥き出しにしているのか。その疑問も今はねじ伏せ、ドスバイトダガーを抜き放った。
「おおおぉぉぉぉっっ!!」
刃を一閃。叩きつけた刃はイャンクックの強靭な甲殻にも弾かれず、微かな傷を与えた。
『クァアアア!?』
先制攻撃を受けたイャンクックは動揺したような声を上げるが、すかさずその頭にアランのブルヘッドハンマーが強かに打ち付ける。その一撃に怯んだイャンクックの足へ、ムートと共に連撃を食らわせ、立ち直るまでには退避する。
「今の内だ!」
注意が完全に向いている間に、指示を出す。彼らもそれを分かっているのか、既にアプトノスは荷台へと担がれ、出発準備は整っていた。
その内の一人がこちらに聞こえるように声を上げた。
「今仲間の一人がフリーダ達を呼んでる! もう少しの辛抱だ!」
「っ、そりゃ心強い!」
そう言い残して、足早に彼らは林の中へ消えていく。冷静な状況判断能力は、かなりありがたい。何より、後ろから援軍が来てくれると分かるだけでも幾分かの余裕が出てくるというものだ。
「っと!」
ちらと覗き見たそれを尻目に、こちらに向かって啄み始めたイャンクックを躱す。その僅かな隙に回り込んだアランと一緒に痛烈な攻撃を浴びせる。
左右からの挟撃に、どちらか片方へと意識が集中したところで、もう一方の攻撃は苛烈になる。それを煩わしいというように身を捩り、尻尾ごと回転させることで薙ぎ払った。
「ぬおっ」
マサミチは上手く避けたが、アランは紙一重。眼の前で鞭のようにしなる怪鳥の尻尾がよぎっていく。
体勢の崩れたアランに続けて啄みを食らわせてその体を弾き飛ばす。さらに追撃を追わせるための強打を与えようとしたところで、ムートが前に出て挑発。その動きに目を奪われたイャンクックの背後から、追いついてきたマサミチが皮膜に傷をつける。
「イタタ…」
アランは既にその場から動いており、薬草を噛み締めながらハンマーを何度も振るう。
イャンクックはこれまで戦ってきたモンスターと比べても大きい。よってこのような挟撃を可能としているが、それは二人の連携あってのものだ。マサミチとムートが撹乱と連撃を主に行い、注意が削がれた相手に遠慮のないハンマーの殴打を食らわせる。
ここしばらくのハンター生活で身に着けたパターンの一つだ。
「うらぁっ!!」
大トリとして放った裂帛の気合が込められたスタンプはイャンクックが首を動かすことで回避されてしまうが、それでも十分に攻撃できた。目立った傷はないが、それでも全くのゼロ、というわけではないだろう。
『クァァァァ!』
地団駄を踏むように、跳ね跳ぶ動きに巻き込まれないように一旦離れる。次に目をつけたのはマサミチだ。
「うわっ!?」
身震いし、こちらに向けて大きく口を開く。放物線を描いて吐き出されたのは可燃性の液体の塊。身を投げ出して何とか躱すが、連続して吐き出される可燃液によって鼻先まで熱が伝わる。
「ぜぇらッ!!」
『クァオォォオ!!?』
その大きな隙に、アランは走り込んでいた。走り込みながら力を溜め、ブレスを吐き終わった後の下顎を痛烈に打ち上げる。
たまらずたたらを踏んだイャンクックは、変わらずこちらを睨みつけて足踏みをしている。
二人とイャンクックの視線が交錯した。来る、とこれまでで培った第六感のような何かが訴えると、何の予備動作もないままにイャンクックは猛ダッシュで突進してくる。
「アラン!」
「くっ」
咄嗟に左右に別れて避けたが、その二人を纏めて凪ぐように回転攻撃を繰り出す。が、その途中で動きは滅茶苦茶になって瓦解する。
「ウニャッ! ウニャッ! 喰らえニャ!!」
何を隠そう、ムートがイャンクックの耳をジャギィネコナイフで何度も斬りつけていたからだ。
命からがら、何とか身を持ち直した彼らは再び武器を構えて躍りかかる。
この陽動でイャンクックの注意は目の前のムートに向いている。ならば狙うのは脚だ。いかに強靭なそれであろうと、集中攻撃を喰らい続ければ転倒させる程度のことは出来る。
「おぉりゃあああ―――っ!」
「だぁぁぁああらあっ!!」
連撃、連撃、連撃。片手剣から繰り出される素早く鋭い斬撃と、ハンマーによる芯に響く打撃の応酬。これには堪らずイャンクックもバランスを崩してしまう。
「今のうちありったけを叩き込め!!」
「ああ!」
「やってやるニャー!!」
体から倒れ、元の姿勢に戻ろうと藻掻くイャンクックにそれぞれ位置を変え攻撃する。最も効果的な頭部にはハンマーを強く握りしめるアランが陣取り、ムートも攻勢に加わる。
そしてマサミチは更に一歩離れ、翼の付け根を正確に斬りつけていく。怒涛の全力攻撃にイャンクックも悲鳴を上げ、叩きつけた甲殻が割れ、血が滲み始める。
「よしっ!」
痛手を与えたと思ったのも束の間、イャンクックは立ち上がった。
『クァアア! クァァアア!!』
されるがままに攻撃を受けたイャンクックは、それはもう怒り心頭といった様子だった。
高らかに声を上げつつ突進してきたイャンクックを大きく躱し、背後でUターンしてくる挙動を見て全力で走り逃げる。完全にランダムに狙っているせいか、どうにも挙動が読みにくい。
そんな中、最もマサミチに近い位置で立ち止まる。が、止まっていたのは嘘だったのかと思うほど素早く連続啄みに移行する。
「ぐぅっ…!」
何とか盾を構えて防ぐも、ジンジンとその痛みは伝わってくる。だが、その痛みに構っている暇はない。
怒り狂い、力加減を忘れたイャンクックの嘴が地面に深く突き刺さる。後先考えない全力の攻撃だったからか、イャンクック自身であっても易易とは引き抜けない。その証拠に首を何度も動かし焦るように暴れる。
そして、盾で防いだからには、その位置は完璧。ドスバイトダガーを二度三度と振るい、自慢の耳の表面を削る。
だが深追いはしない。嘴が抜けるタイミングを見計らい後退する。顔をブルリと震わせ、土を落としたイャンクックと相対する。
「………!」
互いに向き合い、硬直状態に陥る。噛みつきを盾で反らし、返す刀で喉元の鱗に突き立てる。いい手応えを感じたその瞬間、イャンクックの体が遠のき激しい風圧に体が晒される。
イャンクックが背後へ飛んだのだ。それを理解したその時には、既に火炎球は吐き出され、今立ち直ったばかりのこの身では避けられない。
「熱っ!」
やむを得ず盾で受けるが、熱いものは熱い。可燃液を咄嗟に払っていると、イャンクックが走り出す。
慌てて回避行動を取ろうとしたが、勢いそのままにイャンクックが転ける。地面を滑り、ペースを乱されたそれは、マサミチの体に直撃した。
「っ、ぐうぁ……!!」
「くそっ、マサミチ!!」
「お前様!」
吹き飛んでいくマサミチの姿に悲鳴を上げながらも、一人と一匹はそのカバーに入ろうと駆けつける。が、背後から殴りつけようと、イャンクックの動きに支障をきたさない。続けて嘴を突きこもうと頭を大きく上げたその瞬間、イャンクックが悲鳴を上げる。
よく見ると、飛来した矢がイャンクックの額に命中していた。刺さりこそしなかったが、それでも十分な衝撃。見事怯ませることに成功する。
その矢を放った人物がアランの位置からでも見えていた。次の矢を番えながらこちらに向かってくるジモと、その前をひた走るフリーダの姿が。
このチャンスを不意にするわけには行かないと、アランはマサミチの前に滑り込むと、イャンクックを遠ざけるように右へ左へと痛烈な乱打を叩き込む。またも悲鳴。衝撃で鱗が欠けたのか、ポロポロと落ちてくる。
「マサミチ、大丈夫か!?」
「あ、ああ。問題ない。威力の殆どは防具が殺してくれた」
いくつかの薬草を口に運び、立ち上がるマサミチに安堵し、合流したジモとフリーダにも声をかける。
「良いタイミングだ!」
「怪鳥が出たと聞き急ぎ駆けつけた。…この様子なら、俺達は要らなかったか?」
「いや、でもジモの弓がなかったら危なかった。ありがとう」
「どういたしまして! でも、怪鳥がなんでこんなところに…?」
ジモの疑問には甚だ同意である。俺が知らないだけでなく、長年住んでいるアランですら遠くで飛んでいるのを見たといった程度。少なくとも、縄張りに近づかなければ出会うことはないであろうモンスターだ。
そしてそのイャンクックは、更に人が合流したのを見てか、翼をはためかせる。
「っ、逃げる気か!」
「ジモ!」
「っうん!」
逃げ出そうとするイャンクックに照準を合わせたジモを手で制し、俺は腰につけた袋状のそれを投擲する。飛び去るイャンクックに命中したそれは、独特な匂いをまき散らし、そのまま空へ飛び去っていった。
「おい、逃してよかったのか?」
「いや、どの道止めれなかった。逃げるモンスターは多少の犠牲は我慢する。あと一射程度なら耐えられて、そのまま射程外に逃げられてたと思う。…それに、ただ逃したわけじゃない。これからがハンターのお仕事だ」
「どういうことだ…?」
疑問を浮かべるフリーダに、その策が効いているかを確かめながら答える。
「イャンクックがここにまで現れた原因。それを突き止めるんだ」
そう、ハンターとはただ狩るだけの者ではない。何か不可解な出来事があれば、それを調べ上げるのもまた、ハンターの役目である。
何故回復薬や回復薬グレートがあるのに薬草を使ってたのか。それはアプトノス相手と思っていたからです。いつでも携帯して持ち歩けるほどの容器は今はまだないんです……。
ネコの影が薄く……。
感想乞食マンです。ハイ、